日韓スワップ再開は潰えた
本日2本目の更新です。思ったより早く帰京できたので、昨日出てきたニュースを取り上げておきたいと思います。
目次
日韓スワップ再開議論
韓国「韓日スワップを要請しない」
早速ですが、本日紹介したいのは、このリンクです。
韓国企画財政部「韓日通貨スワップ議論の中断に影響なし…先に要請しない」(2017年01月18日06時32分付 中央日報日本語版より)
記事によると
「韓国企画財政部の宋寅昌(ソン・インチャン)国際経済管理官(次官補)は17日、議論が中断された韓日通貨スワップに関連して「大きな影響はない」としながら「日本が話し合いの場に出てくるならわれわれも対話の窓を開けておくが、このような状況で(われわれが先に)要請はしない」と明らかにした。」
とあります。ちなみにここでいう「韓日通貨スワップ」とは、「日韓通貨スワップ取極」のことですが、韓国側が「我々も対話の窓を開けておく」が「我々から先に要請はしない」と述べたことで、事実上、現在の朴槿恵(ぼく・きんけい)政権下で日韓スワップが再開される可能性は、これによりほぼ消えたとみて良いでしょう。
日韓スワップを振り返る
ここで、日韓スワップについて、時系列で簡単に振り返っておきましょう(図表1、図表2)。
図表1 過去の日韓スワップ・締結から失効までの経緯
時点 | 事象 | その時点のスワップ協定 | スワップ金額 |
---|---|---|---|
2001年7月4日 | CMIに基づき日本から韓国への一方的通貨スワップの提供が開始 | 日⇒韓:USDとKRW | 20億ドル |
2005年5月27日 | 日韓中央銀行同士でのスワップ協定(30億ドル相当)が発行 | 日⇒韓:USDとKRW 日⇔韓:JPYとKRW | 20億ドル 30億ドル |
2006年2月24日 | CMIによる20億ドルのスワップを「双方向」に改定し、限度額を引き上げ | 日⇒韓:USDとKRW (韓⇒日:USDとJPY) 日⇔韓:JPYとKRW | 100億ドル (50億ドル) 30億ドル |
2008年12月12日 | リーマン・ショック後に中央銀行同士のスワップ協定を一次増額 | 日⇒韓:USDとKRW (韓⇒日:USDとJPY) 日⇔韓:JPYとKRW | 100億ドル (50億ドル) 200億ドル |
2010年4月30日 | 中央銀行スワップ一次増額措置終了 | 日⇒韓:USDとKRW (韓⇒日:USDとJPY) 日⇔韓:JPYとKRW | 100億ドル (50億ドル) 30億ドル |
2011年10月19日 | 自国通貨同士の交換協定を300億ドルに増額するとともに、従来のCMIの100億ドルスワップに加えて、あらたに300億ドルのスワップを開始(いわゆる野田スワップ) | 日⇒韓:USDとKRW (韓⇒日:USDとJPY) 日⇔韓:JPYとKRW | 400億ドル (50億ドル) 300億ドル |
2012年10月19日 | 野田スワップのうち「300億ドルの米ドルスワップ」が失効 | 日⇒韓:USDとKRW (韓⇒日:USDとJPY) 日⇔韓:JPYとKRW | 100億ドル (50億ドル) 300億ドル |
2012年10月31日 | 野田スワップのうち「中央銀行同士の交換協定の増額措置」が失効 | 日⇒韓:USDとKRW (韓⇒日:USDとJPY) 日⇔韓:JPYとKRW | 100億ドル (50億ドル) 30億ドル |
2013年7月3日 | 日韓中央銀行同士でのスワップ協定(30億ドル相当)が失効 | 日⇒韓:USDとKRW (韓⇒日:USDとJPY) | 100億ドル (50億ドル) |
2015年2月16日 | CMIスワップ(100億ドル相当)が失効 | ― | 0ドル |
図表2 日韓スワップを巡る最近の動き
時点 | 出来事 | 関連資料 |
---|---|---|
2016年8月27日 | 麻生太郎福総理兼財務大臣、韓国の柳一鎬(りゅう・いちこう)副総理兼企画財政部長官との対話の中で、韓国政府側の要請に基づき通貨スワップ協定の詳細について議論を開始することで合意 | 財務省ウェブサイト |
2016年9月27日 | 韓国メディア「韓国政府の関係者は日韓が500億ドル以上の大型通貨スワップを締結する可能性が高いと明らかにした」と報道 | 日韓スワップ「500億ドル」の怪 |
2016年10月24日 | 韓国メディア「韓国政府・企画財政部次官補が『ウォンで米ドルを借りるスワップになる可能性が高い』と述べた」と報道 | 専門家が見る、韓国が「日本との」通貨スワップを欲しがるわけ |
2016年11月11日 | 日本の菅義偉官房長官、「韓国からの申し入れがあれば」、スワップを再開すると明言 | 老獪な菅官房長官の「日韓スワップ」発言 |
2016年12月28日 | 釜山の日本大使館前に慰安婦像が設置される | 【緊急上梓】釜山の慰安婦像問題の本質 |
2017年1月6日 | 日本政府、日韓スワップ再開交渉の中断などの対抗措置を発動 | 慰安婦問題を巡る本当の闘いは始まったばかりだ! |
2017年1月18日 | 韓国企画財政部高官「韓国側から(日韓スワップ再開の)要請はしない」と明言 | 中央日報日本語版記事 |
この一連のやりとりは非常に重要です。なぜなら、日本政府側はあくまでも「韓国から再開の要請があれば受けたい」というスタンスで一貫しているからです。したがって、韓国が「こちらから日韓スワップの再開要請はしない」と明言してしまえば、日本側としても韓国を相手にする必要がなくなります。
日本は全く困らない
現在、朴槿恵大統領自身が「職務停止中」にあるという事情はさておき、韓国政府高官が「韓国側からスワップを要請することはない」と述べてしまった以上は、やはり現行政権下でスワップ交渉が進む可能性は極めて低くなったと見るべきでしょう。
もちろん、日本では財務省や外務省を中心に、日本政府の公務員でありながら、韓国に配慮するようなことばかり考える役人がいることも事実です。しかし、安倍政権としても、国民感情を無視して行政を進めることなどできないでしょうし、だいいち、このインターネット時代ですから、日韓スワップ交渉の再開となれば、日本の国民感情が許さないのではないでしょうか?
日韓スワップがなかったとしても、少なくとも日本としては全く困りません。そして、韓国政府高官が「韓国に日韓スワップは必要ない」と発言したのですから、日韓スワップ協定がなかったとしても、韓国にとっては別に何も困らないはずです。
今後、日本が一時帰国措置中の大使を韓国に帰任させるのか、それとも事実上の「召還状態」となり、このまま国交断絶の議論にまで突き進むのか…。日韓関係を巡っては、まだしばらく目が離せない展開が続きそうです。
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