なぜ韓国は外貨準備や通貨スワップを強調するのか

先日の『韓国とマレーシアの通貨スワップはどうなったのか』では、先週期限を迎えた馬韓通貨スワップを巡って、いまだに「延長した」という続報が出てこない背景について、個人的な邪推も交えて簡単な仮説を提示したのですが、本稿ではその続きとして、韓国が抱える通貨ポジションの脆弱性という問題点に加え、なぜ韓国が外貨準備や通貨スワップについて、国際社会に大々的に伝えるかのごとくアナウンスメントを行っているのかという疑問点についても、仮説を深堀りしてみたいと思います。

通貨スワップについて

先週、韓国メディア『聯合ニュース』(日本語版)や『中央日報』(日本語版)に、こんな記事が掲載されました。

日本との輸出管理政策対話 早期にソウルで開催へ=韓国政府(2020.01.20 09:29付 聯合ニュース日本語版より)
韓国、中国・豪州などと通貨スワップ延長推進…終了から5年経過した韓日通貨スワップ(2020.01.21 14:37付 中央日報日本語版より)

これは、韓国の洪楠基(こう・なんき)副首相兼企画財政部長官が会議で、韓国が締結した通貨スワップのうち、今年満期が到来するスワップの延長を推進すると述べた、とする話題です。

これについては当ウェブサイトでも『韓国とマレーシアの通貨スワップはどうなったのか』などで報告したとおり、たしかに韓国が保有している(と自称する)通貨スワップについては、3月までに相次いで3本、満期を迎えます(図表)。

図表 韓国が外国と保有するスワップ一覧(韓国当局が「保有する」と自称するものを)含む
相手国と失効日金額とドル換算額韓国ウォンとドル換算額
マレーシア(2020/1/24)150億リンギット(36.9億ドル)5兆ウォン(42.9億ドル)
オーストラリア(2020/2/22)100億豪ドル(68.4億ドル)9兆ウォン(77.2億ドル)
インドネシア(2020/3/5)115兆ルピア(84.7億ドル)10.7兆ウォン(91.7億ドル)
中国(2020/10/13?)3600億元(519億ドル)64兆ウォン(548.7億ドル)
スイス(2021/2/20)100億フラン(103.1億ドル)11.2兆ウォン(96.0億ドル)
UAE(2022/4/13)200億ディルハム(54.4億ドル)6.1兆ウォン(52.3億ドル)
二国間スワップ小計866.5億ドル106兆ウォン(908.8億ドル)
CMIM384.0億ドル
合計1,250.5億ドル

(【出所】各種報道等より著者調べ。米ドル換算額については先週金日時点のWSJの終値を参考に試算。なお、韓国の通貨当局はこれら以外にもカナダとの間で締結した為替スワップ(BLA)を「通貨スワップ(BSA)」と称している模様)

マレーシアとのスワップ

というよりも、図表で明らかなとおり、マレーシアとの通貨スワップについては、すでに先週、失効してしまいました。

ただし、これについては何度か申し上げているとおり、

マレーシアも韓国もスワップを延長するつもりだが、単純に事務的な理由で遅れているだけに過ぎない

という可能性も高いと思います。とくに現在、韓国は旧正月の休暇中であり(※本日まで)、これから数日以内に「マレーシアと韓国の通貨スワップ延長で合意した」という報道発表が出てくるという可能性は否定できません。

また、万が一、マレーシアと韓国のスワップ(本稿で「馬韓通貨スワップ」)が失効したとしても、国際的な金融市場において、大した影響はありません。というのも、もともとマレーシアの通貨・リンギットも韓国の通貨・ウォンも、いずれも「ハード・カレンシー」の条件を満たす通貨でもないからです。

※ハード・カレンシーとは:(定義と代表例)

その通貨の発行国・発行地域に留まらず、国際的な商取引・資本取引等において広く利用されている通貨であり、為替取引等においても法的・時間的制約が少ないもの。7大通貨(米ドル、ユーロ、日本円、英ポンド、スイスフラン、豪ドル、加ドル)などの主要国通貨がその典型。

(【出所】拙著)

ただし、韓国はときどき国際的な金融危機に巻き込まれる国です。

その代表例は1997年のアジア通貨危機と2008年のリーマン・ショック(※)ですが、この2つの危機が11年感覚だったので、個人的には昨年(2019年)にも何らかの危機が発生すると、「韓国危機11年周期説」を唱えるチャンスになるのかと期待していたフシがあります。

(※「リーマン・ショック」とは、2008年9月に米投資銀行大手のリーマン・ブラザーズが経営破綻したことに端を発する金融危機をさす日本国内の俗語。もともとは「和製英語」でしたが、最近では英米圏の金融機関関係者の間でも “Lehamn Shock” で通用することがあるようです。)

当然、韓国の金融当局者や通貨当局者は、自分たちの国が再び金融危機に巻き込まれるかもしれないという強い不安を抱えているでしょうし、だからこそ、ことさらに「わが国の通貨ポジションは強い」などと強調したがるのかもしれません。

外貨準備統計にウソが混じっている?

ここで参考になるのが、韓国の通貨ポジションを巡る「2つの疑問」です。

1つ目は、「外貨準備高が4000億ドルを超えている」などと、ほぼ毎月のように韓国銀行が華々しく発表し、韓国メディアがこぞってそれを報じるという事実です(たとえば今月に関しても、『韓国の外貨準備における不整合と「本質的な問題点」』で取り上げましたとおりです)。

韓国の外貨準備における不整合と「本質的な問題点」

報道によれば、2019年12月における韓国の外貨準備高は過去最大の4088億ドルを記録し、内訳としては有価証券が前月比85億ドル増えた、などとしています(ただし、現金預金の金額は73億ドル減少しました)。

  • 有価証券…3850億ドル(前月比+85億ドル)
  • 現金預金…129億ドル(前月比▲73億ドル)

一部の「まとめサイト」等では、「韓国の外貨準備に占める現金預金の金額が激減した、だから韓国経済はもうすぐに破綻する!」などと喜んで書き立てたようですが、一般に外貨準備の構成資産のメインは有価証券がメインであり、べつに現金預金の金額が減少したとしても、まったく問題はありません。

問題は、この「有価証券」の内訳にあります。

韓国に限らず、一般に外貨準備の6~7割は米ドル建てであるため、自然に考えて韓国は外貨準備勘定において米ドル建ての有価証券を2000~3000億ドルは保有していなければおかしいのですが、米国の統計からは、どう考えてもそこまでの金額を保有している形跡はありません。

このことから、韓国の外貨準備については、米ドル建ての部分だけでも少なくとも1000億ドル、下手すると2000億ドル程度の「水増し」が行われているのではないか、との疑いを抱くのは、ある意味では当然のことかもしれません。

中国との通貨スワップが大きすぎる!

2つめの疑問は、中国との通貨スワップです。

じつは、中韓通貨スワップ自体はすでに2017年10月10日付で、いったん失効済みです。しかし、その失効から約3日後に、韓国が一方的に「同じ期間、同じ金額で延長することに合意した」と発表しています。

韓国と中国 通貨スワップ協定を3年延長(2017.10.13 11:21付 聯合ニュース日本語版より)

これについては今から約2年3ヵ月前の『人民元 狂喜乱舞も落ち着いて 日本に擦り寄る韓国哀し』などで紹介したとおり、たとえば次のような仮説が考えられます。

  • ①「中韓通貨スワップ延長」という韓国当局の発表自体がウソである。
  • ②「中韓通貨スワップ延長」自体は事実だが、中国当局から何らかの発動条件を付けられている。
  • ③「中韓通貨スワップ延長」自体は事実だが、中国が単なる口約束に留めている。

どれが正しいのかはわかりませんが、どれもあり得るシナリオです。

ちなみに先ほどの図表1で見ていただければわかりますが、韓国が「保有している」と自称している通貨スワップは、6ヵ国との二ヵ国間通貨スワップが866.5億ドル、これにチェンマイ・イニシアティブ・マルチ化協定(CMIM)の多国間通貨スワップ384億ドルを足せば、1250億ドル少々です。

しかし、中国との通貨スワップ(3600億元)は、米ドル換算して約519億ドルですので、これだけで二ヵ国通貨スワップ全体の60%、通貨スワップ全体の42%を占めてしまっています。つまり、中国としては、思わず韓国の「生殺与奪の権」を握ってしまっているのです。

自国の都合に合わせて、韓国が通貨危機に陥った際には「そんな協定、存在しない」と言い張って韓国を突き放すつもりでしょうし、自国が通貨危機に陥った際には韓国ウォンを引き出して外為市場でドルに両替するつもりでしょう。

なにより、中韓通貨スワップについては「存在する」とも「存在しない」とも明言しないことで、韓国政府をコントロール下に置くという目的も達成できます。中国当局が中韓通貨スワップに関して何も言及しないのも当然のことです。

張子の虎でも何でも良い

言い換えれば、韓国の金融当局や通貨当局が、繰り返し、「外貨準備高は4000億ドルを超えている」だの、「1250億ドルの通貨スワップを保有している」だのと喧伝すること自体、韓国自身が自国の通貨ポジションの脆弱さを認識している証拠でしょう。

だいいち、オーストラリアやスイス、UAEなどとの通貨スワップが成立したときには、韓国メディアは狂喜乱舞せんばかりに大々的に報じていましたが、これらのスワップも米ドル換算でせいぜい50~100億ドルに過ぎず、韓国が「保有する」と自称している外貨準備高に比べて少なすぎます。

早い話が、張子の虎でも何でも良いからスワップが欲しい、ということでしょうし、通貨ポジションが世界最強である隣国・日本からの通貨スワップ協定が存在していないという事実を、全力で覆い隠したいという意図でもあるのでしょう。

そういえば、2016年9月頃には、「日本とのあいだで成立する日韓通貨スワップの規模は500億ドルだ」という勝手な報道が、韓国国内で独り歩きしていました(『日韓スワップ「500億ドル」の怪』参照)。

しかし、日本が昨年3月にインドとの間で750億ドルの通貨スワップ協定を締結した際にも、韓国は当局もメディアも完全にダンマリを決め込んでいました(『【速報】インドとの750億ドル規模のスワップを締結』参照)。

※ ※ ※ ※ ※ ※ ※

ちなみに当ウェブサイトでは、『総論:経済制裁について考えてみる』のなかで、経済制裁の在り方としては、次の5つが考えられる、と報告しました。

  • (1)積極的経済制裁
  • (2)サイレント型経済制裁
  • (3)協調型経済制裁
  • (4)消極的経済制裁
  • (5)セルフ経済制裁

このうち(1)は、日本が積極的な理由を付けて相手国に対する経済制裁を発動するというものですが、このタイプの経済制裁は、なかなか発動が困難です。

一方で(2)は、なにか他の理由を付けて、なかば嫌がらせ的に事実上の経済制裁を発動するというパターンであり、日本政府が昨年7月1日に発表した韓国に対する輸出管理適正化措置についても、個人的には第一報を聞いた瞬間、このパターンかと勘違いしたほどです。

また、(3)は国連安保理制裁決議などを名目にして経済制裁を発動するというものですが、この経済制裁が発動されるパターンは北朝鮮やイランなど、非常に限定的です。

必然的に、日本が韓国に対して経済制裁を適用しやすいのは(4)か(5)ですが、「韓国とは通貨スワップを締結しない」というのは、(4)のパターンに該当していると思います。

韓国がまだマレーシアとの通貨スワップ延長について発表していない理由が、先日の『韓国とマレーシアの通貨スワップはどうなったのか』で提示した「日本がマレーシアに対し韓国とのスワップを締結しないように圧力を掛けている」というものだとしたら、それはそれで日本外交が賢くなった証拠でしょう。

もしこの仮説が正しければ、3月に期限を迎える韓国とインドネシアとの通貨スワップについても、延長されない可能性が非常に高そうであり、その意味でも、本件についてはしばらく注目する価値があるのかもしれません。

(もっとも、個人的には日本の財政当局がそこまで「えげつない」外交を展開することができるかどうかについては、やや疑問ではありますが…。)

本文は以上です。

読者コメント欄はこのあとに続きます。当ウェブサイトは読者コメントも読みごたえがありますので、ぜひ、ご一読ください。なお、現在、「ランキング」に参加しています。「知的好奇心を刺激される記事だ」と思った方はランキングバナーをクリックしてください。

にほんブログ村 政治ブログ 政治・社会問題へ

このエントリーをはてなブックマークに追加    

読者コメント一覧

  1. だんな より:

    日本人が外貨保有高を気にしても、アメリカの が気にする、重要な指標」なのだと思います。
    外貨準備高については、新宿会計士さんが言う通りの、疑惑が、以前から有ります。中国とのスワップも、真偽の程は分かりません。
    また、朝鮮半島では、両班(貴族階級)は、借金を返さないのが、当たり前だったそうです。
    スワップを、自分のお金だと考えていると思います。

  2. だんな より:

    願望を書き忘れました。
    早く世界中が、梯子を外してしまえば、良いのに。

  3. めがねのおやじ より:

    更新ありがとうございます。

    外貨準備高の水増しが1,000億ドル?まさか(期待するが)2,000億ドル‼︎。ならとっくにOUTじゃないですか(笑)。

    いや〜嘘つきの韓国さんには精一杯恥をかいて欲しいですね。マレーシアも24日でしたね。何も言わないのは単に遅れているだけか。それとも、、36.9億米ドルですから、大したことないか(嘲笑)。

    ま、日本は500億米ドルも800億米ドルも韓国と取極したのは、間違いだったと反省しております。二度とございませんので、ご覚悟下さい。

    1. クロワッサン より:

      >いや〜嘘つきの韓国さんには精一杯恥をかいて欲しいですね。

      で、韓国が「マレーシアに恥をかかされた!」と逆恨みする事も期待してますw

  4. 墺を見倣え より:

    ウォン安誘導の為の為替介入のヤリ過ぎで、米ドルが溜まっているだけなのでは?

    11年周期ならば、太陽黒点と関係あるのかな?
    例えば、太陽黒点が少なくなると、朝鮮人が火病る、とか???

  5. ハゲ親父🐧 より:

    麻生財務大臣を怒らせている邦がマレーシア国と「通貨スワップを締結出来ない」に1G掛けるニダ。🐧

  6. 伊江太 より:

    >「日本がマレーシアに対し韓国とのスワップを締結しないように圧力を掛けている」というものだとしたら、それはそれで日本外交が賢くなった証拠でしょう。

    ちょっと気づかない面白い推測だとは思いますが,それってどうなんでしょう? 韓国が何かにつけ日本のことをあれこれいうには,どれだけの嘘,強弁を並べ立てても,ウリが上ニダ!と言わずにはおれない,要するに抜きがたい劣等感の顕れなんでしょう.しかし,世界の状況に常に対応を迫られている日本の金融,通貨当局が,はっきり言って「韓国如き」をそこまで気にしてるでしょうか? 第一,韓国がソフトカレンシーでしかない,マレーシアやインドネシアのスワップにまで手を出したなんてことになれば,日を置かずにキャピタルフライトに見舞われること,間違いなしと思われますが.

  7. 匿名 より:

    朝鮮人は、息をするように、次から次へと、嘘を言う。
    だから、彼らの言葉には、重みが全く感じられない。
    本来ならば、そう言った輩には、関わらないのがベストなのだが、
    、とりあえず、対応としては、その嘘を、我々が、逆手にとって、
    対応するのも、一つの手立てになる。
    今、話題のスワップについても、麻生さんの言ってる、借りた金を、
    払わない者には、協定できない、という前に、まず最初に、報道によると、
    外貨準備高が、多く有るようですが、それならば、スァップ協定必要で無いでしょう?、
    それは、嘘なのですか?嘘をつく方には、到底、協議のしようが有りません。
    又、レーダー問題においても、最初、天候が悪かったとのことですが、
    これも、嘘の報道ですか?、その点はっきりしてください。
    相手の、嘘を、うやむやにしないで、野党議員さんが、自民党を、厳しく追及するように、
    韓国の、いい加減な発言を、追及してください。話は、それからです。・・・

※【重要】ご注意:他サイトの文章の転載は可能な限りお控えください。

やむを得ず他サイトの文章を引用する場合、引用率(引用する文字数の元サイトの文字数に対する比率)は10%以下にしてください。著作権侵害コメントにつきましては、発見次第、削除します。

※現在、ロシア語、中国語、韓国語などによる、ウィルスサイト・ポルノサイトなどへの誘導目的のスパムコメントが激増しており、その関係で、通常の読者コメントも誤って「スパム」に判定される事例が増えています。そのようなコメントは後刻、極力手作業で修正しています。コメントを入力後、反映されない場合でも、少し待ち頂けると幸いです。

※【重要】ご注意:人格攻撃等に関するコメントは禁止です。

当ウェブサイトのポリシーのページなどに再三示していますが、基本的に第三者の人格等を攻撃するようなコメントについては書き込まないでください。今後は警告なしに削除します。なお、コメントにつきましては、これらの注意点を踏まえたうえで、ご自由になさってください。また、コメントにあたって、メールアドレス、URLの入力は必要ありません(メールアドレスは開示されません)。ブログ、ツイッターアカウントなどをお持ちの方は、該当するURLを記載するなど、宣伝にもご活用ください。なお、原則として頂いたコメントには個別に返信いたしませんが、必ず目を通しておりますし、本文で取り上げることもございます。是非、お気軽なコメントを賜りますと幸いです。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

【おしらせ】人生で10冊目の出版をしました

自称元徴用工問題、自称元慰安婦問題、火器管制レーダー照射、天皇陛下侮辱、旭日旗侮辱…。韓国によるわが国に対する不法行為は留まるところを知りませんが、こうしたなか、「韓国の不法行為に基づく責任を、法的・経済的・政治的に追及する手段」を真面目に考察してみました。類書のない議論をお楽しみください。

【おしらせ】人生で9冊目の出版をしました

日本経済の姿について、客観的な数字で読んでみました。結論からいえば、日本は財政危機の状況にはありません。むしろ日本が必要としているのは大幅な減税と財政出動、そして国債の大幅な増発です。日本経済復活を考えるうえでの議論のたたき台として、ぜひとも本書をご活用賜りますと幸いです。
関連記事・スポンサーリンク・広告