当ウェブサイトで継続的に追いかけているテーマのひとつが、通貨スワップや為替スワップ、CMIMといった国際金融協力の仕組みです。数日前の『韓国経済副首相「中韓通貨スワップの延長目指す」』で予告したのですが、またしても「スワップの季節」がやって来たようです。こうしたなか、前回のスワップ関連の記事から少し時間が経ってしまいましたので、改めてスワップに関する議論を基礎的な部分から振り返っておきたいと思います。

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2020/01/22 11:55 追記

本文中の『図表3』において、「150億シンガポールドル」と記載すべきところ、「億」が抜けて「150シンガポールドル」になっている箇所がありましたので、訂正しております。「みったぁ」様、コメント欄でのご指摘を賜り、大変ありがとうございました。

スワップ論

(※最初にお断りがあります。この節については本論とかな~り無関係なので、ご興味がなければ、是非、読み飛ばしてください。)

「通貨スワップ」は、「為替スワップ」と並んで、当ウェブサイトが著名になるきっかけとなった単語のひとつです。

ただ、当ウェブサイトで通貨スワップと為替スワップの議論をすると、ときどき、「金融機関の人間だ」と自称する(しかもマージン規制やISDAマスター/CSAについてまったく理解していない)人からのやたら上から目線のコメントが付くので、いちおうお断りしておきますが、本稿はデリバティブの話ではありません。

最初に本論と無関係な、とてもマニアックな話をします(※興味のない方は丸ごと読み飛ばしてください)。金融機関・機関投資家の世界では、通貨スワップや為替スワップは、「デリバティブ」(金融派生商品)と呼ばれる、非常に広く利用されている金融商品です。

厳密なことを言えば、日本法の場合、通貨スワップ(cross currency swap, CCS)は金商法第2条第22項に規定される「店頭デリバティブ取引」であり、機関投資家同士がCCSを利用する場合には、たいていの場合、ISDA(※)が定めるマスター契約が必要です。

(※ISDAとは、International Swaps and Derivatives Associationの略。)

一方、為替スワップ(foreign exchange swap, 本稿では「FXS」とでも略します)は「為替取引」の一種であり、金商法上はデリバティブ取引ではありませんが(※意外と知らない人は多いと思います)、法人税法上はデリバティブに指定されています(法人税法施行規則第27条の7第1項第6号)。

  • 通貨スワップ(CCS)…金商法第2条第22項に規定されるISDAベースの店頭デリバティブ
  • 為替スワップ(FXS)…金商法上はデリバティブではないが法人税法上のデリバティブに該当

通貨スワップ(CCS)と為替スワップ(FXS)の両者を比べると、とくに期間が短い取引については経済的な性質はそっくりですが、両者は基本的にマージン規制の取扱いなどがまったく異なっており、また、「直先差額」の会計上の取扱いなどもまったく異なります。

ただし、「直先差額」や「ネガティブ・ベーシス」などの議論、あるいは日本公認会計士協会の『業種別委員会報告第25号』を筆頭とする会計基準、監査基準などの話題については、現在のところ、当ウェブサイトで言及する予定はありません。あしからずご了承ください。

もしどうしても知りたいのであれば、個別にメールをください(当たり前ですがこれは当ウェブサイトの活動の範囲ではないため、有料です)。

※なお、本節を設けた理由は簡単で、国際金融協力の世界の通貨スワップや為替スワップの話題を提供すると、必ずと言って良いほど、「金融機関関係者」を名乗る方から、かなり「上から目線」で「貴ウェブサイトの説明は間違っています」と指摘するコメントが付くからです。あまり詳しく申し上げるつもりはありませんが、たいていの「金融機関関係者」とやらはマーケット関係者ではなく、専門家を名乗るわりにはISDAデリバティブとFXスワップの違いもわかっていないような人たちです。これらの違いをいちいち説明してあげないといけないのが面倒くさいので、煩雑でも冒頭に記載することにしているのです。

スワップあれこれ

BSAとBLAの違いとは?

さて、デリバティブについては正直、どうでも良いです。本稿で議論するのは、国際金融協力の世界における通貨スワップと為替スワップです。

国によって微妙に呼び方は違うのですが、通貨スワップとは、正式には「二ヵ国間通貨スワップ」と呼ばれ、英語では “Bilateral Currency Swap Agreement” などと表現されることが多いのですが、わが国の財務省はこれを「BSA」と略しているようですので、本稿もこれに倣い「BSA」と称します。

一方、為替スワップについても「二ヵ国間為替スワップ」ですので、英語では “Bilateral Liquidity Swap Agreement” などと称することが多いのですが、先ほどの「BSA」に対してアルファベット3文字だとすわりが良いので、本稿では「BLA」と称することにしたいと思います。

それはともかくとして、通貨スワップ(BSA)とは、通貨当局同士が通貨を交換するための協定であり、一般に交換により調達した通貨は通貨防衛などに使うことができますが、これに対して為替スワップ(BLA)は「流動性供給」、つまり自国の金融機関に相手国の通貨を提供することに使います。

  • 通貨スワップ(BSA)…通貨当局同士が通貨を交換する協定
  • 為替スワップ(BLA)…中央銀行が自国金融機関に相手国通貨を供給するための協定

(※くどいようですが、本稿の通貨スワップ、為替スワップはCCSとFXSの議論ではありません。BSAとBLAの議論です。CCSとFXSの議論ではありません。CCSとFXSの違いがもたらす会計上、税務上、金融規制上の扱いなどについて詳しく知りたい方は、当ウェブサイトではなく、市販のデリバティブに関するテキストなどをご参照ください。)

多国間通貨スワップ協定

さて、通貨スワップの「BSA」、為替スワップの「BLA」には、それぞれ「B」、つまり「二ヵ国間の」(Bilateral)という単語が付きますが、これの意味は「あくまでも二ヵ国間の協定である」という意味であり、「多国間の仕組み」ではありません。

もともとアジア諸国間の通貨スワップ(BSA)は、1997年のアジア通貨危機に対する反省として、日本が主導権を取る形で、「チェンマイイニシアティブ」(CMI)における網の目のようなスワップとして成立した、という経緯があります。具体的には、

日本、中国、韓国、インドネシア、マレーシア、フィリピン、シンガポール、タイ

の8ヵ国が、相互にBSAを結び合う、という形です。

日本の立場に立てば、これは、

  • 日中通貨スワップ
  • 日韓通貨スワップ
  • 日尼通貨スワップ
  • 日馬通貨スワップ
  • 日比通貨スワップ
  • 日星通貨スワップ
  • 日泰通貨スワップ

という7本のBSAが並びますが、ほかの7ヵ国についても同様であるため、最大で28本もの協定(=7+6+5+4+3+2+1)が成立してしまいます(なぜ8ヵ国で28本になるのかという点については、nCr = n!÷{r!(n-r)!}のnに8、rに2を代入していただければ求まると思います)。

ただ、8ヵ国だとまだスワップの本数は28本で済みますが、これが9ヵ国だと36本、10ヵ国だと45本、「ASEAN+3+香港」(14ヵ国)だとじつに91本に増えてしまい、大変に煩雑なことになってしまいます。

そこで、現在は、このCMIは「CMIM」にマルチ化されており、具体的にはASEAN10ヵ国と日中韓港の4ヵ国・地域をあわせた14ヵ国・地域が1本の協定で済むようになっています。

図表1 CMIM(チェンマイ・イニシアティブ・マルチ化協定)
拠出額引出可能額
日本768億ドル384億ドル
中国(※)768億ドル405億ドル
韓国384億ドル384億ドル
インドネシア、タイ、マレーシア、シンガポール、フィリピン各 91.04億ドル各 227.6億ドル
ベトナム20億ドル100億ドル
カンボジア2.4億ドル12億ドル
ミャンマー1.2億ドル6億ドル
ブルネイ、ラオス各0.6億ドル各3億ドル
合計2400億ドル2400億ドル

(【出所】財務省『CMIM 貢献額、買入乗数、引出可能総額、投票権率』。ただし、中国については香港との合算値。中国以外のIMFとの「デリンク」割合は30%。また、香港はIMFに加盟していないため、中国の引出可能額に占める「IMFデリンク」割合は他の国と異なる)

もっとも、ここで示した「引出可能額」の全額を引き出そうとしたら、国際通貨基金(IMF)が介入して来ます。香港との合算値である中国の場合は、香港がIMFに加盟していないため、デリンク割合はほかと異なりますが、中国以外の各国のデリンク割合は30%です。

このため、たとえばベトナムに関しては、限度額(100億ドル)に対して30%、すなわち30億ドルまでIMFの介入なしに引き出すことができる、という仕組みです。

日本の通貨スワップと為替スワップの状況

少し順番が前後しましたが、日本が結んでいる通貨スワップ(BSA)、為替スワップ(BLA)、多国間通貨スワップの状況は、次のとおりです。

  • BSA…東南アジア4ヵ国(インドネシア、タイ、シンガポール、フィリピン)とインドの5ヵ国
  • BLA…米・欧・英・スイス・カナダの5ヵ国と無制限のスワップ、中国、豪州、シンガポールの3ヵ国と限度額付きのスワップ
  • 多国間通貨スワップ…CMIM

そのうえで、図表1に示したCMIMを除いて、それぞれのスワップの状況を図表化しておくと、図表2図表4のとおりです。

図表2 日本銀行が締結している為替スワップ(常設のもの)
相手金額満了日
米FRB無制限無期限
欧州中央銀行(ECB)無制限無期限
イングランド銀行(BOE)無制限無期限
カナダ銀行(BOC)無制限無期限
スイス国民銀行(SNB)無制限無期限
合計無制限

(【出所】日銀『海外中銀との協力』のページを参考に著者作成)

図表3 日本銀行が締結している為替スワップ(有期のもの)
相手金額満了日
中国人民銀行3.4兆円/2000億人民元2021年10月25日
豪州準備銀行(RBA)1.5兆円/200億豪ドル2022年3月17日
シンガポール通貨庁(MAS)1.1兆円/150億シンガポールドル2022年11月29日
合計(日本円)6.0兆円

(【出所】日銀『海外中銀との協力』のページを参考に著者作成)

図表4 日本が外国と締結する二国間通貨スワップ(BSA)
相手国日本から相手国へ相手国から日本へ
インドネシア227.6億ドルなし
フィリピン120億ドル5億ドル
シンガポール30億ドル10億ドル
タイ30億ドル30億ドル
インド750億ドル750億ドル
合計額1157.6億ドル795億ドル

(【出所】財務省『アジア諸国との二国間通貨スワップ取極』および日本銀行HPより著者作成。なお、いずれも日本が提供する通貨は米ドルか日本円)

ちなみに日本の通貨・円は世界の外為市場(OTC)では3番目の売買シェアを占め、世界の外貨準備に占める割合も3番目ですが(『人民元の台頭の本当のリスクは米国の金融制裁の無効化』参照)、これは日本円自体が世界で深く信頼されていることの証拠です。

ただ、それだけでなく、日本政府(財務省の外為特会)には、昨年12月末時点で132兆3750億円(!)という非常識に巨額の外貨準備が蓄えられていて、これらを保有するために約73兆円の短期国債を調達しているのですが、本来、日本にこんな巨額の外貨準備など必要ありません。

そのため、日本政府は今すぐ、外為特会で保有する外貨準備を日銀に付け替えるべきでしょう(※ちなみにそれだけで剰余金が少なくとも40兆円以上発生しますので、ついでに消費税は財源として不要ですので、廃止してしまうべきでしょう)。

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韓国のスワップ

日本の通貨ポジションは世界最強、対して韓国は…

さて、久しぶりに日本の外貨準備、通貨スワップ(BSA)、為替スワップ(BLA)、CMIMなどの状況をチェックしたのには、理由があります。

またしても隣国が日本に「熱い視線」を送り始めているフシがあるからです。

先日の『韓国経済副首相「中韓通貨スワップの延長目指す」』で紹介したのですが、韓国の洪楠基(こう・なんき)韓国副首相兼企画財政部長官は20日の会議で「通貨スワップ」に言及し、「協定を延長し、外貨の流動性を確保する」と述べたようです。

韓国経済副首相「中韓通貨スワップの延長目指す」

このときに引用した、韓国メディア『聯合ニュース』(日本語版)の2020年1月20日付の『日本との輸出管理政策対話 早期にソウルで開催へ=韓国政府』と題する記事によれば、洪楠基氏は

今年はマレーシア、オーストラリア、インドネシア、中国との二国間通貨スワップ協定が満期を迎える

と述べたらしいのですが、これについて改めて事実関係を確認しておきましょう。

各国中央銀行の報道発表等を参考に、韓国が現在保有している外国との通貨スワップ、多国間スワップ等の状況を調べてみると、たしかにインドネシア(3月)、マレーシア(1月)、オーストラリア(2月)の3ヵ国との通貨スワップについては今年、期限を迎えます(図表)。

図表5 韓国が保有するスワップ等
相手国と失効日金額とドル換算額韓国ウォン
インドネシア(2020/3/5)115兆ルピア(84.2億ドル)10.7兆ウォン(91.7億ドル)
マレーシア(2020/1/24)150億リンギット(36.9億ドル)5兆ウォン(42.9億ドル)
スイス(2021/2/20)100億フラン(103.3億ドル)11.2兆ウォン(96.0億ドル)
オーストラリア(2020/2/22)100億豪ドル(68.6億ドル)9兆ウォン(77.2億ドル)
UAE(2022/4/13)200億ディルハム(54.4億ドル)6.1兆ウォン(52.3億ドル)
中国(2020/10/13?)3600億元(521.5億ドル)64兆ウォン(548.7億ドル)
二国間スワップ小計869.0億ドル106兆ウォン(908.8億ドル)
CMIM384.0億ドル
合計1,253.0億ドル

(【出所】各種報道等より著者調べ。米ドル換算額については昨日時点のWSJの終値を参考に試算。なお、韓国の通貨当局はこれら以外にもカナダとの間で締結した為替スワップ(BLA)を「通貨スワップ(BSA)」と称している模様)

韓国が「ある」と自称する外貨準備高は4000億ドル少々だそうですが、総額1253億ドルというのは、その4000億ドル少々の外貨準備の3分の1にも満たない金額です。

正直、韓国の企業などが外国の金融機関から借りている金額は3000億ドル少々ですので(『「GSOMIA後」、大量格下げと金融不安も焦点に』等参照)、本当に4000億ドルも外貨準備があるのなら、通貨スワップなどなくとも、韓国は通貨危機に直面することはあり得ません。

ただし、『韓国の外貨準備における不整合と「本質的な問題点」』でも報告したとおり、そもそも論として韓国が「存在する」と主張する4000億ドルの外貨準備とやらには実在性が怪しい項目もあり、実際に「いつでも換金できる額」は2000億ドル、いや、下手をするとそれ以下ではないかとの可能性もあります。

だからこそ、韓国は「外国と1253億ドルものスワップがある」と強調しているのではないでしょうか。

中国とのスワップがBSA全体の60%を占める

ただし、図表1と図表5を改めて眺めて見て気付くのは、韓国が外国と締結しているスワップのうち、通貨スワップ(BSA)とCMIMをあわせた金額は1253億ドルですが、このうちCMIMが384億ドルを締めていて、通貨スワップ(BSA)については869億ドルしか存在しません。

ちかも、CMIMについてはデリンク割合が30%ですので、384億ドルのうちの30%(つまり115.2億ドル)を超えてドルを引き出そうとしたら、またしてもIMFが介入して来てしまう、ということです。

次に、通貨スワップ(BSA)の869億ドル部分に限定してみると、521.5億ドル、つまり全体の6割が中国とのスワップです。ただし、そもそも論として中韓スワップは2017年10月10日に失効したままであり、韓国政府が「わが国は中国との間で口頭で延長に合意した」と自称しているに過ぎません。

よしんば、韓国政府が自称する「延長で合意した」というのが事実だったとしても、人民元自体はいまだに国際的には「ハード・カレンシー」と呼べる代物ではありませんし、もし韓国が通貨危機に陥ったとしても、「人民元を中国から借りて来て、それをドルに換える」、ということは非常に難しそうです。

さらには、インドネシアやマレーシアとのスワップについては、それぞれの通貨は国際的な市場で自由に換金することが難しく、115兆ルピア、150億リンギットを一気に米ドルと両替すれば、韓国の通貨危機がインドネシアやマレーシアにも波及してしまう、というリスクがあります。

要するに「弱いもの同士」の通貨スワップには、金融危機を防ぐ力などないどころか、危機がさらに波及するというリスクもはらんでいるのです(ちなみにインドネシアは日本ともBSAを締結していますので、韓国がインドネシアからルピアを引き出せば、インドネシアは日本からドルか円を引き出すでしょう)。

つまり、韓国が保有する通貨スワップには、次のような問題点があるのです。

  • そもそもCMIMについてはデリンク割合が30%であり、IMFの介入なしに全額引き出すことはできない
  • BSA全体に占める中韓スワップの金額割合は60%であるが、そもそも中韓通貨スワップ自体契約書が存在せず、韓国が通貨危機に陥っても中国がスワップ引出に応じてくれるかわからないし、また、引き出した人民元をドルに換金するのは難しい
  • BSAの相手国のうちインドネシアやマレーシアの通貨は国際的な市場で通用力が弱い「ソフトカレンシー」であり、もし韓国がこれらの通貨を引き出してドルに換金しようとすれば、韓国の通貨危機がインドネシアやマレーシアに波及しかねない

さしあたってはマレーシアだが…

ただし、あくまでも個人的な印象で恐縮ですが、韓国が「外貨準備もこんなにたくさんある」、「わが国はこんなにたくさんの国とスワップを結んでいる」、などと述べているのは、おそらく、「ハリボテ」を作るためでしょう(※そういえば38度線の北側にも「ハリボテ」が大好きな国がありますね)。

つまり、韓国が重視しているのは、「実際に危機が発生したときに役立つかどうか」ではなく、「国際的な投機筋に対し、わが国は通貨危機への備えがこんなにあるよ」という「見栄え」なのではないでしょうか。

それはさておき、図表5で見ていただければわかりますが、さしあたって韓国銀行が更新しようとするのは1月に期限を迎えるマレーシアとのスワップ、ついで2月に期限を迎える豪州とのスワップ、3月に期限を迎えるインドネシアとのスワップでしょう。

このうちマレーシア、インドネシアとのスワップについては、更新に成功すればしたで、韓国メディアが狂喜乱舞して報じるものと思いますが、更新できなかったとしても、「ソフトカレンシーだから更新できなくてもわが国には実害はない」といった報道が流れるのかもしれません。

一方、豪州との通貨スワップ(BSA)は、スイスとの通貨スワップ(BSA)、CMIMなどと並んで、韓国にとっては貴重な「ハード・カレンシー」との通貨スワップです。もし豪韓通貨スワップの更新が成立しなかった場合は、それだけで韓国メディアは大騒ぎするのかもしれませんね。

日本を見る韓国

この期に及んで「韓日通貨スワップ」、懲りない韓国メディア

ただ、洪楠基氏の発言から1日遅れて、韓国メディア『中央日報』(日本語版)は昨日、こんな記事を掲載しています。

韓国、中国・豪州などと通貨スワップ延長推進…終了から5年経過した韓日通貨スワップ(2020.01.21 14:37付 中央日報日本語版より)

なぜここで「韓日通貨スワップ」という単語が出て来るのかはわかりません。

中央日報は日韓両国間では2015年2月末で通貨スワップ協定が失効して以来、韓国側が2016年8月に日本側に通貨スワップ再開を提案したとしつつ、

2017年1月に日本政府は釜山(プサン)在韓日本総領事館前の少女像設置を理由に一方的に交渉を中断した。

と、あたかも日本政府が一方的に不当な措置をとったかのように表現しているのはご愛嬌でしょうか。

いちおう、事実関係を確認しておくと、過去に日韓間では、米ドル建ての通貨スワップ(BSA)、円建ての通貨スワップ(BSA)が存在していました(図表6図表7)。

図表6 米ドル建て日韓通貨スワップ
時点概要日→韓の上限額
2001年7月4日CMIに基づく日韓通貨スワップ開始20億ドル
2006年2月24日CMIスワップの増額100億ドル
2011年10月19日「野田佳彦スワップ」開始400億ドル
2012年10月19日「野田佳彦スワップ」終了100億ドル
2015年2月16日CMIスワップが失効

(【出所】日銀、財務省、国立国会図書館アーカイブ等より著者作成。なお、日銀、財務省が一部過去データを抹消しており、国立国会図書館アーカイブも不完全であるため、誤っている可能性もある)

図表7 日本円建て日韓通貨スワップ
時点概要日→韓の上限額
2005年5月27日円建て通貨スワップ開始30億ドル
2008年12月12日リーマン・ショック後のスワップ増額200億ドル
2010年4月30日リーマン増額措置終了30億ドル
2011年10月19日「野田佳彦スワップ」開始300億ドル
2012年10月31日「野田佳彦スワップ」終了30億ドル
2013年7月3日円建て通貨スワップ終了

(【出所】日銀、財務省、国立国会図書館アーカイブ等より著者作成。なお、日銀、財務省が一部過去データを抹消しており、国立国会図書館アーカイブも不完全であるため、誤っている可能性もある)

(※なお、図表2に示した「日本円建ての通貨スワップ」については、厳密には「為替スワップ」ではないかという気もするのですが、確認する限り、日銀の過去資料など「為替スワップ」という用語は用いられていないため、当ウェブサイトでは、一応は「通貨スワップ」として取り扱っています。)

逆恨みされますよ

ついでに申し上げると、日韓通貨スワップは韓国が危機に陥るたびに増額されたという経緯があるのですが、野田佳彦前首相が総額700億ドル(米ドル建て400億ドル+日本円建て300億ドル)の野田スワップを締結してやったところ、翌年8月には李明博大統領(※当時)が、

  • 日本領である島根県竹島に不法上陸した
  • 天皇陛下(現在の上皇陛下)を侮辱した

という、二重の意味での不法行為を働き、日韓関係が急速に悪化したという経緯もあります。

いずれにせよ、自称元徴用工問題、レーダー照射事件、慰安婦財団解散など、さまざまな事件を起こして来ている韓国に対するわが国の国民感情が好転するとは思えないなか、もうひとつだけ強調しておきますと、韓国は助けても逆恨みされるという事実を忘れてはなりません。

とくに2008年の金融危機の際、韓国は日米両国から緊急のスワップラインを付けてもらい、危機を乗り切ったのですが、個人的には日本国民のひとりとして、その直後の2009年7月に中央日報が掲載した次の記事については絶対に許すことができません。

「韓国が厳しい時、日本が最も遅く外貨融通」(2009年07月07日08時07分付 中央日報日本語版より)

助けてやって「日本の助けが最も遅い」という恨み言を言われるのなら、最初から手を出さないのが正解ではないでしょうか。

※本文は以上です。

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  • 2020/02/13 06:00 【時事|経済全般
    コロナウィルス騒動で訪日客3000万人割れも視野に (23コメント)
  • 2020/02/13 05:00 【韓国崩壊
    GSOMIA、いつでも破棄してええんやで! (28コメント)
  • 2020/02/12 12:30 【時事|韓国崩壊
    自称元徴用工問題巡る換金処分、どうなった? (18コメント)
  • 2020/02/12 11:35 【時事|経済全般
    さかなクンさんを巡る重要な話題 一層のご活躍を! (14コメント)
  • 2020/02/12 10:45 【時事|韓国崩壊
    中央日報「青瓦台で日韓GSOMIA破棄論が再浮上」 (29コメント)
  • 2020/02/12 05:00 【韓国崩壊|金融
    「日本の対韓輸出規制で貿易黒字急減」説の大ウソ (19コメント)
  • 2020/02/11 12:00 【読者のページ
    読者雑談専用記事 2020/02/11(火) (127コメント)
  • 2020/02/11 11:30 【時事|外交
    総理、いっそ習近平さんと靖国神社に共同参拝しては? (30コメント)
  • 2020/02/11 05:00 【経済全般
    コロナウィルス騒動が産業に与える影響をどう見るか (35コメント)
  • 2020/02/10 12:00 【読者投稿
    【読者投稿】理系研究者の新型コロナウイルス考察 (123コメント)
  • 2020/02/10 08:00 【日韓スワップ|韓国崩壊|金融
    「日韓スワップ500億ドル」の本当の意味とは? (8コメント)
  • 2020/02/10 05:00 【韓国崩壊|金融
    経済は、ほんの些細なきっかけで突然死することもある (8コメント)
  • 2020/02/09 10:00 【RMB|日韓スワップ|金融
    弱小通貨同士の通貨スワップの「融通手形」説 (13コメント)
  • 2020/02/09 05:00 【マスメディア論
    テレビの三重苦:視聴者、広告主、クリエイター離れ (29コメント)
  • 2020/02/08 13:00 【読者投稿
    【読者投稿】在韓日本人が見た、「韓国の美味いもの」 (26コメント)
  • 2020/02/08 12:00 【読者のページ
    読者雑談専用記事 2020/02/08(土) (143コメント)
  • 2020/02/08 10:00 【日韓スワップ|金融
    雇用統計が堅調なのに、なぜか中韓通貨が下落 (5コメント)
  • 2020/02/08 05:00 【時事|経済全般
    コロナウィルス蔓延の結果、インフル患者が激減した! (83コメント)
  • 2020/02/07 14:25 【日韓スワップ|韓国崩壊
    豪韓通貨スワップ増額更新、だが米ドル換算したら…? (17コメント)
  • 2020/02/07 12:00 【韓国崩壊
    日韓関係「3点セット」巡る韓国外相の絶望的な発言 (41コメント)
  • 2020/02/07 06:00 【日韓スワップ|韓国崩壊
    韓国企業が永久債のコールをスキップしたらどうなる? (10コメント)
  • 2020/02/07 05:00 【マスメディア論
    そもそも視聴率って信頼できるんでしたっけ? (15コメント)
  • 2020/02/06 12:00 【時事|外交
    北朝鮮経済の苦境は一時要因なのか、それとも…? (15コメント)
  • 2020/02/06 08:00 【マスメディア論|時事|韓国崩壊
    「安倍政権の強硬策で韓国の日本離れ」説への違和感 (21コメント)
  • 2020/02/06 06:00 【時事|国内政治
    「会費集めただけで収入」が簿記会計の基本?まさか! (11コメント)
  • 2020/02/06 05:00 【時事|読者投稿|経済全般
    【読者投稿】コロナウィルス、まだ慌てる時間じゃない (105コメント)
  • 2020/02/05 14:45 【外交|金融
    テレビで爆破されそうになったふなっしーさんの現状 (12コメント)
  • 2020/02/05 12:00 【時事|経済全般
    コロナウィルス問題の日本経済の影響をどう見るべきか (28コメント)
  • 2020/02/05 06:00 【時事|外交
    北朝鮮で物価が上昇し始めたことの意味をどう考えるか (16コメント)
  • 2020/02/05 05:00 【韓国崩壊
    鈴置氏、新型肺炎と南北朝鮮「連鎖倒産」リスクに言及 (18コメント)
  • 2020/02/04 16:15 【時事|経済全般
    ブラック企業の経営者がやっていることは、泥棒と同じ (18コメント)
  • 2020/02/04 12:00 【読者のページ
    読者雑談専用記事 2020/02/04(火) (155コメント)
  • 2020/02/04 11:30 【時事|韓国崩壊
    好意を権利と勘違いする韓国に、日本はどう接すべきか (24コメント)
  • 2020/02/04 06:00 【日韓スワップ|韓国崩壊
    危機伝播 韓国・マレーシアのスワップはむしろ有害? (8コメント)
  • 2020/02/04 05:00 【金融
    通貨スワップはロシアに対する「武器」となり得る (8コメント)
  • 2020/02/03 14:00 【時事|韓国崩壊
    「ホモ・ソンタクス」?譲歩しない日本に韓国が逆ギレ (82コメント)
  • 2020/02/03 12:15 【日韓スワップ|韓国崩壊
    コロナウィルス発の韓国通貨危機説が排除できない理由 (14コメント)
  • 2020/02/03 10:30 【時事|経済全般
    コロナウィルス蔓延で見えた、日本の入管法制の問題点 (33コメント)
  • 2020/02/03 05:00 【数字で読む日本経済
    貿易赤字?現在の日本は「鵜飼いの鵜匠」のようなもの (10コメント)
  • 2020/02/02 10:00 【時事|韓国崩壊
    WTO提訴 韓国は「特別な関係」→「単なる隣国」へ (34コメント)
  • 2020/02/02 05:00 【時事|国内政治
    新型ウィルスは桜問題から目を背けさせる安倍の陰謀? (70コメント)
  • 2020/02/02 02:02 【時事|金融
    【速報】ビアンカ・フローラ問題の続報とトンヌラ問題 (20コメント)
  • 2020/02/01 12:00 【読者のページ
    読者雑談専用記事 2020/02/01(土) (148コメント)
  • 2020/02/01 10:00 【日韓スワップ|韓国崩壊
    コベナンツで読み解く、韓国がウォン安を恐れる理由 (20コメント)
  • 2020/02/01 05:00 【韓国崩壊
    市場ではあたかも韓国が「一人負け」の様相を呈する (28コメント)
  • 2020/01/31 17:00 【時事|外交
    英国のEU最終日:生温かく英国を送り出すEU議会 (22コメント)
  • 2020/01/31 13:13 【時事|国内政治
    入国拒否などの政令前倒しの一方で台湾問題も浮上 (57コメント)
  • 2020/01/31 10:30 【時事|読者投稿
    【読者投稿】新型肺炎、日本は「いつもどおり」で良い (135コメント)
  • 2020/01/31 05:00 【日韓スワップ|金融
    ウイルス蔓延と韓国ウォンの急落、そして通貨スワップ (10コメント)
  • 2020/01/30 12:00 【時事|韓国崩壊
    南北経済協力で非核化努力を妨害する韓国政府 (16コメント)
  • 2020/01/30 11:00 【時事|韓国崩壊
    予想どおり韓国へのフッ化水素輸出が量・金額とも増加 (4コメント)
  • 2020/01/30 08:00 【韓国崩壊
    日本が対韓経済制裁を保留する理由は「米国」にあり? (14コメント)
  • 2020/01/30 05:00 【国内政治
    野党が新型コロナウイルス対策の合同チーム立ち上げ (53コメント)
  • 2020/01/29 16:15 【時事|国内政治
    野党さん、お得意の武漢視察旅行に行かないのですか? (47コメント)
  • 2020/01/29 12:00 【時事|外交
    中央日報が自衛隊中東派遣を「日本にも利益」 (5コメント)
  • 2020/01/29 08:00 【時事|国内政治
    コロナウィルスよりも桜を見る会の方が大事な特定野党 (52コメント)
  • 2020/01/29 05:00 【韓国崩壊
    「米中からの往復ビンタ」、過去の失敗に学ばない韓国 (12コメント)
  • 2020/01/28 12:12 【日韓スワップ|韓国崩壊
    日本は通貨スワップを武器にせよ (24コメント)
  • 2020/01/28 12:00 【読者のページ
    読者雑談専用記事 2020/01/28(火) (83コメント)
  • 2020/01/28 08:00 【時事|韓国崩壊
    「3つのNOと7つの原則」は韓国に対する強烈な皮肉 (17コメント)
  • 2020/01/28 06:00 【時事|国内政治
    「桜を見る会」野党とメディアが一生懸命追及した結果 (23コメント)
  • 2020/01/28 05:00 【韓国崩壊
    前提条件を疑え!「朝鮮半島生命線説」論に潜む罠 (29コメント)
  • 2020/01/27 12:05 【日韓スワップ|韓国崩壊
    なぜ韓国は外貨準備や通貨スワップを強調するのか (8コメント)
  • 2020/01/27 08:00 【韓国崩壊
    現代ビジネス「日韓両国は大人になれ」の周回遅れ (31コメント)
  • 2020/01/27 06:00 【時事|国内政治
    コロナウィルスは入国管理の在り方を見直すチャンス (113コメント)
  • 2020/01/27 05:00 【韓国崩壊
    あらためて、日韓両国の経済的なつながりを確認する (7コメント)
  • 2020/01/26 10:00 【韓国崩壊|経済全般
    日本企業の資産売却なら韓国経済が崩壊の可能性も (21コメント)
  • 2020/01/26 05:00 【韓国崩壊
    「日韓Xデー」が到来しても、それは韓国の責任だ (47コメント)
  • 2020/01/25 12:00 【読者のページ
    読者雑談専用記事 2020/01/25(土) (89コメント)
  • 2020/01/25 10:00 【RMB|日韓スワップ|金融
    国際通貨の円、ローカル通貨の人民元と韓国ウォン (14コメント)
  • 2020/01/25 05:00 【日韓スワップ|韓国崩壊|金融
    韓国とマレーシアの通貨スワップはどうなったのか (19コメント)
  • 2020/01/24 12:00 【時事|経済全般
    訪日中国人一千万人時代と新型コロナウィルスのリスク (75コメント)

  • 著者のコンタクト先:info@shinjukuacc.com

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