「韓国経済崩壊論」と韓国の不良資産疑惑
長年私は、韓国が「外貨準備」や「対外純債権」などの基本的な国家統計でウソをついているのではないか、とする疑問を抱いています。韓国の統計には不自然な個所が多く、たとえば韓国は「日本円換算で40兆円近い外貨準備がある」とする統計を公表していますが、私の予想では、韓国の中央銀行である韓国銀行が約40兆円の不良資産を抱えており、これを「外貨準備だ」と偽っているのが実態だと思います。そこで、本日は『「韓国経済崩壊論」を金融面から検証する』の続編として、韓国の「対外債務構造」の問題点について触れてみたいと思います。
目次
問題意識
以前私は『「韓国経済崩壊論」を金融面から検証する』と題した記事を、当ウェブサイトに掲載しました。これは、「金融面から見えてくる韓国経済の基本的な三つの問題点」を「資金循環統計」という客観的証拠から浮き彫りにするという試みで、あまり日本のメディアが取り上げないものです。ところで、この記事を投稿したあとも、私は韓国の資金循環統計をじっくりと読み込んでいるのですが、読めば読むほど韓国が「金融危機」「通貨危機」を発生させやすい構造を取っていることがわかります。本日は、ある報道をきっかけに、『「韓国経済崩壊論」を金融面から検証する』の続編として、「対外債務構造」について考えてみたいと思います。
韓国報道:韓国から債券投資家が「逃げ出す」
ずっととり上げたくて、他のニュースに忙殺されていた話題があります。それは、今週の韓国のメディア「中央日報日本語版」に掲載された、このニュースです。
韓経:韓国債券を売る外国人…保有残高は2013年以来の最低水準(2016年11月08日11時07分付 中央日報日本語版より)
リンク先の「中央日報日本語版」の記事は、「外国人が韓国の債券を売った」というものです。記事によると、
「外国人の韓国国内債券保有残高は2013年1月以来の最低水準となる91兆6000億ウォンになった」
としていますが、実は、この短い記事から、韓国政府の「外貨管理の問題点」が浮かび上がります。
そこで、本日は、「国際収支」と「外貨準備」の関係について、少し専門的な話も交えながら解説を試みたいと思います。
国際的な「投資」の種類
まず、前提条件として、国境をまたいだ「投資」には、いくつかの種類があります。日本の「外為法」等による分類を参考に、主なものを列挙すると、「対外直接投資(FDI)」、「対外証券投資」などがあり、また、「対外証券投資」も投資対象の通貨が自国通貨なのか、外国通貨なのかによって分かれます(図表1)。
図表1 外国からの「投資」の種類
区分 | 定義 | 具体例 |
---|---|---|
対外直接投資(Foreign Direct Investment, FDI) | 外国で事業活動を行うために子会社・関連会社を設立し、または運転・設備資金等を貸し付けること | 外国の会社が自国内に子会社を設立したり、工場を建設したり、設備投資をしたりすること |
対外証券投資 | 資金運用を目的として外国の政府・企業が発行する有価証券を購入すること | 円債(サムライ債、ユーロ円債)、外貨建の外国債券、外国株式 等 |
対外証券投資のうち、その国の通貨による投資 | 投資相手国の通貨で発行された有価証券を購入すること | 中国企業の人民元建て債券、韓国企業のウォン建て債券 等 |
対外証券投資のうち、その国以外の通貨による投資 | 投資相手国以外の通貨(米ドル、ユーロ、円など)で発行された有価証券を購入すること | 韓国企業が日本国内で発行した円建ての社債(いわゆるサムライ債) 等 |
日本だと、日本企業が「外貨建の債券」を発行するケースはそれほど多くありません。日本の債券市場の規模は約1000兆円少々ですが、「居住者発行外債」の金額は2016年6月末時点で、わずか27.5兆円に過ぎません。これに対して、日本が外国に投資している「対外証券投資」の残高は519兆円(!)で、日本が外国から借りている外貨の実に20倍弱もの金額を外国に貸し付けているということです。
日本の外国との「資金授受の状況」をまとめておきましょう(図表2)。
図表2 日本と外国との投資
区分 | 項目 | 金額(億円) |
---|---|---|
日本から外国への投資等 | 貸出 | 1,304,061 |
対外直接投資 | 1,288,760 | |
対外証券投資 | 5,189,722 | |
(上記以外) | 1,260,462 | |
合計(①) | 9,043,005 | |
外国から日本への投資等 | 貸出 | 1,566,880 |
国内株式 | 1,661,486 | |
国内債券 | 1,365,972 | |
(上記以外) | 1,172,397 | |
合計(②) | 5,766,735 | |
対外純債権 | ①-② | 3,276,270 |
金額の表示が「億円単位」であるため、多少見辛いのですが、簡単に言うと、日本が外国に対して投資している金額の合計が約904兆円(①)で、外国が日本に対して投資している金額の合計が約577兆円(②)、その差額である約328兆円が「対外純債権」です。
(余談ですが、「日本は世界最大の金持ち国家だ」、という言い方もできますが、日本国内で使いきれなかった300兆円を超えるお金が外国に流出している、という言い方もできます。確かに外国から受け取る利子や配当が恒常的に日本に入ってくるというのは好ましいものの、日本国内に投資する先がないというのも困りものです。)
すぐに逃げ出す投資
ここで重要なことは、「対外直接投資」と「対外投資投資」の違いです。
「対外直接投資」とは、企業が海外で事業を展開する時に発生する投資であり、たとえば現地に工場や店舗を建てたりするための資金です。このため、何か「困ったこと」が発生しても、すぐに引き上げることができません。最近、中国に進出した日本企業が、中国から撤退しようとしてもなかなか撤退できないというニュースをよく見かけますが、これは「対外直接投資」の性質上、仕方がないことです。
これに対し、「対外証券投資」とは、主に有価証券に対する投資であり、主に銀行や生保、年金などの大口投資家が「資金運用」の一環として行っているものです。このため、債券や株式など、「売りたいときにいつでも売れる」という金融商品が中心であり、たとえば「カントリー・リスク」が高まると、すぐに逃げてしまう、という性質があります。
つまり、対外証券投資残高を見ていれば、外国人投資家がその国の市場をどのように評価しているかという指標に使える、ということです。
危険度が高いのは「外債調達」
証券投資について、重要な観点がもう一つあります。それは、債券などを発行している通貨が「自国通貨建て」か「外貨建て」か、という違いです。
まず、「外国人投資家」が保有している「自国の債券」や「自国の株式」がいくら売られても、自国の株価が下がったり金利が上がったりするだけであり、それらの問題を除けば大きな問題はありません。
しかし、「外国人投資家」から「外債」でお金を借りることができなくなれば、即、「国のデフォルト」が現実味を帯びてきます。たとえば、アルゼンチンやロシア、ギリシャ(※)などのように、外貨で国債を発行していた場合、国であっても「デフォルト」することがあるのです。
(※)なお、ギリシャの場合は厳密にいえば「外貨」ではなく「共通通貨」ですが、「通貨発行権がない通貨で発行された債券である」という意味では、「外債」と全く同じです。
つまり、「国全体がどの通貨でお金を借りているか」という観点こそが、通貨危機を議論するうえで、とても重要なのです(図表3)。
図表3 国全体がどの通貨でお金を借りているか
区分 | 概要 | 備考 |
---|---|---|
自国通貨での資金調達 | 自国の主権で発行した通貨(日本ならば円、中国ならば人民元)でお金を借りること | お金を貸してくれる人が少なくなれば金利が上がるが、その場合でも金利さえ払えばお金を借りることは可能 |
共通通貨・外国通貨での資金調達 | 自国の主権が及ばない通貨(例えば日本にとっての米ドル、ギリシャにとってのユーロ)でお金を借りること | たとえ国家であっても、自国通貨以外のお金を「刷る」ことはできない |
そして、「国全体が外貨でたくさんのお金を借りている」状態で、「国全体(金融機関、民間企業など)が外貨資金繰りに苦労している」という国が、日本の隣にあります。それが韓国です。
改めて見る、韓国の資金循環統計
それでは、実際の韓国全体の資金調達構造は、いったいどうなっているのでしょうか?ここでは、韓国銀行のウェブサイトで公表されている「資金循環統計」(Flow of Funds)から、外国と韓国がどうかかわっているのか、実際の数値で確かめてみましょう。
韓国全体では30兆円程度の「黒字」だが…
「外国から多額のお金を借りる」という発想がない日本人からすると理解し辛いのですが、実は韓国の場合、外貨建で外国からたくさんのお金を借りています。ただし、韓国の金融機関や企業なども対外直接投資等を行っており、国全体としてみると、30兆円程度の「黒字」です。このことを、上記「図表2」と同じような形式で確認してみましょう(図表4)。
図表4 韓国と外国との投資
区分 | 項目 | 金額(十億ウォン) |
---|---|---|
韓国から外国への投資等 | 外貨建債券 | 120,327 |
株式等 | 185,554 | |
対外直接投資 | 341,518 | |
「その他」 | 603,793 | |
上記以外 | 133,695 | |
合計(①) | 1,384,887 | |
外国から韓国への投資等 | 対外直接投資 | 210,085 |
国内債券 | 95,825 | |
外貨建債券 | 141,362 | |
株式等 | 421,897 | |
「その他」 | 165,873 | |
(上記以外) | 82,746 | |
合計(②) | 1,117,788 | |
対外純債権 | ①-② | 267,099 |
2016年6月末時点で、韓国から外国への投資残高が1385兆ウォン(約154兆円)、外国から韓国への投資残高は1118兆ウォン(約124兆円)、差し引きで対外純債権は267兆ウォン(約30兆円)程度です。
ただし、この韓国の統計にはいろいろと問題があります。
多すぎる「その他」資産は不良資産ではないのか?
まず、資金循環統計上の最大の問題点は、「その他の外国債権債務」(Other Foreign Claims and Debts、以下「その他」)勘定の金額が大きすぎる、という点です。
韓国から外国に対する投資残高1385兆ウォン(約154兆円)のうち、「その他」勘定は実に604兆ウォン(約67兆円)と実に約半分に達しています(ただし、円換算額は1円=9ウォンと考えた場合)。これはいったい何なのでしょうか?
この「その他」の金額、604兆ウォンのうち、約半額は中央銀行である「韓国銀行」が保有しているほか、預金取扱金融機関などが保有しています(図表5)。
図表5 「その他」勘定の保有主体別内訳
保有主体 | 金額(十億ウォン) | 円換算 |
---|---|---|
中央銀行 | 374,232 | 約42兆円 |
民間銀行 | 104,125 | 約12兆円 |
ノンバンク | 38,059 | 約4兆円 |
一般政府 | 65,574 | 約7兆円 |
上記以外 | 21,803 | 約2兆円 |
合計 | 603,793 | 約67兆円 |
(ここでも1円≒9ウォンと仮定して換算)
「その他」項目を見に行くと、その過半は中央銀行が保有していますが、これは奇しくも、韓国銀行が「外貨準備だ」と主張している金額(3752億ドル、1ドル=100円とすると約38兆円)と似通っています。
韓国の外貨準備高 4カ月ぶり減少(2016/11/03 08:25付 朝鮮日報日本語版より)
もしかすると、この「その他」という資産項目は、韓国が海外に投資し、リーマン・ショックなどで回収できなくなった不良資産の残骸ではないでしょうか?あくまでも仮説ですが、少なくとも韓国の外貨準備の大部分は「粉飾決算」である、という可能性が出て来てしまうのです。
外国からの借金にも「その他」が!
この「多すぎる『その他』勘定」の問題は、もう一つあります。それは、韓国が外国から借りている方の金額である、166兆ウォン(約18兆円)です。金額的には「韓国から外国への投資」よりもずっと少ないものの、韓国全体の対外負債の金額1118兆ウォン(約124兆円)と比べて「その他」が占める金額は、約15%です。さすがに多すぎます。
この金額については、先日も『「韓国経済崩壊論」を金融面から検証する』の中で触れたとおり、韓国の企業や銀行が外国の銀行からお金を借りた時に、「その他」勘定で処理しているのではないかとの疑いが濃厚です。
韓国の実態バランスとは?
そこで、この「その他」勘定のうち、資産の方は「外国に対する不良資産で回収可能性がゼロ」、負債の方は「外国から外貨で借り入れた借金をごまかしている」と仮定して、図表4を書き換えてみましょう。すると、図表6のとおり、韓国は337兆ウォン(約37兆円)もの対外純債務を負っている、という計算です。
図表6 書き換えた韓国のバランス
区分 | 項目 | 金額(十億ウォン) |
---|---|---|
韓国から外国への投資等 | 外貨建債券 | 120,327 |
株式等 | 185,554 | |
対外直接投資 | 341,518 | |
「その他」 | ||
上記以外 | 133,695 | |
合計(①) | ||
外国から韓国への投資等 | 対外直接投資 | 210,085 |
国内債券 | 95,825 | |
外貨建債券 | 141,362 | |
株式等 | 421,897 | |
「その他」⇒外貨建借入 | 165,873 | |
(上記以外) | 82,746 | |
合計(②) | 1,117,788 | |
対外純債権 | ①-② |
つまり、韓国は「マイナスの対外純債権」(対外純債務)を負っていて、しかも外貨建債券(141兆ウォン、約16兆円)と「その他」の借入金(166兆ウォン、約18兆円)を足した307兆ウォン(約34兆円)の外貨を借り入れている、という計算です。これが事実なら、韓国の外貨ポジションは相当に危険な状況です。
外国人投資家が国内債を売るのは問題ないが…
冒頭に紹介した「中央日報日本語版」の記事は、外国人投資家が「韓国の国内債を売っている」という話でした。実は、外国人が韓国の「国内債」を売る分には、全く問題がありません。というのも、ウォン資金は韓国国内にあるため、外国人がウォンを外貨に両替して外国に資金を引き揚げたとしても、ウォン安になるだけの話であり、ウォンが市場から消滅してしまう訳ではないからです。
しかし、問題はウォン市場そのものの規模が小さく、ちょっとした金額が動くと、すぐにウォンが「暴落」してしまいます。韓国銀行が頻繁に為替介入を行っているのは、これを防ぐためではないでしょうか?
(なお、米国財務省が韓国を「為替操作監視対象国」に認定した真相については、『「日本が為替監視対象国」報道の真相』をご参照ください。)
「外国人投資家が韓国に投資しているウォン資金を引き揚げるために、ウォンを外貨に両替するが、その過程でウォン安が発生するため、韓国銀行が為替介入をし、ドル資金を売却してウォンを買い入れる…。」
実は、このストーリー自体、『「日本が為替監視対象国」報道の真相』で説明したとおり、米国財務省が公式に認定している話です。
ちなみに日本などの先進国の場合、外国人投資家が投資資金を引き揚げるとしても、円資金を外貨に両替するのは完全に市場原理に委ねられています。なぜなら、日本などの主要国は、為替水準に対して原則として不介入を貫いているからです。
問題だらけの韓国
いずれにせよ、今までの当ウェブサイトでの議論をまとめておくと、韓国には随分と問題が山積しているようです。
- 頻繁に為替介入を繰り返しては米国に睨まれる。
- 本当に「約40兆円の外貨準備」があるのかが怪しい。
- あれだけ国を挙げて日本を侮辱しておきながら、日本とのスワップを欲しがる。
そして、中国や韓国は、GDP統計などの基本的な統計で「ウソをつく」という可能性に注意が必要でしょう。私の見立てでは、韓国の統計には、特に外貨準備や対外純債権の部分で、かなりのウソが混じっています。
日本の財務省にも、こんな国と通貨スワップを締結することがどれほどのリスクであるか、今一度、しっかりと認識してもらいたいと思います。
関連記事
日韓スワップや人民元、ハード・カレンシーなどの過去の記事や「用語集」などについては、次のリンクもご参照ください。
日韓スワップ等に関する関連記事
人民元等に関する関連記事
経済・金融に関する用語集
どうか引き続き、当ウェブサイトをご愛読ください。
※【重要】ご注意:他サイトの文章の転載は可能な限りお控えください。
やむを得ず他サイトの文章を引用する場合、引用率(引用する文字数の元サイトの文字数に対する比率)は10%以下にしてください。著作権侵害コメントにつきましては、発見次第、削除します。
※現在、ロシア語、中国語、韓国語などによる、ウィルスサイト・ポルノサイトなどへの誘導目的のスパムコメントが激増しており、その関係で、通常の読者コメントも誤って「スパム」に判定される事例が増えています。そのようなコメントは後刻、極力手作業で修正しています。コメントを入力後、反映されない場合でも、少し待ち頂けると幸いです。
※【重要】ご注意:人格攻撃等に関するコメントは禁止です。
当ウェブサイトのポリシーのページなどに再三示していますが、基本的に第三者の人格等を攻撃するようなコメントについては書き込まないでください。今後は警告なしに削除します。なお、コメントにつきましては、これらの注意点を踏まえたうえで、ご自由になさってください。また、コメントにあたって、メールアドレス、URLの入力は必要ありません(メールアドレスは開示されません)。ブログ、ツイッターアカウントなどをお持ちの方は、該当するURLを記載するなど、宣伝にもご活用ください。なお、原則として頂いたコメントには個別に返信いたしませんが、必ず目を通しておりますし、本文で取り上げることもございます。是非、お気軽なコメントを賜りますと幸いです。
【おしらせ】人生で10冊目の出版をしました
【おしらせ】人生で9冊目の出版をしました
関連記事・スポンサーリンク・広告