本日は、「韓国の外貨準備がウソではないか」という私自身の疑問について考察したいと思います。私は自分のウェブサイトを立ち上げて以来、経済・金融に関して様々な統計を調べています。こうした中、基本的な統計の一つである「外貨準備」について、どうやら韓国がウソをついているのではないかという疑念を払拭することができません。そこで、本日は、今までに調べた統計の内容を振り返るとともに、なぜ私がこのような疑念を抱いているのかについて説明したいと思います。

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    「次のアジア通貨危機」が生じるとしたら?

    以前から私は、「アジア通貨危機が再来するとしたら、どこが導火線になるのか?」という点に、大きな関心を抱いています。そして、過去の通貨危機について研究することは非常に大事だと考えています。

    アジアには外貨ポジションが脆弱な国がいくつかありますが、本日はこの中でも韓国を題材に取り上げ、同国の外貨準備について考察してみたいと思います。

    「通貨危機」とは?

    さて、「通貨危機」とは何でしょうか?

    「通貨危機」に明確な定義はありませんが、ここでは、仮に「国全体が信用を失って、外貨が流出すること」だと定義してみましょう。

    実際に、過去の「アジア通貨危機」や「リーマン・ショック」などの時には、韓国の通貨が売り込まれることで、韓国全体で外貨(とくに米ドル)が足りなくなる、という事態が発生しました。

    ここで、国際通貨基金(IMF)のウェブサイトから、当時の韓国の外貨準備データを眺めてみましょう(図表1図表2。ただし、ここでいう「外貨準備」は金地金を含まない。以下同様)。

    図表1 アジア通貨危機前後の韓国の外貨準備高(金額単位:百万ドル)

    20161203-t1

    図表2 リーマン・ショック前後の韓国の外貨準備高(金額単位:百万ドル)

    20161203-t2

    いずれのグラフで見ていただいても、韓国の外貨準備は危機の前後で急落していることがご確認いただけると思います。

    数値でも確認しておきましょう(図表3)。

    図表3 通貨危機時の外貨準備の減少額
    時期 時点 金額
    アジア通貨危機時 1997年10月 304億73百万ドル
    1997年12月 203億68百万ドル
    2か月間での増減 ▲101億05百万ドル
    リーマン・ショック時 2008年8月 2431億25百万ドル
    2008年12月 2004億28百万ドル
    4か月間での増減 ▲426億97百万ドル

    アジア通貨危機の際には、韓国の外貨準備は300億ドル少々だったものが、わずか2か月間で一気に200億ドルにまで減少。韓国はその後、IMFからの支援を余儀なくされました。

    また、リーマン・ショックの際には、4か月の間に427億ドルもの資金流出が発生。このときには、日韓通貨スワップ協定の金額を従来の130億ドルから一気に300億ドルにまで拡充することで、韓国は何とか難局を乗り切ったのです。

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    なぜ外貨準備が急減するのか?

    では、なぜ通貨危機の際に外貨準備が急減するのでしょうか?

    その理由の一つは、自国通貨が「売り浴びせ」を受けた時に、それを「買い戻す」ために、外貨準備資産の中から外貨を売却しなければならないからです(いわゆる「為替介入」)。

    為替介入の基本的な操作は、自国通貨を買えば自国通貨が上昇し、売れば自国通貨が下落します(図表4)。

    図表4 為替介入の基本
    為替介入の目的 オペレーション 目標
    通貨防衛 自国通貨買い・外国通貨売り 自国通貨の下落の防止
    為替安誘導 自国通貨売り・外国通貨買い 自国通貨の上昇の防止

    ただ、この「為替介入」については、どちらも問題があります。

    まず、「通貨防衛」を目的とした為替介入の場合、保有している外貨準備の範囲内でしか介入ができません。

    図表1~3で見たとおり、韓国はアジア通貨危機、リーマン・ショックの際に、それぞれ、自国通貨の防衛を余儀なくされました。しかし、外貨準備が枯渇してしまえば、それ以上自国通貨を「防衛」することはできません。そして、最悪の場合には、自国通貨が「フリーフォール」状態となるかもしれません。

    そうなれば、国内の企業は外国からお金を借り換えることができなくなり、最悪の場合、大企業が相次いでバタバタと倒産してしまうかもしれません。実際にアジア通貨危機の際には、大手財閥がいくつか経営破綻しています(詳しくは日本銀行のレポートなどもご参照ください)。

    自国通貨売りも「無制限」にはできない

    一方、自国通貨を売る方の為替介入も、無制限にはできません。

    なぜなら、「自国通貨を売って外貨を購入する」という為替介入をすると、市場に自国通貨が溢れてしまうからです。自国通貨を市場にじゃぶじゃぶ供給することを、専門用語では「量的緩和」と呼びます。

    現在の日本のように、デフレからの脱却に悩んでいるという状況であれば、たとえば日本銀行が「円を刷って米国債を買う」などのオペレーションを行えば、結果的に「円売り・ドル買い介入」と「量的緩和政策」を両立させることができます(その意味で、なぜ日本銀行が外債オペレーションをやらないのか、私には不思議でなりませんが…)。

    しかし、アジア諸国の場合、通貨供給量をきちんとコントロールしないと、すぐにインフレ率が上がってしまいます。このため、自国通貨を売って外国通貨を買い入れる場合、たとえば日本ならば財務省が短期国債(TDB)を発行し、外為特会勘定で行っていますし、韓国の場合は中央銀行である韓国銀行が「通貨安定証券」なるものを発行して市場から資金を吸収しなければなりません。

    ちなみに、中国の外貨準備は世界最大といわれていますが、その大きな理由は、中国当局が為替相場をコントロールするために、外貨を買い入れて中国人民元を売却しているからです。しかし、どのみち、無制限に通貨供給量を増やすわけにはいきません。やり過ぎると、2012年1月のスイスのように、自国通貨買い介入は破綻を来します。

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    外貨準備の「中身」の議論

    通貨危機について議論する時には、もう一つ、重要な論点があります。それは、「外貨準備の中身」です。

    主要国の「外貨準備」について眺めてみる

    「外貨準備」とは、平たく言えば、「困った時に国際市場でいつでも売れる資産」のことです(厳密な定義と要件については用語集『外貨準備と通貨スワップの関係』をご参照ください)。

    「外貨準備」は、その定義上、「世界中で通用する通貨」でなければなりません。これについて、IMFの外貨準備統計(COFER)によれば、世界の外貨準備の構成通貨は米ドルが約63%、ユーロが約20%、ポンド・円がそれぞれ約5%弱ずつとなっており、この4つの通貨で全体の9割超を占めています(図表5。ただし、内訳が判明する通貨のみの集計。詳しくは用語集『国際通貨・主要通貨とは?』をご参照ください)。

    図表5 IMFのCOFER
    通貨/区分 金額 Aに対する比率
    米ドル 4兆7598億ドル 63.39%
    ユーロ 1兆5150億ドル 20.18%
    英ポンド 3521億ドル 4.69%
    日本円 3406億ドル 4.54%
    加ドル 1490億ドル 1.98%
    豪ドル 1430億ドル 1.90%
    スイス・フラン 215億ドル 0.29%
    その他の通貨 2281億ドル 3.04%
    小計(A) 7兆5091億ドル 100.00%
    内訳不明分 3兆4841億ドル
    合計 10兆9931億ドル

    【出所】「世界公式外貨準備構成」(World Currency Compositions of Official Foreign Exchange Reserves, COFER)の2016年第Ⅱ四半期末の数値

    外貨準備の多くは米国債?

    つまり、世界の諸国の外貨準備高全体の6割は米ドルで占められており、多くの国は現金をそのまま持っておくのではなく、米国債で運用しています。

    それでは、実際に外貨準備の額と、各国が投資する米国債の額を比べてみましょう。ここでは、2016年8月時点の「対米証券投資統計(Treasury International Capital,TIC)」の数値の整合性を検証してみます(図表6)。

    図表6 外貨準備とTICの差額(2016年8月時点、単位:百万ドル)
    外貨準備 米国債 差額
    中国 3,205,213 1,185,100 2,020,113
    日本 1,223,783 1,144,000 79,793
    韓国 370,646 90,200 280,446
    ドイツ 62,094 103,700 ▲41,606
    スイス 644,021 237,900 406,121

    【出所】IMFと米国財務省“Treasury International Capital”アーカイブ

    このTICデータは、ある国から米国債を購入した金額の合計額を示しているため、その国の銀行等金融機関が米国債を購入している場合もあり、必ずしも外貨準備が米国債を買いに行っている金額と一致するわけではありません。

    ただ、この二つの数値が著しい不整合を示している場合には、何か「ウラ」があると見るべきでしょう。

    日本、ドイツは自然な数値

    まず、日本とドイツについては、外貨準備の額と米国債の額に大きな不整合はありません。

    日本の場合は外貨準備が約1.2兆ドル、保有する米国債が約1.1兆ドルであり、差額はほとんどありません。おそらく、日本の銀行等の金融機関が米国債をかなり保有しているはずですし、また、日本も外貨準備の全額を米ドルで投資しているわけではないと考えられることから、この程度の差額は十分に合理的な説明が付きます。

    また、ドイツの場合は外貨準備の額を米国債の額が上回っていますが、これは、ドイツの外貨準備自体が621億ドルと少なく、また、ドイツ国内の金融機関が米国債を購入していると考えられるため、特段の異常値ではありません。

    スイスも合理的に説明可能

    一方、中国、韓国、スイスについては、明らかに外貨準備の額と比べて、保有している米国債の額が少なすぎます。

    ただ、スイスの場合は、「対ユーロでの為替相場」をコントロールする金融政策を採用しており、スイスの外貨準備の大部分はユーロ建ての資産であるとと考えて良いでしょう。また、むしろスイスが保有する2379億ドルもの米国債は、大部分がスイス国内の金融機関が保有するものであると考えられます。

    そのように考えたら、スイスの外貨準備の額と米国債の額が全く異なる点については、自然に合理的な説明が可能です。

    中国と韓国は「異常値」

    しかし、中国と韓国の場合は、外貨準備の額と保有する米国債の額に著しい不整合があり、これについては説明できません。

    中国の場合、おそらく、外貨準備の中から「中国投資公社」(CIC)あたりに巨額の資金が流れているため、実質的には3兆ドル少々の外貨準備のうち、2兆ドル(!)が「すぐに使えない資金」となってしまっていると考えて良いでしょう。

    そして、韓国の場合も同様に、外貨準備が3706億ドルあると言いながら、保有している米国債の額はわずかに902億ドルに過ぎません。残りの2804億ドルは、いったいどこに行ってしまったのでしょうか?

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    韓国の統計の「ウソ」

    さて、ここで以前の記事『韓国は統計をごまかしているのか?』の中で説明した、資金循環統計の「ごまかし」について、もう一度確認してみましょう。

    「その他の外国債権債務」の金額が大きすぎる!

    まず、韓国銀行のウェブサイトから取れる「資金循環統計」の中から、韓国と外国の資金授受の関係を再確認しておきます(図表7)。

    図表7 韓国と外国との資金授受
    区分 項目 金額(十億ウォン)
    韓国から外国への投資等 外貨建債券 120,327
    株式等 185,554
    対外直接投資 341,518
    その他外国債権債務 603,793
    上記以外 133,695
    合計(①) 1,384,887
    外国から韓国への投資等 対外直接投資 210,085
    国内債券 95,825
    外貨建債券 141,362
    株式等 421,897
    その他外国債権債務 165,873
    (上記以外) 82,746
    合計(②) 1,117,788
    対外純債権 ①-② 267,099

    ここで、ポイントは次の2点です。

    • 「韓国から外国に投資している金額」に含まれる「その他外国債権債務」という金額は604兆ウォン(約67兆円、約6000億ドル)で、韓国の外国に対する投資残高(1385兆ウォン、約154兆円、約1兆3840億ドル)の半額を占めており、また、対外純債権(267兆ウォン、約30兆円、約2670億ドル)と比べても非常に巨額であること。
    • 「外国から韓国に投資している金額」に含まれる「その他外国債権債務」という金額は166兆ウォン(約18兆円、約1660億ドル)で、韓国が外国から資金調達している金額(1118兆ウォン、約124兆円、約1兆1178億ドル)の15%程度と巨額であること。

    このうち、本日は「資産側の論点」だけについて触れてみます。

    資産側の「その他」の怪しさ

    資産側の「その他の外国債権債務」の金額(604兆ウォン)については、その6割以上が、韓国の中央銀行である「韓国銀行」に計上されています。ここで、韓国銀行のバランスシートを確認してみましょう(図表8)。

    図表8 韓国銀行のバランスシート(金額単位:十億ウォン、2016年6月時点)
    区分 科目 金額
    資産 その他の外国債権債務 374,232
    その他の資産 57,299
    資産合計 431,461
    負債 マネタリーベース 232,321
    債券 185,677
    その他 13,463
    負債資本合計 431,461

    つまり、韓国銀行のバランスシートを眺めると、資産側に計上されている「その他の外国債権債務」の金額は374兆ウォン(約42兆円、約3742億ドル)にも達しており、これだけで韓国銀行の総資産の、実に87%を占めています。

    一方、負債側には(なぜか)債券が186兆ウォン(約21兆円)計上されていますが、中央銀行が債券を発行するのは非常に異例です。これは、自国通貨を市場で売った時に、マネタリーベースが増大するのを防ぐために、中央銀行自身が発行した「通貨安定証券」と呼ばれるものであり、韓国銀行としても相当に無理をして為替介入を行っていることがわかります。

    外貨準備の正体は「その他の外国債権債務」?

    中央銀行のバランスシートの特徴を踏まえると、この韓国の中央銀行に計上されている「その他の外国債権債務」374兆ウォンこそが、韓国の「外貨準備」であると考えて良いでしょう。

    ただ、通常、外貨準備に含められる資産は、「その他の外国債権債務」ではなく、「現金・SDR」や「債券」の勘定に計上されます。韓国の中央銀行が、なぜこの「その他の外国債権債務」勘定を使っているのかは、よくわかりません。

    一つの仮説ですが、おそらく、「その他の外国債権債務」(ドル換算で約3742億ドル)のうち、本当に資産性があるのは、米国債(2016年8月末で902億ドル、6月末で821億ドル)に過ぎません。そして、残りの2921億ドルは、おそらく、流動性が低い資産(場合によっては不良資産?)でしょう。

    韓国の実質的な外貨準備は75%がウソ!?

    というわけで、本日の結論です。

    韓国が公表する外貨準備高は、米ドル換算で、だいたい4000億ドル弱(円換算で約30~35兆円程度)です。しかし、他の様々な統計と突合してみると、本来ならば外貨準備の多くを占めるはずの米国債の金額が800~900億ドル(外貨準備全体の25%前後)に過ぎず、残り75%の内訳は不明です。

    中国の場合は外貨準備の金額がSWF(国富ファンド)などに流用されていると考えられますが、韓国の場合はこの金額が全く「内訳不明」になってしまっています。

    いずれにせよ、韓国が公表する外貨準備の金額のうち、75%くらいは「外貨準備として本当に使えるのかどうかがよくわからない金額」であるというのが私の見立てです。

    本当にこの国は大丈夫なのでしょうか?他国のことながら、返す返すも不安なのです…。

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