NY連銀「困ったらスワップよりFIMAレポ使って」
米FRBは「FIMAレポ・ファシリティ」が米ドルの国際通貨としての役割を支えるうえで大切な手段だと考えているようです。言い換えれば、コロナ禍直後に締結していた9ヵ国の中銀・通貨当局との為替スワップについては復活させる可能性は低い、ということなのかもしれません。
「米国は永久通貨スワップに応じるべきだ」
最近の通貨安の影響でしょうか、とある国では最近、「我が国の為替相場を安定させるためには、米国は我が国と無条件で永久通貨スワップの締結に応じるべきだ」、といった主張が頻繁に出てきているそうです。
なんとも厚かましい話です。
そもそもNAFAスワップ(カナダ、米国、メキシコの3ヵ国間の通貨スワップ)という例外を除けば、米国が外国と通貨スワップを結んでいるという事例はほとんどありませんが、その例外的な通貨スワップを特定国とも締結せよ、というのは、非常に強烈な話でもあります。
また、米国はドル・外為流動性供給を目的とした無期限かつ金額無制限のスワップライン(俗にいう為替スワップ)を、日本、欧州、英国、スイス、カナダの5つの中央銀行との間で締結しているのですが、これらのスワップは、米国にとっては「米銀に円、ユーロ、ポンド、スイスフラン、加ドルを貸し付けるツール」でもあります。
つまり、米国が現在、外国と締結しているスワップは、NAFA通貨スワップと5大国との為替スワップであり、それら以外に通貨スワップないし為替スワップは存在していません。
例外的に9本の為替スワップが存在したが…
また、リーマン・ブラザーズの経営破綻に端を発する金融危機(GFC)直後、あるいはコロナ禍が発生した2020年3月以降、米FRBは例外的に9つの中央銀行・通貨当局との間で時限的・金額上限付きの為替スワップを締結しました。
米FRBが2020年3月から2021年12月まで為替スワップを締結していた相手(失効済み)
- 時限的・上限600億ドル…豪州準備銀行、ブラジル中央銀行、韓国銀行、メキシコ銀行、シンガポール通貨庁、スウェーデンリクスバンク
- 時限的・上限300億ドル…デンマーク国立銀行、ノルウェー銀行、ニュージーランド準備銀行
(【出所】著者調べ)
しかし、これらのスワップはいずれも失効しており、また、FRBが金融引締めに動く中で、当面、復活する予定はなさそうです。
もっとも、やはりとくに通貨ポジションが脆弱な諸外国(とくにトルコ、アルゼンチン、インドネシア、スリランカ、その他約1国)あたりは米ドル建てのスワップを望んでいるのですが、これについてはどの程度の可能性があるものなのでしょうか。
ニューヨーク連銀のフォーラム
これに対する米ニューヨーク連銀の研究レポートが出てきました。
The U.S. Dollar’s Global Roles: Revisiting Where Things Stand
―――2022/07/05付 ニューヨーク連銀 “Liberty Street Economics” より
ニューヨーク連銀は6月16日と17日にかけてFRBと共催した「米ドルの国際的な役割に関する会合」を受け、米ドルが依然として国際的な金融取引において重要な役割を持っていると指摘。
そのうえで、とくに2008年のグローバル金融危機(GFC)や2020年のコロナ禍において、米ドルが安全資産として世界の金融関係者から強く支持されたとしつつも、諸外国のドル流動性についてはスワップラインに加え、「FIMAレポファシリティ」などを創設した、などとしています。
該当する記述は次のとおりです。
- Some U.S. financial and regulatory approaches since the global financial crisis (GFC), on balance, supported the international roles of the dollar and the so-called safe-haven status of U.S. Treasuries.
- This type of reinforcement of dollar roles has been strengthened since 2020, with dollar funding strains in stress periods reduced by access to the Fed’s swap lines.
- In addition, the new FIMA (Foreign and International Monetary Authority) Repo Accounts give those official institutions holding U.S. Treasuries the possibility to get dollar liquidity through liquifying, rather than liquidating, these Treasury assets.
使い物にならないFIMAレポ
この「FIMAレポ」とは、当ウェブサイトでは『FIMAレポは「為替スワップと並ぶ安全弁」なのか?』などでも紹介したとおり、外国中央銀行等は米国債などを売却しなくても「レポ取引」(債券貸借取引)によって資金を貸し出す、という仕組みのことです。
レポ取引に詳しい方ならご存じかもしれませんが、これは有価証券(たとえば債券)の保有者が、自身が保有する有価証券を一定期間相手に貸し出し、相手からは資金を借り入れる、といった形式の取引のことです。
どうしてそんな取引をするのかといえば、さまざまな理由がありますが、最も大きな理由のひとつは「わざわざ債券を売らなくても現金を手にすることができるから」です。
ただ、このレポ取引、端的にいえばあまり使い物になりません。なぜなら、このFIMAレポファシリティを使用するためには、大元の「相手に貸せる適格債券」(たとえば米国債など)を保有していなければならないからです。
多くの国は外貨準備において米国債を含めた外国国債を保有していますが、なかには「自称数千億ドル分の外貨準備」を保有していると主張しているわりに、その中身の実在性については極めて怪しい、という国も存在します。
仮に外貨準備が4000億ドル前後の国が存在したとしましょう。そして、その国の外貨準備のうち、3500億ドル程度が米国債なのだとすれば、その国は保有する3500億ドルの米国債をニューヨーク連銀に預ければ、3500億ドル分の現金の貸し出しを受けることができます。
(※債券時価変動やヘアカット調整などの議論については、とりあえず無視します。)
しかし、仮にその国が主張する外貨準備4000億ドルのうち、米国債がたった1000億ドルで、残り3000億ドルが中国国債、ロシア国債、欧州周辺国債などの怪しげな資産だったと仮定すれば、この国が直ちに使える外貨準備は1000億ドルしかない、ということです。
NY連銀の意欲
ただ、ニューヨーク連銀の記事では、「米国はスワップラインに加えてFIMAレポファシリティも準備した!」「これで米ドルの安全弁は確保された!」といった論調なのですが、強く伝わってくるのは「為替スワップは滅多に締結するものではない」、とする意思でもあるのです。
結びの言葉は、こうです。
The use of key policy tools, such as the Fed’s dollar liquidity swap lines and FIMA repo, help to support the U.S. dollar’s international roles.
…。
FRBによるドル流動性スワップラインとFIMAレポを含めた主要政策手段がドルの国際通貨としての役割を支えている、という主張ですが、FIMAレポを「政策ツールだ」などと自慢するのはどうかと思う次第です。
ただ、文章で読む限り、少なくともFRBとしては、9ヵ国の中央銀行・通貨当局とのスワップラインを復活させるつもりだ、といった意欲はあまり高くなさそうだと思う次第です。
本文は以上です。
日韓関係が特殊なのではなく、韓国が特殊なのだ―――。
— 新宿会計士 (@shinjukuacc) September 22, 2024
そんな日韓関係論を巡って、素晴らしい書籍が出てきた。鈴置高史氏著『韓国消滅』(https://t.co/PKOiMb9a7T)。
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米国は金融引き締めをやっている状況なので、スワップなんてしないでしょうね。
特に、為替介入を躊躇わない韓国とは。
これで米ドルの安全弁は確保された、というよりは、これで米国債の投げ売り対策ができた、でしょうね。2020年のスワップラインも米国債の売り物が1兆億ドルでしたっけ?出たので慌てて締結したらしいですし。全然詳しくないですが、米国は米国債の利率が上がるとすぐデフォルトしちゃう経済構造なんでしょう。なんだかんだ米国のための措置にすぎないってことで。
FIMAレポだと”財布の中身(すぐに使えるお金)”が増やせるだけで、通貨スワップのように”使える総額(信用枠)”が増やせる訳ではないんですよね。
信用枠の在り方としては、前者が根抵当権、後者が連帯保証のようなものなのかと。
引出すだけのデビットカードと借入できるクレジットカードのような違いでしょうか?
*****
FIMAレポ → デビットカード
対米スワップ → クレジットカード
対日スワップ → くれ・ずっとカード
・・。
くれ・ずっとカード
上手いです(^^♪
thank you!です。
>為替スワップは滅多に締結するものではない
況んや、通貨スワップをや。
FIMAレポファシリティ、初めて見る言葉だったので調べてみました。
なんか溺れる者はこの藁にすがれ的な感じが漂う金融システムですね。
超過準備預金金利より0.25%利息が上乗せされるとか、ロールオーバーは認められるが,基本一夜限りの期限であるとか、なにやら『ナニワ金融道』もびっくりするようなえげつないもののようです。
まっ 人間いざ断末魔に追い込まれてしまえば,こういうのに手を出しちゃうのかも,とは思いましたね。特に、況んやかの国に於いておや。(笑)
鳴かぬなら鳴かせてみせようスワップを。
為替介入の弾がなくなるまでスワップスワップと泣き続けるのでしょう。
そして、弾切れになったら静かになるのかも。
「信用貸しはお断り、担保入れたらその分はお貸ししますよ」ということですよね。
担保あればいいけど。
FIMAレポは、通貨スワップや
一般的な為替スワップと違って
質草として差し入れた適格債券の範囲内で
通貨を融通してもらえるという、いわば
米国版質屋さん取引です。
新宿会計士さまが明快に
ご指摘のように、
質草に事欠く韓国さんのような
経済深刻なクレクレ国には
実はたいして役には立たないものです。
そこで、相手の信用で通貨を勝手に
キャッシングで引き出せる
クレディットカードのような
通貨スワップを狙っているのでしょう。
日韓スワップなるものは
いつ止められるかわからない
紙くず間近で引き出す意味がない
ウォンのクレディットカードと
米ドルが引き出せる信用厚い
日本のプラチナクレディットカードを
交換して上げるニダ
などというふざけたものです。
為替スワップとはいえ
米国版質屋さん方式FIMAレポを
半島メディアや日本の韓流メディアが
あえて『通貨スワップ』?と
偽った言い方で記事にするのは
『米国と通貨スワップ(?)したから
日本とも通過スワップ結んであげるニダ』
と日本を嵌めるためのネタ仕込みなのだと
思われます。