貿易統計に見る「意外と貿易依存度が低い日本」の現状
今月初旬から開始した『数字で読む日本経済』シリーズ、いちおう、本稿をもって「書きたい」と思っていた内容は、あらかた書き尽くしたつもりです。ただし、「数字で見る」から離れて、欧州の付加価値税(VAT)における軽減税率の状況や、社会保険料の徴収漏れなどを防ぐための「歳入庁の創設」などの論点については、本稿の番外編として、改めて掲載したいと思います。本日は「モノの流れ」、すなわち貿易統計から見た日本と外国とのつながりです(本稿はどちらかといえば「数字の羅列」です)。
目次
本日は輸出入ランキング
『数字で読む日本経済』シリーズ、数日空いてしまいましたが、当初目論んでいた「ヒト・モノ・カネの流れから見た日本と外国の繋がり」、最終稿は「モノの流れ」、つまり貿易について眺めていきたいと思います。
本日使用するデータは、財務省・税関が公表する『普通貿易統計』です。
この統計、非常に重く、効率的に加工するためにはデータベースを触るなどのテクニックが望ましいため、なかなか一般の人が読み解くのが簡単ではありません。しかし、1988年からのデータを取ることができるため、長い趨勢で日本と外国のつながりを見ていくことができるという長所もあります。
ちなみに本稿は文字数こそ少ないものの、『数字で読む日本経済』シリーズで執筆するのに一番時間がかかったのはここだけの話です。
(※なお、本稿では図表9を除き、すべてのデータの出所が『普通貿易統計』であるため、図表直後の出所表記は割愛します。)
輸出入の基礎データ
輸出先ランキング
さっそくですが、昨年の輸出先・輸入先のランキングから見ていきましょう。
図表1 日本の輸出先ランキング(2018年)
ランキング | 相手国 | 金額 |
---|---|---|
1 | 中華人民共和国 | 15兆8977億円 |
2 | アメリカ合衆国 | 15兆4702億円 |
3 | 大韓民国 | 5兆7926億円 |
4 | 台湾 | 4兆6792億円 |
5 | 香港 | 3兆8323億円 |
6 | タイ | 3兆5625億円 |
7 | シンガポール | 2兆5841億円 |
8 | ドイツ | 2兆3056億円 |
9 | オーストラリア | 1兆8862億円 |
10 | ベトナム | 1兆8142億円 |
まず、輸出面から見ると、日本にとって最大の輸出相手国は中国であり、次いで米国で、それに韓国、台湾、香港、タイなどの近隣国が続きます。また、それと同時に米中両国に対する輸出高はほぼ肉薄しており、ここ数年で見ると、1位、2位が頻繁に入れ替わっています(図表2)。
図表2 輸出先の1位と2位
年 | 1位 | 2位 |
---|---|---|
2010 | 中国(13兆0856億円) | 米国(10兆3740億円) |
2011 | 中国(12兆9022億円) | 米国(10兆0177億円) |
2012 | 中国(11兆5091億円) | 米国(11兆1884億円) |
2013 | 米国(12兆9282億円) | 中国(12兆6252億円) |
2014 | 米国(13兆6493億円) | 中国(13兆3815億円) |
2015 | 米国(15兆2246億円) | 中国(13兆2234億円) |
2016 | 米国(14兆1429億円) | 中国(12兆3614億円) |
2017 | 米国(15兆1135億円) | 中国(14兆8897億円) |
2018 | 中国(15兆8977億円) | 米国(15兆4702億円) |
2019 | 米国(11兆5462億円) | 中国(10兆6364億円) |
つまり、日本にとって米国と中国は、輸出先としてはほぼ同じくらい大切な国だ、ということであり、しかも両者は頻繁に入れ替わっている、という事実が確認できます。
また、このランキングを長いスパンで眺めたものが、図表3です。
図表3 輸出先ランキング(1988年以降、31年分)
輸入先ランキング
次に、日本の輸入先ランキングについても確認しておきましょう(図表4)。
図表4 日本の輸入先ランキング(2018年)
ランキング | 相手国 | 金額 |
---|---|---|
1 | 中華人民共和国 | 19兆1937億円 |
2 | アメリカ合衆国 | 9兆0149億円 |
3 | オーストラリア | 5兆0528億円 |
4 | サウジアラビア | 3兆7329億円 |
5 | 大韓民国 | 3兆5505億円 |
6 | アラブ首長国連邦 | 3兆0463億円 |
7 | 台湾 | 2兆9975億円 |
8 | ドイツ | 2兆8693億円 |
9 | タイ | 2兆7707億円 |
10 | インドネシア | 2兆3789億円 |
豪州、サウジ、UAE、インドネシアなどの資源国に加え、近隣の韓国や台湾やタイ、欧州の輸出大国のドイツなどの顔ぶれが確認できますが、輸入先は基本的に1位は不動の中国、2位は不動の米国です(図表5)。
図表5 輸入先の1位と2位
年 | 1位 | 2位 |
---|---|---|
2010 | 中国(11兆4360億円) | 米国(5兆5123億円) |
2011 | 中国(13兆4130億円) | 米国(5兆9114億円) |
2012 | 中国(14兆6419億円) | 米国(5兆9314億円) |
2013 | 中国(15兆0388億円) | 米国(6兆0821億円) |
2014 | 中国(17兆6600億円) | 米国(6兆8148億円) |
2015 | 中国(19兆1765億円) | 米国(7兆5427億円) |
2016 | 中国(19兆4288億円) | 米国(8兆0598億円) |
2017 | 中国(17兆0190億円) | 米国(7兆3221億円) |
2018 | 中国(18兆4593億円) | 米国(8兆0903億円) |
2019 | 中国(19兆1937億円) | 米国(9兆0149億円) |
また、輸入先のグラフについても確認しておきましょう(図表6)。
図表6 輸入先ランキング(1988年以降、31年分)
主要相手先別貿易の状況
次に、日本の貿易相手国について、その収支状況を見ていきましょう。
貿易不均衡という意味でその最たるものは、米国です。日本は対米で一貫して貿易黒字を計上し続けていることがわかります(図表7-1)。
図表7-1 対米貿易収支(1988年以降)
ところが、中国相手となると事情が変わります。意外なことに、日本は中国との間では一貫して貿易赤字を計上し続けているのです(図表7-2)。
図表7-2 対中貿易収支(1988年以降)
また、アジア諸国でいえば、日本は韓国、台湾、香港に対しては一方的に貿易黒字を積み上げ続けています(図表7-3~7-5)。
図表7-3 対韓貿易収支(1988年以降)
図表7-4 対台貿易収支(1988年以降)
図表7-5 対港貿易収支(1988年以降)
その一方、資源国(サウジ、UAE、豪州)などに対して一貫して貿易赤字状態となっています(図表7-6~7-8)。
図表7-6 対UAE貿易収支(1988年以降)
図表7-7 対豪州貿易収支(1988年以降)
図表7-8 対サウジ貿易収支(1988年以降)
対米、対中、対韓貿易
対米貿易
さて、ここでは米中韓3ヵ国との貿易収支について眺めておきましょう。
まず、米国については2018年において約15.5兆円分を輸出しましたが、なんと約75%が「機械類及び輸送用機器」です。自動車などでしょうか?また、米国からの輸入品目についても、同じく「機械類及び輸送用機器」がシェアのトップであり、輸入全体の36%を占めます(図表8-1)。
図表8-1 対米貿易の状況(2018年)
区分 | 合計 | 構成比 |
---|---|---|
輸出合計 | 15兆4702億円 | 100.00% |
うち機械類及び輸送用機器 | 11兆5839億円 | 74.88% |
輸入合計 | 9兆0149億円 | 100.00% |
うち食料品及び動物 | 1兆4748億円 | 16.36% |
うち鉱物性燃料 | 1兆0690億円 | 11.86% |
うち化学製品 | 1兆4486億円 | 16.07% |
うち機械類及び輸送用機器 | 3兆2025億円 | 35.52% |
貿易収支 | 6兆4553億円 |
対中貿易
同じ要領で、中国についても状況を確認してみましょう。
中国といえば日本が高付加価値品を輸出し、低付加価値品を輸入しているという印象を持っている人も多いと思うのですが、現実には、輸出入ともに、「機械類及び輸送用機器」が半数前後を占めており、いまやこの区分だけでは必ずしも「中国から低付加価値品を仕入れている」とは言い切れません。
図表8-2 対中貿易の状況(2018年)
区分 | 合計 | 構成比 |
---|---|---|
輸出合計 | 15兆8977億円 | 100.00% |
うち化学製品 | 2兆5464億円 | 16.02% |
うち原料別製品 | 1兆8175億円 | 11.43% |
うち機械類及び輸送用機器 | 8兆8228億円 | 55.50% |
輸入合計 | 19兆1937億円 | 100.00% |
うち原料別製品 | 2兆2713億円 | 11.83% |
うち機械類及び輸送用機器 | 9兆3928億円 | 48.94% |
うち雑製品 | 4兆7090億円 | 24.53% |
貿易収支 | -3兆2959億円 |
対韓貿易
最後に韓国についてもチェックしておきましょう。
韓国の場合、日本から「機械類及び輸送用機器」や「化学製品」などを輸出しているのですが、同様に韓国側からは「機械類及び輸送用機器」、あるいは「原料別製品」などを輸入しています。このことは、日韓でサプライチェーンが成立していることの証左でしょう(図表8-3)。
図表8-3 対韓貿易の状況(2018年)
区分 | 合計 | 構成比 |
---|---|---|
輸出合計 | 5兆7926億円 | 100.00% |
うち化学製品 | 1兆3613億円 | 23.50% |
うち原料別製品 | 8343億円 | 14.40% |
うち機械類及び輸送用機器 | 2兆3924億円 | 41.30% |
輸入合計 | 3兆5505億円 | 100.00% |
うち鉱物性燃料 | 5515億円 | 15.53% |
うち化学製品 | 5596億円 | 15.76% |
うち原料別製品 | 7251億円 | 20.42% |
うち機械類及び輸送用機器 | 1兆0842億円 | 30.54% |
貿易収支 | 2兆2421億円 |
日本は貿易立国というが…
以上、日本の貿易相手国について、ざっとチェックしました。
「ヒト」「カネ」と違い、「モノ」という側面から見れば、日本にとっては近隣国、とくに中国と韓国との関係が極めて重要であること、また、遠く離れた米国との関係が切っても切れないほど重要であることが判明した格好です。
ただし、ここで非常に興味深い疑念が浮かびます。それは、貿易面で繋がりが深いはずの中国、韓国とは、投資、居住という面ではさほど重要性が高くない理由がなぜなのか、という点です。
つまり、『数字で見る、「中韓は日本経済にとって不可欠」の真相』、『数字で見る、「日本人はどこの国に居住しているのか」』、『数字で見る、「在留外国人数」とわが国のグローバル化』などでチェックした「ヒト」「カネ」の動きと、本稿でチェックした「モノ」の動きには、おおきなズレがあるのです。
※ ※ ※ ※ ※ ※ ※
これに関する明確な答えは、現時点ではありません。
ただし、一般的な話で申し上げるならば、日本の貿易依存度(輸出入がGDPに占める割合)はG7諸国の中でも米国に次いで低く、意外と日本は貿易立国ではない、という点は指摘しておく価値があるでしょう(図表9)。
図表9 G7と中韓の貿易依存度(2016年)
国 | 輸出依存度 | 輸入依存度 |
---|---|---|
日本 | 13.1% | 12.3% |
韓国 | 38.0% | 31.4% |
中国 | 19.1% | 14.2% |
米国 | 7.8% | 12.1% |
英国 | 15.5% | 22.5% |
ドイツ | 38.5% | 30.5% |
フランス | 19.8% | 22.8% |
イタリア | 24.6% | 21.7% |
カナダ | 25.5% | 27.2% |
(【出所】総務省統計局『世界の統計2019』図表9-3)
つまり、日本は「輸出立国だ」などと言われているわりに、少なくとも輸出依存度、輸入依存度は、いずれもG7+中韓の9ヵ国の中では下から2番目であり、世間的なイメージほどは貿易に依存した国ではない、ということが、少なくとも数字の上では示されているのです。
「日本は貿易に過度に依存している」といった先入観で議論をしてはならない、という典型例といえるかもしれませんね。
参考:過去リンク
2021/08/07 05:00 :
2021/05/11 09:30 :
2020/10/25 05:00 :
2020/10/24 05:00 :
2020/10/23 05:00 :
2020/10/22 05:00 :
2020/10/21 05:00 :
2020/10/20 05:00 :
2020/10/19 08:00 :
2020/10/18 05:00 :
2020/10/17 05:00 :
2020/10/16 05:00 :
2020/09/25 05:00 :
2020/07/31 05:00 :
2020/07/30 05:00 :
2020/07/15 05:00 :
2020/07/03 05:00 :
2020/07/02 08:00 :
2020/07/01 16:00 :
2020/06/27 09:00 :
2020/06/25 17:00 :
2020/05/10 09:00 :
2020/03/29 05:00 :
2020/02/03 05:00 :
2020/01/18 08:00 :
2020/01/17 16:30 :
2019/12/27 05:00 :
2019/12/23 05:00 :
2019/12/19 05:00 :
2019/12/07 05:00 :
2019/12/05 05:00 :
2019/12/04 05:00 :
2019/12/03 05:00 :
2019/12/01 05:00 :
2019/11/29 05:00 :
2019/11/28 05:00 :
2019/11/26 13:15 :
2019/11/25 05:00 :
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2019/11/21 05:00 :
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2019/11/15 05:00 :
2019/11/14 05:00 :
2019/11/13 05:00 :
2019/11/12 05:00 :
2019/11/11 05:00 :
2019/11/10 05:00 :
2019/11/09 05:00 :
2019/11/08 05:00 :
本文は以上です。
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【おしらせ】人生で10冊目の出版をしました
自称元徴用工問題、自称元慰安婦問題、火器管制レーダー照射、天皇陛下侮辱、旭日旗侮辱…。韓国によるわが国に対する不法行為は留まるところを知りませんが、こうしたなか、「韓国の不法行為に基づく責任を、法的・経済的・政治的に追及する手段」を真面目に考察してみました。類書のない議論をお楽しみください。 |
【おしらせ】人生で9冊目の出版をしました
日本経済の姿について、客観的な数字で読んでみました。結論からいえば、日本は財政危機の状況にはありません。むしろ日本が必要としているのは大幅な減税と財政出動、そして国債の大幅な増発です。日本経済復活を考えるうえでの議論のたたき台として、ぜひとも本書をご活用賜りますと幸いです。 |
以前にも書きましたが,工業製品については,日本も含め,世界的に生産過剰で,ありあまる生産能力があります。問題は,それを,いかに営業の力で売るか。昨日「大学文系学部卒業生の多くが営業職に就く」と書きましたが,大半が日本人相手の営業しかできず,外国人相手の営業ができる人材が少ないです(法務も税務も海外事情に詳しい人が少ないのは同じですが)。
なお,外貨を稼ぎ出しているのは貿易でなく投資です(何度も書いてくどいかな)。優秀な数理系人材は,給与のいい外資系金融機関に就職する人がかなり前から増えています。日本の金融機関の文系出身の経営者の皆様も潰れないように頑張って下さい。希有な人材を一般の人と同じ初任給で採用するという日本型システムは通用しませんよ。
いつもありがとうございます
ところで、香港は中国の窓口である側面が大きいので
貿易収支を考える場合は合算したデータも作っておくのが良いのではないでしょうか
日本が、昔のように貿易に依存していると思ってる人は、案外多いと思いますので、こうやって数字で見れば良く解ります。
中国で生産している日本企業が多いので、輸入が多いのかなと思います。>本当ですかね。
韓国人は、自分の国の事しか知らずに、日本も一緒だと思ってますので、「日本の貿易赤字を見て、日本は危機だ」、「日本製品の不買い運動は、効果的だ」とか言います。
貿易依存度が米国と同じくらいに迄下がっているのですね。
バブル期までは世界の工場として造って作って売りまくっていたものです。
しかし米の逆鱗に触れ量的拡大が右肩上がりに望めなくなりました。やむを得ず「量より質」「内需中心」「安定成長」「小さくともキラリと光る国」などという目標を掲げ社会の構造転換に乗り出しました。
当に平成の30年間はその転換の時代だったと思います。令和になり、どうやらその目標は達せられたようです。
もはや戦後ではないということです。感無量です。
輸出入額といった数字上での貿易依存度は確かにさほど大きくありません。ですが、輸出入とくに輸出はモノを生産して海外に販売することですから、まず日本国内でモノを生産せねばなりません。
このモノの生産に多くの人手を必要とします。それは農産物でも工業製品でもです(半導体生産工場のように生産現場が徹底的に自動化され殆ど人が働いていないケースは工業製品の生産現場の姿としてはかなり特殊です)。
つまり輸出産業は利益から納税したり収益を株式配当などの形で株主に還元する(ここまでは金融業や証券業などでも同じです)のみならず、その製品の生産現場は多くの雇用を生み出し、それら従業員に対して支払われる賃金や様々な社内活動によって地域経済という内需を生み出し支えている訳です。
ですから、経済統計上は内需によるものとして計上されているGDPつまり国内で生み出される付加価値の少なからずの部分は輸出産業の生産拠点からのシャワー効果(生産拠点が国内から消えればその分のGDPも消滅する)によって生み出されているのが実情です。
例えばですが、10兆円の資金で5000億円の利益(利益率5%)を生み出す企業活動を考えた場合、工業と金融業(外為取引やヘッジファンドなども含めて考える)とでは確実に工業のほうが遥かに雇用者数が多く、各々の製品あるいは収益の生産拠点(金融業なら高速ネットが使える単なるオフィスビルでしょうが)が周囲に生み出す内需の規模には格段の差があるのはまず確実でしょう。(残念ながら、それを実証あるいは論理的に反証するに足る公的な統計の類が集計されたことは無いのではと危惧しますが)
トランプが大統領選で自動車・鉄鋼・機械などの生産をアメリカで担って来たラストベルトの復興を訴えて勝利できたのも、古典的な工業生産現場の雇用による経済効果(上に述べたような形で間接的に生み出される内需の規模)の規模は単純な統計上の金額以上に大きいという現実の反映だろうと私は推測しています。そういう意味では①ウォール街での100億ドルと②ラストベルトでの100億ドルとでは価値が違うと言うべきなのでしょう。アメリカ合衆国の普通の国民の視点に立てば②の価値のほうが大きかったのに、政治が②よりも①を重視し続けてきた結果、今のアメリカの現実が生み出され、トランプという一種のトリックスターを誕生させたのです。
米中が関税チキンランをやっているにもかかわらず、私の思ったほどの悪影響が日本の経済に出ていません。新宿会計士様がまとめてくださった日本の貿易依存度の低さが、その一因なのかも知れません。
図表9の貿易依存度の数字を見ると、韓国とドイツの輸出入の数字の大きさが目を引きます。米中経済戦争の影響をもろに被りそうに見えます。しかしドイツに関してJETROを調べてみると、2018年の輸出の59.1%と輸入の57.2%が対EUであり、対米は輸出8.6%輸入5.9%、対中は輸出7.1%輸入9.8%とさほどの割合ではありません。対して韓国は対米が輸出12.0%輸入11.0%、対中は輸出26.8%輸入19.9%と、抗争中の2国に対する貿易依存度は3〜4割にもなります。
おいおい大得意様二人が大げんかしてるよ、韓国大丈夫か?
韓国は米朝関係より米中関係の雪解けに努力を傾注するべきなのではないでしょうか。GSOMIA破棄詐欺の件を鑑みるに、関係険悪化に貢献しているようにしか見えませんが。米国が対日介入をしてくれなかったのは残念でしたが、ここはひとつ、犠牲的精神を発揮して仲介してみては?日本と遊んでいる暇はありませんよ!
(うーん、「韓国の仲介」かぁ…たいてい逆効果になるんだよなぁ)
自転車の修理ばかりしているさま
米中が、仲が悪くても、米韓、中韓が仲が良い方が、韓国には、都合が良いですよね。
米中の両方と仲良くして、勝ち負けが付くようなら、勝った方に付くのが、韓国の考えなのでは無いでしょうか。
現実は、どちらとも関係が悪くても、韓国はコウモリ外交が出来る価値が、有ると考えていると思います。
自転車の修理ばかりしている様へ
>ドイツに関してJETROを調べてみると、2018年の輸出の59.1%と輸入の57.2%が対EU
へーーそうなんですね!
これは貿易ではなく、内需と見るべきなんでしょうか?
それとも宗主国・植民地間の移出入と言うべきなんでしょうか?