中国人民銀行がマカオの通貨当局と通貨スワップ協定を締結していたようです。といっても、金額的には非常に少なく、上限額は300億人民元と350億パタカに過ぎません。マカオ自体、特別の法体系と独自の通貨制度を持っているとはいえ、結局は中国の一部ですので、むしろなぜ今まで中国との通貨スワップが存在しなかったのかが不思議ですが、ただ、冷静に調べていくと、中国の「スワップによって通貨の地位を上昇させる」という戦略も煮詰まって来ているように思えてなりません。

本文の前に:ウェブサイトからのお知らせ

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2019/12/18 09:00 追記

本文中、数ヵ所の誤植がありましたので修正しております。「クロワッサン」様「カズ」様、ご指摘を頂き大変ありがとうございました。

通貨論はおもしろい!

通貨の3大機能

「通貨論」は、当ウェブサイトがかなり以前から精力的に追いかけているテーマのひとつです。

ただ、いきなり「通貨」と言われても面食らう人も多いと思いますが、べつに難しい話を議論するつもりはありません。日本国内には日本のことを必要以上に卑下する人も多いのですが、当ウェブサイトが主張したいことは極めてシンプル。

「日本円という通貨自体、世界で最も信頼されている通貨のひとつである」、という事実です。

その理由は非常に簡単で、日本円という通貨が通貨の基本機能に照らして優れているからです。

一般に通貨には、「価値の尺度機能」、「取引の決済機能」、「価値の保存機能」という3つの機能があると言われていますが(図表1)、この3つの機能のうち、とくに2番目(決済機能)、3番目(価値保存機能)に優れた通貨が「ハード・カレンシー」です。

図表1 通貨の3大機能
機能名称概要備考
①価値の尺度機能モノ、サービスの価値を通貨で一元的に表示することができるという機能ダイコン1本200円、コメ5キロ2000円と表示するとわかりやすい
②取引の決済機能カネを払えば取引が完了し、そのモノやサービスを買い取ることができるモノとカネを交換すれば、同じ取引に関して、基本的に債権債務は残らない
③価値の保存機能財産的な価値を現金、金融資産などの形にして後世に残すことができる食品は腐るなどして価値が落ちるが、貨幣の場合は少なくとも名目価値は変わらない

(【出所】著者作成)

世界160~170通貨のすべてが①~③を満たすわけではない

このうち①についてはわかると思います。

先日の『怪しい通貨・人民元と「北朝鮮制裁の実効性」の関連性』でも説明したとおり、通貨としての信認がほぼゼロに等しい状態にある北朝鮮ウォン(KPW)などの通貨ですら、「価値の尺度」という機能は持っています。

しかし、②、③へと進むにつれて、それを十分に発揮する通貨の数は減ります。先日報告したとおり、当ウェブサイトの試算だと、地球上には現在、およそ160~170の通貨が存在しますが(※)、これらのすべての通貨がその条件を満たしているとは限りません。

(※なお、通貨の厳密な数については、通貨をどう定義するかによっても異なります。)

たとえば、北朝鮮ウォン、ジンバブエ・ドル、ベネズエラ・ボリバルなどの通貨はインフレ(というよりも通貨の劣化)が激しく、その国の国内ですら誰も受け取ってくれないケースもあるほどであり、このような通貨は②の機能を果たしていません。

一方で、ASEANや韓国、台湾などの場合は、一見すると安定した工業国にも見えますが、人々は自国通貨を心の底から信頼していないフシがあり、自国通貨を密かに米ドルや日本円などに両替して自宅の金庫に保管しているというエピソードはときどき耳にします。

②と③の性能を測る手っ取り早い手段

こうしたなか、当ウェブサイトでときどき、BIS統計やIMF統計を持ち出すのは、上記②や③の性能を測定する手っ取り早い手段が、こうした国際機関による統一尺度に基づく統計調査だからです。

改めて、通貨の通用度を示す国際決済銀行(Bank for International Settlements, BIS)のOTC外為市場調査(図表2)、国際通貨基金(IMF)の外貨準備高に関する調査(COFER、図表3)を示しておくと、次のとおりです。

図表2 OTC外為市場通貨ペア比率(単位:%)
通貨2013年2016年2019年
米ドル87.0487.5888.30
ユーロ33.4131.3932.28
日本円23.0521.6216.81
英ポンド11.8212.8012.79
豪ドル8.646.886.77
加ドル4.565.145.03
スイスフラン5.164.804.96
人民元2.233.994.32
香港ドル1.451.733.53
NZドル1.962.052.07
スウェーデン・クローネ1.762.222.03
韓国ウォン1.201.652.00
シンガポールドル1.401.811.81
ノルウェー・クローネ1.441.671.80
メキシコ・ペソ2.531.921.72
インド・ルピー.991.141.72
その他11.3811.6012.04
合計200.00200.00200.00

(【出所】BIS “Triennial Central Bank Survey of Foreign Exchange and Over-the-counter (OTC) Derivatives Markets in 2019 (Data revised on 8 December 2019)” の “Foreign exchange turnover” より著者作成。なお、「通貨ペア」が集計されているため、合計すると100%ではなく200%となる)

図表3 世界の外貨準備の通貨別構成(2019年6月末時点)
区分米ドル換算額(十億ドル)Aに対する比率
外貨準備合計11,733
内訳判明分(A)11,021100.00%
 うち、米ドル6,79261.63%
 うち、ユーロ2,24320.35%
 うち、日本円5975.41%
 うち、英ポンド4894.43%
 うち、人民元2181.97%
 うち、加ドル2111.92%
 うち、豪ドル1881.70%
 うち、スイスフラン160.14%
 その他の通貨2692.44%
内訳不明分711

(【出所】国際通貨基金(IMF) “Currency Composition of Official Foreign Exchange Reserves, COFER” より著者作成)

この2枚の図表で見ていただくと、現実には米ドル、ユーロ、日本円、英ポンドという4つの通貨で、ほぼ外為市場の8割、外貨準備の9割を占めていることがご確認いただけるでしょう。

これが日本円の実力なのです。

通貨論と人民元

人民元がハード・カレンシー?ナイスジョーク!

ただし、議論がここで終わってしまっては面白くありません。

先日の『デジタル人民元と犯罪資金、そして最新BIS統計』や『怪しい通貨・人民元と「北朝鮮制裁の実効性」の関連性』では、中国は共産主義国でありながら、その中国の通貨・人民元が世界の主要通貨に食い込み始めている、という話題を取り上げました。

考えてみれば、これには国際通貨基金(IMF)が2016年10月に、中国の通貨・人民元を「自由利用可能通貨」として特別引出権(SDR)の構成通貨に含める決定をしたことが大きかったのではないかと思います。

その意味で、とくに当時のクリスティーヌ・ラガルド専務理事(現在の欧州中央銀行=ECB=総裁)の罪は非常に大きいと言わざるを得ません。

ただ、たしかに外為市場、通貨市場における人民元の存在感は少しずつ高まっているものの、やはり、人民元の取引高については、中国の見かけ上の経済力(名目GDPなど)と比べたときには、どうしても見劣りがするのも事実です(図表4)。

図表4 外国為替取引高の輸出入高に対する倍率
コード通貨名倍率
USD米ドル273
AUD豪ドル188
JPY日本円160
GBP英ポンド127
CHFスイスフラン103
NOKノルウェークローネ102
CAD加ドル81
HKD香港ドル43
EURユーロ40
KRW韓国ウォン26
INRインドルピア24
CNY人民元14

(【出所】Bank for International Settlements, “Sizing up global foreign exchange markets” P 35図表 Ratio of foreign exchange turnover to trade and GDP per capita, 2019 “” およびその元データ【※大容量注意!】より著者作成)

米ドル、豪ドル、日本円、英ポンド、スイスフランなどの通貨の倍率が高い理由は、ひとえにこれらの通貨が資本取引(とくに巨額の資金が動く債券市場など)で好まれていることが大きな要因だと思いますが、人民元の倍率が極端に低いのも、これと関係があります。

その理由は簡単で、人民元は依然として、通貨としての使い勝手が悪いからです。

ここで「通貨の使い勝手」とは、いったい何でしょうか。

人民元の正体

ここで、先ほどの「通貨の3大機能」を思い出してみましょう。

当たり前ですが、人民元も「通貨」ですので、「①価値の尺度機能」は当然に持っています。

しかし、問題になるのは②と③の機能です。

この点、注目に値するのは、人民元の場合、最近でこそ②の機能がそれなりに充実して来たと言われている点です(実際にSWIFT統計や先ほどのBIS統計、IMF統計などで見れば、人民元の取引はそこそこ増えて来ていることが確認できます)。

しかし、人民元は、とくに3番目の機能に大きな制約があります。

図表3で確認したとおり、外貨準備に占める人民元の割合は、いまや世界で5番目となっていますが、それと同時に人民元の場合、「余資の運用」という機能に難があります。

中国本土で人民元により購入できる債券(※)などの金融商品も少なく、そもそも資本移動の自由が制限されているからです(※余談ですが、「債券」は「さいけん」と読むためか、同じ読み方をする「債権」と混同する人がいますが、「債券」と「債権」はまったくの別物です。)

実際、他のハード・カレンシーである米ドル、ユーロ、日本円、英ポンドなどの通貨の場合、その通貨で投資できる、債券(とくに安全資産である国債)をはじめとする金融商品の種類が豊富であり、また、資本移動にあたっての規制も少ないため、自由にやり取りができます。

というよりも、中国当局が資本移動の自由を無制限に認めてしまえば、中国の人民が蓄えこんだ人民元をあっという間に米ドル、ユーロ、日本円などの安全通貨と交換してしまい、その結果、人民元が暴落してしまうかもしれません。

IMFが人民元をSDRの構成通貨に指定したのは2016年10月のことですが、そこから3年以上経過したにも関わらず、いまだに「適格外国機関投資家(QFII)」なる制度を維持していることが、最大の証拠でしょう。

だからこそ、中国当局としては資本移動の自由を先進国並みに認めるつもりはないのでしょう(※もっとも、中国当局が人民元を「自由利用可能」な状態にするつもりがない以上、IMFは今からでも人民元をSDRから除外するのが筋だと思いますが…)。

スワップと通貨

通貨スワップと為替スワップ

一方で、「通貨」という側面から、当ウェブサイトが以前から精力的に追いかけているもうひとつのテーマが、通貨スワップと為替スワップです。

といっても、ここでいう「通貨スワップ」「為替スワップ」とは、デリバティブの世界でいう “Cross Currency Swap” “Foreign Exchange Swap” のことではありません。

国際金融協力の世界でいう「二国間通貨スワップ」( “Bilateral Currency Swap Agreement” )と「二国間為替スワップ」( “Bilateral Liquidity Swap Agreement” )のことです。

日本語の言葉がまったく同じなので、当ウェブサイトで通貨スワップや為替スワップの議論をしていると、どうしてもデリバティブの通貨スワップや為替スワップの議論と混同する人がいますので、両者はまったく別物だと申し上げておきたいと思います(図表2)。

図表2 同じ用語だが意味がまったく違う
用語国際金融協力デリバティブ
通貨スワップ中央銀行や通貨当局などの間で行われる通貨の交換取引のこと。多くの場合、通貨ポジションが強い国が、通貨ポジションの弱い国に対して外貨を融通することを柱とした協定であり、とくに二ヵ国間協定を “Bilateral Currency Swap Agreement” と称する。一般に民間企業同士(とくに金融機関・機関投資家同士)で行われる、元本・利息の交換を伴うスワップ(厳密には通貨・ベーシス・スワップ)。一般に “Cross Currency Swap” とも。
為替スワップ中央銀行が自国の民間金融機関に対して外貨を貸し付けるために相手国から通貨を融通してもらう協定のこと。資金使途は民間金融機関向けの融資に限られる。このうち二国間協定を “Bilateral Liquidity Swap Agreement” と称することもある。一般に民間企業同士(日本の場合はとくにメガバンク・地域金融機関同士)で行われる、利息の交換を伴わないスワップ(厳密には直物為替取引と先物反対売買の組み合わせ取引)。 “Foreign Exchange Swap” と称することもある。

(【出所】著者作成)

当ウェブサイトで通貨スワップ、為替スワップについて述べるときは、ほとんどの場合、通貨スワップは “Cross Currency Swap” ではなく “Bilateral Currency Swap Agreement” のことであり、為替スワップは “FX Swap” ではなく “Bilateral Liquidity Swap” のことですので、ご注意ください。

(※これを書いておかないと、ときどきコメント欄に両者を混同した書き込みが寄せられます。ちなみに著者は国際金融協力、デリバティブのいずれのスワップに関しても専門家です。)

通貨スワップや為替スワップを拡大する中国

さて、中国が現在、自国通貨の使い勝手を強めようとしていることは、周知の事実でしょう。

おそらくその最大の目的は、いずれ金融市場においても人民元で覇権を握ることにあるのだと思いますし、世界のオフショア金融センターである香港を支配するのも、最新の金融市場のノウハウを十分に吸収するという狙いがあることは明らかです。

ただし、先ほどから申し上げているとおり、人民元はここ数年で、外貨準備構成通貨という意味でも、外為市場の取引通貨という意味でも、着実にその地位を高めてはいますが、それと同時に洗練された金融商品が決定的に不足しており、通貨の3大機能という点からはどうしても見劣りします。

そこで、中国が現在、人民元の地位を高めるために行っているのが、通貨スワップや為替スワップの拡大です。

これに関連して、数日前、こんな記事を発見しました。

中國人民銀行與澳門金融管理局簽署貨幣互換協議(2019年12月 5日付 マカオ金融管理局HPより)

これは、中国人民銀行とマカオ金融管理局の両者が、12月5日付で300億元・350億パタカを上限とする通貨スワップ協定を締結した、とする記事です。むしろ今までマカオとのスワップが存在しなかったことが意外な気がしますね。

もっとも、後述するとおり、300億元といえば、現在の中国にとっては決して大きな金額のスワップではありません。

では、現在、中国は諸外国とどのようなスワップを締結しているのでしょうか。

これについては、正直、中国人民銀行のウェブサイトを見ても明らかではありません。ただし、複数のメディアの報道によれば、中国が外国と結んでいるスワップの相手国は20ヵ国前後だそうです。

これについて報道などを手掛かりにして、各国中央銀行の情報を調べていくと、直近の3年間に限って確認できたものに限れば、中国は次の17ヵ国とスワップを締結していることが判明しました(図表4)。

図表4 中国が外国と締結しているスワップ
相手国と締結年月人民元の上限相手国通貨の上限
アイスランド(2016年12月)35億元570億クローナ
モンゴル(2017年2月)150億元トゥグルク(上限不明)
ニュージーランド(2017年5月)250億元50億NZドル
香港(2017年11月)4000億元4700億香港ドル
タイ(2018年1月)700億元3700億バーツ
オーストラリア(2018年4月)2000億元400億豪ドル
ナイジェリア(2018年5月)150億元7200億ナイラ
パキスタン(2018年5月)200億元3510億Pルピー
マレーシア(2018年8月)1800億元1100億リンギット
日本(2018年10月)2000億元3.4兆円
英国(2018年11月)3500億元ポンド(上限不明)
スイス(2018年11月)1500億元210億スイスフラン
インドネシア(2018年11月)1000億元ルピア(上限不明)
アルゼンチン(2018年12月)1300億元ペソ(上限不明)
シンガポール(2019年5月)3000億元Sドル(上限不明)
欧州連合(2019年10月)3500億元450億ユーロ
マカオ(2019年12月)300億元350億パタカ
合計2兆5565億元

(【出所】おもに各国中央銀行等ウェブサイトから著者作成)

ただし、これらのスワップうち、日本とのスワップ(上限額は2000億元/3.4兆円)については、通貨スワップではなく、為替スワップです。

つまり、「中国が通貨危機になった際に、日本銀行が円を融資する」という契約ではなく、むしろ「中国の金融市場が混乱し、邦銀が現地で人民元調達に支障を来した際に、日本銀行が円を担保に人民元を借り、それを邦銀に融資する」、という契約であり、むしろ日本に多大なメリットがあります。

(このあたりの事情については『危険なパンダ債と「日中為替スワップ構想」』、『通貨スワップと為替スワップを混同した産経記事に反論する』などで触れましたので、本稿では繰り返しません。)

通貨スワップと為替スワップを混同した産経記事に反論する

金額が大きいスワップは?

図表4に示したスワップについては、ほぼ間違いなく現時点においても有効だと考えて良いと思いますが、その反面、この図表4には、漏れもあると思います。

中国当局がスワップの全体像を公表していないことに加え、中国が積極的な「スワップ外交」を仕掛けておると思しき諸国の場合だと、中央銀行が英語版のホームページを持っていないケースや、極端な話、ホームページ自体を開設していないケースもあるため、網羅性があるとはいえないのです。

とくに、(図表4には含めていませんが)2016年3月に締結された中露通貨スワップ(1500億元/8150億ルーブル)や、2017年10月に韓国当局が「口頭で延長に合意した」と主張する中韓通貨スワップ(3600億元/64兆韓国ウォン)については、事実上、失効している可能性が極めて高いと見ています。

ただ、それらの特殊事情を踏まえたとしても、中国当局が外国中央銀行等と締結している通貨スワップ・為替スワップの合計金額は約2.5~2.6兆元であり、1ドル≒7人民元と仮定すれば3652億ドル、1人民元≒15.67円と仮定すれば40兆円前後、といったところでしょうか。

なお、図表4だと少々見辛いので、金額1000億元以上の国(※偶然ですが、10ヵ国です)について、金額上位順に並べ替えたものも作成しておきましょう(図表5)。

図表5 上位10ヵ国
相手国金額円換算額
香港4000億元6兆2680億円
英国3500億元5兆4845億円
欧州連合3500億元5兆4845億円
シンガポール3000億元4兆7010億円
オーストラリア2000億元3兆1340億円
日本2000億元3兆1340億円
マレーシア1800億元2兆8206億円
スイス1500億元2兆3505億円
アルゼンチン1300億元2兆0371億円
インドネシア1000億元1兆5670億円
上記合計2兆3600億元36兆9812億円

(【出所】図表4と同じ。なお、円換算額は1人民元=15.67円と仮定)

はて、実情は?

図表5をしげしげと眺めてみると、結局、金額が大きい10ヵ国とのスワップのうち、実質的な「自国内」である香港との4000億元・4600億香港ドルのスワップを除けば、発展途上国とのスワップは、マレーシア、アルゼンチン、インドネシアの3ヵ国のみであり、それ以外の6つは先進国とのスワップです。

おそらく、英国、欧州連合、オーストラリア、シンガポール、スイスの5ヵ国は、中央銀行自体が中国の適格外国機関投資家(QFII)の資格を取得するために締結した通貨スワップであり、中国が金融危機になれば、中国はこれらの5ヵ国から遠慮なくハード・カレンシーを引っ張るのだと思います。

ただし、日本との為替スワップについては、「国内の金融機関に融資するため」という目的でなければ発動できませんし、むしろ中国が金融危機に陥った際には、日本銀行が邦銀を支援するために人民元を引き出すと思われます。

いずれにせよ、「中国がスワップ外交によって無理やり人民元を広めようとしている」、「すでに20ヵ国とスワップを締結した」、などと聞くと大仰ですが、現在のところ、金額の大きなスワップは日本を含めた先進国とのものが大部分を占めているのが実情だといえるでしょう。

人民元の伸長は続く?止まる?

さて、中国との人民元建てスワップを眺めていて、ひとつ気付いたのは、中国が日・米・カナダを除くG7諸国など、主なハード・カレンシー採用国との通貨スワップを締結している一方で、米国との通貨スワップ、為替スワップについては締結していない、という事実です。

というよりも、米国が通貨スワップを締結している相手国は、現時点ではメキシコのみ(上限90億ドル)であり、それ以外に通貨スワップは存在しないようです(※ちなみに為替スワップについては、日、欧、英、カナダ、スイスの5つの中央銀行と締結しており、上限・期限の制限はありません)。

おそらく中国は、米国以外のハード・カレンシー採用国と通貨スワップ締結を推進することで、人民元の国際化を進めようとしたのでしょう。

しかし、カナダとの通貨スワップ(2014年11月)は2017年11月で失効したと思われ、さらに、肝心の日本が中国との通貨スワップには応じてくれないなど、中国としてはもう通貨スワップがこれ以上広がらないという「壁」にぶつかっているようです。

※ ※ ※ ※ ※ ※ ※

結局のところ中国は、共産党一党独裁体制が続いていますし、為替相場は事実上の官製相場であり、また、米国は今年8月の時点で、すでに中国を為替操作国として認定しています(『米財務省、中国を為替操作国に認定』参照)。

米財務省、中国を為替操作国に認定

共産党一党独裁国家である中国が、日米欧のような「市場原理に基づく為替相場」、「中央銀行の独立」、「資本移動の自由」などの原則を受け入れていない以上、人民元がこれ以上、国際的な金融市場で存在感を強めるべきではありません。

こうしたなか、中国が通貨スワップをさらに広めるのかどうかについては、隠れたテーマとして注目しておく価値はあるでしょう。

※本文は以上です。

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  • 2020/06/28 16:00 【時事|韓国崩壊
    共同通信「日本がG7拡大に反対、韓国の反発は必至」 (31コメント)
  • 2020/06/28 12:00 【時事|韓国崩壊
    韓国メディア「韓日は最悪の事態避けるため知恵絞れ」 (37コメント)
  • 2020/06/28 09:00 【マスメディア論|時事
    民放各社こそ「NHKに初勝訴」を全面的に歓迎すべき (12コメント)
  • 2020/06/28 05:00 【マスメディア論
    NHKは日本に必要か~最新財務諸表分析から考察する (13コメント)
  • 2020/06/27 12:00 【読者のページ
    読者雑談専用記事通常版 2020/06/27(土) (121コメント)
  • 2020/06/27 09:00 【数字で読む日本経済|金融
    科学的アプローチで理解する、「国の借金論の間違い」 (43コメント)
  • 2020/06/27 05:00 【韓国崩壊
    金与正の瀬戸際外交による最大の成果は「韓国の掌握」 (30コメント)
  • 2020/06/26 16:30 【時事|金融
    米ドル為替スワップ、残高は2263億ドルにまで減少 (4コメント)
  • 2020/06/26 11:00 【時事|外交
    イージス・アショア配備中断、河野太郎氏が丁寧に説明 (41コメント)
  • 2020/06/26 08:00 【時事|韓国崩壊
    「蚊帳の外」にいたはずの日本に「逆ギレ」か?=韓国 (49コメント)
  • 2020/06/26 05:00 【金融
    いまこそ確かめたい、「財政再建=増税」論の大間違い (69コメント)
  • 2020/06/25 17:00 【数字で読む日本経済|金融
    【速報】家計が相変わらず一千兆円超の現金預金を保有 (18コメント)
  • 2020/06/25 12:15 【時事|金融
    韓国政府が外国為替平衡基金債券発行へ=韓国メディア (15コメント)
  • 2020/06/25 08:00 【日韓スワップ|時事|韓国崩壊
    CMIMでなぜか「支援受ける気満々」=韓国メディア (7コメント)
  • 2020/06/25 05:00 【マスメディア論
    産経記者「共同通信は毒水を流すインフラ屋」と苦言か (25コメント)
  • 2020/06/24 12:30 【時事|韓国崩壊
    韓国が「輸出規制」と騒ぐこと自体、日本の脱韓を促進 (23コメント)
  • 2020/06/24 12:00 【読者のページ
    読者雑談専用記事通常版 2020/06/24(水) (98コメント)
  • 2020/06/24 10:30 【時事|外交|金融
    日本が香港の金融業を誘致:課題もあるが着眼点は秀逸 (15コメント)
  • 2020/06/24 08:00 【時事|経済全般
    「PCR検査を全国民に実施せよ」を数学的に論破する (53コメント)
  • 2020/06/24 05:00 【金融
    多国間通貨スワップ「CMIM」増額などは見送られた (12コメント)
  • 2020/06/23 16:30 【金融
    トルコが中国との通貨スワップを実行し人民元を引出す (14コメント)
  • 2020/06/23 11:11 【読者投稿
    【読者投稿】在韓日本人が写真で見る「現在のソウル」 (30コメント)
  • 2020/06/23 10:00 【時事|国内政治
    安倍総理は消費税と憲法争点に解散総選挙に打って出よ (23コメント)
  • 2020/06/23 08:00 【韓国崩壊
    意識だけ先進国?信頼を踏みにじる韓国が払う「対価」 (27コメント)
  • 2020/06/23 05:00 【時事|経済全般
    産経「日中往来制限の長期化により中国で不良品頻発」 (15コメント)
  • 2020/06/22 17:45 【時事|国内政治
    入管への抗議デモは筋違い 「出国の権利」を行使せよ (18コメント)
  • 2020/06/22 12:00 【読者のページ
    読者雑談専用記事通常版 2020/06/22(月) (81コメント)
  • 2020/06/22 11:45 【時事|韓国崩壊
    日韓関係「自然消滅」論を裏付ける韓国メディアの記事 (20コメント)
  • 2020/06/22 08:00 【マスメディア論|時事
    河井夫妻逮捕という「不祥事」なのに支持率が上昇の怪 (22コメント)
  • 2020/06/22 05:00 【韓国崩壊
    韓国メディア「日本の対韓制裁は殴るフリだけで効く」 (34コメント)
  • 2020/06/21 12:00 【経済全般
    「戻ってきてほしいトップは台湾」=訪日外国人観光客 (38コメント)
  • 2020/06/21 05:00 【韓国崩壊
    なぜ「日本は韓国に一本取られた」と勘違いするのか (65コメント)
  • 2020/06/20 15:00 【時事|韓国崩壊
    【補遺】韓国で国産化したフッ化水素は5Nに過ぎない (69コメント)
  • 2020/06/20 12:00 【読者のページ
    読者雑談専用記事通常版 2020/06/20(土) (78コメント)
  • 2020/06/20 09:00 【マスメディア論
    世論調査不正問題、むしろ焦点は「他社の対応」では? (27コメント)
  • 2020/06/20 05:00 【経済全般
    韓国メディア「日本の輸出規制で対日貿易赤字幅縮小」 (26コメント)
  • 2020/06/19 11:30 【時事|経済全般
    入国制限の緩和は4ヵ国からスタート 台湾・香港は? (24コメント)
  • 2020/06/19 09:00 【金融
    日欧韓で全体の8割占める=米FRBドル為替スワップ (8コメント)
  • 2020/06/19 08:00 【時事|韓国崩壊
    WTO提訴する韓国は「グループB」にすら値しない (19コメント)
  • 2020/06/19 06:00 【経済全般
    テレビ局「今すぐ事業をやめて解散した方が儲かる」? (17コメント)
  • 2020/06/19 05:00 【時事|韓国崩壊
    韓銀「韓米通貨スワップ延長は市場状況を見て決める」 (11コメント)
  • 2020/06/18 12:12 【時事|韓国崩壊
    運転席理論は幻想!この難局を韓国はどう乗り切るのか (55コメント)
  • 2020/06/18 11:00 【時事|国内政治
    「ネズミも逃げ出す泥の船」と化しつつある立憲民主党 (13コメント)
  • 2020/06/18 08:00 【時事|経済全般
    米系投資ファンド「日本の地上波テレビに将来性なし」 (7コメント)
  • 2020/06/18 06:00 【韓国崩壊
    日本政府、韓国に輸出規制など経済制裁の発動は可能か (15コメント)
  • 2020/06/18 05:00 【マスメディア論|時事
    不要なのはコメンテーターか、テレビ局そのものなのか (31コメント)
  • 2020/06/17 12:30 【日韓スワップ|時事|金融
    国際競争力で日本を上回る相手国に通貨スワップは不要 (27コメント)
  • 2020/06/17 12:00 【読者のページ
    読者雑談専用記事通常版 2020/06/17(水) (122コメント)
  • 2020/06/17 11:00 【時事|国内政治
    山尾志桜里議員:「肥溜め」→「三角コーナー」へ移籍 (32コメント)
  • 2020/06/17 08:00 【時事|外交
    北朝鮮による事務所爆破と金正恩危篤説はつながるのか (40コメント)
  • 2020/06/17 05:00 【経済全般
    【総論】経済制裁「7つの類型」と「5つの発動名目」 (3コメント)
  • 2020/06/16 22:30 【時事|外交
    【速報】「北朝鮮が開城連絡事務所破壊」は権力承継? (22コメント)
  • 2020/06/16 15:00 【時事|国内政治
    毎日新聞によると大串博志氏も「#」と発音したらしい (14コメント)
  • 2020/06/16 11:11 【時事|韓国崩壊
    非上場株式の売却を「時限爆弾」と呼ぶ韓国メディア (17コメント)
  • 2020/06/16 08:00 【韓国崩壊
    「約束破り」の常習国家が日本に「約束を守れ」と要求 (36コメント)
  • 2020/06/16 05:00 【時事|国内政治
    コロナ禍と不法滞在、そして「強制退去違反罪」の創設 (10コメント)
  • 2020/06/15 12:00 【読者のページ
    読者雑談専用記事通常版 2020/06/15(月) (72コメント)
  • 2020/06/15 11:00 【時事|韓国崩壊
    韓国で「資産現金化でも日本の経済報復に耐えられる」 (105コメント)
  • 2020/06/15 08:00 【韓国崩壊
    相次ぐ韓国の自爆、日本が「エサ」与えなくなったから (34コメント)
  • 2020/06/15 06:00 【マスメディア論|時事
    NHKにとっては企業倒産よりも受信料収入の方が大事 (12コメント)
  • 2020/06/15 05:00 【時事|韓国崩壊
    北朝鮮の軍事行動示唆発言に感じる「不自然さ」の正体 (38コメント)
  • 2020/06/14 11:30 【時事|国内政治
    足を引っ張る野党とメディア、まったく休まぬ安倍総理 (37コメント)
  • 2020/06/14 09:00 【時事|韓国崩壊
    「輸出規制」巡る一般読者の反応のレベルは総じて高い (17コメント)
  • 2020/06/14 05:00 【国内政治
    テレビ見る人ほど安倍総理を「信頼できない」と考える (37コメント)
  • 2020/06/13 12:00 【読者のページ
    読者雑談専用記事通常版 2020/06/13(土) (88コメント)
  • 2020/06/13 08:00 【時事|経済全般
    まだ間に合う?中韓に対し「輸入国」に転落する前に… (42コメント)
  • 2020/06/13 05:00 【マスメディア論
    新聞社説のブログ化、そして相次ぐ虚報がもたらすもの (23コメント)
  • 2020/06/12 14:14 【時事|韓国崩壊
    毎日新聞社説「日韓両国指導者は失ったもの直視せよ」 (33コメント)
  • 2020/06/12 11:35 【日韓スワップ|時事|韓国崩壊
    「真の友人」なら、もう日韓スワップを結んでいるはず (24コメント)
  • 2020/06/12 11:00 【時事|金融
    日本が6割、韓国が3位に浮上=米ドル為替スワップ (5コメント)

  • 著者のコンタクト先:info@shinjukuacc.com

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