中国人民銀行がマカオの通貨当局と通貨スワップ協定を締結していたようです。といっても、金額的には非常に少なく、上限額は300億人民元と350億パタカに過ぎません。マカオ自体、特別の法体系と独自の通貨制度を持っているとはいえ、結局は中国の一部ですので、むしろなぜ今まで中国との通貨スワップが存在しなかったのかが不思議ですが、ただ、冷静に調べていくと、中国の「スワップによって通貨の地位を上昇させる」という戦略も煮詰まって来ているように思えてなりません。

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2019/12/18 09:00 追記

本文中、数ヵ所の誤植がありましたので修正しております。「クロワッサン」様「カズ」様、ご指摘を頂き大変ありがとうございました。

通貨論はおもしろい!

通貨の3大機能

「通貨論」は、当ウェブサイトがかなり以前から精力的に追いかけているテーマのひとつです。

ただ、いきなり「通貨」と言われても面食らう人も多いと思いますが、べつに難しい話を議論するつもりはありません。日本国内には日本のことを必要以上に卑下する人も多いのですが、当ウェブサイトが主張したいことは極めてシンプル。

「日本円という通貨自体、世界で最も信頼されている通貨のひとつである」、という事実です。

その理由は非常に簡単で、日本円という通貨が通貨の基本機能に照らして優れているからです。

一般に通貨には、「価値の尺度機能」、「取引の決済機能」、「価値の保存機能」という3つの機能があると言われていますが(図表1)、この3つの機能のうち、とくに2番目(決済機能)、3番目(価値保存機能)に優れた通貨が「ハード・カレンシー」です。

図表1 通貨の3大機能
機能名称概要備考
①価値の尺度機能モノ、サービスの価値を通貨で一元的に表示することができるという機能ダイコン1本200円、コメ5キロ2000円と表示するとわかりやすい
②取引の決済機能カネを払えば取引が完了し、そのモノやサービスを買い取ることができるモノとカネを交換すれば、同じ取引に関して、基本的に債権債務は残らない
③価値の保存機能財産的な価値を現金、金融資産などの形にして後世に残すことができる食品は腐るなどして価値が落ちるが、貨幣の場合は少なくとも名目価値は変わらない

(【出所】著者作成)

世界160~170通貨のすべてが①~③を満たすわけではない

このうち①についてはわかると思います。

先日の『怪しい通貨・人民元と「北朝鮮制裁の実効性」の関連性』でも説明したとおり、通貨としての信認がほぼゼロに等しい状態にある北朝鮮ウォン(KPW)などの通貨ですら、「価値の尺度」という機能は持っています。

しかし、②、③へと進むにつれて、それを十分に発揮する通貨の数は減ります。先日報告したとおり、当ウェブサイトの試算だと、地球上には現在、およそ160~170の通貨が存在しますが(※)、これらのすべての通貨がその条件を満たしているとは限りません。

(※なお、通貨の厳密な数については、通貨をどう定義するかによっても異なります。)

たとえば、北朝鮮ウォン、ジンバブエ・ドル、ベネズエラ・ボリバルなどの通貨はインフレ(というよりも通貨の劣化)が激しく、その国の国内ですら誰も受け取ってくれないケースもあるほどであり、このような通貨は②の機能を果たしていません。

一方で、ASEANや韓国、台湾などの場合は、一見すると安定した工業国にも見えますが、人々は自国通貨を心の底から信頼していないフシがあり、自国通貨を密かに米ドルや日本円などに両替して自宅の金庫に保管しているというエピソードはときどき耳にします。

②と③の性能を測る手っ取り早い手段

こうしたなか、当ウェブサイトでときどき、BIS統計やIMF統計を持ち出すのは、上記②や③の性能を測定する手っ取り早い手段が、こうした国際機関による統一尺度に基づく統計調査だからです。

改めて、通貨の通用度を示す国際決済銀行(Bank for International Settlements, BIS)のOTC外為市場調査(図表2)、国際通貨基金(IMF)の外貨準備高に関する調査(COFER、図表3)を示しておくと、次のとおりです。

図表2 OTC外為市場通貨ペア比率(単位:%)
通貨2013年2016年2019年
米ドル87.0487.5888.30
ユーロ33.4131.3932.28
日本円23.0521.6216.81
英ポンド11.8212.8012.79
豪ドル8.646.886.77
加ドル4.565.145.03
スイスフラン5.164.804.96
人民元2.233.994.32
香港ドル1.451.733.53
NZドル1.962.052.07
スウェーデン・クローネ1.762.222.03
韓国ウォン1.201.652.00
シンガポールドル1.401.811.81
ノルウェー・クローネ1.441.671.80
メキシコ・ペソ2.531.921.72
インド・ルピー.991.141.72
その他11.3811.6012.04
合計200.00200.00200.00

(【出所】BIS “Triennial Central Bank Survey of Foreign Exchange and Over-the-counter (OTC) Derivatives Markets in 2019 (Data revised on 8 December 2019)” の “Foreign exchange turnover” より著者作成。なお、「通貨ペア」が集計されているため、合計すると100%ではなく200%となる)

図表3 世界の外貨準備の通貨別構成(2019年6月末時点)
区分米ドル換算額(十億ドル)Aに対する比率
外貨準備合計11,733
内訳判明分(A)11,021100.00%
 うち、米ドル6,79261.63%
 うち、ユーロ2,24320.35%
 うち、日本円5975.41%
 うち、英ポンド4894.43%
 うち、人民元2181.97%
 うち、加ドル2111.92%
 うち、豪ドル1881.70%
 うち、スイスフラン160.14%
 その他の通貨2692.44%
内訳不明分711

(【出所】国際通貨基金(IMF) “Currency Composition of Official Foreign Exchange Reserves, COFER” より著者作成)

この2枚の図表で見ていただくと、現実には米ドル、ユーロ、日本円、英ポンドという4つの通貨で、ほぼ外為市場の8割、外貨準備の9割を占めていることがご確認いただけるでしょう。

これが日本円の実力なのです。

通貨論と人民元

人民元がハード・カレンシー?ナイスジョーク!

ただし、議論がここで終わってしまっては面白くありません。

先日の『デジタル人民元と犯罪資金、そして最新BIS統計』や『怪しい通貨・人民元と「北朝鮮制裁の実効性」の関連性』では、中国は共産主義国でありながら、その中国の通貨・人民元が世界の主要通貨に食い込み始めている、という話題を取り上げました。

考えてみれば、これには国際通貨基金(IMF)が2016年10月に、中国の通貨・人民元を「自由利用可能通貨」として特別引出権(SDR)の構成通貨に含める決定をしたことが大きかったのではないかと思います。

その意味で、とくに当時のクリスティーヌ・ラガルド専務理事(現在の欧州中央銀行=ECB=総裁)の罪は非常に大きいと言わざるを得ません。

ただ、たしかに外為市場、通貨市場における人民元の存在感は少しずつ高まっているものの、やはり、人民元の取引高については、中国の見かけ上の経済力(名目GDPなど)と比べたときには、どうしても見劣りがするのも事実です(図表4)。

図表4 外国為替取引高の輸出入高に対する倍率
コード通貨名倍率
USD米ドル273
AUD豪ドル188
JPY日本円160
GBP英ポンド127
CHFスイスフラン103
NOKノルウェークローネ102
CAD加ドル81
HKD香港ドル43
EURユーロ40
KRW韓国ウォン26
INRインドルピア24
CNY人民元14

(【出所】Bank for International Settlements, “Sizing up global foreign exchange markets” P 35図表 Ratio of foreign exchange turnover to trade and GDP per capita, 2019 “” およびその元データ【※大容量注意!】より著者作成)

米ドル、豪ドル、日本円、英ポンド、スイスフランなどの通貨の倍率が高い理由は、ひとえにこれらの通貨が資本取引(とくに巨額の資金が動く債券市場など)で好まれていることが大きな要因だと思いますが、人民元の倍率が極端に低いのも、これと関係があります。

その理由は簡単で、人民元は依然として、通貨としての使い勝手が悪いからです。

ここで「通貨の使い勝手」とは、いったい何でしょうか。

人民元の正体

ここで、先ほどの「通貨の3大機能」を思い出してみましょう。

当たり前ですが、人民元も「通貨」ですので、「①価値の尺度機能」は当然に持っています。

しかし、問題になるのは②と③の機能です。

この点、注目に値するのは、人民元の場合、最近でこそ②の機能がそれなりに充実して来たと言われている点です(実際にSWIFT統計や先ほどのBIS統計、IMF統計などで見れば、人民元の取引はそこそこ増えて来ていることが確認できます)。

しかし、人民元は、とくに3番目の機能に大きな制約があります。

図表3で確認したとおり、外貨準備に占める人民元の割合は、いまや世界で5番目となっていますが、それと同時に人民元の場合、「余資の運用」という機能に難があります。

中国本土で人民元により購入できる債券(※)などの金融商品も少なく、そもそも資本移動の自由が制限されているからです(※余談ですが、「債券」は「さいけん」と読むためか、同じ読み方をする「債権」と混同する人がいますが、「債券」と「債権」はまったくの別物です。)

実際、他のハード・カレンシーである米ドル、ユーロ、日本円、英ポンドなどの通貨の場合、その通貨で投資できる、債券(とくに安全資産である国債)をはじめとする金融商品の種類が豊富であり、また、資本移動にあたっての規制も少ないため、自由にやり取りができます。

というよりも、中国当局が資本移動の自由を無制限に認めてしまえば、中国の人民が蓄えこんだ人民元をあっという間に米ドル、ユーロ、日本円などの安全通貨と交換してしまい、その結果、人民元が暴落してしまうかもしれません。

IMFが人民元をSDRの構成通貨に指定したのは2016年10月のことですが、そこから3年以上経過したにも関わらず、いまだに「適格外国機関投資家(QFII)」なる制度を維持していることが、最大の証拠でしょう。

だからこそ、中国当局としては資本移動の自由を先進国並みに認めるつもりはないのでしょう(※もっとも、中国当局が人民元を「自由利用可能」な状態にするつもりがない以上、IMFは今からでも人民元をSDRから除外するのが筋だと思いますが…)。

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スワップと通貨

通貨スワップと為替スワップ

一方で、「通貨」という側面から、当ウェブサイトが以前から精力的に追いかけているもうひとつのテーマが、通貨スワップと為替スワップです。

といっても、ここでいう「通貨スワップ」「為替スワップ」とは、デリバティブの世界でいう “Cross Currency Swap” “Foreign Exchange Swap” のことではありません。

国際金融協力の世界でいう「二国間通貨スワップ」( “Bilateral Currency Swap Agreement” )と「二国間為替スワップ」( “Bilateral Liquidity Swap Agreement” )のことです。

日本語の言葉がまったく同じなので、当ウェブサイトで通貨スワップや為替スワップの議論をしていると、どうしてもデリバティブの通貨スワップや為替スワップの議論と混同する人がいますので、両者はまったく別物だと申し上げておきたいと思います(図表2)。

図表2 同じ用語だが意味がまったく違う
用語国際金融協力デリバティブ
通貨スワップ中央銀行や通貨当局などの間で行われる通貨の交換取引のこと。多くの場合、通貨ポジションが強い国が、通貨ポジションの弱い国に対して外貨を融通することを柱とした協定であり、とくに二ヵ国間協定を “Bilateral Currency Swap Agreement” と称する。一般に民間企業同士(とくに金融機関・機関投資家同士)で行われる、元本・利息の交換を伴うスワップ(厳密には通貨・ベーシス・スワップ)。一般に “Cross Currency Swap” とも。
為替スワップ中央銀行が自国の民間金融機関に対して外貨を貸し付けるために相手国から通貨を融通してもらう協定のこと。資金使途は民間金融機関向けの融資に限られる。このうち二国間協定を “Bilateral Liquidity Swap Agreement” と称することもある。一般に民間企業同士(日本の場合はとくにメガバンク・地域金融機関同士)で行われる、利息の交換を伴わないスワップ(厳密には直物為替取引と先物反対売買の組み合わせ取引)。 “Foreign Exchange Swap” と称することもある。

(【出所】著者作成)

当ウェブサイトで通貨スワップ、為替スワップについて述べるときは、ほとんどの場合、通貨スワップは “Cross Currency Swap” ではなく “Bilateral Currency Swap Agreement” のことであり、為替スワップは “FX Swap” ではなく “Bilateral Liquidity Swap” のことですので、ご注意ください。

(※これを書いておかないと、ときどきコメント欄に両者を混同した書き込みが寄せられます。ちなみに著者は国際金融協力、デリバティブのいずれのスワップに関しても専門家です。)

通貨スワップや為替スワップを拡大する中国

さて、中国が現在、自国通貨の使い勝手を強めようとしていることは、周知の事実でしょう。

おそらくその最大の目的は、いずれ金融市場においても人民元で覇権を握ることにあるのだと思いますし、世界のオフショア金融センターである香港を支配するのも、最新の金融市場のノウハウを十分に吸収するという狙いがあることは明らかです。

ただし、先ほどから申し上げているとおり、人民元はここ数年で、外貨準備構成通貨という意味でも、外為市場の取引通貨という意味でも、着実にその地位を高めてはいますが、それと同時に洗練された金融商品が決定的に不足しており、通貨の3大機能という点からはどうしても見劣りします。

そこで、中国が現在、人民元の地位を高めるために行っているのが、通貨スワップや為替スワップの拡大です。

これに関連して、数日前、こんな記事を発見しました。

中國人民銀行與澳門金融管理局簽署貨幣互換協議(2019年12月 5日付 マカオ金融管理局HPより)

これは、中国人民銀行とマカオ金融管理局の両者が、12月5日付で300億元・350億パタカを上限とする通貨スワップ協定を締結した、とする記事です。むしろ今までマカオとのスワップが存在しなかったことが意外な気がしますね。

もっとも、後述するとおり、300億元といえば、現在の中国にとっては決して大きな金額のスワップではありません。

では、現在、中国は諸外国とどのようなスワップを締結しているのでしょうか。

これについては、正直、中国人民銀行のウェブサイトを見ても明らかではありません。ただし、複数のメディアの報道によれば、中国が外国と結んでいるスワップの相手国は20ヵ国前後だそうです。

これについて報道などを手掛かりにして、各国中央銀行の情報を調べていくと、直近の3年間に限って確認できたものに限れば、中国は次の17ヵ国とスワップを締結していることが判明しました(図表4)。

図表4 中国が外国と締結しているスワップ
相手国と締結年月人民元の上限相手国通貨の上限
アイスランド(2016年12月)35億元570億クローナ
モンゴル(2017年2月)150億元トゥグルク(上限不明)
ニュージーランド(2017年5月)250億元50億NZドル
香港(2017年11月)4000億元4700億香港ドル
タイ(2018年1月)700億元3700億バーツ
オーストラリア(2018年4月)2000億元400億豪ドル
ナイジェリア(2018年5月)150億元7200億ナイラ
パキスタン(2018年5月)200億元3510億Pルピー
マレーシア(2018年8月)1800億元1100億リンギット
日本(2018年10月)2000億元3.4兆円
英国(2018年11月)3500億元ポンド(上限不明)
スイス(2018年11月)1500億元210億スイスフラン
インドネシア(2018年11月)1000億元ルピア(上限不明)
アルゼンチン(2018年12月)1300億元ペソ(上限不明)
シンガポール(2019年5月)3000億元Sドル(上限不明)
欧州連合(2019年10月)3500億元450億ユーロ
マカオ(2019年12月)300億元350億パタカ
合計2兆5565億元

(【出所】おもに各国中央銀行等ウェブサイトから著者作成)

ただし、これらのスワップうち、日本とのスワップ(上限額は2000億元/3.4兆円)については、通貨スワップではなく、為替スワップです。

つまり、「中国が通貨危機になった際に、日本銀行が円を融資する」という契約ではなく、むしろ「中国の金融市場が混乱し、邦銀が現地で人民元調達に支障を来した際に、日本銀行が円を担保に人民元を借り、それを邦銀に融資する」、という契約であり、むしろ日本に多大なメリットがあります。

(このあたりの事情については『危険なパンダ債と「日中為替スワップ構想」』、『通貨スワップと為替スワップを混同した産経記事に反論する』などで触れましたので、本稿では繰り返しません。)

通貨スワップと為替スワップを混同した産経記事に反論する

金額が大きいスワップは?

図表4に示したスワップについては、ほぼ間違いなく現時点においても有効だと考えて良いと思いますが、その反面、この図表4には、漏れもあると思います。

中国当局がスワップの全体像を公表していないことに加え、中国が積極的な「スワップ外交」を仕掛けておると思しき諸国の場合だと、中央銀行が英語版のホームページを持っていないケースや、極端な話、ホームページ自体を開設していないケースもあるため、網羅性があるとはいえないのです。

とくに、(図表4には含めていませんが)2016年3月に締結された中露通貨スワップ(1500億元/8150億ルーブル)や、2017年10月に韓国当局が「口頭で延長に合意した」と主張する中韓通貨スワップ(3600億元/64兆韓国ウォン)については、事実上、失効している可能性が極めて高いと見ています。

ただ、それらの特殊事情を踏まえたとしても、中国当局が外国中央銀行等と締結している通貨スワップ・為替スワップの合計金額は約2.5~2.6兆元であり、1ドル≒7人民元と仮定すれば3652億ドル、1人民元≒15.67円と仮定すれば40兆円前後、といったところでしょうか。

なお、図表4だと少々見辛いので、金額1000億元以上の国(※偶然ですが、10ヵ国です)について、金額上位順に並べ替えたものも作成しておきましょう(図表5)。

図表5 上位10ヵ国
相手国金額円換算額
香港4000億元6兆2680億円
英国3500億元5兆4845億円
欧州連合3500億元5兆4845億円
シンガポール3000億元4兆7010億円
オーストラリア2000億元3兆1340億円
日本2000億元3兆1340億円
マレーシア1800億元2兆8206億円
スイス1500億元2兆3505億円
アルゼンチン1300億元2兆0371億円
インドネシア1000億元1兆5670億円
上記合計2兆3600億元36兆9812億円

(【出所】図表4と同じ。なお、円換算額は1人民元=15.67円と仮定)

はて、実情は?

図表5をしげしげと眺めてみると、結局、金額が大きい10ヵ国とのスワップのうち、実質的な「自国内」である香港との4000億元・4600億香港ドルのスワップを除けば、発展途上国とのスワップは、マレーシア、アルゼンチン、インドネシアの3ヵ国のみであり、それ以外の6つは先進国とのスワップです。

おそらく、英国、欧州連合、オーストラリア、シンガポール、スイスの5ヵ国は、中央銀行自体が中国の適格外国機関投資家(QFII)の資格を取得するために締結した通貨スワップであり、中国が金融危機になれば、中国はこれらの5ヵ国から遠慮なくハード・カレンシーを引っ張るのだと思います。

ただし、日本との為替スワップについては、「国内の金融機関に融資するため」という目的でなければ発動できませんし、むしろ中国が金融危機に陥った際には、日本銀行が邦銀を支援するために人民元を引き出すと思われます。

いずれにせよ、「中国がスワップ外交によって無理やり人民元を広めようとしている」、「すでに20ヵ国とスワップを締結した」、などと聞くと大仰ですが、現在のところ、金額の大きなスワップは日本を含めた先進国とのものが大部分を占めているのが実情だといえるでしょう。

人民元の伸長は続く?止まる?

さて、中国との人民元建てスワップを眺めていて、ひとつ気付いたのは、中国が日・米・カナダを除くG7諸国など、主なハード・カレンシー採用国との通貨スワップを締結している一方で、米国との通貨スワップ、為替スワップについては締結していない、という事実です。

というよりも、米国が通貨スワップを締結している相手国は、現時点ではメキシコのみ(上限90億ドル)であり、それ以外に通貨スワップは存在しないようです(※ちなみに為替スワップについては、日、欧、英、カナダ、スイスの5つの中央銀行と締結しており、上限・期限の制限はありません)。

おそらく中国は、米国以外のハード・カレンシー採用国と通貨スワップ締結を推進することで、人民元の国際化を進めようとしたのでしょう。

しかし、カナダとの通貨スワップ(2014年11月)は2017年11月で失効したと思われ、さらに、肝心の日本が中国との通貨スワップには応じてくれないなど、中国としてはもう通貨スワップがこれ以上広がらないという「壁」にぶつかっているようです。

※ ※ ※ ※ ※ ※ ※

結局のところ中国は、共産党一党独裁体制が続いていますし、為替相場は事実上の官製相場であり、また、米国は今年8月の時点で、すでに中国を為替操作国として認定しています(『米財務省、中国を為替操作国に認定』参照)。

米財務省、中国を為替操作国に認定

共産党一党独裁国家である中国が、日米欧のような「市場原理に基づく為替相場」、「中央銀行の独立」、「資本移動の自由」などの原則を受け入れていない以上、人民元がこれ以上、国際的な金融市場で存在感を強めるべきではありません。

こうしたなか、中国が通貨スワップをさらに広めるのかどうかについては、隠れたテーマとして注目しておく価値はあるでしょう。

※本文は以上です。

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  • 2020/01/14 12:00 【読者のページ
    読者雑談専用記事 2020/01/14(火) (88コメント)
  • 2020/01/14 06:00 【時事|韓国崩壊
    韓国副首相「日本は2月までに輸出規制を元に戻せ」 (23コメント)
  • 2020/01/14 05:00 【韓国崩壊|外交
    北朝鮮が韓国を痛罵するのは経済制裁が効いている証拠 (12コメント)
  • 2020/01/13 08:00 【時事|外交
    北朝鮮を制裁したらイランのミサイル開発が遅延した? (16コメント)
  • 2020/01/13 06:00 【時事|韓国崩壊
    日経の最新調査、「韓国は日本人が3番目に嫌いな国」 (42コメント)
  • 2020/01/13 05:00 【マスメディア論|国内政治
    マスコミさん、「桜を見る会」での倒閣に失敗か? (17コメント)
  • 2020/01/12 16:40 【マスメディア論|時事
    「科学とファクト無視するな」 旭日旗ヘイトを考える (36コメント)
  • 2020/01/12 08:00 【時事|外交
    米国のソレイマニ殺害は両国合意の「出来レース」? (37コメント)
  • 2020/01/12 05:00 【外交
    民主国家・台湾こそ日本の同盟国にふさわしい (34コメント)
  • 2020/01/11 12:00 【読者のページ
    読者雑談専用記事 2020/01/11(土) (94コメント)
  • 2020/01/11 11:11 【時事|雑感オピニオン
    「ビアンカ・フローラ」問題巡る最新の研究結果とは? (25コメント)
  • 2020/01/11 05:00 【韓国崩壊
    韓国に対するフッ化水素の輸出許可は「譲歩」ではない (30コメント)
  • 2020/01/10 17:25 【時事|国内政治
    解散総選挙を仕掛けるタイミングは今でしょ! (8コメント)
  • 2020/01/10 12:15 【時事|韓国崩壊
    世銀が「日本の輸出規制が世界経済を脅かす」、本当? (8コメント)
  • 2020/01/10 10:30 【時事|韓国崩壊
    韓国と日韓議連と二階幹事長が日韓関係改善に積極姿勢 (18コメント)
  • 2020/01/10 05:00 【韓国崩壊
    鈴置論考に見る「ひとつの国が民主主義を捨てるとき」 (34コメント)
  • 2020/01/09 16:00 【時事|韓国崩壊
    韓国外相「日本の態度次第ではGSOMIA終了」 (29コメント)
  • 2020/01/09 11:00 【時事|金融
    米・イラン緊張に見る、軍事制裁と経済制裁の関係 (24コメント)
  • 2020/01/09 08:00 【読者投稿
    【読者投稿】韓国はダヤニ一族への賠償問題を解決せよ (12コメント)
  • 2020/01/09 05:00 【韓国崩壊
    韓国政府の「日本と協議」 発想自体が大きな間違い (13コメント)
  • 2020/01/08 17:30 【時事|韓国崩壊
    釜山と日本各地を結ぶ航路、乗客「7割減」の衝撃 (31コメント)
  • 2020/01/08 13:25 【時事|外交
    イランのミサイル発射・続報とウクライナの航空機墜落 (19コメント)
  • 2020/01/08 12:25 【日韓スワップ|韓国崩壊|金融
    韓国の外貨準備における不整合と「本質的な問題点」 (17コメント)
  • 2020/01/08 09:23 【時事|外交
    イランが米軍施設にミサイル発射 (15コメント)
  • 2020/01/08 05:00 【韓国崩壊
    対韓輸出が急減しているのは「低価格フッ化水素」か? (24コメント)
  • 2020/01/07 12:10 【日韓スワップ|時事|韓国崩壊
    日韓スワップは欲しいがプライドが許さないという韓国 (40コメント)
  • 2020/01/07 12:00 【読者のページ
    読者雑談専用記事 2020/01/07(火) (38コメント)
  • 2020/01/07 10:45 【時事|韓国崩壊
    金正恩の斬首作戦は「韓国が困るからやめてほしい」 (13コメント)
  • 2020/01/07 06:00 【時事|韓国崩壊
    日韓市民団体、「真の問題解決のために協議体設立を」 (21コメント)
  • 2020/01/07 05:00 【韓国崩壊
    韓国が欲しがったのはフッ酸よりも「容器」だった? (30コメント)
  • 2020/01/06 14:30 【時事|外交
    米軍の「斬首作戦」に金正恩が怯えて「活動萎縮」も? (19コメント)
  • 2020/01/06 10:45 【時事|韓国崩壊|金融
    イランの核開発再開宣言と対韓輸出管理の関連性を疑う (16コメント)
  • 2020/01/06 07:00 【時事|金融
    ゴーンの身柄確保には「カネの流れ」の利用も有効か? (8コメント)
  • 2020/01/06 06:00 【時事|国内政治
    自称活動家の「権力者に圧力」、北京と平壌で主張せよ (16コメント)
  • 2020/01/06 05:00 【時事|外交
    イラン司令官殺害:トランプは対イラン開戦を望むのか (29コメント)
  • 2020/01/05 10:00 【マスメディア論
    「新聞業界の部数水増し」を最新データで検証してみた (21コメント)
  • 2020/01/05 05:00 【時事|韓国崩壊
    WSJの「ベトナムで米国が脱北者保護」をどう読むか (29コメント)
  • 2020/01/04 12:00 【読者のページ
    読者雑談専用記事 2020/01/04(土) (105コメント)
  • 2020/01/04 10:00 【韓国崩壊
    日韓関係はまだ「最悪期」に非ず(2)日韓断交論 (48コメント)
  • 2020/01/04 05:00 【韓国崩壊
    日韓関係はまだ「最悪期」に非ず(1)経済制裁論 (19コメント)
  • 2020/01/03 10:00 【マスメディア論
    オールドメディアはムーになる! (38コメント)
  • 2020/01/03 05:00 【韓国崩壊
    韓国の2019年の「貿易黒字4割減少」のインパクト (26コメント)
  • 2020/01/02 11:11 【読者投稿
    【読者投稿】在韓日本人が見た「韓国の盆と正月」 (17コメント)
  • 2020/01/02 06:00 【時事|経済全般|外交
    ゴーン逃亡、レバノンへの経済制裁・断交も躊躇するな (71コメント)
  • 2020/01/02 05:00 【時事|経済全般
    年賀状をやめてみて、なにか不都合はあったのか? (9コメント)
  • 2020/01/01 11:11 【時事|韓国崩壊
    韓国政府「日本の輸出規制撤回まで徹底対処」 (22コメント)
  • 2020/01/01 05:00 【マスメディア論
    新聞の終焉 (30コメント)
  • 2019/12/31 12:00 【読者のページ
    読者雑談専用記事 2019/12/31(火) (127コメント)
  • 2019/12/31 10:00 【時事|経済全般
    今年の重要未解決問題を振り返る (8コメント)
  • 2019/12/31 05:00 【韓国崩壊
    韓国に対する経済制裁を議論する (40コメント)
  • 2019/12/30 12:15 【時事|韓国崩壊
    日韓葛藤の解消のためには、韓国が変わらねばならない (45コメント)
  • 2019/12/30 10:30 【時事|外交
    北朝鮮の経済制裁は「物価」だけでは測定できない (36コメント)
  • 2019/12/30 06:00 【時事|国内政治
    名は体を表す 新党名は「ともに民主党」でいかが? (37コメント)
  • 2019/12/30 05:00 【韓国崩壊
    訪韓日本人と訪日韓国人の逆転と「大停滞時代」の予感 (15コメント)
  • 2019/12/29 05:00 【マスメディア論
    低俗な地上波テレビ番組と高レベルなユーチューブ動画 (47コメント)
  • 2019/12/28 12:00 【読者のページ
    読者雑談専用記事 2019/12/28(土) (108コメント)
  • 2019/12/28 10:00 【時事|韓国崩壊
    「慰安婦問題」という自家中毒にやられる韓国 (21コメント)
  • 2019/12/28 05:00 【金融
    「物価安定」は北朝鮮制裁「無効論」の証拠にならない (29コメント)
  • 2019/12/27 17:15 【時事|韓国崩壊
    韓国憲法裁の慰安婦合意訴訟棄却は「譲歩」にあらず(追記:タイトルと本文に誤りあり) (31コメント)
  • 2019/12/27 11:00 【時事|韓国崩壊
    北朝鮮の瀬戸際外交は経済制裁がうまくいっている証拠 (30コメント)
  • 2019/12/27 05:00 【数字で読む日本経済
    日本は「輸出大国」ではない (22コメント)
  • 2019/12/26 17:15 【時事|韓国崩壊
    韓国向けビール輸出が急減しても日本経済に影響はない (19コメント)
  • 2019/12/26 11:00 【時事|外交
    習近平の国賓招待とは「日本が中国を支配する方法」? (22コメント)
  • 2019/12/26 06:00 【韓国崩壊
    年末の鈴置論考と「2020南北クーデター」への警戒 (26コメント)
  • 2019/12/26 05:00 【経済全般
    韓国のLCCの大幅減便と「発着枠のU/Lルール」 (24コメント)
  • 2019/12/25 22:30 【時事|韓国崩壊
    文在寅氏「徴用工、韓日が早く解決策を見つけるべき」 (22コメント)
  • 2019/12/25 12:00 【読者のページ
    読者雑談専用記事 2019/12/25(水) (59コメント)

  • 著者のコンタクト先:info@shinjukuacc.com

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