ニューズ・アラカルト―独裁者の世代交代・ほか

本日は久しぶりに、「ニュース・アラカルト」をお届けしたいと思います。本日取り上げる話題は、「移民に浸食されつつあるドイツの問題」、「中央アジアの独裁者の問題」、そして「時事通信の報道の不正確さ」です。意外な切り口からニュースを読む楽しみに触れて頂けたなら、私にとってはとても幸甚です。

ドイツで移民労働者人口が1710万人に!

始めに米WSJから、こんな報道を紹介します。

Germany’s Migrant Population Hits Record High(米国時間2016/09/16(金) 05:37=日本時間2016/09/16(金) 18:37付WSJオンラインより)

※リンク先は英語で、かつ、WSJオンラインに契約していないと全文を読むことができない可能性がある点についてはご了解ください。

WSJの報道によると、ドイツの2015年末における「移民人口」が1710万人と、史上最大を記録したそうです。記事のポイントとしては、

「◆2015年時点でドイツの総人口の約21%に相当する1710万人が移民(とその子孫)であった、◆これは2014年と比べて4.4%の増大だ、◆背景には多くの難民が欧州最大の経済大国であり、移民にも寛容な政策を取るドイツを目指したことがある」

というものです。この短い記事から何がわかるのでしょうか?

もともとドイツは、非常に強い産業競争力を持っていますが、ここに一つの仮説が成り立ちます。それは、ドイツの大企業「安い労働力」である移民労働者を使うことで製造コストを抑制し、それを外国に輸出して儲ける、というビジネスモデルです。間接的な証拠の一つは、GDP構造にあります。わが国の総務省統計局が公表する「世界の統計2016」の第9章によると、ドイツの貿易依存度(特に輸出依存度)は主要国の中で際立って高いことがわかります。ためしにG7各国に、日本の近所の中国・韓国を加えて、各国の貿易依存度(輸出依存度=図表1、輸入依存度=図表2)を比較してみると、ドイツの「異常さ」がわかります。

  • 図表1 各国の輸出依存度
20102011201220132014
日本1413.913.414.5
米国8.59.59.69.59.4
英国1718.518.217.816.2
ドイツ3739.439.938.939.1
フランス19.520.520.820.220
イタリア212324.224.224.6
カナダ24.6262525.126.3
韓国42.646.244.842.940.6
中国26.125.324.223.322.6
  • 図表2 各国の輸入依存度
20102011201220132014
日本12.614.514.916.9
米国13.214.614.51413.9
英国23.424.624.724.122.5
ドイツ3133.5333231.6
フランス2324.924.923.923.5
イタリア22.924.523.622.321.9
カナダ25.726.826.226.126.9
韓国38.843.642.539.537.3
中国23.123.321.520.518.9

(【出所】図表1、2ともに総務省統計局「世界の統計2016」図表9-3。なお、表中の数値の単位は%)

2014年時点で輸出がドイツのGDPに占める比率は39.1%と、実に4割近くに達していますが、これは韓国と並んで高い数値です。通常、輸出競争力が強くなると、その国の通貨が切り上がり、輸出競争力が弱まるという「為替レートを通じた競争力調整」が入るのですが、ドイツの場合は「ユーロ圏加盟国」に対する輸出が多いため、為替レートを通じた調整が働き辛いという特徴があります(ちなみに中国と韓国の場合は半ば公然と為替介入を行っていて、米国議会からは「為替操作国」認定せよ、との圧力もあります)。

つまり、ドイツの競争力の源泉とは、

  • 安い労働力である移民を使ってコストを抑える
  • ユーロという共通通貨を使って輸出しまくる

という代物であり、到底、ドイツ人がこれで幸せになれるとは考えられません。ドイツ人は移民に職を奪われ、ユーロ圏に加盟する他国ではドイツ製の安価な製品により雇用が奪われているからです。余談ですが、ギリシャをはじめとするユーロ圏の財政赤字国は、いわば貿易黒字国であるドイツからお金を借りるという形で、収支尻を合わせていると考えられ、当然、ドイツの民間金融機関や公的金融機関には南欧向けエクスポージャーなどの不良資産が相当に溜まっている可能性があります。これらの不良資産は、IFRSというインチキ会計基準でバンキング勘定に保有されているため、私は、ある日いきなりドイツ・欧州の金融機関が経営破綻しても全く不思議ではないと考えています。

独裁者が娘に政権移譲?

次の話題は、独裁国家の話です。

大統領の娘が上院委員長に カザフスタン(2016.9.16 20:02付 産経ニュースより=共同通信配信)

共同通信が配信した産経ニュースの記事によると、カザフスタンでナザルバエフ大統領の長女であるダリガ・ナザルバエワ氏(53)が上院の「国際関係・国防委員会の委員長」に選出されたとのことです。カザフスタンは中央アジアに位置する産油国で、中国、ロシアの両国に国境を接しており、いわば「地政学上の要衝」に位置しています。このため、日本の安倍晋三総理大臣も同国との関係を重視しており、実際、昨年10月28日に同国を訪問しています。

ただし、このナザルバエフ大統領という人物は、「中央アジアの独裁者」と呼ばれている人物でもあります。そして、私の憶測ですが、ナザルバエフ大統領と同じく旧ソ連時代末期から君臨する「独裁者」との悪名の高かった隣国・ウズベキスタンのカリモフ前大統領が今年9月2日に死去したことを受け、ナザルバエフ大統領としては自分の長女を「後継者」として大統領の地位に就けることを急いでいるのかもしれません。

ナザルバエフ、カリモフの両大統領を巡っては、つい昨年も興味深い話がありました。それは、中国の習近平(しゅう・きんぺい)国家主席が主催した昨年9月3日の「抗日戦勝利70周年記念軍事パレード」に、習主席、ロシアのプーチン大統領、さらには国際刑事裁判所から逮捕状も出ているスーダンのバシル大統領らと並んで、これらの「独裁者」がパレードを観閲したのです。しかも、よりにもよってこの場には、「西側諸国」から唯一、国家元首として朴槿恵(ぼく・きんけい)韓国大統領も参加。さらに、バシル大統領を訴追した組織を統括する国連の潘基文(はん・きぶん)事務総長までがこれに参加し、米国をはじめとする西側諸国の冷笑を浴びました。もちろん、別に「西側諸国の政治家」がこれらの独裁者と会うこと自体、別に不自然な点はありません。実際、日本の安倍総理も「中国牽制」という観点からカザフスタンやウズベキスタンとの関係を強化しています。ただ、さすがに並み居る独裁者らと軍事パレードを観閲してしまうのは「やりすぎ」でしょう。

なお、元ジャーナリストで参議院議員の青山繁晴氏は今週の「「真相深入り!虎ノ門ニュース」」の中で、安倍総理が「独裁者に好かれやすい」と指摘されています。また、聞くところによると、安倍総理は「過激な言動」で知られるフィリピンのドゥテルテ大統領とも、早速、良好な関係を築きつつあるとか。安倍総理がこれらの独裁者とも良好な関係を構築し、維持しているのは「さすがだ」と思いますが、あくまでも「国益」の観点から「対中牽制」としてのおつきあいだという原則は忘れないで頂きたいと思っています。

ミスリーディングな時事通信の報道

最後に、最近の話題という観点からは、こちらの報道も紹介しておきたいと思います。

米国に脅威与えず=核実験強行の北朝鮮-国防総省(2016/09/16-09:52付 時事通信より)

タイトルをそのまま読むと、「米国防総省は北朝鮮が核実験を強行したことについて、米国にとって脅威ではないと述べた」かのような印象を持ってしまいますが、現実にはこれと真逆です。当の時事通信の報道をよく読むと、米国防総省のクック報道官は

「現時点で、米国に脅威を与えることができる能力を示していない」

としつつも、

「われわれは北朝鮮の脅威に先んじる必要がある」「現在の態勢を維持し、北朝鮮のいかなる脅威にも備えるために必要なことを全て行っていく」

と述べた、ということです。ということは、「北朝鮮の核は現時点では米国にとって影響を与えないかもしれないが、北朝鮮では急激に核・ミサイルの開発が進んでいるため、それらに先んじ(て対抗す)る必要がある」、という意味合いです。

だいたい、国防総省関係者が「北朝鮮の核は米国に脅威を与えない」という点を「メインの主張」にするはずがありません。実際、少し古い記事ですが、ワシントンポスト(WP)に9月9日付で掲載されたオピニオンでは、米国防総省(通称「ペリガン(Pentagon)」)の当局者らも、「北朝鮮の核問題は次期政権が最初に直面する課題の一つだ」と認識している、と指摘されています。

North Korea’s ‘grave threat’ may be the next president’s first big test(2016/09/09付 WPより)

したがって、この時事通信の記事のタイトルを正確に示すならば、たとえば

「『北朝鮮の脅威への先制必要』との認識示す―米国防総省」

といった書き方ではないでしょうか?

いずれにせよ、「蓮舫・民進党代表の二重国籍事件」で先日も触れたとおり、日本の大手報道機関の報道は、クオリティの劣化が著しい気がします。私も今や、軽量級ながら「インターネット・メディア」の一つを運営していますが、今回の時事通信のように、こうした細かい報道のエラーについては気が付いたら指摘するようにしたいと考えています。

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