日韓スワップ再開はペンディング?

本日2本目のエントリーです。日韓通貨スワップ協定を巡る交渉が「越年する」との観測が出てきたとする記事を、時事通信などが相次いで配信しています。

日韓スワップ交渉、越年へ?

韓国側からの要望で再開に向けた交渉が行われている「日韓通貨スワップ取極」(いわゆる「日韓スワップ」)を巡り、日韓交渉が年内に妥結せず、来年に持ち越されるのではないか、という報道が相次いでいます。とりあえず、ここでは次の三つの情報源を検討してみましょう。

日韓通貨協定、交渉越年へ=大統領職務停止で(2016/12/12-08:02付 時事通信より)
日韓通貨協定、交渉越年か 韓国経済副首相が示唆(2016/12/12 10:29付 日本経済新聞電子版より)
朴大統領弾劾可決後、韓日通貨スワップはどうなるのか(2016年12月12日14時20分付 中央日報日本語版より)

最速の時事通信の報道

さて、日本の報道の特徴は、この手の「出所不明な(あるいは曖昧な)記事」が、ほぼ同時に背信される、という点にあります。そして、日本の報道の「後追い」で、今度は韓国のメディアがこれを紹介する、という構図です。

ところが、今回の記事については、不自然なことに、私が確認できた最初の情報源である時事通信の記事には

「韓国側の財相が日本との通貨スワップ協定の再締結に向けた交渉について、年内の妥結は難しいとの認識を示した」

とあります。しかも、時事通信の報道を見ても、日本側の政府高官の発言などは一切引用されていません。ということは、時事通信の記者は、韓国の財相の発言だけをもとに、この記事を書いたというのでしょうか?

「韓国の財相が述べたのなら、最初に報じるのは韓国のメディアではないのか?」と思ってしまいますが、今回の記事に関してはそうではありません。本当に不思議ですね。

日経の後追い

次に、日本経済新聞の報道については、先ほどの時事通信の報道よりも、もう少し詳細です。ただ、

「韓国の柳一鎬(ユ・イルホ)経済副首相兼企画財政相は11日、金融危機の際に現地通貨を相互に融通し合う「通貨スワップ協定」の再締結に向けた交渉について「引き続き努力しているが、遅れそうだ」と述べ、年内の再締結は難しいとの認識を示唆した。企画財務省が明らかにした。」

とあります(なお、細かい話ですが、韓国の政府部門の名称は「企画財政『省』」ではありません。「企画財政『部』」です。また、柳一鎬(りゅう・いっこう)氏は「企画財政『相』」ではありません。「企画財政『部長官』(または『部長』)」です)。

しかし、この日本経済新聞の「後追い報道」についても、記事の書きぶりからすると、おそらく日経記者が時事通信を読んで配信したのではなく、同社の独自取材に基づくものと見て良いでしょう。

韓国メディアの記事生成能力を疑う!

そして、思わず笑ってしまうのが、中央日報日本語版の記事です。

「12日、時事通信によると、柳一鎬(ユ・イルホ)副首相兼企画財政部長官は11日、韓日通貨スワップ交渉に対して「引き続き努力しているが、遅れそうだ」と述べて年内の締結は難しいという認識を示した。」

とありますが、柳長官は、韓国メディアに対してこの見解を示していないのでしょうか?まったくもって意味不明です。

日本政府の立場からすると:

ところで、朴槿恵(ぼく・きんけい)大統領が職務停止状態となってしまった現在、日本の対韓外交も、いったん立ち止まる必要があります。従って、日韓スワップのように「新たに概要を決めなければならない交渉」については、交渉が停滞したとしても不思議ではありません。

日韓スワップとGSOMIAの違い

それでは、「日韓スワップ」が「金融面」から韓国を援助する協定だとすれば、「軍事面」から韓国を援助する協定は「包括軍事情報保護協定(GSOMIA)」です。そして、日韓スワップが停滞しているにもかかわらず、GSOMIAは先日(11月23日)、日韓間で署名が完了しました。日韓スワップとGSOMIAの違いはどこにあるのでしょうか?

私見ですが、GSOMIAについては日本の民主党政権時代の2012年7月16日に、韓国側が署名式の直前に「ドタキャン」したものを、今年に入って改めて締結し直したものです。その意味で、GSOMIA自体は既に日韓間の協議も全て終わっており、「全く新たに成立した協定」ではありません。したがって、日韓スワップとGSOMIAには、「ゼロからの交渉」と「署名を待つだけの状態」という、大きな違いがあったのです。

日韓スワップをどう見るか?

当ウェブサイトで私が繰り返し説明してきたとおり、日韓スワップとは、「日本から韓国に対する一方的な金融支援」です。日本の財務省あたりは、「日韓スワップは韓国に進出した日本企業を助けることにもつながるなど、間接的に日本のためにもなる協定だ」などと強弁していますが、こうしたロジックは大きな間違いです(詳しくは『専門家が見る、韓国が「日本との」通貨スワップを欲しがるわけ』中の『4.1 「スワップは日本にも恩恵がある」の大ウソ』、『「日韓通貨スワップ協定」深掘り解説』中の『4.2 日本国民の潜在的な負担、民間企業を税金で助ける』などをご参照ください)。

ただ、それと同時に、韓国はおそらく現在、国全体が深刻な外貨不足に陥っていると考えられます(このあたりの事情の詳細は『韓国の外貨準備の75%はウソ?』をご参照ください)。韓国から見ると、日韓スワップはそれこそ「喉から手が出るほど」欲しいツールです。

言い換えれば、日本から見て日韓スワップは、日韓交渉における「重要な切り札」として使える、ということです。この見方が正しければ、少なくとも朴槿恵大統領の去就が明らかになるまで(遅くとも来年6月7日・水曜日まで)、日韓スワップという重要な「切り札」を「安売り」しないであろうと考えられますし、「安売り」すべきでもありません。

また、「韓国のトランプ(?)」と呼ばれる強硬な反日政治家が、次期大統領の「有力候補」だという報道もあるようです。そうであるならば、日本政府が日韓スワップを再開するのだとしても、

  • 日韓スワップを朴槿恵大統領の任期切れ直後までの期間限定で締結する
  • 日韓スワップを締結するが、日本側から一方的に破棄できる条項を盛り込む
  • 日韓スワップの再開を保留にする

のいずれかが合理的な選択肢となるはずです。

この問題、ますます目が離せそうにありません。

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