韓国メディア、通貨危機の可能性に言及も対策提案なし

韓国ウォンの急落を受け、韓国メディアが相次いで金融不安に言及しています。ただ、中央日報の社説が政権に「金融市場不安が通貨危機に拡散しないよう万全の備えに出なければならない」と注文を付けているわりに、具体的に何をどうすれば良いのかという提言がないというのも、ある意味では興味深いところでもあるのかもしれません。

2022/08/30 14:00追記

本文中の誤植を修正しております。

中央日報社説

韓国で通貨・ウォンが急落しているなか、今朝の『韓国不動産バブル「山高ければ谷深し」と鈴置氏が警告』では、韓国の不動産バブルの現状について警告した韓国観察者・鈴置高史氏の最新論考の内容を紹介しました。

たしかに韓国の金融状況は非常にきな臭くなってきているのですが、これを巡っては韓国メディアが相次いで危機感を示しているようであり、『中央日報』(日本語版)にはこんな「社説」が掲載されていました。

【社説】韓国の金融市場揺るがしたジャクソンホール会議の影響、危機拡散防がなくては

―――2022.08.30 10:20付 中央日報日本語版より

中央日報はFRBのジェローム・パウエル議長によるジャクソンホール会合での発言をもとに、米国が引き続き利上げ基調にあることが市場参加者に意識され、韓国ウォンが13年4か月ぶりの安値水準に沈んでいるなどの流れを紹介。

そのうえで、次のように危機感をあらわにします。

問題は韓国の金融市場不安がしばらく続く公算が大きい点だ」。

たとえば、ジャクソンホール会合に参加した李昌鏞(り・しょうよう)韓国銀行総裁がメディアに対し、韓国銀行が今後、追加で0.5%の利上げの可能性を残したかのような発言を行ったこと自体、米韓金利差が拡大することへの対応を余儀なくされていることを示唆しているからです。

具体的にいったい何を求めているのか

その中央日報は米国の物価が落ち着くまで利上げが続くとの見通しを示しつつ、次のように述べます。

その余波で韓国は開放経済体制の脆弱性を如実に表わしている」。

すなわち、「世界10位の経済力」にも関わらず、ドル高と資源価格急騰で上半期の貿易赤字がすでに100億ドルを突破したことに言及し、尹錫悦(いん・しゃくえつ)政権に対しても次のように注文を付けているのです。

政権は金融市場不安が通貨危機に拡散しないよう万全の備えに出なければならない。来年まで続くとみられる今回の利上げ行進が完全に終わる時まで緊張を緩めてはならない」。

…。

はて?

「金融市場不安が通貨危機に発展しないよう、万全の備えを」、とおっしゃいますが、具体的にいったい何をどうしろというのでしょうか?いまさら日韓通貨スワップの締結交渉でもしろと言いたいのでしょうか?

メディアの社説が具体的提言に欠けるというのは今に始まったことではありませんが、何とも面妖な社説ですね。

朝鮮日報は「アジアは」と主語を大きくする

その一方、同じく中央日報と「保守系メディア」とされる『朝鮮日報』(日本語版)には本日、こんな記事が出ていました。

20年ぶりのドル高は長期化か…「デフォルト国家続出の恐れも」

―――2022/08/30 10:15付 朝鮮日報日本語版より

朝鮮日報も同様に、ドル高を受けたウォン安、輸入物価急騰、金利上昇などに言及したうえで、こうした「物価高・ドル高・高金利」の「3高」現象が長期化する懸念が高まっていると指摘。そのうえで、Bloombergによる「アジア金融市場の資金流出リスクが長期化するおそれがある」とする報道を引用しているのです。

これに加えて韓国金融研究院マクロ経済研究室の室長は、次のように述べたのだそうです。

対外債務はドル建てで返済しなければならないため、ドル高が続けば国家デフォルト(債務不履行)に直面する国が世界各地で続出する恐れがある」。

「アジア」と主語をわざと大きくしていますが、本当は「韓国が」、と言いたかったのではないでしょうか?

具体的な対策は見えて来ない

これに加え、朝鮮日葡の記事でも、具体的に韓国が何をどうやれば良いのかという提言はありません。

たとえb、あ今朝の鈴置論考でも取り上げた、李昌鏞氏の「韓国は通貨危機にならない」とする発言についても、朝鮮日報は延世大学の名誉教授による、次のような「日本や中国とは状況が異なる」とする趣旨の発言を取り上げています。

日本はわざと景気浮揚のために円安に誘導している面があり、円が国際通貨である強みもある。中国の場合、資本を自由化せずにコントロールが可能な国なので、非常時の資本流出を防ぐ手段がない韓国とは事情が異なる」。

大学の名誉教授というお立場にありながら、金融政策と為替操作を混同している発言には呆れるしかありませんが、ただ、韓国ウォンが国際通貨ではないという状況は、韓国の通貨危機に対する脆弱性の裏返しでもあるのでしょう。

ただ、「日本はハード・カレンシー国である」、「中国は資本統制国である」という点は、両国ともに通貨安が通貨危機に発展する可能性が極めて低いことを意味していますが、そのどちらでもない韓国の場合は、やはり通貨危機への耐性は不十分である、ということでもあります。

といういずれにせよ、こうした韓国国内の報道からは、12年4ヵ月ぶりのウォン安水準に対する警戒感とともに、「具体的な対策」のなさを正面から見ようとしない雰囲気も垣間見えると思うのは、気のせいではないのかもしれません。

本文は以上です。

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読者コメント一覧

  1. 七味 より:

    >具体的にいったい何をどうしろというのでしょうか?

    企業は韓国から出てって他所の国で製造とかするのです♪で、各国内に残った人たちは韓国内で取れる資源で生活する♪

    こうすれば、通貨安とか資本流出とかに影響されなくなるのではないかな♪ (^o^)/

  2. 村人B より:

    〉 市場参加者に石金しあれ、

    自分の読解力の無さなのか、意味が分かりませんでした。
    まさか試金石?

    1. 新宿会計士 より:

      村人B 様

      ご指摘大変ありがとうございました。誤植ですので修正します。
      引き続きのご愛読並びにお気軽なコメントを何卒よろしくお願い申し上げます。

  3. クマ より:

    打つ手がない。それだけでは?

    1. 匿名 より:

      それだけDeath

  4. 甲茶が飲みたい より:

    日本の民間の立場で考えるなら、韓国のカントリーリスクの一つが強調されただけですね。
    韓国での事業や資本の引き上げを加速する以外に対策はないでしょう。

    引き上げが済んでしまえば、ほとんど対岸の火事でしかありませんので
    韓国経済の益々のご発展をお祈りするだけですね。

  5. 普通の日本人 より:

    泣き言? ですね。
    だれにもぶつける物が見つからなかったのでしょう。
    今更日米に通貨スワップ!! と声をあげることも出来なくなったのかな?
    いやいや 韓国がそれくらいの恥ずかしさを持つ事なんてあり得ない。
    もう少ししたら「クレクレ」の大合唱。
    「困ったときの真の友」も言い出すぞ。
    ・助けても助けなくても非難する韓国人。
    ・約束を守れない韓国人
    日本は十分分かってしまった。

  6. 世相マンボウ_ より:

    今の韓国の迫り来る嬉々の問題は
    実はいたって単純な構図です。
    政府も個人も企業も借金が多すぎて
    それで破綻をしそうだということから
    打つべき対策は明らかです。

    今回のG7にゲスト国としてすら招待されなかった
    韓国政府なんかには手を差し伸べる国なんかありません。
    また、個人部門では見栄を張っての韓国人の借金をなんで
    他国の人が払ってあげる必要があるのでしょう(笑)
    その点で、
    他国技術で金儲けうまいだけとはいえ
    サムスン糞大などの財閥企業には
    見栄を張っての対外投資と海外工場があります。
    個人でもサラ金で見栄張った果に返せなくなったら
    ロレックスと外車を売って返済に充てるものなのです。

    韓国財閥対外資産投げ売りしか道がないのに、
    解決策として書かないで未だに
    日本や米国騙してのスワップで誤魔化すなどと
    実現性がない記事を韓流メディアが書いてしまっているのは
    『現代の悪徳両班韓国財閥の利権を守って
     ウリたち庶民に破産を強いることなど許さないニダ』
    という韓国民から当たり前に沸き起こる財閥批判を
    つるんでかわそうとしていると私は見ています。

  7. サムライアベンジャー(「匿名」というHNを使っている方には返信しません) より:

     具体的提言にかけているのは、いつものことのように思われます。朝鮮人の民族性でしょうかね。

     ある時は小さなことでギャーギャーわめき、ある時は自分のことなのに他人事のように能天気に眺めているだけ(※例えば、北朝鮮のミサイル発射実験とか、陸続きの自分の国に関係があるのに、国家最高レベルで重要な北朝鮮の報道よりも反日記事が前面で出ていたり、なんというかある意味楽観的というか)。

     いつものようにというか、いざとなれば日本やアメリカに泣きついて経済支援してもらえると思っているのでしょうか?

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