ウォンがドルを抜きビットコインの最多取引通貨に浮上

国際的な通貨市場でほぼ存在感がない韓国ウォンが、なぜかビットコインの世界では世界最多の取引通貨に浮上したようです。もともと韓国では株式、不動産と並んで暗号資産などのリスク資産が投資対象として好まれているのですが、さすがに「ウォンがビットコインのトップ通貨」というのは印象的過ぎます。日本はこんな国に通貨スワップを提供したのです。

日本お終い論、どこいった?

当ウェブサイトではこれまで、「通貨の国際的な通用度」、「中国が外国と締結している通貨スワップや為替スワップの一覧表」など、世の中ではあまり注目を集めない話題を積極的に取り上げ、紹介してきました。

こうした情報を当ウェブサイトで扱う大きな目的のひとつは、「日本はお終いだ」、「これからは中国の時代だ」、「人民元はこれからどんどんと使用が拡大していく」、といった議論の真相を究明することにあります。

2016年10月、国際通貨基金(IMF)は中国の通貨・人民元を特別引出権(SDR)の構成通貨のひとつに指定しました。それまでSDRの構成通貨といえば米ドル、ユーロ、日本円、英ポンドの4つだったのですが、晴れてこれに人民元が加わった格好です。

当時の一部メディアは、「これで人民元は名実ともに『国際通貨』になった」、などと華々しく報じたものです(一部メディアがさかんに喧伝していた「国際通貨」とやらの定義はよくわかりませんが…)。

その前年の2015年12月には、中国が主導する国際開発銀行であるAIIB(アジアインフラ投資銀行)が発足したばかりでもあり、「一帯一路構想を掲げる中国がAIIBを発足させ、人民元も国際通貨になった」、「これからは中国が国際金融を牛耳る時代になる」、といった論調も見られたほどです。

結論からいえば、人民元の国際的な市場での利用は徐々に広まりつつあるとはいえ、現状で人民元が、すくなくともIMFの基準でいうところの「自由利用可能通貨」(Freely Usable Currency)の定義を満たしているとは言い難いのが実情でしょう。

日本はアジアのインフラ金融で「除け者」にされていない

ただ、それ以上に興味深いのは、当時、AIIBに不参加を決め込んだ日本の「その後」です。

当時、日本国内では「中国の一帯一路構想やAIIBに不参加を決めたことで、日本はアジアのインフラ金融からも排除され、日本の金融は凋落していく」、などとしたり顔で述べていた「作家先生」などもいらっしゃいました(ちなみにその方は金融の専門家ではなさそうです)。

実際、日本の金融の地位は低下したのでしょうか?

日本円の地位は低下したのでしょうか?

結論からいえば、日本の金融の地位は上昇する一方です。

たとえば『日本は8年連続で「世界最大の債権国」=BISデータ』でも説明したとおり、国際決済銀行(BIS)の最新の『国際与信統計』に基づけば、日本の金融機関の対外与信(※最終リスクベース、2023年6月末時点)は4兆6459億ドルであり、米国の4兆4368億ドルを抑えて世界最大です。

国際与信統計上、日本が英国を抜いて世界最大の債権者に浮上したのは2015年9月のことでしたので、それ以来、じつに32四半期(≒約8年)連続して日本が世界最大の債権国としての地位を守っている格好です。

また、IMFのデータによれば、世界各国の外貨準備高に占める通貨別シェアは、2023年6月末時点において日本円が5.4%を占め、ドル、ユーロに次いで世界で3番目であり、しかも円建てで見たらその金額は増え続けています(『日本円の組入れ額が過去最大に=世界各国の外貨準備高』等参照)

これのいったいどこが、「日本の金融機関が凋落」し、「アジアのインフラ金融から除外」され、「日本円の地位が低下している」、といえるのか。

なかなかに理解に苦しむところです。

国際的な通貨市場で存在感がある通貨・ない通貨

さて、前置きはともかくとして、現在の世界で通用度が高い通貨といえば、圧倒的な地位を持っているのは米ドルであり、これに続いてユーロ、さらに地域によっては英ポンドないし日本円と続き、それ以外の通貨(人民元、加ドル、豪ドル、スイスフラン、スウェーデンクローナなど)が「団子」状態と考えて良いでしょう。

こうしたなかで、アジアに限定していえば、最近は人民元が台頭しつつあるとはいえ、やはり最も強い通貨は日本円であり、SWIFTランキング、外貨準備、オフショア債券発行残高などで見て、人民元もなかなか日本円を抜くことができません。

ちなみにアジアのなかでは、人民元と香港ドル、シンガポールドルなど覇を競っていて、それにタイバーツなどやマレーシア・リンギットなどがときどき存在感を示すことはありますが、それ以外の通貨(たとえばインドルピー、インドネシアルピア、フィリピンペソなど)は、国際的な市場で、あまり存在感がありません。

実際、香港を代表する銀行のひとつである香港上海匯豐銀行有限公司(HSBC)のインターネット・バンキング・サービスで提供されている「24時間外国為替」に出て来るのは、米ドル、豪ドル、加ドル、ユーロ、日本円、ニュージーランドドル、英ポンド、人民元、シンガポールドル、スイスフラン、タイバーツの11通貨です。

ましてや、日本の近隣にある「経済大国」(?)であるはずの韓国の通貨・ウォン、台湾の通貨・台湾ドルなどは、国際的な外為市場でもあまり取引されておらず、債券発行通貨としても、国際送金通貨としても、ほとんど存在感がありません。

ちなみに国際送金における通貨という意味では、SWIFTがほぼ毎月公表している『RMBトラッカー』が有名ですが、このRMBトラッカーだと上位20通貨しか公表されず、インドルピー、インドネシアルピア、韓国ウォン、台湾ドルなどの通貨の姿を見かけたことがありません。

したがって、アジアで存在感がある通貨は日本円、香港ドル、シンガポールドル、あとはせいぜい人民元、といったところでしょう。

ウォンがビットコイン市場でドルを上回る

さて、こうしたなかで目に付いたのが、こんな話題です。

「ビットコイン取引、韓国ウォンがドル上回る」 海外メディアが見た韓国の強力なコミュニティー

―――2023.12.06 13:49付 中央日報日本語版より

韓国紙『中央日報』(日本語版)の6日付の記事によると、先月、韓国ウォンが仮想通貨と法定通貨の取引ペアで41%となり、40%だった米ドルを上回ったと、ブルームバーグが5日付で報じたのだそうです。ウォン・ビットコインが米ドル・ビットコインを上回るのは初めてのことだとか。

中央日報からの孫引きですが、これについてブルームバーグはこう述べているとのことです。

韓国の仮想資産取引者が最近のビットコイン価格上昇に影響を与えたとみられる。韓国は長い間、強力な暗号通貨コミュニティーを維持してきた」。

韓国はクォン・ドヒョン・テラフォームラボの創立者クォン・ドヒョンが生まれ育った国であり、昨年ルナ・テラなどが暴落した後も多くの仮想貨幣会社が活動してきた」。

この点、韓国が暗号資産大国であるというのは、おそらく間違いなさそうです。

もともと韓国では株式だ、暗号資産だ、不動産だといったリスク資産への投資が盛んであり、ビットコインに関しても当ウェブサイトでは2年前の『韓国ウォン、ビットコイン取引量で「世界3位」の衝撃』でも取り上げたとおり、(なぜか)ウォン建てのビットコイン取引が非常に多いというのは、金融界ではわりと知られた話です。

なによりウォンという通貨自体、国際的な市場で存在感がない通貨だという事実を踏まえると、ウォンがビットコイン取引において存在感トップを占めているというのは、同国における暗号資産投資の積極さを示唆しているように思えてなりません。

いずれにせよ、日本がこんな国に通貨スワップを提供してしまったというのは、判断ミスも良いところでしょう。

本文は以上です。

読者コメント欄はこのあとに続きます。当ウェブサイトは読者コメントも読みごたえがありますので、ぜひ、ご一読ください。なお、現在、「ランキング」に参加しています。「知的好奇心を刺激される記事だ」と思った方はランキングバナーをクリックしてください。

にほんブログ村 政治ブログ 政治・社会問題へ

このエントリーをはてなブックマークに追加    

読者コメント一覧

  1. 元一般市民 より:

    素人なのでよく分からないのですが、日本の個人の金融資産額は2、100兆円を超えましたが、確か韓国は200兆円以下(7,000億ドル以下)程度だったと思います。この程度の金融資産額で、ビットコインの取引額がドルを超えるというのが理解出来ません。もしかすると、韓国人じゃない奴らが、ウォンを使ってビットコインを売買しているんじゃないですかね?それもショートで・・・

    1. 元雑用係 より:

      数字で確認したわけじゃないですが、世界の金持ちの持ってるカネの多くはそこには回ってなくて、なけなしのカネをビットコインにツッコんでるのが韓国、ということじゃないでしょうか。
      市場規模も金融商品全体からするとそれほど大きくないのでしょう。

      楽韓さんとこを読んでると、将来に絶望した若者が一攫千金を夢見てビットコインだ株だと投機に走ってるそうです。しかも借金してまで。

    2. さより より:

      40%、41%、とほぼ同率だから、ビットコイン額はほぼ同額と考えられる。両国の個人資産総額は分からないが、アメリカと韓国のGDP比は、13:1。
      この比から見て、持ち金1万円の人が5千円使うのと、持ち金13万円の人が5千円使うのと、どちらが余裕感があるでしょうか?
      更に、両国の場合、資産額(ストック)での比率は、更に開くはずだから、余裕感には、更に開きがあるはず。

  2. Masuo より:

    彼らの大好きな世界一。誇らしい。
    よかったよかった。

  3. 元雑用係 より:

    韓国経済(?)ネタは久しぶりですね。
    ビットコインは手数料高すぎるし、やるとしても短期で売買するもんじゃないと思うんですがね。もっと使い勝手のいい金融商品はいくらでもあるのに。
    大きく下落した去年の後半以降に自分的な買い場はなかったです。少なくとも節目手前の今はとてもとても。

    韓国人はビットコインを育てるつもりなんかなくて、ビットコインに集っているだけ。韓国ウォンが先月米ドルを抜いたのなら、高値掴みしてる韓国人がたくさんいるわけで、集りにいって逆に剥ぎ取られるのだと思います。

    去年のテラルナ(詐欺コイン)にしてもチキン屋にしても、皆がやってることをマネしてやるんでしょうが、自分の価値観を持たない人が多いんでしょうね。
    昨日の楽韓さんの記事によると、韓国の子供の間でダウンジャケットが流行だそうですが、ブランドや製造年などでその人のヒエラルキーが決まってるんですって。ダウンジャケット高騰だそうです。(笑)
    子供の話ではあるもののそれが生まれる社会です。見る人から見ればカモだらけの国なんでしょう。

    そんな国のカモになってしまう国もありますが。

    1. さより より:

      >そんな国のカモになってしまう国もありますが。

      最後のオチが、これですか?
      いやはや・・・

  4. G より:

    それほど外国為替取引に関する規制が厳しいんですよ。
    投資や投機の対象として実在の通貨は規制のため思うように取引出来ない。
    で、投機のお金は規制の追いつかない仮想通貨に向かうしかない。
    いろんな人に詐欺されたりでせっかく頑張って稼いだ富がどんどん吸い取られていく。
    かわいそうとしか言いようない

  5. 雪だんご より:

    「海外ではウンタラカンタラ、だから日本はダメ」と言い張る人たちは
    例外なく”質問”や”反論”をこの上なく嫌います。
    Xではブロック機能大好きでコミュニティノート大嫌い。

    でもそんな人たちでも身内で慰めあう事で「小さい市場」を作り、
    年々小さくなるパイとは言え食べていく事はできる。浜矩子氏の様に、
    「自分の代わりに大嘘を堂々とついてくれる」人材への需要は
    まだまだそれなりにあるのでしょう。

  6. 愛知県東部在住 より:

    つくづく博打が好きで好きでしょうがないんでしょうねぇ、彼の国の輩達は。

    としか言いようがありません。

※【重要】ご注意:他サイトの文章の転載は可能な限りお控えください。

やむを得ず他サイトの文章を引用する場合、引用率(引用する文字数の元サイトの文字数に対する比率)は10%以下にしてください。著作権侵害コメントにつきましては、発見次第、削除します。

※現在、ロシア語、中国語、韓国語などによる、ウィルスサイト・ポルノサイトなどへの誘導目的のスパムコメントが激増しており、その関係で、通常の読者コメントも誤って「スパム」に判定される事例が増えています。そのようなコメントは後刻、極力手作業で修正しています。コメントを入力後、反映されない場合でも、少し待ち頂けると幸いです。

※【重要】ご注意:人格攻撃等に関するコメントは禁止です。

当ウェブサイトのポリシーのページなどに再三示していますが、基本的に第三者の人格等を攻撃するようなコメントについては書き込まないでください。今後は警告なしに削除します。なお、コメントにつきましては、これらの注意点を踏まえたうえで、ご自由になさってください。また、コメントにあたって、メールアドレス、URLの入力は必要ありません(メールアドレスは開示されません)。ブログ、ツイッターアカウントなどをお持ちの方は、該当するURLを記載するなど、宣伝にもご活用ください。なお、原則として頂いたコメントには個別に返信いたしませんが、必ず目を通しておりますし、本文で取り上げることもございます。是非、お気軽なコメントを賜りますと幸いです。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

【おしらせ】人生で10冊目の出版をしました

自称元徴用工問題、自称元慰安婦問題、火器管制レーダー照射、天皇陛下侮辱、旭日旗侮辱…。韓国によるわが国に対する不法行為は留まるところを知りませんが、こうしたなか、「韓国の不法行為に基づく責任を、法的・経済的・政治的に追及する手段」を真面目に考察してみました。類書のない議論をお楽しみください。

【おしらせ】人生で9冊目の出版をしました

日本経済の姿について、客観的な数字で読んでみました。結論からいえば、日本は財政危機の状況にはありません。むしろ日本が必要としているのは大幅な減税と財政出動、そして国債の大幅な増発です。日本経済復活を考えるうえでの議論のたたき台として、ぜひとも本書をご活用賜りますと幸いです。
関連記事・スポンサーリンク・広告