中韓スワップ延長報道の真偽と本当の狙い

本日の速報です。先ほど、韓国メディア『中央日報』日本語版が、「中韓通貨スワップ協定の延長で事実上合意」と報じました。

中央日報の速報の信頼性は?

中央日報の「速報」

韓国メディア『中央日報』の日本語版によると、中国人民銀行と韓国銀行は、本日満期を迎える中韓通貨スワップ協定を延長することで「事実上合意した」と報じています。

韓中通貨スワップ、事実上延長に合意(2017年10月10日07時18分付 中央日報日本語版より)

中央日報は「匿名の北京の消息筋が9日に明らかにした話」として、

韓国銀行と企画財政部関係者が韓中両国の連休前である先月下旬に訪中し、中国の中央銀行である人民銀行と通貨スワップ問題をめぐって協議した結果、現行の協定を維持することで合意した

満期当日である10日にも両国金融当局間チャンネルを通じて最終手続きと日程を話し合う予定

と報じています。ただし、この関係者は

金融当局者間の合意にもかかわらず、習近平国家主席ら中国指導部による最終承認までにはまだ不透明な要素が残っている

としており、中央日報の報道を信じるならば、中韓スワップは現在、習近平(しゅう・きんぺい)国家主席らの承認を待っている状況なのだとか。

「速報」をどう読むか?

この速報をどう読むべきでしょうか?

仮説としては、2つあります。

1つ目の可能性は(そして最も有力な仮説は)、韓国メディアの「いつもの虚報」である、というものです。韓国のメディアは、希望的観測を、さも規定路線であるかのように報じる悪癖があるからです。国全体がまるで朝日新聞のようなものだと考えればわかりやすいでしょうか。

事実、1年前にも、韓国のメディアは「日韓スワップの金額規模が500億ドルになる」との虚報を垂れ流しています(詳しくは『日韓スワップ「500億ドル」の怪』をご参照ください)。

一方、2つ目の仮説とは、中国が韓国を「手なずける」ために、限定的な通貨スワップ協定の延長に応じた、というものです。とくに相手国が中国であるため、韓国を「属国」にするための戦略として、通貨スワップ協定の延長に応じる、という可能性は十分にあります。

そして、今回に関しては2つ目の仮説も十分に説得力があります。

そんなスワップにどんな意味があるのか?

以前から私は、韓国が外国と締結する二ヵ国間通貨スワップ協定(BSA)について、事実上、使い物になるものはオーストラリアとの間の協定(豪ドル/韓国ウォンのスワップ)しか存在せず、そのほかのスワップは使い物にならないと議論して来ました(図表)。

図表 韓国にとっての外貨ポジション
相手国失効日金額ドル換算額
オーストラリア2020年2月22日100億豪ドル/9兆ウォン約78億ドル
マレーシア2020年1月24日150億リンギット/5兆ウォン約35億ドル
インドネシア2020年3月5日115兆ルピア/11兆ウォン約86億ドル
中国2017年10月10日3600億元/64兆ウォン約541億ドル
BSA小計約740億ドル
CMIM384億ドル
合計約1124億ドル

(【出所】各国中央銀行ウェブサイトより著者作成。なお、為替換算はWSJの金曜日の引け値を利用し、億ドル未満を四捨五入)

韓国が外国と締結している「外貨を引き出す協定」は、二ヵ国間スワップ協定(BSA)が4本と、チェンマイ・イニシアティブ・マルチ化協定(CMIM)のあわせて5本で、米ドルに換算すれば約1124億ドルです。

しかし、4本のBSAはいずれも「米ドル」ではなく「現地国通貨」とのスワップであり、オーストラリアの豪ドルを除けば、為替市場で米ドルなどの「ハード・カレンシー」と両替するのは非常に困難です。

また、米ドルで引き出す「CMIM」については、日本、中国、ASEAN諸国からお金を引き出す仕組みですが、韓国は本来、「ASEANに対して支援を提供する側」であり、また、限度額の30%を超えてお金を引き出すためには国際通貨基金(IMF)の関与が必要です。

中国とのスワップは、米ドルに換算すれば、韓国が締結するBSAの7割を占め、確かに巨額ではあります。しかし、事実上、国際的なハード・カレンシーではない中国人民元を受け取ったところで、それを通貨危機にどう生かせるのか、非常に不透明です。

中韓スワップの「正体」

本日の『中央日報』日本語版の記事が正しいのかどうか、私には今ひとつ、判断がつきません。

ただ、仮に中韓スワップが延長されるのだとしたら、その中国側の狙いは1つしかありません。それは、「カネにより韓国政府を縛ること」です。

中韓スワップとは、韓国に提供される外貨が中国人民元であり、事実上、金融危機に際して全く使い物にならないスワップではあります。しかし、その名目的な金額は巨額であるため、韓国にとっては「心理的な安全弁」として機能するのです。

私の仮説では、韓国の外貨準備高は、同国が主張する約4000億ドルではなく、500億ドルか、せいぜい1000億ドルていどしかないと考えています。

一方、私の試算によれば、韓国が外国から借りている債券、借入金の金額は約4000億ドル程度に達しており、外国からお金を借り換える(つまりロールする)ことができなくなった瞬間、韓国経済は破綻します。

中韓スワップは韓国政府が外国に対し、「わが国はこんなに多額のスワップラインを保持している」と誇示するための効果しかなく、実際に通貨危機が訪れた場合には無力ですが、それでも「溺れる者は藁をもつかむ」の格言通り、韓国政府が、いわば、「心理的な安心感」を欲しがっていることは事実でしょう。

当然、高高度ミサイル防衛システム(THAAD)をはじめとする米韓軍事協力の行方にも、何らかの悪影響が生じることは想定できます。そう考えれば、韓国政府は実に愚かな決断を下したものだとしか言い様がありません。

いずれにせよ、この問題を巡っては、まだしばらく目が離せない展開が続きそうです。

本文は以上です。

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読者コメント一覧

  1. poponta より:

    韓中スワップ延長おめでとうございます。
    まんまと嵌められましたぁ!この期におよんで裏の無い協定はありませんね。文大統領は嬉しさのあまり実績強調に日米に対して大放言連発ですね、何をやってくれるか楽しみです。朴前大統領からの反米路線に対して経済制裁が目前に迫っている南朝鮮にとって唯一の明るい話題です、盛大にぶち上げて欲しいと思います。制裁国家指定まであとわずか。でもこのスワップは簡単に中国は反故にするのでしょうね、そんな条項が入れられるのかな?泣きついての延長なので何でもOKの大幅譲歩なのでしょうからどんな内容になるのか、表に出ない裏取引がどんなものなのか時間を経ずにバレるでしょうから注目です。

    1. poponta より:

      追伸です。
      ひょっとして中国から何か仕入れた?対日用の空母とかステルス戦闘機あたり・・・やりそうですよね。

  2. 団塊 より:

    本当は「合意していない」ということですね、「事実上」合意したと言ってるのは。

    うしろから前原も事実上合意したと言ってましたね
    「民進党全員 希望の党から立候補することに事実上合意した」とか嘘ばかり 次から次にその場凌ぎの嘘捏造 言うこと全て嘘嘘嘘

  3. ※自己コメントです。

    もう1つ、情報源を追加しておきます。韓国メディアではなくロイターの報道です。

    Prospects for China, South Korea central bank FX swap renewal look positive: source(2017/10/10 08:36付 ロイターより)

    SEOUL (Reuters) – The central banks of China and South Korea appear to be on track to extend a $56 billion currency swap deal that expires on Tuesday, a senior South Korean source said, describing its prospects as “optimistic”. (仮訳)中国と南朝鮮の各中央銀行は、火曜日に失効が予定されている560億ドル相当の通貨スワップ協定の延長を巡る交渉を続けており、南朝鮮側のある幹部はその延長に付き「楽観視している」と述べた。

    なんですか、この「楽観視している」って(笑)
    結局、今の時点で中韓スワップの延期が「事実上合意された」って、韓国側の情報ソースしかない状態です。

    中韓スワップが延長されるかどうかを判断するためには、もう少し情報源が必要でしょう。

    1. poponta より:

      お疲れ様です。
      高を括っているのか、下手な情報操作をしているつもりなのでしょうか?どちらにしても素人の集まりの韓国中央銀行の面々、思うほどの結果は無理ですね。

  4. めがねのおやじ より:

    やっぱり!韓国銀行総裁は「中韓スワップ終了までに、新たに継続出来ないかもしれない」って。切れた後は継続じゃない。朝イチの記事は中央日報の『継続出来ればいいな』という妄想だったんですね。焦らされてスワップ合意しても凄い酷い取り決めじゃないかな。THAAD廃止とか米韓情報提供とか南鮮の領土を一部租借するとか。怖い!
    でも、これだけ南鮮が固執するのは、金庫がもうスッカラカンなんでしょうか。

  5. 埼玉県民 より:

    『中韓スワップの事実上合意は嘘だ』と韓銀総裁が”弱音を吐いて”
    http://u1sokuhou.ldblog.jp/archives/50504124.html
    一次ソースが韓国語なので??ですが、合意は飛ばしのようです。
    KOSPIは爆上げしていますが・・・・・・
    はやりの踏み絵を踏ませられるのでしょうね。それとも伝統の三跪九叩頭ですか。

  6. 激辛大好き より:

    この報道の真偽がどちらにせよ、日本にとっては都合が良い。
    報道の通り、中韓スワップが合意したならもう日本とのスワップは必要なくなり、スワップ交渉はしなくてもよいときっぱり断れる理由が出来た。もし、報道が間違いであれば、韓国は必死に日本にスワップを持ちかけるでしょうが、その時は日韓合意の売春婦像を持ち出せばよいのです。韓国政府にとりスワップのために、売春婦像を撤去するという日本に屈する情けない姿をさらすことなどできず、自らスワップ交渉を閉ざすでしょう。
    高みの見物で、どのような状況に韓国経済がなろうとも、我関せずを貫ければ、安倍総理、麻生財務相の男が上がります。韓国とのスワップに何一つのメリットがないことは日本国民重々承知しており、二人がそうやすやす韓国とのスワップに応じないことを望んでいる。この国民の声を二人が知らぬはずがない。今後、二人が日韓合意交渉のようにどのような悪だくみ、いえ、策略を韓国に仕掛けるのか楽しみです。

    1. むるむる より:

      結論日本にさえ擦り寄って来なければどうでもいいwwwって感じですね。
      日本の滅亡を望むような民族なんぞ助ける価値もないですし、仲良くレッドチームの仲間入りしてて欲しいですよね。まっアメリカはFTAの再交渉とかどう見ても韓国に対する配慮なんてしなくなってますし日本に折れろなんて指示も出しはしないでしょうから気楽に眺めてられますけどww絶対に日本にすり寄って来るなよ韓国

  7. 憂国の志士 より:

    管理者様には、毎日の更新、ありがとうございます。

    真偽のほどはともかく、中韓スワップが成立したとして、その見返りは何なのだろう?
    昔から「…通った跡には草も生えない…」と云われる、支那人の所業だ。
    支那人は自己に利の無い約束はしない、し、約束の裏には必ず見返りの策謀がある。
    「支那に利のある策謀」とは何なのだろう。

    来月、トランプが訪中する。
    そこで何が話し合われるのか。

    米国は過去の戦争・紛争で、絶対に「最初の一発」を打つことはなかった。
    最初の一発、には必ず「正義」が必要だからだ。
    真珠湾、トンキン湾、中東への武力関与、等々…。

    仮に、朝鮮半島で、最初の一発を(謀略・画策も含めて…)北に撃たせたとして、「支那の黙認・黙視」を習近平が約するのだろうか。そしてまた、ロシア=プーチンはどう出る。

    朝鮮半島有事となれば「韓国中のカネが逃げ出す」ことは、賢い支那には「自明の理」であろう。
    それをいま、危機時通貨交換、を約するとなれば、それは「半島統一+両国の属国化」以外には思い至らない。

    「一帯一路」などと聴こえの良い字句で誤魔化すが、所詮は易姓革命で遷り変った支那地域古来の虐殺史が図らずも露呈している。

    支那から見れば、こんな雑魚国家2国など「さっさと掃除」して、版図拡大に猛進したい、のであろう。

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