韓国銀行「中国との通貨スワップ延長で合意」

数日前の『中国の通貨外交:「人民元建通貨スワップ」の現状整理』で報告した、「中国の人民元建て通貨スワップ外交」に関連し、興味深い報道が出てきました。韓国メディア『中央日報』(日本語版)によると、韓国銀行関係者は本日、中国との間の通貨スワップを「延長した」と発表したようです。では、このスワップがなぜ、注目に値するのでしょうか。

中韓通貨スワップ延長=中央日報

先日の『中国の通貨外交:「人民元建通貨スワップ」の現状整理』でも報告した人民元建ての通貨スワップについて、新たな動きがありました。韓国メディア『中央日報』(日本語版)によると、韓国銀行は本日、中国とのあいだの通貨スワップ協定を延長したと発表したようです。

韓国、中国と560億ドル規模通貨スワップ延長で合意

―――2020.10.08 14:30付 中央日報日本語版より

中央日報によると、韓国銀行は8日、中国人民銀行との通貨スワップ協定について「延長することで実務的に合意した」と明らかにしたそうであり、また、金額は「従来と同じ約560億ドル(約6兆円)になるものと予想される」としています(※いつの為替レートを使っているのでしょうか?)。

事実誤認:中韓通貨スワップは米ドル建てではない!

しかし、残念ながら、ここに重大な事実誤認があります。

そもそも論ですが、韓国が保有しているとされる通貨スワップをリストアップすると、二国間通貨スワップ合計が約900億ドル弱、これに多国間通貨スワップであるチェンマイ・イニシアティブ・マルチ化協定(CMIM)の384億ドルを含めて約1278億ドル、という計算です(図表)。

図表 韓国が保有しているとされるスワップ(※自称も含む)
相手国と失効日金額とドル換算額韓国ウォンとドル換算額
中国(2020/10/13?)3600億元 ≒ 530.2億ドル64兆ウォン≒538.7億ドル
スイス(2021/2/20)100億フラン ≒ 109.1億ドル11.2兆ウォン≒94.3億ドル
UAE(2022/4/13)200億ディルハム ≒ 54.4億ドル6.1兆ウォン≒51.3億ドル
マレーシア(2023/2/2)150億リンギット ≒ 36.1億ドル5兆ウォン≒42.1億ドル
オーストラリア(2023/2/22)120億豪ドル ≒ 86億ドル9.6兆ウォン≒80.8億ドル
インドネシア(2023/3/5)115兆ルピア ≒ 78.1億ドル10.7兆ウォン≒90.1億ドル
二国間通貨スワップ  小計…①894.0億ドル106.6兆ウォン≒897.2億ドル
多国間通貨スワップ(CMIM)…②384.0億ドル
通貨スワップ合計(①+②)1,278.0億ドル
カナダ(期間無期限)※金額無制限
米国(2021/03/31)※600億ドル

(【出所】著者調べ。なお、米ドル換算額は本日時点のWSJのデータを参照)

しかし、韓国が保有している、総額1278億ドル相当の通貨スワップのうち、米ドル建てのものはCMIMの384億ドルしかありませんし、国際的な金融市場での自由な両替に耐えられる通貨といえば、せいぜいスイスフランと豪ドルくらいしかありません。

また、米国やカナダとの間で締結しているスワップはあくまでも「為替スワップ」、つまり「中央銀行による流動性供給オペ」であり、いわゆる通貨スワップ(通貨当局が相手国から外貨を手に入れて自由に使うことができるという協定)ではありませんのでご注意ください。

人民元建ての通貨スワップは、たしかに米ドルに換算すれば約530億ドル規模ですが、米ドルや日本円など、国際的な市場で流通するハード・カレンシーと自由に交換できるわけではありません。

せいぜい、「中国との元建ての貿易決済代金が不足したときに、中国人民銀行側から人民元を引き出して使う」くらいしか使途はないと思います。

中国は韓国を通貨でも支配するのか?

ただし、今回の中韓通貨スワップについては、個人的にはもうひとつ、中国側からも発表があるかどうかには注目したいと考えています。

前回、2017年10月10日に中韓通貨スワップが失効した際、韓国側が一方的に、「双方が口頭で、この協定を3年延長することで合意した」と発表したのみであり、中国側はこのスワップの延長で合意したとはヒトコトも述べていませんでした。

このため、すでに韓国との人民元建ての通貨スワップは失効している可能性もあったのですが、同じく「中国との通貨スワップを更新した」という発表をしていなかったトルコが人民元を引き出たという事例もあります(『トルコが中国との通貨スワップを実行し人民元を引出す』等参照)。

このうえさらに、中国は現在、「自由で開かれたインド太平洋構想」を巡って神経をとがらせているフシがあり、つい先日、日米豪印が東京で開いた「クアッド外相会談」についても、かなりの警戒心を強めている可能性はあります。

このことから、今回は中国側がわざわざ、「韓国との間で総額3600億元の通貨スワップを開設する」と発表するかどうか(あるいは中韓通貨スワップの規模を拡大するかどうか)については、非常に興味深いところです。

うまく使えば、中国にとっては韓国を「通貨で支配する」ということにもつながるかもしれないからです。

もっとも、最近の韓国は、武漢コロナ禍直後から「為替の逆介入」を実施しているとみられ、外貨準備は潤沢である可能性もあるため、韓国側にかつてのような「スワップ熱」があるのかどうかは不明ですが…。

読者コメント一覧

  1. 丸に違い矢 より:

    更新、ありがとうございます。

    そうですよねぇ!
    中国が韓国と、ドル建ての通貨スワップなんぞ結ぶ訳がないと思っていました。
    何処までも卑しい国だと思ってしまいます。
    溺れる者は藁をも掴むと言いますが、本当に近くしか見えない国ですな。
    まぁ、中国の飼い犬なのは昔からですし韓国が所有する主要産業の技術を盗み終れば使い捨てにされる運命にあるのは、言わずもがなだと思って下りますが…

  2. クロワッサン より:

    >もっとも、最近の韓国は、武漢コロナ禍直後から「為替の逆介入」を実施しているとみられ、外貨準備は潤沢である可能性もあるため、韓国側にかつてのような「スワップ熱」があるのかどうかは不明ですが…。

    逆に、中国が韓国の持ってる米ドルを自国の物として使う為にかなぁと思ったのですが、中国の外貨準備高が3兆ドルで韓国の外貨準備高が4千億ドルだから、多分違いそうですね。

    1. だんな より:

      クロワッサンさま
      私も今は韓国が、外貨困っていないと思います。
      妄想
      1500億ドル〜2000億ドルくらいは有って、4000億ドルは無い。

      1. クロワッサン より:

        だんな さん

        今のところ韓国の外貨準備が問題無いなら、韓国が中国に対して「通貨スワップを結んでやった」という認識を示すかもですね。

        日本に対しては既に示してますが、中国に対しては隷属国根性から示さないかもですが。

  3. イーシャ より:

    中国が引き出す時はUSドル、下朝鮮が引き出すときは中国元という約束(というか力関係からそうなる)だと思います。

  4. カズ より:

    >相手国の中央銀行に一種のマイナス通帳を開設する概念だ。

    記事の一節は、おそらく”当座借越”の仕組みを想定しての例えだと思うのですが、中韓スワップは”通貨交換”なのですから銀行取引なんかとは違って「相手側に利用される可能性」も無きにしも非ずなんですよね。

    ましてや、締結規模を大きく謳っても「ドルへの換金性に劣る人民元」は対中決済の用途にしか使い道はなく、韓国側では【スワップ活用=国家主権の質入れ】とならざるを得ない気がします。

    *所詮は「痛貨スワップ」でしかないのかと・・。

  5. 引きこもり中年 より:

     独断と偏見かもしれないと、お断りしてコメントさせていただきます。
    (なにしろ、韓国と違って自分は間違う存在であると自覚しているので)
     古代から現代まで朝鮮人は、歴代中国王朝の栄枯盛衰を見てきました。そのため、文大統領は、再び中国を最強にした新たな王朝の皇帝が、習近平国家主席という名で誕生したと見ているのではないでしょうか。
     蛇足ですが、確かに(太平洋に遮られている以上)中国の東側に、中国に匹敵するような大国はありませんでした。しかし、西側を見れば、インド、ペルシャ、イスラム、ローマなど多くの大国が存在していました。
     駄文にて失礼しました。

  6. りょうちん より:

    え、これって単なる伝統の「朝貢」ではw

    あまり価値のないウォンを献上することで、元が貰える!

    1. より:

      少なくとも、国際市場において、ウォンよりも人民元の方が*価値があるということだけは間違いないですね。
      まあ、韓国に下賜される人民元が全部真札とは限りませんが。紙幣の肖像が習近平だったりして……

      *さすがに現金でやり取りするはずはない……はずはないんだけど……さて?

  7. めがねのおやじ より:

    更新ありがとうございます。

    中国とのスワップ締結、よほど韓国は嬉しいみたいです。でも、ウラは取れているの?中国の発表はあった?(笑)また昼食中の休憩時の立ち話か(爆笑)?延長ではないだろ?

    3600億元 ≒ 530.2億ドルですが、560億ドルって一体いつのレートでしょうか?それに米ドルに換金できるはずもなく、、。日本は米ドルで800億ドルも融通してあげたのにな~(怒)。

    通貨まで制圧されて、もう韓国は中華人民共和国の南朝鮮省か南鮮自治区ですな。新疆ウイグル自治区のように蹂躙されても、我が日本は動きませんゆえ。「中国の国内事情には特にコメントする事は無い」(菅首相)。(笑)

  8. めたぼーん より:

    半島南側を精神的に支配していることはご承知の通りですが、半島南側が一番理解し易い、金で縛る行為かなと思いました。なので中国側からは公表しないかなと想像します。

  9. 匿名希望の平民 より:

    日本にも、アメリカにも相手にされず、中国に泣きついた韓国。
    ああ、みじめだねえ。。。
    中国は甘い顔をして、スワップをして韓国を取り込むのが狙い!
    560億ドル規模とは書いてあっても、ドル建てと書いてないのがポイントですね。
    自国民ですら信用してない元とウォンのスワップなのに、
    「スワップをしたニダー!」と喜ぶ超汚染民族!!
     今後さらに米中関係が悪化した時、自由主義圏の国が中国元での支払いを
    受け付けてくれると考えているのでしょうか?(笑)
    それに560億ドルは大きい。返せなかったら、中国の属国決定!!
     どうぞ、中国と末永くお幸せに・・。
    もう二度と、日本に頼ってこないでね。

  10. イーシャ より:

    中国側からの報道がないこと以外の、別の点に違和感を感じました。
    例えば、以前にオーストラリアとの通貨スワップを報じた記事と比較してみましょう。
    “韓国とオーストラリアの通貨スワップ3年延長 融通枠を拡大” (WoW! Korea 2020/02/06 15:34)
    「通貨スワップは、金融危機時に相手国に自国の通貨を預け、相手国通貨や米ドルを受け取る取り決め。」

    これまでは「相手国通貨や米ドルを受け取る取り決め」と報じられることが多かったのですよ。
    現実には、自国通貨ではなく米ドルを提供してくれる国なんて、日本以外にはないんですけどね。

    今回は「米ドル」の記載が消えました。
    何故でしょう ?
    米ドル経済圏から中国元経済圏への移行を目指しているからでしょうか ?
    それとも、宗主国が米ドルを渡してくれるはずなどないと理解しているからでしょうか ?

    私見ですが、今回こそ米ドルに言及する必要でしょう。
    中韓通貨スワップが本当に延長されていた場合、中国側の認識は
    「通貨スワップは、金融危機時に相手国に自国の通貨を預け、米ドルを受け取る取り決め。」
    でしょうから。
    宗主国にそう言われて否定でますか ?
    仮に否定しても、うなずくまで棒でしつけられるだけだと思いますよ。

  11. 自転車の修理ばかりしている より:

    QUADの立ち上げ直後、その存在に否定的だった韓国が中韓スワップを再締結する…スワップの延長が今になるのは期限的に仕方がないのでしょうが、客観的に見ると韓国にとってなんとも間が悪いように感じます。韓国の主観的には問題ないのかもしれません。

    「最悪の時に最悪の場所で最悪の決断をする」という定評を再確認させられました。もう一つの定評、「死にそうでもなかなか死なない」も検証させていただければ幸いと存じます。

  12. 名古屋の住人 より:

    中国語で通貨スワップは「貨幣互換協議」、二国間通貨スワップは「双辺貨幣互換協議」というようです。

    出 所:百度百科
    中国語:双辺貨幣互換協議
    英 語:Bilateral currency swaps agreement
    https://baike.baidu.com/item/%E5%8F%8C%E8%BE%B9%E8%B4%A7%E5%B8%81%E4%BA%92%E6%8D%A2%E5%8D%8F%E8%AE%AE/4692352?fr=aladdin

    これをキーワードにして、中国中央政府(http://www.gov.cn/)と中国人民銀行(http://www.gov.cn/)でK国が主張する二国間通貨スワップに関する情報を検索しましたが、ヒットする情報はありませんでした。

    ①中国中央政府:2010年10月31日付 アルゼンチンとの二国間通貨スワップ(同年7月締結)に関する記事以降、更新なし
    http://sousuo.gov.cn/s.htm?t=govall&q=%E8%B4%A7%E5%B8%81%E4%BA%92%E6%8D%A2%E5%8D%8F%E8%AE%AE

    ②中国人民銀行:各国の中央銀行間での協力関係ページ
    http://www.pbc.gov.cn/huobizhengceersi/214481/214511/214541/index.html

    2020年1月9日付、ラオス中央銀行との間で経常取引・資本取引において双方の通貨建てで決済ができるようになったという記事が最新のもので、それ以降の更新なし。

    また、②中国人民銀行のページにこんなものがありました。
    <中国人民銀行と他国の中央銀行間の通貨スワップ一覧表(2017年7月現在)>
    http://www.pbc.gov.cn/huobizhengceersi/214481/214511/214541/3353326/index.html
    このリンクよりPDF版の一覧表をダウンロードできます。
    これによると、K国の2国間通貨スワップは「2009.4.20に初めて締結」「2011.10.26と2014.10.11にそれぞれ3年間延長」したことが分かります。しかし、残念ながらそれ以降の最新情報が掲載されていないため、直近の情報が分からないのが残念です。

    なお、上記は素人がざっと検索しただけで分かった情報のみをベースに投稿しています。もっと技を駆使して検索できたら、どこかに更に詳しい情報が落ちているかもしれませんことを追記しておきます。

  13. より:

    おそらく前回同様、協定締結事実の有無にかかわらず、中国側からの公式コメントは出ないでしょうね。現状、韓国側から通貨スワップの実行を要求(哀願?)されるような事態って、よほど韓国が外貨調達に窮した場合でしょうから、中国としては、その時の状況に応じて、蹴飛ばすもよし、法外な要求を突き付けた上で応じるもよしですし、蹴飛ばすとなれば、協定なんかそもそもなかったことにしておいた方が、体面上都合が良いでしょうから。
    つまり、中国にとって、中韓スワップ協定は、使えるかもしれない外交カードの一つでしかないということです。これで日米韓の結束が固いものであれば、韓国切り崩し用に使えるかもしれませんが、今やわざわざ切り崩し工作なんぞするまでもないので、中国にとっても、「あっても特に損はしないが、たぶん使いようがないカード」ということなのだろうと推測します。

    1. 門外漢 より:

      >その時の状況に応じて、蹴飛ばすもよし、法外な要求を突き付けた上で応じるもよしです

      日本もこの手を使えば良いのにww

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