外交関連で最近、話題に上ることが多いのが「日韓通貨スワップ協定」です。これについては、財務省のウェブサイト等を見ても、どのような協定なのか、あるいは何の目的があってそれを締結するのか、等について、必ずしも情報開示が十分ではないと考えています。そこで、本日は「日韓通貨スワップ協定」について、基本的な事項を確認しながら、その是非について、考察したいと思います。

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2016/10/25 16:00 追記

「図表2」の日韓通貨スワップ協定の経緯について、誤りがありましたので修正しています。

具体的には、「2008年12月12日に200億ドルに増額された日韓通貨スワップ」は「CMIに基づく米ドル・ウォンの100億ドル」ではなく、「2005年5月27日に中央銀行同士が締結した日本円・ウォンの30億ドル相当分」の方であり、したがって、「出来事」と「合計額」については次の通り訂正いたします(本文は訂正済み)。

時点 出来事 合計額
2008年12月12日 リーマン・ショック直後にCMIに基づく日韓通貨スワップ限度額が200億ドルに増額される
⇒リーマン・ショック直後に日韓中央銀行同士のスワップ協定(30億ドル)が200億ドルに増額される
230億ドル
⇒300億ドル
2009年10月30日 CMIの増額分が失効し、200億ドルが100億ドルに戻る
⇒全文削除
(理由:2009年10月30日に終了するはずだった協定が2回延長されたため)
130億ドル
⇒削除
2010年4月30日 (新規追加)
⇒リーマン・ショック直後に増額された日韓中央銀行同士のスワップ協定(200億ドル)が30億ドルに戻る
130億ドル

細かい点で恐縮ですが、記述の正確さを期するために修正します。ただし、財務省が過去の日韓スワップの関連資料をほとんどウェブサイトから削除してしまっている中で、断片的な資料をつなぎ合わせて作成しているため、今後、さらに修正点が出るかもしれませんが、あらかじめご了承ください。なお、上記のエラーも日銀や国会図書館等のウェブサイトを読み込んだ結果、判明したものです。また、なぜ財務省が日韓通貨スワップに関する過去資料をウェブサイトから削除したのか、その理由は不明です。

「通貨スワップ協定」全般について

最近、「通貨スワップ」という言葉をよく見かけます。金融の世界では、「通貨スワップ」(Cross-Currency Swaps, CCS)とは、デリバティブ取引の一種であり、ISDA(国際スワップ・デリバティブ協会)が定める契約書の雛形上も、OTCデリバティブの一形態として定義されています。しかし、外交の世界では、「通貨スワップ」とはデリバティブ取引ではなく、その名の通り「通貨を交換する協定」のことです。

外貨準備

「事実上の基軸通貨国」である米国を除けば、どの国にも、「外貨準備」という勘定があります。たとえば、日本の場合、円換算で100兆円を超える外貨準備がありますが、これらの外貨準備は通常、信用力の高い通貨で積み立てられています。国際通貨基金(IMF)が四半期ごとに公表する「世界公式外貨準備構成」(World Currency Compositions of Official Foreign Exchange Reserves, COFER)」によると、2016年第Ⅰ四半期末時点で世界の外貨準備総額はおよそ10兆9361億ドルで、通貨構成としては米ドルが圧倒的に多いものの、ユーロ、ポンド、円、スイス・フランなどの通貨も外貨準備の主要な構成通貨に入っています(図表1)。

図表1 世界の外貨準備の構成
項目 金額(百万米ドル) 構成割合
世界の外貨準備総合計 10,936,074.9
 うち内訳判明分 7,181,697.5
  うち米ドル 4,566,923.9 63.59%
  うちユーロ 1,462,829.1 20.37%
  うちポンド 344,131.3 4.79%
  うち日本円 293,283.8 4.08%
  うち加ドル 140,088.8 1.95%
  うち豪ドル 136,144.3 1.90%
  うちスイス・フラン 19,850.7 0.28%
  その他の通貨 218,445.3 3.04%

(【出所】COFER, 2016Q1, IMF。ただし「構成比率」はAllocated Reservesに対する比率)

やはり、外貨準備に占める内訳のうち、少なくとも「内訳判明分」の6割以上は米ドルで構成されていますが、その一方で、外貨準備をユーロ、ポンド、円などの通貨に「分散」させる動きも強まっています。このことは、世界の通貨市場において米ドルが圧倒的に重要なポジションを占めていることを示すとともに、円などの通貨も「ハード・カレンシー」である、ということを意味しています。

国家間の「通貨スワップ協定」

ただ、これらの外貨準備は、政府や中央銀行にとっては一種の「貯金」のようなものですが、国によっては、外貨準備を維持するために国債を発行する必要がある、というケースもあります。また、貿易赤字国や、貿易黒字だが外貨依存が激しい国(例:新興市場=EM=諸国)の場合は、恒常的に外貨不足に陥るケースがあることも知られています。

このため、外貨準備に代替するものとして、IMFは「特別引出権(SDR)」という制度を設けていますが(詳しくは過去記事「人民元のハード・カレンシー化という誤解」もご参照ください)、SDR自体は使い勝手が悪く、近年ではギリシャが2014年にIMFからの債務を弁済するのにSDRを活用したことが話題となったくらいしか活用事例がありません。

そこで、SDRに代わって、現代国際社会では、事実上、「先進国と開発途上国間での通貨スワップ協定」が通貨の安定システムとして活躍しています。また、通貨スワップ協定は「二国間」だけで締結するものに限られず、たとえば、アジア諸国だけでも「チェンマイ・イニシアティブ(CMI)のマルチ化」と呼ばれる多国間のスワップ相互協定の仕組みが準備されています。

ただし、CMIに基づく協定も、「引出可能額」のうち「IMFデリンク」(IMFが関与しない限度額)は30%に抑えられており、必ずしも使い勝手が良いものとはいえないのが実情でしょう。

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「日韓通貨スワップ協定」の経緯

では、日韓通貨スワップ協定は、どのような経緯をたどったのでしょうか?

財務省のウェブサイトに詳しく開示されているわけではありませんが、現時点で入手可能な情報をもとに、これを再構成してましょう。

CMI二国間協定

チェンマイ・イニシアティブに基づき、日本は韓国に対し、2001年7月4日に、「上限20億ドルの一方向スワップ取極」を締結しました。これは、韓国が日本に韓国ウォンを提供することで、日本が韓国に米ドルを提供する、という契約で、明らかに「IMFによる危機管理」を受けたばかりの韓国に対する一方的な支援でした。この協定は2006年2月24日に、「双方向スワップ」と置き換えられますが、この時の上限額は韓国側が100億ドル(ドル・韓国ウォン)、日本側が50億ドル(ドル・円)の交換であり、やはり韓国に対する支援色が強い内容でした。この協定は、リーマン・ショック直後の2008年12月12日に「200億ドル」相当に拡充され、結局、増額措置は2009年10月30日まで続きました。ただし、この「100億ドルのスワップ」については、安倍政権下の2015年2月16日付に期限を迎えて失効しています。

日本銀行と韓国銀行とのスワップ

次に、中央銀行同士のスワップです。日本銀行と韓国銀行は2005年5月27日に、上限を30億ドル相当とする円・ウォン双方向スワップを締結。野田政権下の2011年10月19日に、このスワップは何と10倍の「300億ドル」(!)にまで拡大されますが、1年後の2012年10月31日には予定通り終了して30億ドルに戻り、さらに2013年6月24日には当初の予定通り、失効しました。

「野田スワップ」

これら2つのスワップとは別に、野田政権は2011年10月19日付で、期間を1年とする総額300億ドルもの「ドル・自国通貨スワップ」を韓国と締結。この時の財務省の説明文は、「日韓両国のために」スワップを締結すると記載されていましたが、実質的には投機筋の韓国ウォンに対する攻撃に対する牽制として、一方的に韓国を助けるために締結されたものです。上記「日本銀行と韓国銀行とのスワップ」が同じ時期に300億ドルに増額され、さらにCMIの100億ドルとあわせ、実に700億ドルもの信用を、韓国に供与した格好となっています。ただ、この「野田スワップ」の締結後、韓国の李明博(り・めいはく)大統領(=当時)は日本に対する態度を急に硬化させ、慰安婦問題を蒸し返し、韓国が不法に軍事占領している島根県・竹島に不法上陸。さらに天皇陛下を侮辱する発言まで行ったというオチがつきます。

結局、韓国のスワップはどうなったのか?

以上をまとめておくと、日韓通貨スワップ協定は、2001年に始まったものの、2015年2月に全て失効しています(図表2)。

図表2 日韓通貨スワップ協定の経緯
時点 出来事 合計額
2001年7月4日 日本から韓国への一方的スワップの提供が開始 20億ドル
2005年5月27日 日韓中央銀行同士でのスワップ協定(30億ドル)が発効 50億ドル
2006年2月24日 CMIに基づく20億ドルの一方的スワップを双方向スワップに改定し、限度額も20億ドルから100億ドルに増額 130億ドル
2008年12月12日 リーマン・ショック直後に2005年5月に締結された中央銀行同士の日韓スワップ協定(30億ドル)の限度額が200億ドルに増額される(2009年10月30日期限だがその後2回延長される) 300億ドル
2010年4月30日 一次増額されていた中央銀行同士の日韓スワップ協定(200億ドル)が30億ドルに戻る 130億ドル
2011年10月19日 野田政権が中央銀行スワップを30億ドルから300億ドルに10倍増。これとは別に「野田スワップ」を300億ドル締結 700億ドル
2012年10月19日 300億ドルの「野田スワップ」が失効 400億ドル
2012年10月31日 中央銀行のスワップ増額措置が失効 130億ドル
2013年7月3日 中央銀行スワップ(30億ドル)が失効 100億ドル
2015年2月16日 CMIスワップ(100億ドル)が失効 0ドル

(【出所】財務省ウェブサイトより著者作成)
※2016/10/25付追記で記載したとおり、財務省ウェブサイトから過去の日韓通貨スワップ関連資料がほとんど削除されており、上記図表は今後、さらに修正される可能性もありますのでご注意ください。

CMI多国間スワップ(CMIM)

最後に、一応は忘れてはならないスワップとして、CMIを「マルチ化」した「多国間スワップ」があります(CMIM)。これは、CMIM協定に参加する国が「貢献額」に応じて「マルチ協定参加国」から通貨を引き出す権利のようなものであり、規模は2400億ドルですが、その全額を日本が拠出するわけではありません(図表3)。

図表3 CMIMの概要
拠出額 引出可能額
日本 768億ドル 384億ドル
中国(※) 768億ドル 405億ドル
韓国 384億ドル 384億ドル
インドネシア
タイ
マレーシア
シンガポール
フィリピン
各 91.04億ドル 各 227.6億ドル
ベトナム 20億ドル 100億ドル
カンボジア 2.4億ドル 12億ドル
ミャンマー 1.2億ドル 6億ドル
ブルネイ
ラオス
各0.6億ドル 各3億ドル

(【出所】財務省・2014年7月17日付ウェブサイト「別添2」。ただし、中国については香港との合算値。また、香港はIMFに加盟していないため、中国の引出可能額に占める「IMFデリンク」の額は他の国と異なる)

例えば、韓国の引出可能額は384億ドルですが、うち「IMFとのデリンク」は30%までとされているため、115億ドル相当の外貨をIMFの介入なしにCMIM加盟国から引き出すことが可能です。ただし、CMIMは多国間協定であるため、仮に資金を引き出したら、中国や日本、ASEAN諸国などからのモニタリングを受けることになるため、韓国にとっては非常に使い辛い協定です。

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再締結すべきかどうか?

さて、日韓通貨スワップ協定の概要については、現段階で「残高ゼロ」となっている点については上記で見たとおりです。しかし、今年8月に韓国で行われた「日韓財相会談」では、韓国側から日韓通貨スワップ協定の再開について申し入れが行われました。麻生太郎副総理兼財相は、日韓通貨スワップ協定の再開に向けて「協議を開始」することで合意しましたが(「再開」で合意したわけではありません)、これを再締結すべきなのかどうかを巡って、報道等も一色ではありません。

そこで、日韓通貨スワップ協定を再締結すべきかどうかについて、財務省の視点とその問題点に触れながら、考察していきましょう。

財務省の視点

2014年(平成26年)4月16日に行われた「第186回国会・衆議院財務金融委員会」で、「日本維新の党」の衆議院議員だった三木圭恵(みき・けえ)氏(※2014年12月の総選挙で落選)が行った質問に、興味深いやり取りがあります。

参考人として国会に招致された財務省の山崎達雄国際局長が、日韓通貨スワップについては「日本にもメリットがある」と述べたのです。議事録から三木議員の質問に対する山崎局長の答弁を抜粋し、私の文責で要約しておきますと、次の通りです。

「◆地域の金融協力は、為替市場を含む金融市場の安定をもたらす、◆日韓(通貨スワップ協定)は韓国だけでなく日本にとってもメリットがある、◆日韓貿易・投資(だけでなく)、日本企業も多数韓国に進出して活動し(ているからだ)、◆その国(=韓国)の経済の安定というのは(日韓)双方にメリットがある、◆通貨を安定させるという面、(つまり)ウォンを安定させるという面もある」

高を括ったような答弁です。しかし、これを敢えて私なりに解釈すれば、

「多くの日本企業が韓国と貿易し、進出している。万が一、韓国が通貨危機になったら、これらの日本企業にも打撃が大きい。日韓通貨スワップ協定を締結しておけば、通貨危機を未然に防ぐこともでき、為替相場の安定にもつながる。」

ということでしょうか?

財務省の2つの問題

ところで、こうした視点には、2つの問題があります。

一つ目は、「日韓通貨スワップ協定は日本企業のためにもなる」、というロジックです。韓国が通貨危機になった場合、少なからぬ日本企業が打撃を受けることは間違いありませんが、言い換えれば、「通貨スワップという日本国民全体の負担」で「韓国と取引する一部の日本企業」を助けている、ということです。日本は自由主義国家であり、個別企業がどの国とどんな取引をしようが自由です。逆にいえば、変な国と取引して損失を蒙ったとしても、それはその企業の問題であり、その企業を国が税金で助けるのは筋違いです。

二つ目は、「貸倒リスク」の問題です。日韓通貨スワップ協定は、一見すると単なる「スワップ協定」ですから、「資金援助」ではありません。しかし、発動されると、日本円にして数千億円から数兆円もの「ハード・カレンシー」が引き出されます。通貨危機が去ればこれらのお金は返済されるかもしれませんが、最悪、相手国が通貨スワップ協定を発動しても通貨危機を脱することができなかった場合には、これらの資金は焦げ付いてしまう可能性もあります。そうなれば、最終的には日本国民の税金によって埋め合わせなければなりません。財務省の山崎国際局長の答弁では、この貸倒リスクには全く言及されていません。

国益という観点

以上、「通貨スワップ協定には日本にもメリットがある」とする財務省のロジックには少なくとも2つの問題がありますが、ただ、これは相手国が韓国でなく、タイ、マレーシア、フィリピン、インドネシア等であっても、全く同様に発生する問題です。

実は、日本政府に最も欠落しているのが「国益」という観点です。韓国が、「最悪、貸し倒れた場合には日本国民の税金の負担が生じる」というリスクを冒してまで救済するに値する国かどうか、と言い換えても良いでしょう。

ここで国益とは、「軍事的安全」と「経済的利益」です(図表4)。

図表4 国益とは軍事的安全と経済的利益
項目 概要
軍事的安全 日本の安全保障に資すること
経済的利益 日本の経済的利益を最大化すること

確かに、開発途上国に対する通貨スワップ協定の提供は、日本国民の租税負担を高めるリスクを伴っています。実際、通貨スワップではありませんが、円借款については日本政府が過去に何度も債権放棄を行った事実もありますし、相手国がそれで日本に感謝してくれるかといえば、そうとは限りません。ただ、日本は憲法第9条第2項で「国に対する交戦権」を禁じられている国です。したがって、経済援助を通じて、たとえば国連安保理の常任理事国入りを支持してくれる国が増えるならば、それは「経済的利益」という国益には反するかもしれませんが、「軍事的安全」という国益に資することは間違いありません。

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あとは政治判断の世界だが…

安倍政権下で、麻生太郎副総理兼財相は先月(8月)、日韓財相会談で韓国側の「通貨スワップ再開の申し出」があったことをうけ、通貨スワップ協定再開に向けて「協議を開始する」ことで合意しました。ポイントは、「通貨スワップ協定を再開する」ことではなく、あくまでも「協議を開始する」だけのことです(余談ですが、韓国側では早速、「日韓通貨スワップ協定の再開が決定した!」といった軽率な誤報が大量に流れたようです)。

スワップの歴史は裏切られた歴史

2011年に野田政権がスワップの大幅増額(700億ドル)に踏み切った時の報道発表が、財務省のウェブサイトにいまでも残っています。私の文責で簡単に要約します。

「◆欧州情勢等グローバル経済が不確実な中、日韓両国は、現行の日韓通貨スワップ拡充が必要であると認識した、◆金融市場の安定は日韓両国経済の安定的成長に大変重要だ、◆今回のスワップ拡充は日韓における金融協力の強化の観点から行うものであり、これにより金融市場の安定が図られ、日韓両国経済が共に安定的に成長していくことが期待される」…。

日韓通貨スワップ協定は日韓双方にメリットがある…。当時の財務省は、本気でそう信じていたのでしょうか?それはともかく、この「野田スワップ」は、あくまでもギリシャ危機等で「リスク・オフ」モードとなっていた韓国に対する一方的な支援・救済措置であり、決して「日韓両国に寄与するもの」ではありません。韓国にとっての真の外交目的は「その場しのぎの通貨スワップ協定を日本から勝ち取ること」(要するに都合よく日本を利用すること)ですが、実際、韓国はこのスワップを勝ち取った後、李明博が日本国の領土である島根県・竹島に不法上陸し、天皇陛下を侮辱する発言を行い、2013年2月に退任しています。

要するに、韓国大統領にとっては、「自分の任期中に危機が訪れなければ、あとはどうなっても良い」という意図が見え見えですね。そして、朴槿恵(ぼく・きんけい)大統領の任期は2018年2月に失効しますが、朴大統領にとっても、「その場しのぎでの通貨市場の安定」を求めているであろうことは、想像に難くありません。

日本からスワップを締結する条件

安倍政権が掲げているであろう最大の外交目標は「中国封じ込め」ですが、日本は憲法第9条第2項で交戦権を禁じられており、軍事的に中国を牽制するには限界があります。そこで、憲法第9条第2項の撤廃が実現するまでの間は、日本が中国の「友好国」(ロシア、韓国、パキスタン、ミャンマー、アフリカ諸国など)と仲良くして、中国を孤立させるのは、非常に有益な外交戦略でもあります。ただ、その目的にかなうからといって、いかなるコストでも払う、といった姿勢はいただけません。

私自身、韓国との通貨スワップ協定再開の是非は、「中国の軍事的暴発リスクの高まり」と「憲法第9条第2項という制約」のもとで、日本としてできる「軍事的安全の確保」の一環から判断すべきだと考えています。日本経済新聞社・編集委員の鈴置高史氏は「日経ビジネスオンライン」の中で、日韓通貨スワップ協定を締結したあとに韓国が「反日」に転向した事件(いわゆる「スワップ食い逃げ事件」)を紹介。そのうえで、「食い逃げ防止」のための提案を行っています(図表5

図表5 鈴置編集委員の「食い逃げ防止提案」
項目 概要 狙い
反日条項 「反日的な動きをしたら、スワップは破棄する」との条項を入れたうえ、公開しておく 市場は「韓国が反日をしたら日韓スワップは消滅する」と読むため、韓国は反日し辛くなる
スワップ短期化 半年、3か月など、通貨スワップ協定自体を「短期化」する 韓国大統領が「自分の任期中はカバーされる」などと考えるのを防ぐ

(【出所】2016年9月9日付・日経ビジネスオンライン「5年前、韓国は通貨スワップを「食い逃げ」した」の4ページ目より著者作成)

確かに、これは韓国人の振る舞いを知悉(ちしつ)している鈴置編集委員ならではの提案ですね。そして、財務省が「どうしても日韓通貨スワップ協定を締結したい」ということであれば、こうした「食い逃げ防止策」を施すのも一手です。

ただ、我々日本国民にも「国民感情」はあります。くれぐれも、安倍政権には「目的と手段」を混同しないで欲しいと思います。あくまでも日韓通貨スワップ協定は「対中牽制という目的」に従ったものであり、「日韓友好」を目的としたものであってはならない、というのが私の持論なのです。

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  • 2016/09/14: <保存版>ハード・カレンシーとは?
  • 2016/09/07: 人民元のハード・カレンシー化という誤解
  • 経済・金融に関する用語集

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  • 著者のコンタクト先:info@shinjukuacc.com

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