当ウェブサイトではここ数日、韓国側から一方的に日韓通貨スワップ待望論が強まっているという話題を取り上げる機会が増えているのですが、これに対する日本政府の公式的な立場が出てきました。韓国メディア『ソウル経済』(韓国語版)に、在韓日本大使館の西永知史公使の単独インタビュー記事が掲載されていたのです。そして、この記事からは、日韓通貨スワップに関する日本政府の公式の立場だけでなく、日韓の「今後の付き合い方」そのものについてもうかがい知ることができます。
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理解に苦しむ「日韓スワップ再開論」
当ウェブサイトでは以前から継続的に取り上げているとおり、非常に不思議なことに、最近、韓国側から「日韓通貨スワップ待望論」が相次いでいます。
これまで当ウェブサイトで取り上げた話題に限定しても、中央日報や朝鮮日報、韓国経済といったメディアに加え、韓国の与党関係者や前首相、さらには首相自身などが日韓通貨スワップの再開に前向きな姿勢を示している状況です。
とくに『【速報】韓国首相、日韓通貨スワップ再開が必要と主張』でも触れたとおり、韓国メディアの報道によれば、韓国の丁世均(てい・せきん)首相は先週金曜日、日韓通貨スワップ協定を巡り、次のように述べたのだそうです。
「かつて日本と長い間、通貨スワップを続けた歴史があり、それが外貨市場の安定に寄与した部分は大きい(が、)日本との通貨スワップは日本側の立場ゆえに延長されなかったのだから、日本側の立場が重要だ」。
このくだり、「日韓通貨スワップを再開するためには、日本が『立場』を変えることが必要だ」、という主張でしょうか。あえて彼らの心理を読むならば、
「韓国側が『韓日通貨スワップは必要だ』と述べているのだから、日本政府はその『空気』を読んで、日本の側からスワップ再開を言い出してほしい」
とでも言いたいのでしょうか。
あそこまで日本に対し、非友好的・非合理な行為の数々を仕掛けておきながら、よくぞいけしゃあしゃあと「日韓通貨スワップ待望論」を述べることができるものだと個人的には驚きますし、どうも彼らに私たち日本人の常識は通じないように思えてなりません。
この点、以前の『韓国メディア「五輪延期なら日本も韓日スワップ必要」』でも紹介した、韓国の学者が「五輪が延期されるならば日本経済にも打撃があるため、日本にとっても韓日通貨スワップは必要だ」、などと述べたとする話題と、支離滅裂さでは大した違いはないのかもしれませんね。
言った、言わないの問題はいつものこと
では、これに対して日本政府はどう考えているのでしょうか。
これについて参考になる記事が、韓国メディア『ソウル経済』(※韓国語)に昨日、掲載されていました。
【単独】西永・日本公使「韓国から通貨スワップ協議再開の要求はなかった」【※韓国語】
西永日本大使館経済公使単独インタビュー「感染拡大に企業など韓国発入国制限不可避」、輸出規制の問題は、政府間の協議に理解を深めるべき<<…続きを読む>>
―――2020/03/29 17:53付 ソウル経済より
これはソウル経済が西永知史・在韓日本大使館経済公使に対して単独インタビューを行ったものなのですが、内容がなかなか興味深いです。
リンク先は韓国語ですが、PCなどから閲覧している方であれば、翻訳エンジンなどを使って邦訳しながら読むことができると思います(※昨今はウェブブラウザの能力が飛躍的に向上していることもあり、とくにグーグルのクロームなどでは、精度は不十分ながらもブラウザ上で自動翻訳を行うこともできるようですね)。
ここではリンク先記事を自動翻訳したものについて、日本語表現を整え、箇条書きにしたものを示しておきます。
- 西永知史・在韓日本大使館経済公使は日韓通貨スワップを巡り、丁世均首相が「日本の立場が重要だ」と述べたことについては、「韓国政府が通貨スワップの協議を再開したいと要求してきたという事実はない」と否定した
- また、日本が韓国からの入国制限措置を実施している点については、「新型コロナウィルスの感染症拡大を防ぐためにやむを得ない措置だ」と強調。制限解除の可能性についても即答を避け、「感染拡大を防ぐために最大限努力しなければならない」と述べるにとどめた
- 西永公使は昨年2月に韓国大使館に赴任した人物であるが、昨年7月に日本が対韓輸出規制措置を講じたあと、日本大使館の経済統括責任者が韓国メディアと公式なインタビューを行うのは今回が初めてだ
(※なお、記事では日本政府が昨年7月1日に発表した対韓輸出管理適正化措置を「輸出『規制』」と誤記していますが、日本大使館の公使がこれを「輸出『規制』」と誤るとは考え辛いものの、いちおう、この誤記については原文のまま紹介しています。)
「協力すべきは協力するが」…
さて、このソウル経済に掲載された西永公使の発言の詳細については、さらに興味深いです。たとえば、通貨スワップを含めた日韓経済協力に関しては、
「26日に開催されたG20首脳会議で合意されたグローバル対応の時点での日韓間の協力が期待される」
と述べたほか、コロナ対策などを巡る保健協力を巡っても、
「日本は日中韓3ヵ国の保健協力を最初から極めて重視している。日韓間でも防疫情報の共有、衣料品の輸出入協力などの協力は必要だ」
との立場を示したそうです。
ちなみにソウル経済によると、韓国政府は「日本は当初、日中韓3ヵ国による保険強力には消極的だったが、最近になって立場を変えた」などと述べているそうであり、この西永公使の発言は「明らかにこの韓国政府の立場を正面から否定するものだ」と位置付けています。
さらに、韓国側が以前から強く求めている、日本の輸出管理適正化措置の撤回を巡っても、
「(輸出管理適正化措置を巡っては)日韓の輸出当局間における会議を通じて理解が深まることを期待している」
と述べるにとどまったのだとか。
かつての密室外交からの脱却が加速
これらの発言をどう読むべきでしょうか。
あくまでもこのソウル経済の記事が正しいのならば、西永公使の発言は、極めて真っ当であり、「それはそれ、これはこれ」という是々非々の立場に基づき、「協力すべき点は国際社会の多国間協議の場で協力しよう」と、ごく当たり前のことを述べているに過ぎません。
ただ、「かつての日韓関係」を知る者からすれば、この記事の記載は正直、良い意味での驚きの連続です。韓国が主張する「道徳的優位性」、つまり、「日本は過去の植民地支配で韓国に酷いことをした」、「だから韓国は日本に対し、道徳的優位性を持っている」という価値観の否定でもあるからです。
過去の日韓関係は、韓国が主張する「道徳的優位性」に加え、日本の外務省独特の事なかれ主義が組み合わさって、私たち国民の監視の目が届かない「密室」で、日本が韓国に対して一方的に譲歩する、というパターンを繰り返してきました。
元官房長官である河野洋平が1993年に発した、自称元慰安婦に関する「河野談話」など、その典型例でしょう。つまり、ポイントとしては、
- 韓国が主張する道徳的優位性を日本が認めること
- 日韓2ヵ国間で重要な事項が密室で決められること
という2点にあったのですが、今回の西永公使の発言は、この2点を完全に否定しているという点で心強いものです。
西永氏の発言は、わかりやすくいえば、「日韓協力を巡っては、グローバルな場で是々非々で協力しましょう」ということです(「日韓」ではなく、「日米韓3ヵ国」や「日中韓3ヵ国」、「G20」などになっている点がその証拠です)。
かつての「非公開の密室の場で韓国が主張する『道徳的優位性』に立脚した日韓関係」からすれば、隔世の感がありますね。
そして、日韓通貨スワップ再開交渉のくだりについても、韓国側の「韓日通貨スワップ再開を日本の側から言い出してほしい」という暗黙裡のメッセージに対し、「日本はかつてのような水面下の道徳外交にはもうお付き合いしません」という明確な牽制でもあると見るべきでしょう。
※ ※ ※ ※ ※ ※ ※
もっとも、西永公使の発言が日本政府の立場を完全に代弁しているのかどうかを巡っては、100%、安心して良い、という話でもないでしょう。
とくに日韓通貨スワップについては、先週の『日韓スワップ、あえて「日本のメリット」を考えてみる』などでも考察したとおり、結論的にいえば、韓国にとっては一方的に大きな恩恵が生じる反面、日本にはメリットを大きく上回るデメリットをもたらしかねないものです。
そのことについては、私たちは国民レベルで深く理解しておく必要があるのではないでしょうか。
※本文は以上です。
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