北朝鮮情勢の緊迫化:「森友」どころではない!

本日の「補足」です。昨日、日本政府が発表した、長嶺安政駐韓大使らの帰任措置について、いくつかのメディアの反応を紹介しておきましょう。

メディアの反応

極左メディアは「日韓関係再生」などと主張

やはり、極左メディアはこういう反応でした。

社説 駐韓大使帰任 日韓関係の再生を急げ(2017年4月4日付 朝日新聞デジタルより)
社説 駐韓大使3カ月ぶり帰任 選挙を控え妥当な判断だ(2017年4月4日付 毎日新聞デジタルより)

朝日新聞は

  • 3カ月近くも大使らが隣国にいないという異常事態がやっと解消される。遅きに失したとはいえ、当然の措置である
  • 韓国はいま、前大統領の朴槿恵(パククネ)氏が弾劾(だんがい)されて座を追われ、次期大統領選が1カ月余り後に迫っている。日韓関係の立て直しを急がねばならない

と述べていますが、「なぜこのタイミングでの帰任となったのか」という点の分析もないどころか、肝心の米中首脳会談への言及など、一切ありません。

毎日新聞はもっと酷く、正直、読む価値など全くありませんが、特に末尾の方で

やや遅きに失したとはいえ、ここで大使を帰任させる判断は妥当であろう

と主張している下りなど、ピント外れすぎて驚きます。ここまで本質を無視した社説も珍しいのではないかと思うほどです。

産経は「ちぐはぐな対応」と批判(この項のみ、10:22追記)

一方、既存メディアの中では保守的な論調を多く掲載することで知られる産経ニュースは、今回の政府の決定を「ちぐはぐな対応」と批判しています。

【駐韓大使帰任へ】/慰安婦像「韓国側の行動次第」だったはずが…日本政府チグハグな対応付 産経ニュースより

産経ニュースは今回の政府の対応を、「慰安婦像撤去の見通しは立っておらず、チグハグな印象は否めない」と主張。また、

外務省幹部は3日、長嶺氏らの帰任を発表したタイミングについて「今日しかなかった。これ以上遅れると次期政権への対応が遅れる」と語った。別の幹部も同様の見解を示した。

と、今回の措置が外務省の主導であるかのように伝えています。産経ニュースによると、あくまでも慰安婦像問題について、大統領権限代行を務める黄教安首相に「直接会って説得する」などの狙いがある、などとしていますが、果たしてそれは事実でしょうか?

私は昨日から申し上げている通り、今回の措置には、「慰安婦像問題について解決を促す」という意図はないと考えています。日本大使館前などに設置された慰安婦像が日韓合意の精神に反していることは間違いありませんが、おそらく現在の日本政府は、本気でこの慰安婦像の撤去を目的にしている訳ではないからです。本当の意図は、「第二次朝鮮戦争」がすぐ目の前に迫っている中で、情報の収集と在韓邦人の保護にあると見るべきでしょう。その意味で、産経ニュースの分析はお粗末のヒトコトに尽きます。

インターネット上の反応

一方、インターネット上の反応は、「安倍(総理大臣)が韓国に屈した!」といった失望感も見られるものの、やはり今週末の米中首脳会談との関連を指摘する意見が多くみられます。

ネットの声の一部を拾うために、私が「愛読」(?)している『中央日報』日本語版の次の記事を眺めてみましょう。

駐韓日本大使ら、約3カ月ぶりに韓国帰任へ(2017年04月03日15時51分付 中央日報日本語版より)

この記事についたコメントを読んでみると、たとえば外務省などを批判するコメントもありますが、コメントの「読者推薦」の上位順に10個抽出すると、

  • 日本政府の対応を批判するコメント…4件
  • 北朝鮮情勢との関連を指摘するコメント…5件
  • 大統領交代に備えるためとするコメント…1件

となっています(ただし、北朝鮮情勢との関連コメントのうち1件は私自身のコメントですのでご注意ください)。

今回の帰任措置が「対韓配慮」ではない理由(この項のみ、16:54追記)

朝日新聞の社説では、今回の駐韓大使の帰任措置が「日韓関係の立て直し」のためであると述べていますが、この認識が大きな間違いであると想定できる理由が、もう一つあります。それは、「日韓通貨スワップ協定」(日韓スワップ)です。

「日韓スワップ」とは、韓国が通貨危機に陥った際に、日本から韓国に対して資金(ドル、円)が貸与されるという協定であり、事実上、日本から韓国に対する一方的な金融支援です。この協定は2015年2月時点で失効していますが、韓国側の求めに応じて、2016年8月以降、日韓両国財務省が再開に向けた協議を進めていました。しかし、1月6日に日本が発動した対韓制裁措置の一環として、日本政府は日韓スワップ再開交渉の中断を表明。今日に至ります。

そして、菅義偉(すが・よしひで)官房長官の昨日午後の記者会見によれば、日韓スワップの再開については全く考えていないと言明しています。このことからも、今回の措置によって日本が「対韓外交の立て直し」を行う意図がないことは明らかといえるでしょう。

北朝鮮情勢の緊迫化

産経ニュースによると、麻生太郎副総理兼財相は3月31日、北朝鮮情勢に関して、「新聞が書いているより深刻だ」と述べたそうです。

麻生太郎財務相、北朝鮮情勢「新聞が書いているより深刻」 有事の難民日本流入、可能性は「ゼロではない」(2017.3.31 11:10付 産経ニュースより)

財務省や金融庁のウェブサイトには、なぜかまだ麻生総理の記者会見が掲載されていないのですが、この麻生総理の発言は非常に示唆に富んでいます。それは、

  • いかに北朝鮮情勢が緊迫しているか、
  • いかに日本のメディアが弛緩しているか、

という2点です。

私たち日本国民は、北朝鮮情勢が相当に緊迫していることを認識しなければなりません。

いずれにせよ、日本のメディアの報道だけに依存していたら、情報を見誤ることは間違いありません。少なくとも今回の長嶺大使の帰任措置については、朝日新聞などが主張するような、「日韓関係の改善」や「政権移行への対応」のためであると見るべきではありません。私は、これを有事と邦人保護に備えた行動と見ているのです。

果たして、いつまで野党は「森友問題」で国会を空費するつもりでしょうか?北朝鮮情勢は、もはや一刻の猶予もならないと考えるべきでしょう。

11:25追記:問題のFTの記事

既に日本のメディアでも報じられていますが、私が愛読している英フィナンシャル・タイムズ紙(FT)の電子版に、昨日、ドナルド・トランプ大統領の独占インタビュー(exclusive interview)が掲載されています。このうち、北朝鮮に関する質問とこれに対するトランプ氏の回答を抽出すると、次の通りです。

Are you going to talk about North Korea and a way forward there?

Yes, we will talk about North Korea. And China has great influence over North Korea. And China will either decide to help us with North Korea, or they won’t. And if they do that will be very good for China, and if they don’t it won’t be good for anyone.

How ambitious do you want to be with China? Could we see a grand bargain that solves North Korea, takes American troops off the Korean peninsula and really changes the landscape out there?

Well, if China is not going to solve North Korea, we will. That is all I am telling you.

これは、今週末に予定されている習近平(しゅう・きんぺい)国家主席との首脳会談の方針を聞かれて、トランプ氏が答えた内容です。トランプ氏の発言を読むと、

  • 中国が北朝鮮問題の解決に向けて米国に協力するならば、それは中国にとっても良いことだ
  • 中国が北朝鮮問題を解決しなければ、我々(米国)がそれをやる

ということです。相変わらずトランプ氏が話している英語表現は日本の中学生でもわかるようなレベルですが、これを首脳会談前に新聞記者(Lionel Barber, Demetri Sevastopulo and Gillian Tettの各氏)に対して喋ってしまうトランプ氏の姿勢にも驚きます。

日本政府は昨日、唐突に駐韓大使らの帰任を決断しましたが、私はこれを、駐韓大使らの一時帰国措置を解除すると日本政府が判断するだけの、重要な事態の変化が生じたという証拠だと考えています。そして、そのヒントが、このFTの独占インタビュー記事にあると考えています。いずれにせよ、今週は朝鮮半島情勢から目が離せない展開が続きそうです。

明日の予告(18:40追記)

この問題については、調べれば調べるほど、色々と深い問題が多々出てきました。たとえば、菅義偉官房長官は4月3日午後の記者会見で、本日韓国に帰任する長嶺安政駐韓大使が、帰任次第、韓国の大統領権限代行である黄教安(こう・きょうあん)首相と会う予定だと述べていました。これは、言い換えれば、「どうしても日本政府として韓国政府に伝達しなければならないことがある」という状況を示唆するものであり、「このタイミングで長嶺大使が帰任した理由」の説明としては、説得力があります。

いずれにせよ、韓国を待つ未来は「中華属国化」か「赤化統一」しかない―。これが私の以前からの持論です。そして、本日も数回にわたってこの記事に追記を加えたとおり、ここ数日、米軍による北朝鮮攻撃のリスクが急激に意識され始めています。そこで、明日はこの議論についてのアップデートを行い、あわせて「日本にとって北朝鮮危機とは、国防面で自立するまたとないチャンスだ」と申し上げたいと思います。

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