日韓スワップについての記事が増えてきたため、カテゴリとして独立させることにしました。「何となく韓国のような反日国を助けるのは嫌だ」という反感を持っている日本国民が増えていることは事実ですが、こうした反感を持つ背景には、財務省をはじめとする日本政府が通貨スワップの正確な実態をきちんと説明して来なかったことや、新聞・テレビなどのマス・メディアが通貨スワップの条項や実態をきちんと読み込んでいないことがあると思います。そこで、当ウェブサイトでは、「通貨スワップとは何か?」という観点から、きっちりと現状を調べ上げて整理し、何が問題なのかをきちんとわかるように系統立てて整理したいと思っています。ただ、通貨スワップに関する過去記事は膨大になってきました。そこで、このページでは、過去記事や用語集などのリンクをインデックスにして示すとともに、スワップの概要についても簡単にまとめております。なお転載などは自由です(転載等に当たってのルールは『当ウェブサイトの記事の引用・コメントについて』をご参照ください)。
参考図表 ジンバブエの50兆ドル紙幣
ジンバブエの通貨「ジンバブエ・ドル」は、ムガベ政権下での土地改革の失敗により、2008年6月には前代未聞の220万%(つまり物価が22,000倍になり、貨幣価値は22,000分の1になる)という脅威のハイパー・インフレーションを記録。現時点では事実上、通貨として流通していない。
(画像と記事は関係ありません。)
目次
- 1 はじめに
- 2 主要人気記事の目次一覧
- 2.1 2016/09/17付『専門知識解説:「日韓通貨スワップ協定」』
- 2.2 2016/09/30付『日韓スワップ「500億ドル」の怪』
- 2.3 2016/10/07付『「日韓通貨スワップ協定」深掘り解説』
- 2.4 2016/10/13付『韓国から見た日韓スワップの必要性』
- 2.5 2016/10/27付『専門家が見る、韓国が「日本との」通貨スワップを欲しがるわけ』
- 2.6 2016/11/11付『「韓国経済崩壊論」と韓国の不良資産疑惑』
- 2.7 2016/11/13付『老獪な菅官房長官の「日韓スワップ」発言』
- 2.8 2016/11/16付『片山さつき氏の日韓スワップ論に思う』
- 2.9 2016/11/29付『深刻化する韓国経済危機と安易な日韓スワップ再開論』
- 2.10 2016/12/04付『韓国の外貨準備の75%はウソ?』
- 2.11 2016/12/07付『日韓スワップ巡る「麻生発言」と韓国の反応』
- 2.12 2016/12/13: 『「約束を破る国」の通貨は信用されない』
- 2.13 2017/01/02: 『新春ネタ「三つの経済爆弾抱える韓国」』
- 2.14 2017/01/08: 『韓国経済、あと1年が勝負?』
- 3 日韓スワップに関する基本資料
- 4 「新宿会計士」の主張の要点
- 5 「日韓スワップ」カテゴリーの過去記事一覧(自動生成)
はじめに
当ウェブサイトでは、これまで、「日韓スワップの専門的知見からの解説記事」を多数執筆しています。
通貨スワップ(特に日韓スワップ)については、チェンマイ・イニシアティブ(CMI)や国際通貨基金(IMF)の特別引出権(SDR)との関連性、過去に日本が韓国に対しいくらのスワップラインを提供して来たかという経緯、韓国が日本を都合よく利用しては「裏切ってきた」という歴史、さらには「日韓スワップは日本にも経済的メリットがある」という大嘘に至るまで、さまざまな論点があります。
そこで、古い順に並べてリンクを設置(※自動生成)しているほか、「主要人気記事の目次一覧」で、どの記事にどのようなコンテンツが収録されているかを一覧でご確認いただくことが可能であり、あわせて「日韓スワップとは」という基本的な概要を記載しております。
また、このページの最後で、私なりの主張も盛り込んでおります。
主要人気記事の目次一覧
2016/09/17付『専門知識解説:「日韓通貨スワップ協定」』
2016/09/30付『日韓スワップ「500億ドル」の怪』
2016/10/07付『「日韓通貨スワップ協定」深掘り解説』
2016/10/13付『韓国から見た日韓スワップの必要性』
2016/10/27付『専門家が見る、韓国が「日本との」通貨スワップを欲しがるわけ』
2016/11/11付『「韓国経済崩壊論」と韓国の不良資産疑惑』
2016/11/13付『老獪な菅官房長官の「日韓スワップ」発言』
2016/11/16付『片山さつき氏の日韓スワップ論に思う』
2016/11/29付『深刻化する韓国経済危機と安易な日韓スワップ再開論』
2016/12/04付『韓国の外貨準備の75%はウソ?』
2016/12/07付『日韓スワップ巡る「麻生発言」と韓国の反応』
2016/12/13: 『「約束を破る国」の通貨は信用されない』
2017/01/02: 『新春ネタ「三つの経済爆弾抱える韓国」』
2017/01/08: 『韓国経済、あと1年が勝負?』
日韓スワップに関する基本資料
通貨スワップの定義
- 民間金融機関・企業間などで締結されるデリバティブ取引
- 国家(中央政府・中央銀行)間で締結される通貨交換取極
このうち、上記(2)、すなわち国家間で締結される通貨スワップ取極(国家間の通貨スワップ協定)とは、国際協定の一種であり、主に通貨危機などが発生した際に、自国通貨を差し出すことで、外貨の融通を受けるもの。スワップ協定には「二国間スワップ協定(BSA)」と「多国間スワップ協定(MSA)」があるが、当ウェブサイトでは「通貨スワップ協定」といえば、特に断りがない限り「BSA」のことを指している。
二国間スワップ協定(BSA)
二国間スワップ協定(BSA)とは、当事国同士で完結するスワップ協定をいう。BSAの種類としては、次の2つがある。
- 自国通貨同士の交換
- 自国通貨と国際的に通用する通貨(例えば米ドル)との交換
先進国同士のBSA
代表的なものとしては、米欧日英加にスイスを加えた6つの中央銀行が締結しているものがある。
- 米連邦準備制度(Federal Reserve, Fed)
- カナダ銀行(Bank of Canada, BOC)
- イングランド銀行(Bank of England, BOE)
- 日本銀行(Bank of Japan, BOJ)
- 欧州中央銀行(European Central Bank, ECB)
- スイス国立銀行(Swiss National Bank, SNB)
これら6つの中央銀行は、自国通貨を担保に相手国通貨を借り入れることができる。つまり、自国通貨を「刷る」ことで、事実上、必要とする通貨を入手することが可能である。
現在、先進国同士のスワップ協定は「常設」とされており、これらの中央銀行が自らの判断でいずれの通貨によっても流動性を供給することを可能にするものである。ちなみにこの6つのうち、4つはIMFのSDRを構成する「自由利用可能通貨」である。
なお、実際の「ドルとのスワップ」の残高はニューヨーク連銀(NY Fed)のウェブサイト “Federal Reserve Foreign Exchange Swap Agreements” などで確認できるが、当記事執筆時点において最も多額のドルを借りている銀行は欧州中央銀行(ECB)である。
先進国と発展途上国のBSA
一方、先進国が発展途上国と締結するBSAは、一方的に発展途上国を「支援する」という側面が強い。後述の「チェンマイ・イニシアティブ(CMI)」がその典型例。ただし、日本の場合は発展途上国とのBSAのうちの多くは既に後述の「CMIM」に移行しており、当記事執筆日時点において存在する、先進国以外の通貨スワップ協定は、次の通り。
相手国 | 金額 | 備考 |
---|---|---|
日本⇔インド | 500億ドル | 自国通貨と米ドルの交換 |
インド⇒日本 | ||
日本⇒インドネシア | 227.6億ドル | 自国通貨と米ドルの交換 |
日本⇒フィリピン | 120億ドル | 自国通貨と米ドルの交換 |
フィリピン⇒日本 | 5億ドル | |
日本⇒シンガポール | 30億ドル | 自国通貨と米ドルの交換 |
シンガポール⇒日本 | 10億ドル |
(【出所】財務省ウェブサイト「アジア諸国との二国間通貨スワップ取極」及び「日印スワップ」)
発展途上国同士のBSA
発展途上国同士、あるいは「ソフト・カレンシー国」同士がBSAを締結することもある。たとえば韓国の場合、次の5カ国とスワップを契約している。
当事国 | 交換される金額 | 備考 |
---|---|---|
中国⇔韓国 | 3600億元/64兆ウォン | 自国通貨同士の交換 |
インドネシア⇔韓国 | 115兆インドネシアルピア/10兆7000億ウォン | 自国通貨同士の交換 |
豪州⇔韓国 | 50億豪ドル/5兆ウォン | 自国通貨同士の交換 |
UAE⇔韓国 | 200億ディルハム/5兆8000億ウォン | 自国通貨同士の交換 |
マレーシア⇔韓国 | 150億リンギット/5兆ウォン | 自国通貨同士の交換 |
しかし、韓国がスワップ契約を締結している相手は、豪州を除けばいずれも「ソフト・カレンシー国」ばかりであり、通貨危機時の通貨防衛に使える実効性のあるスワップではない。
多国間スワップ協定(MSA)とCMI、CMIM
多国間スワップ協定(MSA)とは、多国間のスワップ協定であり、「チェンマイ・イニシアティブのマルチ化協定(CMIM)」がその典型例。
チェンマイ・イニシアティブ(CMI)とは、1997~98年に発生した「アジア通貨危機」を受け、アジア地域の通貨の安定を図る仕組みが必要だとして、日本が主導する形で成立した地域間で通貨を融通する仕組み。タイのチェンマイで開催された2000年5月の「第2回ASEAN+3財相会議」で合意されたため、これを「チェンマイ・イニシアティブ」と呼ぶ。日本は東南アジア諸国だけでなく、韓国との間でもスワップ協定を締結した。
ただし、この「CMI」は地域内で数多くの二国間通貨スワップ取極(Bilateral Swap Arrangement, BSA)が締結されるものであり、仕組みとしても非常にわかり辛いことから、2010年3月にはCMIが「マルチ化」した(いわゆるCMIマルチ化協定、CMIM)。日本の財務省はこのCMIMについて、次のメリットがあると述べている。
- 一本の契約の下で、通貨スワップ発動のための当局間の意思決定の手続きを共通化
- これを機に、全てのASEAN加盟国が参加するようになった
- 締結されたスワップ総額の20%までは国際通貨基金(IMF)プログラムとのリンクなしに発動可能
これを受けて現在、日本はASEAN諸国とのBSAの多くをCMIMに移行させている。CMIMの締結国と拠出額、引出可能額の一覧は次の通り。
参加国 | 拠出額 | 引出可能額 |
---|---|---|
日本 | 768億ドル | 384億ドル |
中国(※香港含む) | 768億ドル | 405億ドル |
韓国 | 384億ドル | 384億ドル |
インドネシア、タイ、マレーシア、シンガポール、フィリピン | 各91.04億ドル | 各227.6億ドル |
ベトナム | 20億ドル | 100億ドル |
カンボジア | 2.4億ドル | 12億ドル |
ミャンマー | 1.2億ドル | 6億ドル |
ブルネイ、ラオス | 各0.6億ドル | 各3億ドル |
(【出所】財務省・2014年7月17日付「別添2」)
日韓スワップの正式用語と定義
日韓スワップ(正式には「日韓通貨スワップ取極」)とは、日韓両国の中央銀行または中央政府の間で締結される「通貨交換取極」のこと。用語としては「日韓通貨スワップ協定」、「日韓スワップ」などの表現をすることもある。形式上は「韓国が通貨危機になった時には日本が韓国に米ドルか日本円を提供し、日本が通貨危機になった時には韓国が日本に米ドルか韓国ウォンを提供する」という取極めだが、日本は円換算で100兆円を超える外貨準備を有し、かつ、米FRBと無制限の通貨スワップ協定を保持しているため、米ドルなどの外貨不足に陥る可能性は現状で極めて低い。
種別 | 概要 | 備考 |
---|---|---|
日本円・韓国ウォンのスワップ | 日本が韓国に日本円を渡し、韓国が日本に韓国ウォンを渡すというスワップ協定 | 形式上は「対等な自国通貨同士の交換協定」だが、韓国ウォンは典型的な「ソフト・カレンシー」であり、国際的通用力はない一方、日本円自体が世界で3番目に通用力の高い通貨であることから、「日本円・韓国ウォン」スワップは事実上、日本からの韓国に対する一方的支援である。 |
米ドル・韓国ウォンのスワップ | 日本が韓国に米ドルを渡し、韓国が日本に韓国ウォンを渡すというスワップ協定 | 韓国が自国通貨「韓国ウォン」を担保に差し出すことで、日本から米ドルという「世界の基軸通貨」を融通してもらう協定であり、明らかに日本による韓国に対する一方的支援である。 |
米ドル・日本円のスワップ | 韓国が日本に米ドルを渡し、日本が韓国に日本円を渡すというスワップ協定 | 日本は100兆円を超える外貨準備を有し、米FRBと無制限の通貨スワップ取極を保持していることから、日本がドル不足に陥ることは極めて考え辛い。よって、あたかも「対等なスワップ協定である」かのように装いたいという韓国のメンツに日本が配慮した条項と見ることが適切。 |
過去の日韓スワップの金額と種別の変遷
時点 | 出来事 | その時点のスワップ | 限度額 |
---|---|---|---|
2001/07/04 | CMIに基づき、日本から韓国への一方向スワップの提供開始 | 日本⇒韓国:20億米ドルと韓国ウォンを交換 | 20億ドル |
2005/05/27 | 中央銀行同士のスワップ協定が発効 | 日本⇔韓国:30億ドル相当の自国通貨同士を交換 | 50億ドル |
2006/02/24 | CMIスワップを20億ドルから100億ドルに拡充 | 日本⇔韓国:30億ドル相当の自国通貨同士を交換 日本⇒韓国:100億米ドルと韓国ウォンを交換 韓国⇒日本:50億米ドルと日本円を交換 | 130億ドル |
2008/12/12 | リーマン・ショックにより中央銀行スワップを拡充 | 日本⇔韓国:200億ドル相当の自国通貨同士を交換 日本⇒韓国:100億米ドルと韓国ウォンを交換 | 300億ドル |
2010/04/30 | 中央銀行スワップの拡充措置終了 | 日本⇔韓国:30億ドル相当の自国通貨同士を交換 日本⇒韓国:100億米ドルと韓国ウォンを交換 | 130億ドル |
2011/10/19 | 自国通貨同士の交換協定を300億ドルに「10倍増」。CMIの100億ドルとあわせて新たに300億ドルの「野田スワップ」を締結 | 日本⇔韓国:300億ドル相当の自国通貨同士を交換 日本⇒韓国:400億米ドルと韓国ウォンを交換 | 700億ドル |
2012/10/19 | 「野田スワップ」が失効 | 日本⇔韓国:300億ドル相当の自国通貨同士を交換 日本⇒韓国:100億米ドルと韓国ウォンを交換 | 400億ドル |
2012/10/31 | 中央銀行スワップ増額失効 | 日本⇔韓国:30億ドル相当の自国通貨同士を交換 日本⇒韓国:100億米ドルと韓国ウォンを交換 | 130億ドル |
2013/07/03 | 中央銀行スワップ自体が失効 | 日本⇒韓国:100億米ドルと韓国ウォンを交換 | 100億ドル |
2015/02/16 | CMIスワップが失効 | ― | 0ドル |
日韓スワップに関する最近の動き
日付 | 出来事 | 関連資料 |
---|---|---|
2013/07/03 | 中央銀行同士の以下の「日韓双方向2国間スワップ」が失効 30億米ドルに相当する日本円と韓国韓国ウォンの交換 | 財務省ウェブサイト |
2015/02/23 | CMIに基づく以下の「日韓双方向2国間スワップ」が失効 ●日本⇒韓国:100億米ドルと韓国ウォン ●韓国⇒日本:100億米ドルと日本円 | 財務省ウェブサイト |
2016/08/27 | 麻生太郎福総理兼財務大臣、韓国の柳一鎬(りゅう・いちこう)副総理兼企画財政部長官との対話の中で、韓国政府側の要請に基づき通貨スワップ協定の詳細について議論を開始することで合意 | 財務省ウェブサイト |
2016/09/27 | 韓国メディア「韓国政府の関係者は日韓が500億ドル以上の大型通貨スワップを締結する可能性が高いと明らかにした」と報道 | |
2016/10/24 | 韓国メディア「韓国政府・企画財政部次官補が『ウォンで米ドルを借りるスワップになる可能性が高い』と述べた」と報道 | |
2016/11/11 | 日本の菅義偉官房長官、「韓国からの申し入れがあれば」、スワップを再開すると明言 |
「新宿会計士」の主張の要点
韓国のメディアは「韓日スワップは日本にもメリットがある」としきりに報道していますが、そんなのウソです。
日韓スワップには「好きで韓国と関わりを持ってしまった日本企業を助ける」効果がありますが、仮にそうだとしても、企業の自己責任原則に反します。
日本とのスワップがあれば、韓国はこれからさらに積極的に不当な為替介入を繰り返し、日本企業の輸出競争力を削ぐことにもなりかねません。
反日国に対する安易な通貨スワップの提供は百害あって一利なし、です。
財務省さん、消費税を増税して景気を腰折れさせただけじゃなく、国民の税金をドブに捨てるような日韓通貨スワップ協定締結を強行するならば、国民の間で「財務省不要論」が高まりますよ。
それでもスワップを締結するのなら、最低限、次の3点は必要でしょう。
- 「韓国政府からの要請に基づいて日本が一方的に韓国を支援するスワップを締結した」ということが国際社会にもわかるよう、「日本から韓国への一方向スワップ」とする
- 「スワップを引き出すならIMFの介入が必要だ」、などの特約を付ける
- スワップの期間も3か月とか、うんと短期の契約にして、韓国が慰安婦像などの反日ネタを持ち出して来たらすぐに解除する
特に、スワップの規模を韓国が必要とする「500億ドル」にするのなら、IMFリンク条項をつけておいて、韓国が実質的に引き出せなくすることが必要です。