韓国のメディア「中央日報」の日本語版に、極めて奇妙な記事を発見しました(といっても同メディアには普段から奇妙な記事が極めて多いので、別に珍しくもありませんが…)。ただ、この記事に加え、同国の政府官僚経験者らの発言を見ている限り、「金融政策と為替介入の違い」を全く理解していないのではないかと疑われることも多々あります。そこで、本日は、「金融政策と財政政策の基本」に触れながら、改めて「どの考え方がおかしいのか」について、考察していきましょう。
目次
FOMC前後の主要国為替相場
米国のFRB(連邦準備制度理事会)は今月13~14日の2日間にかけて開催したFOMC(連邦公開市場委員会)で、FF金利25ベーシス・ポイント(つまり0.25%)の利上げを決定。これを受けて、為替市場では先日より、1ドル=117~118円という円安水準となりました。ドル円が117円台に乗せるのは、私の手元データで見る限り、今年2月8日以来、約10か月ぶりのことです。
さて、「教科書的」には、ある通貨で利上げが行われたら、その通貨は他の通貨に対して上昇するはずです。実際、FOMC政策発表前後で主要国の為替相場を見てみると、少なくとも対円、対ユーロ、対ポンドでは、いずれも「ドル高」方向に動いていることが確認できます(図表1)。
図表1 FOMC前後の為替相場(主要通貨に限定)
通貨ペア | 12月13日 | 12月14日 | 前日比 | 増減率 |
---|---|---|---|---|
USD/JPY | 115.18 | 117.04 | 1.86円の円安・ドル高 | 1.6% |
EUR/USD | 1.0628 | 1.0536 | 0.0092ドルのドル高・ユーロ安 | 0.9% |
GBP/USD | 1.2563 | 1.242 | 0.0143ドルのドル高・ポンド安 | 1.1% |
(【出所】ダウジョーンズ)
為替がこのように動く理由は、「教科書」的には、次のように説明されるケースが多いと思います。
「ある通貨の金利が上昇すれば、資金市場では、その通貨の資金運用需要が高まるため、その通貨が買われて他の通貨が売られる。」
この説明は、ある意味で正しく、実際ここ数年は、特に米ドルの金利が上昇すれば、「米ドル・日本円」と「ユーロ・米ドル」の為替相場も「円安・ドル高」「ドル高・ユーロ安」方向に動いていることが確認できます(特に日本円については、米国10年債、米国30年債との相関係数が高いです)。
ただ、それと同時に、非常に重要な「前提条件」が含まれていることは、あまり知られていません。それは、次の2点です。
- 「資金市場での自由な交換に制約がない」
- 「その国の通貨で運用する資産が存在する」
実際、ここに挙げた四つの通貨は、いずれも成熟した債券市場と、自由交換可能な外為市場が存在しています(ユーロについてはやや怪しいですが…)。このため、金融政策と為替相場の関係を議論する時には、
- ハード・カレンシー同士の交換か、
- ハード・カレンシーとソフト・カレンシーの交換か、
という論点は非常に重要です。特に、私たち日本の周囲には、中国の通貨・人民元(CNH、またはCNY)と、韓国の通貨・韓国ウォン(KRW)という、二つの「非常に不透明な通貨」が存在しています。
そこで、本日は、韓国の新聞「中央日報」の日本語版に掲載された「ある記事」をベースに、金融政策と為替介入の違いについて、簡単に考察してみたいと思います。
財政政策と金融政策の関係
金融政策と為替介入の違いについて誤解する記事
早速ですが、本日の「ネタ」は、この記事です。
日本、「景気浮揚策維持」…円安楽しむ(2016年12月21日08時59分付 中央日報日本語版より)
リンク先の記事は、12月20日の日本銀行政策決定会合で、従来のQQEを踏襲する決定が公表されたことを受けて執筆されたものです。私がなぜこの記事に注目するのかといえば、この記事は韓国の新聞記者が「金融政策と為替介入の違い」を全く理解していない証拠だからです。
この記事のポイントは、次の一文にあります。
「一部では、トランプ氏の当選後に円安ドル高が進み、最近は米連邦準備制度理事会(FRB)が政策金利を引き上げたため、日銀が量的緩和規模を縮小する可能性があるという見方があった。アベノミクスの核心が円安誘導であるだけに追加の量的緩和の必要性が消えたということだ。」(※赤太字部分は引用者による加工)
違います。全く違います。アベノミクスのポイントは、次の三点にあります。
- 機動的な財政政策
- 大胆な金融緩和
- 踏み込んだ構造改革
これのどこに「為替誘導」という単語があるのでしょうか?というよりも、いったいこの記者は、そもそも「先進国における経済の仕組み」を理解しているのでしょうか?
財政政策の基本
それでは、大前提として、マクロ経済学の最も重要な概念である「財政政策」と「金融政策」について、整理しておきましょう。
当たり前の話ですが、財政政策とは中央政府が、金融政策とは中央銀行が行うものであり、この両者は全く別物です。
財政政策とは、「財政出動」(昔の俗語でいう『真水』)であり、金融政策とは「市中の金利操作」や「マネタリーベースの調整」です。
GDP(便宜上「Y1」とします)は「民間消費支出」(C)、「民間投資支出(I)」、「政府財政支出」(G)、「輸出(X)」、「輸入(▲M)」の総和(つまり①式)で定義されます。
Y1=C+I+G+X-M…①
一方、「限界消費性向」という考え方があります。これは、「収入が増えたら(ΔY)、どの程度を支出に回すか(ΔC)という比率」のことであり、②式で定義されます。
ΔC=αΔY…②
ここで、政府支出が「ΔG」だけ増えたときに、消費も「ΔC」だけ増えると仮定すると、新たなGDP(Y2)は、
Y2=C+ΔC+I+G+ΔG+X-M…③
です。よって、政府支出の前後におけるGDPは、
Y2-Y1=ΔC+ΔG…④(=③-①)
です。ここで、「Y2-Y1」は「ΔY」のことですので、②式と合わせると、
ΔY=ΔC+ΔG
⇒ΔY=αΔY+ΔG よって、
ΔY=ΔG÷(1-α)…⑤
と求まります。この「1-αの逆数」が、「政府支出の乗数効果」です。
仮に、αが80%だったと仮定すれば、「1-α」は20%ですから、その逆数は5倍。つまり、1兆円だけ政府支出を行ったとすれば、乗数効果によりその5倍である5兆円だけ、GDPを押し上げる効果があります。
また、財政出動ではなく、減税でも、ほぼ同じような効果があります(ただし、財政出動と減税では、効果は厳密には異なりますが…)。たとえば、日本では消費税の税収が年間10兆円弱ですが、消費税率をゼロ%にすれば、10兆円の財政出動を行ったのとほぼ同じ効果があります。仮に日本の限界消費性向が80%だったとすれば、消費税法を廃止するだけで、実に50兆円(!)も日本のGDPを押し上げることができるのです。
財政政策と金融政策と為替相場の関係
もちろん、実際には財政出動をした場合、期待した経済波及効果が発生しないことも考えられます。特に懸念される効果は「金利市場への影響」と、「為替相場への影響」です。
一般に、ある国が財政政策を行えば、民間の資金市場から資金が吸い上げられて金利が上昇します(いわゆるクラウディング・アウト)。日本の場合、変動相場制を採用しており、また、資金の移動は自由ですので、金利が上昇すれば外国から資金が流入し、為替は円高となります。
金利が上昇すると、投資が抑制されますし、また、円高となった場合には輸出競争力が阻害され、いずれも結果的にGDPを押し下げる効果が働きます。
一方、金融政策とは、市場に流通する資金の量や金利水準の調整です。金融政策として、たとえば金利(無担保O/N金利など)を低下させたり、日本国債を買い入れて市場に資金を供給したりすれば、市場の金利が下落します。結果的に、日本の金利が下落するため、外国に資金が流出し、為替は円安になります。
このため、ある国が積極的な財政政策を行うときに、金融緩和とセットにすれば、クラウディング・アウトを発生させず(つまり金利上昇を伴わず)にうまく経済波及効果を得ることができるのです。
いわば、「財政政策」と「金融政策」は、一国の経済を動かす「車の両輪」である、と言って良いでしょう。
金融政策「一本足打法」の日本
ただ、日本の現在の問題点は、黒田東彦(はるひこ)日銀総裁が主導する「大胆なQQE」によって、せっかく日本銀行がQQEにより大胆な金融政策を吹かしているのに、肝心の財務省が財政出動をしていない点にあります。
それどころか、あろうことか2014年4月に消費税率を引き上げたことで、アベノミクスが「腰折れ」した状態となっています。結局、現在の日本は、「金融政策一本足打法」となってしまっているのです。
ただし、金融緩和の成果は着実に出ています。
例えば、金利が下がったことで住宅投資・不動産投資などの需要が伸びています。また、国民のインフレ期待は十分とはいえない状況にあるとはいえ、雇用情勢は非常に良好であり、日本では全国的に有効求人倍率が1倍を超過するなど、ほぼ「完全雇用状態」が達成されています。
さらに、『若年層失業率と社会不安』で述べたとおり、主要国と比べて若年層失業率も低く、日本社会が主要国と比べても際立って安定している状況にあることは間違いありません。
金融政策と為替介入の違い
金融政策と為替介入が別物だとわからない韓国人知識層
以上で述べたとおり、財政政策とは国内の有効需要を創出し、経済波及効果を通じて景気を回復させることを目的とした政策です。また、金融政策とは、金利を引き下げたり、資金を供給したりすることで、「お金を借りやすい」という状況を作る政策であり、両者の「合わせ技」で一国の経済を回復させることができます。
ただ、いずれの政策を見ても、「為替相場自体」を目的とするものではありません。
もちろん、為替市場に対しては、「財政政策」は「金利上昇」を通じて自国通貨の価値を押し上げる方向に影響を与えますし、「金融政策」は「金利下落」「マネタリーベース増大」を通じて自国通貨の価値を押し下げる方向に影響を与えます。ただし、これらはいずれも「副次的な効果」に過ぎません。
そして、冒頭に紹介した「中央日報」記事を読んでいると、あたかも
「日本銀行は為替安誘導を行うことで日本の輸出産業に有利になるように補助を与えている」
かのようなニュアンスを受けます。それでは、このロジックのどこが間違っているのでしょうか?
日本銀行のバランスシート
手っ取り早く、日本銀行のバランスシートを眺めてみましょう。
ちょうど先日、2016年9月末基準の「資金循環統計」が発表されたばかりですので、これが最新のバランスシートです(図表2)。
図表2 日本銀行のバランスシート・2016年9月末基準
?区分 | 勘定科目 | 金額 |
---|---|---|
資産 | 国債・短期国債 | 413兆4946億円 |
その他の資産 | 68兆4937億円 | |
資産合計 | 481兆9883億円 | |
負債 | 日銀券 | 101兆0086億円 |
日銀当座預金等 | 311兆8346億円 | |
その他の負債・資本 | 69兆1451億円 | |
負債純資産合計 | 481兆9883億円 |
これを見ると、本当に凄いバランスシートですね。国債(財融債含む)・TDBで413兆円もの資産を買い入れているのですが、国債・TDBの発行残高は1091兆円ですから、流通している国債等の、実に40%近くを日銀が買い入れてしまっているのです。
ただし、その裏側では、日銀が発行する紙幣(日銀券)等に加え、「日銀当座預金」、つまり市中の民間金融機関等が日銀に預け入れている超過預金が積み上がっているだけであり、この312兆円という資金が貸出に回っていないのが実情です。
日本の外貨準備の特徴
ちなみに、日本が保有する外貨準備の金額は、2016年9月末時点で127兆円に達しますが、この127兆円という金額は、政府(財務省の外為特会)が発行する約120兆円の短期国債により賄われていると考えられます(著者私見)。日本の場合、過去に度々、為替介入を行っていました。特に民主党政権時代には数十兆円規模の大規模な為替介入が行われていましたが、2012年の自民党政権成立後は、為替介入は全く行われていません。
つまり、日本の外貨準備は、外為特会の中で事実上の「塩漬け」状態にあると考えて良いでしょう。
そして、日本国政府が「短期国債」(TDB)という「ほとんどゼロ金利、あるいはマイナス利回り」の資金調達手段で調達したお金を、米国債という「高金利資産」で運用している格好となっているため、毎年、莫大な利益を日本にもたらしているはずです。
韓国の中央銀行のバランスシート
ところで、こうした健全な日本の中央銀行や外貨準備に対して、「不健全」の代名詞が、韓国の中央銀行のバランスシートではないでしょうか?
というのも、韓国の場合は、中央銀行自身が為替介入を日常的に行っているからです。ここで、少し古いですが、2016年6月末時点の韓国の中央銀行である「韓国銀行」のバランスシートを眺めてみましょう(図表3)。
図表3 韓国銀行のバランスシート
区分 | 科目 | 金額(十億ウォン) |
---|---|---|
資産 | その他の外国債権債務 | 374,232 |
その他の資産 | 57,299 | |
資産合計 | 431,461 | |
負債 | 現金・預金 | 232,321 |
債券 | 185,677 | |
その他 | 13,463 | |
負債資本合計 | 431,461 |
まず、ぱっと目に付くのは、「その他の外国債権債務」という項目です。この金額(374兆ウォン)を、1円=9ウォンで日本円に換算すれば、実に約42兆円という巨額の資産です。
これはいったい何なのでしょうか?もしかして、これが韓国の「外貨準備」なのではないでしょうか?
余談ですが、以前、『韓国の外貨準備の75%はウソ?』の中で指摘したとおり、韓国が保有する米国債の金額は、日本円に換算して10兆円前後に過ぎません。つまり、残り約32兆円分については、全く内訳不明なのです。
以前から市場では、韓国銀行が「巨額の流動性のない証券化商品などの不良資産を抱えている」、という噂を耳にすることがあるのですが、こればかりは、私には全く正体がわかりません。
ただ、本日重要なのは、もう一つ、負債側の「債券」(186兆ウォン)です。
私の予想では、韓国は常時、大々的な為替介入を行っており、その際、
米ドル建ての資産を買い入れて韓国ウォンを市場に放出する
というオペレーションを行っているのではないかと見ています。韓国の場合、為替介入を行っている主体は、おそらく中央政府ではなく中央銀行(韓国銀行)でしょう。そして、韓国銀行が為替介入を行った結果、市場に韓国ウォンが大量に放出されてしまいますので、それを吸収(つまり「不胎化」)するために、中央銀行が自ら債券を発行して資金を回収しているのだと思います(図表4)。
図表4 不透明な韓国の為替介入の仕組み
ステップ | 内容 | 効果 |
---|---|---|
ステップ① ドル買い・ウォン売り介入 | ウォン高を抑制するために、米ドルなどの外貨を買い、市場で韓国ウォンを売却する | 市場でウォンの供給量が増え、その結果、放置しておけばインフレが進行してしまう |
ステップ② 売りオペ | 韓国銀行が保有するウォン建ての有価証券を売却し、市中からウォン資金を回収する(いわゆる「不胎化オペ」) | 韓国銀行はそれほどたくさんのウォン建て資産を保有していない(資産の多くは外貨準備に化けているため) |
ステップ③ 債券発行 | 市場から資金を回収するために、中央銀行自らが債券を発行する | これが「外国為替平衡基金債券」と呼ばれる債券である |
トランプ政権下で対韓経済制裁も!
こうした韓国の不透明な為替介入、韓国の中央銀行はうまく隠しているつもりなのかもしれませんが、米国の目から見ると「バレバレ」です。
以前、『量的緩和と為替介入をごっちゃにする韓国会計士協会長』で触れたとおり、韓国では通貨・金融の専門家であるはずの政府官僚らが、「金融政策」と「為替介入」の違いを理解していないように見受けられます。
そして、『「トランプ通商戦争」の3つの相手国』でも指摘したとおり、米国財務省は既に、韓国が
- 常時、不透明な為替介入を行っていること
- 巨額の対米黒字を抱えていること
の二点を強く問題視しています。
私は、韓国のメディアで冒頭に触れたような記事が出てくるたびに、「金融政策と財政政策の違い」すら理解していない韓国の知識人らに「不安」を覚えます。そして、「露骨に為替市場に直接介入し、自国通貨の価値を下げる」という行為こそ、極めてアンフェアであり、まさに「古き良き米国人」であるトランプ氏が最も嫌う政策です。
私は、トランプ氏が中国を相手とする「通商戦争」を辞さないのではないかと見ていますが、トランプ氏にとっては韓国も有力な「不公正貿易国」となり得ると考えています。
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日経ビジネスオンラインに、次の内容のコメントを投稿しました。
「慰安婦合意、THAAD、GSOMIAの三点セット」とは、非常に参考になりますね。
朴槿恵(ぼく・きんけい)大統領が最も恐れるのは米国から「処断」されることであり、それを防ぐためには、何としてでも米韓同盟を維持する(あるいは少なくとも自分の在任中に米国から切られないようにする)ことだ―。そのように考えると、確かに全ての辻褄が合ってきます。
ただ、私が鈴置編集委員のこの論説を読んでいて、一番腹が立ったのは、韓国という国はいつも日本の足を引っ張る国だ、という点です。もちろん、この記事の内容が事実であれば、という前提ですが、米韓同盟を維持するために、ありもしない「慰安婦強制連行」という虚構で、結果的に日本国民の名誉を犠牲にしたからです。
いずれにせよ私は、中・長期的に韓国が中国の属国となることは避けられないと見ています。韓国社会は急速に「左傾化」しており、おそらくあと10~20年もすれば、米国の影響力は極めて少なくなるでしょう。北朝鮮による日本人拉致事件、南朝鮮による竹島窃盗事件などが解決しないうちに、そうなることは避けなければなりません。
そのように考えていくと、日本国民自身が、「国同士の交戦」を禁じた日本国憲法第9条第2項を撤廃するという決断を下せるかどうかが、日本にとっても重大な分水嶺となるのではないでしょうか?
日経ビジネスオンラインに次のコメントを投稿しました。
WEFによる「世界競争力ランキング」自体、客観性に疑義がある代物であるという点はさておき、日本の「虎の子」の技術を韓国に持ち出した方だけに、韓国の産業競争力の正体が良くわかっていらっしゃるようだ。
何のことはない、韓国産業の発展の原動力とは、国を挙げて「日本に追いつき、追い越せ」をやっていただけのことである。それも、時として非合法、あるいは非合法スレスレの手段を使いながら。この記事の著者の方は、その片棒を担いだという負い目をずっと感じながら生きていくのだと思うと、多少気の毒ではあるが…。
日経ビジネスオンラインに次のコメントを投稿しました。
私も一都民として、普段から「もっと夜遅い時間まで電車を動かせばよいのに」と思っています。タクシー代と深夜バス代金、電車代があまりにも違うため、夜遅くまで遊んでいると、帰宅するためのコストが跳ね上がってしまう―。これが、東京の「ナイトライフ」が「つまらない」と言われる理由なのかもしれませんね。
ただし、著者の方の「焼き鳥一本分の深夜料金の導入」については、鉄道の素人である私には判断しかねる部分もあります。
確かに、鉄道各社は「オフピーク運賃」「土日専用格安切符」などの制度を導入していると聞いたこともありますが、時間制で課金を変更するとなれば、相互乗り入れが極めて複雑化している首都圏・近畿圏の場合は、システム投資にも巨額のコスト負担が生じることでしょうし、「深夜料金を導入すれば良い」という単純なものではないようにも思えるからです。
これに加えて、首都圏などの大都市圏の鉄道網は、緻密な保線計画に従い、日々、レールの点検などが行われていると聞きます。鉄道運行が24時間化すれば、保線コストも莫大なものに跳ね上がるように思えてならないのです。
ただ、いずれにせよこの記事の著者のように、満員電車を解決するために様々な知恵を絞ること自体の重要性はあると思います。