韓国待望の米韓通貨スワップはほぼゼロ回答=財相会談

事前の予想通り、米韓「通貨」スワップは締結されませんでした。韓国政府側の発表でも、米国が為替スワップの再開に含みを持たせたかのような記述はあるにせよ、むしろ「外為市場に関連する協力の強化」を再確認するなど、韓国の事前の報道とはまったく異なる結果が出てきたのではないかと思います。

米韓財相会談

いちおう、当ウェブサイトでは韓国における通貨スワップ待望論について何度か取り上げたという事情もあるため、「結論」くらいはお知らせしておこうと思います。

ジャネット・イエレン米財務長官は19日、韓国を訪問し、秋慶鎬(しゅう・けいこう)副首相兼企画財政部長官と会談したのですが、その内容が同日中に韓国の企画財政部のウェブサイトにアップロードされていました。

韓・米財務長官会の結果【※韓国語】

―――2022.07.19.付 韓国企画財政部ウェブサイトより

これについては韓国のことですので、相手が言ってもいないことを勝手に発表するという可能性(『日韓外相会談:両国発表の6箇所の相違が意味するもの』等参照)を踏まえるなら、本来ならば米国側の報道発表と照らし合わせながら読むべきかもしれません。

ただ、残念ながら本稿執筆時点において、まだ米国側の発表が出ていないので、とりあえずは韓国側の発表のみをもとに、結果を読み解いておきましょう。

「外国為替市場に関する協力の強化」「市場は良好で安定的」

韓国政府の発表はPDFファイルで全3ページにまたがるもので、正直、大変に詠み辛い代物ですが、翻訳エンジンなどを参考にしつつ、同資料の3ページ目の冒頭以降を読み解いて箇条書きにしたものが、次の記述です。

  • 秋慶鎬副首相とイエレン長官は、最近の金融・外国為替市場動向を点検し、両国間の外国為替市場に関連する協力の強化を再確認した
  • 両国長官は、対外要因によって最近のウォン・ドル為替市場の変動性が増加したものの、外国為替の健全性制度などに支えられ、韓国内の外貨流動性状況は過去とは異なり、依然として良好で安定的であると診断した
  • ただし、秋副首相は現在韓国の外貨流動性は安定的な状況であるとしつつも、グローバル金融市場流動性の急変動や域内の経済安保リスク要因に留意し、金融・外国為替市場状況を徹底的にモニタリングする一方、●●●(※解読不能)に備えてコンテンポラリープランを綿密に再整備する計画だと明らかにした
  • これらの点を考慮して、両長官は外国為替市場について緊密な協議を継続し、外国為替問題に対して先制的に適切に協力していくことに合意した
  • また、秋副首相とイエレン長官は、韓・米両国が必要流動性供給装置など多様な協力方案を実行する余力がある(have ability to implement various cooperative actions such as liquidity facilities if necessary)という認識を共有した

通貨スワップはほぼゼロ回答

一部、著者自身の力量だと、どうしても解読できない部分が出てきてしまうのですが(※その理由は、韓国語の場合、「分かち書き」をしないと翻訳エンジンが正確に文章を認識しないためだそうです)、結論的にいえば、「通貨スワップはほぼゼロ回答」、ということで良いと思います。

本文中の「外国為替の健全性制度」が何を指すのかは定かではありませんが、韓国を対象に含んだ流動性供給手段としては、例の「FIMAレポ・ファシリティ」(『NY連銀「困ったらスワップよりFIMAレポ使って」』等参照)を意味しているのかもしれません。

これに加えて「両国間の外国為替市場に関連する協力の強化」とあるのは、おそらくは5月にジョー・バイデン米大統領が訪韓した際の共同声明にも含まれていた、韓国の為替介入などを念頭に置いた「為替市場の透明性を高めること」を意味すると考えるのが自然でしょう。

ちなみに、発表のなかでは、「韓国の外為市場の状況は良好」であり、「韓国の金融市場における外貨流動性の状況は安定している」ものの、「必要ならば流動性供給装置などを実行する余力はある」、といった趣旨の記述も確認できます。

読み方によっては「米国が為替スワップの再開に含みを持たせた」という考え方もできなくはありませんが、もしイエレン氏が本当にこう発言したのだとしても、さほどおかしな話ではありません。

米国が世界規模の流動性危機の際に、必要に応じて為替スワップ・ファシリティを含めた流動性供給手段を準備するというのは、ごく当たり前の話だからです。

というよりも、そもそもイエレン氏自身、現在はFRB議長ではなく財務長官であり、韓国が執拗に要求している「通貨スワップ」、すなわち正確には「外国為替流動性供給スワップ(為替スワップ)」は、あくまでもFRBの管轄です。

したがって、該当する記述も、通貨スワップを執拗に求める韓国に対し、イエレン氏が「流動性危機の際には為替スワップなどの流動性供給手段を復活させることはあり得る」という総論だけを述べたに過ぎない、と考えると、すっきりと辻褄が合います。

いずれにせよ、米韓財相会談の結果はまったくの予想どおり、韓国が要求した通貨スワップについてはほぼゼロ回答であり、それどころか「外為市場の協力」という文言自体、韓国の為替介入への強い牽制とみるのが正解でしょう。

本文は以上です。

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読者コメント一覧

  1. 匿名 より:

    外貨流動性は安定的な状況_

    「青い水面に美しく優雅に浮かぶ白鳥は しかしその水中にかくれた足で絶え間なく水をかいている」という言葉を使い出したのは梶原一騎だとか。 

  2. Atsh より:

    記事更新ありがとうございます。早速ソウル経済が、事実上のスワップを与える措置と報道してるとの事ですよ。現実に負けるなー?

    1. Atsh より:

      失礼、スワップに準じる措置を与える、でした。
      ,,,準じる措置ってなんでしょうか?

      1. 豆鉄砲 より:

        それはズバリ!口先介入ではないでしょうか?

        韓国が通貨危機に陥った場合、アメリカ政府の誰かが『$融通してあげよっかなぁ~』なんて言う。韓国民は大喜び!

  3. 匿名 より:

    原文を見ました。
    「有事時に備えて、コンティンジェンシープランを綿密に」です。

  4. 匿名 より:

    米財務省の公式発表によれば、ユン大統領との間で「金融市場の新たな状況を支持することについて見解を共有した(shared views on supporting financial market developments)」ようです。為替介入を牽制していると読むことが可能では?

  5. 匿名 より:

    米財務省の発表には「インド太平洋における経済安全保障を強化する(deepening economic security across the Indo-Pacific)」という文言がありますが、韓国側の発表にはありません。ロシアへの言及がある一方で、インド太平洋にはまだ触れることができないのは不思議ですが、何か重大な事情がありそうです(笑)

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