中国共産党の機関紙のインターネット版である「中国人民網」に、非常に興味深いインタビュー記事が掲載されました。これによると、中国の「核心的利益」は米中関係や一帯一路構想、さらに南シナ海にあるのだとか。本日は、「人民日報日本語版」から垣間見える中国の「ホンネ」を探るとともに、こんな「危険な国」が日本の隣にあるという事実を知ることの重要性を議論したいと思います。

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正体不詳の中央日報の情報源

私が「愛読」(?)している「中央日報日本語版」に、先日、こんな記事が出ていました。

「中国の韓半島THAAD反対は不変」(2016年12月24日12時53分付 中央日報日本語版より)

記事は中国の「外交部長官」(日本でいう「外相」)で駐日大使を務めたこともある王毅(おう・き)氏が、人民日報のインタビューに応じたとされるものです。リード部分を含めて僅か4段落と短い記事ですが、この中に、非常に重要な情報が詰まっています。

中央日報の報道によれば、王毅氏は人民日報に対し、「韓半島(※朝鮮半島のこと)へのTHAAD(高高度迎撃ミサイルシステム)の配備に反対する」と発言したとされており、さらに中央日報は

トランプ米次期政権のため米中関係の不確実性は高まったが、中国の従来の韓半島政策には変化がないことを強調したと解釈される

と論評を付け加えています。

ところで、この中国共産党の機関紙である「人民日報」には、日本語版や英語版が出ています。私は中央日報日本語版の記事を読んだあとで、気になってその原文を確かめるために、日本語版と英語版、さらには一応、中国語版まで確認したのですが、「THAAD」という文言を確認することはできませんでした。

王毅外交部長の語る今年の中国外交(2016年12月23日10:52付 人民網日本語版より)
China’s ‘circle of friends’ enlarged in 2016: FM(2016年12月23日14:05付 人民網英語版より)
中国特色大国外交攻??拓之年(2016年度特??道)(2016年12月22日04:39付 人民網中国語版より)

中国語版の記事には、王毅外相のインタビュー動画も出ていましたので、もしかしたら中央日報日本語版の記事は、中国語ができる記者が、このインタビュー動画を参考にして執筆したものなのかもしれません。

ただ、この調査の過程で、私は思わぬ「副産物」をいくつか得ることができました。「オリジナルの人民網の記事」に何が書かれているのかをチェックすることで、現在の中国政府の考え方の一端を知ることができたからです。

「中国の特色は、大国外交だ」

ここから先は、人民日報日本語版の次の記事をベースに、中国の「考え方」を見てみましょう。

王毅外交部長の語る今年の中国外交(2016年12月23日10:52付 人民網日本語版より)

いちおう、日本語版、英語版、中国語版(※翻訳ソフトウェアを使って解析)のすべてを簡単にチェックして、いずれの記事もおおむね記載されているポイントは同じであることを確認しています。

リンク先の記事のは、冒頭、

2016年の国際情勢の最大の特徴は動揺と変化に富んだことであり、われわれは習近平氏を中心とする党中央の揺るぎない指導の下、グローバル・ガバナンスにおいて方向性をリードし、国際情勢の変動において大局を把握し、

…などと、無意味な自画自賛が延々と続くため、途中で読むのをやめたくなります。ただ、ここはぐっと我慢して(笑)、続きを読んでみましょう。

中国外相の言う「今年の成果」

王毅氏は、今年の成果として、外交上の様々な「成果」を挙げます。

例えば9月の「G20サミット」に「成功」したことや、米国・オバマ大統領との会談に「成功」したこと、ロシア・プーチン大統領と「5回も会談して中露パートナーシップがより高い水準になった」こと、フィリピンのドゥテルテ大統領に至っては「大統領の最初のASEAN域外訪問先に中国を選んだ」ことなどを列挙しています。

  • 今年9月、習近平国家主席はG20杭州サミットの開催に成功した
  • 習主席とオバマ大統領は杭州サミット期間に西湖で会談し、信頼を強化し疑念を解消する深い戦略的意思疎通を行った
  • 中露首脳は1年に5回会談し、中露包括的・戦略的協力パートナーシップはより高い水準へと踏み出した

私など、意地が悪いので、9月のオバマ大統領といえば、サミットに参加するために杭州の空港に着陸した「エアフォース・ワン」にタラップも赤絨毯も準備せず、日本や欧米諸国から失笑を買った事件を思い出します。また、フィリピンとの関係については

ドゥテルテ大統領はフィリピン大統領に当選後、前政権の中国と対立するやり方を変え、自らわれわれとの関係を改善し、中国をASEAN以外の最初の訪問国にした。習主席はドゥテルテ大統領を親切にもてなし、中比関係の華麗な転換は長年の暗雲を追い払っただけでなく、中国とASEAN各国の協力深化の障害も取り除いた。

などと自画自賛している割に、そのドゥテルテ大統領が習近平国家主席の前でガムを噛むという外交上の非礼を働いています。その対フィリピン外交については、アキノ前政権がオランダ・ハーグの常設仲裁裁判所(Permanent Court of Arbitration, PCA)に提訴した南シナ海の領有権問題を巡って、王毅氏は

今年、われわれはフィリピンの前政権が提起したいわゆる南中国海仲裁裁判に断固として反撃し、南中国海問題を直接の当事国による対話・協議による解決という正しい道へと戻し、国の主権を力強く維持し、民族の尊厳、地域の安定を維持した

と述べていますが、これは、いわば、「国際法に基づく解決」ではなく、「中国の大国式外交」を押し付ける、という宣言とも受け止められます。

いずれにせよ、少なくとも現段階において日米関係、日比関係については米中関係、中比関係よりは良好です。

これに加えて、中国にとっての「日本に対する優位な点」であるはずの対ロシア関係についても、少しずつその優位を失っています。というのも、日露関係については『今回の日露首脳会談は日本にとって大成功』でも指摘したとおり、限定的とはいえ、日露関係に前進が見られたからです。

その意味で、私の目からすれば、王毅氏が主張する「中国外交の今年の成果」については、非常に怪しいと思います。

王毅氏の掲げる「4つの目標」

次に、王毅氏は、現在の中国外交の課題として、4つの項目を列挙しています。

具体的には、次の重要な任務がある。1つには大局意識を強化し、第19回党大会の成功に向けて良好な外部環境を築く。第2に、引き続き積極的・進取の姿勢で、「一帯一路」国際協力トップフォーラムとBRICS首脳会議という2大ホーム・グラウンド外交の成功に力を注ぐ。第3に、戦略面の不動性を維持し、中米関係の平穏な移行の推進ならびに新たな協力の展望を開くようにし、より健全で安定した大国関係の枠組を構築し、世界各国との友好的関係を拡大する。第4に、人々のためという趣旨を実行し、「海外民生プロジェクト」を引き続き築き、国の発展と改革・開放により良く貢献する。

つまり、一つ目は、共産党大会に向けて引き続き「大国外交を続けるよ」、という宣言ですが、重要なのは二つ目以降です。

その二つ目に挙げられているのは、「一帯一路」構想です。これは、中国共産党にとって「アジアインフラ開発銀行(AIIB)」と並ぶ重要なものですが、「シルクロード基金創設」などと報じられていたわりに、現在、「立ち消え」の可能性すら生じているものです。

なお、「BRICS」とは、ゴールドマン・サックスのエコノミストのジム・オニール氏が2001年に提唱した「ブラジル・ロシア・インド・中国」の4か国のことですが、後日、こじつけ的に「南アフリカ」を追加して5か国に仕立てたものです。地理的にも人口動態も成長段階も全く異なる5か国を、一つのグループにこじつけるのにも無理があると思うのですが…。

三つ目は、米中関係などの「大国関係の枠組み構築」です。王毅氏に限らず、中国政府の関係者は「大国」という言葉が大好きです。ただし、国際法を無視した「大国外交」とやらが、諸外国と摩擦を起こしていることは言うまでもありません。

そして四つ目が、「海外民生プロジェクト」ですが、インドネシアで日本の高速鉄道輸出案件を横取りしたようなプロジェクトを、積極的に推し進める、ということでしょう。

中国外交の本音は「世界征服」?

そして、この頭が痛くなるような王毅氏のインタビューは、次の一文で締められています。

要するに、中国外交は新たな長征の道における新たな勝利を獲得するべく努力し、中華民族の偉大な復興という中国の夢の実現のために新たな貢献を果たす。

「中華民族の偉大な復興」、「長征」など、不穏当な単語がいきなり出て来てのけぞります。ちなみに英語版、中国語版だと、それぞれ

All in all, the Chinese diplomacy will strive for new success and make new contributions to realizing the Chinese dream, that is the great rejuvenation of the Chinese nation, Wand added.(※誤植と思われる部分なども含めて原文ママ)

?之,中国外交将努力?取新?征路上的新?利,????民族?大??的中国梦作出新?献。

とありますので、おそらく王毅氏の発言をほぼ正確に訳しているものと考えて良さそうです。

こんな恐ろしいことを考えている国が、沖縄県尖閣諸島接続海域に頻繁に侵入し、あろうことか「日本には沖縄県の領有権すらない」などと主張しているのです。

我々日本人は、もっとこの「危険な隣国」のことを知らなければなりません。

――↓本文は以下に続きます↓――

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AIIB/シルクロード基金の行き詰まり

9件に増えた!現時点のAIIB案件一覧

ところで、中国は昨年、「アジアインフラ投資銀行」(AIIB)を設立したものの、思うように出資が進んでおらず、12月25日時点の融資案件一覧も次の通り、9件という状況です。

図表 AIIB融資実績一覧(金額単位:百万ドル)
プロジェクト金額トータル比率
タジキスタンウズベキスタン国境道路改善事業27.5105.925.97%
インドネシアスラム改善プロジェクト216.5174312.42%
パキスタン国道4号線建設10027336.63%
バングラデシュ送電系統整備165262.2962.91%
パキスタンタービン増強事業300823.536.43%
ミャンマーガス・コンバインドサイクル発電20不明不明
オマーン鉄道敷設事業366060%
オマーン港湾整備事業265353.3375%
アゼルバイジャン天然ガスパイプラインプロジェクト6008,6006.98%
合計1,730

実は、この程度の「一覧表」をまとめるのにも、結構、苦労します(笑)というのも、プロジェクトの承認実績は9件に過ぎないのに、AIIBはこれを一覧表にしておらず、1ページずつ別々のページに掲載し、さらにそこからPDFファイルを1枚ずつ調べないといけないからです。しかも、PDFファイルのフォーマットも、案件によってバラバラです。

このように、AIIBが融資実績について、非常に調べづらい状況にしている理由は、おそらく、一覧表にしてしまうと「AIIBの融資実績が極めて少ない」ということが白日の下にさらされるためでしょう。いかにもメンツを重んじる中国人らしいやり方といえるかもしれません。

いずれにせよ、現状でAIIBが融資する事業の多くは、ADBや世銀、IBRDなどとの協調融資です。これは、中国自体に発展途上国向けの国際的プロジェクト・ファイナンスの経験がない以上、仕方がない話です。

ただ、以前『AIIBの現状整理』で指摘した状況と比べると、1か月余りでプロジェクトの件数が増えたことについては評価しても良いかもしれません。

シルクロード基金はどうなった?

一方、AIIBと並ぶもう一つの「目玉」だったはずの、「一帯一路」構想を実現するための「シルクロード基金」についても、状況は芳しくないようです。

これは、2014年12月29日に設立された基金であり、中国の外貨準備を管轄する「中国国家外貨管理局(SAFE)」が65%を出資し、残りを中国の「国富ファンド」である中国投資公社(CIC)が15%、中国輸出入銀行が15%、中国開発銀行が5%出資する、「オール・チャイナ・ファンド」です。

ただし、同基金の「投資実績」について、調査することは非常に困難です。なぜなら、シルクロード基金についてもAIIBと同様、投融資実績を「一覧表」などの形式で開示していないからです。

ざっと見たところ、現時点で同基金の投資案件は中国国内のプロジェクトが中心ですが、中国国外に対する投資案件のうち、目立ったものとしては今年12月にロシアのガス会社「SIBUR」に対する少数出資案件(※ロシア政府の承認待ち)あるようです。

ただ、「一覧表形式」にして公表することができないという時点で、融資実績、投資実績ともに、非常に少ないのが実情なのではないかと推察してしまいます。

情報開示できないということは…?

いずれにせよ、AIIBにせよ、シルクロード基金にせよ、情報開示が極めて不十分です。

それでもAIIBは欧州諸国が出資しているため、まだマシですが、シルクロード基金に至っては、案件ごとの投資金額、投資条件などが全く開示されておらず、集計すらできません。ということは、シルクロード基金自体が「きちんとした情報開示ができない状況」にある、と考えた方がよさそうです。

王毅氏は「人民日報」に対し、この「シルクロード基金」などを活用した「一帯一路」構想を進めたいとする考え方を示したものと思われますが、日本の民間企業による投資の方が遥かに融資条件などの透明性も高く、技術力もあります。

私が発展途上国の首脳だったとしたら、国内の開発案件については、中国による怪しげな基金の投資よりも、きちんとした日本の商社などに入ってもらった方が良いと考えてしまいそうです。

オマケ:日の丸が嫌いな朝日新聞

本日のオマケは、もう一つの副産物(というか小ネタ)です。

人民日報中国語版を調べていたら、少し古い記事ですが、「日本朝日新聞ゼネラルマネジャー兼報道局長の長典俊と会う」とする記事も発見しました(※中国語の文章では、敬称を付けずに呼び捨てにするのが慣習のようです)。

人民日?社社??振武会?日本朝日新?社????典俊(2016年05月12日17:14)

リンク先の記事に写真が載っているのですが、ポイントは会見場所で、中国の国旗だけ飾られており、日本国旗は飾られていない、という点でしょう。さすが、慰安婦問題を捏造した新聞社です。よっぽど日本のことが嫌いなのでしょう。

 

――↓本文は以下に続きます↓――

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  • 2016/09/14: <保存版>ハード・カレンシーとは?
  • 2016/08/29: 日韓通貨スワップ協定巡る不信感
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  • 経済・金融に関する用語集

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