貿易赤字?現在の日本は「鵜飼いの鵜匠」のようなもの

先週木曜日の『予想どおり韓国へのフッ化水素輸出が量・金額とも増加』では、財務省税関が発表する『普通貿易統計』をもとにした2019年12月までの貿易データのほんの一部を紹介しました。ただ、この『普通貿易統計』自体は非常に詳細なデータであり、日本経済の姿を読むうえでの有益性も高いのですが、本当はもう少し早いタイミングで紹介しておこうと思っていたものの、先週は例のコロナウィルス騒動もあり、それに関連した話題の紹介を優先しました(たとえば『【読者投稿】新型肺炎、日本は「いつもどおり」で良い』等参照)。少し遅れましたが、本稿ではじっくりとこの貿易統計を読んでみたいと思います。

普通貿易統計

本稿で使用するのは『普通貿易統計』のうち、『概況品別国別表』の輸出データ輸入データ(というよりも、おもに輸出側のデータ)です(ただし、著者自身が使用しているデータのアップデートの都合上、「速報値」と「確報値」が混じっているため、財務省発表の数値と細かい不整合が生じています)。

2019年を通じた貿易は、輸出高が76兆9278億円、輸入高が78兆5716億円で、差し引き1兆6438億円の赤字に終わりました。通年で貿易赤字を計上するのは昨年に続き2年目ですが、これについては『令和元年度の貿易収支が赤字 データで状況を確認する』で取り上げていますので、本稿では繰り返しません。

令和元年度の貿易収支が赤字 データで状況を確認する

それよりも、本稿では著者の手元にあるデータを集計し、2019年における日本の輸出高、輸入高のそれぞれについて概況を確認しておきたいと思います。

そして、結論的には日本に貿易赤字基調が定着しつつあるにせよ、基幹部品は依然として日本が握っており、中国などで発生する貿易黒字を日本の親会社が配当(つまり所得収支)などのかたちで吸い上げている、という構図が透けて見えるのです。

輸出高

輸出品目のトップは機械類

まずは、日本の輸出高に占める品目別の構成です(図表1-1)。

図表1-1 日本の輸出高(品目別、2019年)
品目金額シェア
0_食料品及び動物6401億円0.83%
1_飲料及びたばこ1141億円0.15%
2_原材料1兆0068億円1.31%
3_鉱物性燃料1兆3830億円1.80%
4_動植物性油脂269億円0.03%
5_化学製品8兆7388億円11.36%
6_原料別製品8兆4071億円10.93%
7_機械類及び輸送用機器46兆4504億円60.38%
8_雑製品4兆5179億円5.87%
9_特殊取扱品5兆6422億円7.33%
合計76兆9273億円100.00%

これでわかるとおり、日本の輸出にとって一番大事なのは、全体の60%以上を占める『7_機械類及び輸送用機器』であり、これに化学製品や原料別製品、特殊取扱品や雑製品などが続きます。

この図表1-1を、さらに細かい品目名で分類したものが、図表1-2です。

図表1-2 日本の輸出高(細品目別、2019年)
品目金額シェア
70503_自動車11兆9712億円15.56%
70323_半導体等電子部品4兆0061億円5.21%
70505_自動車の部分品3兆6017億円4.68%
70101_原動機2兆7298億円3.55%
70131_半導体等製造装置2兆4671億円3.21%
81101_科学光学機器2兆1297億円2.77%
50101_有機化合物1兆9075億円2.48%
61107_鉄鋼のフラットロール製品1兆8754億円2.44%
70303_電気回路等の機器1兆8516億円2.41%
70327_電気計測機器1兆6268億円2.11%
上記以外の品目42兆7603億円55.59%
合計76兆9273億円100.00%

自動車だけで日本の輸出の16%近くを占めているというのもすごい話ですが、それよりも目立つのは、半導体等電子部品(5.21%)、自動車の部分品(4.68%)、原動機(3.55%)、半導体等製造装置(3.21%)、有機化合物(2.48%)といった具合に、

  • モノを作るための製品
  • 最終的な製品に組み込むための部品

といった、産業における非常に重要なパーツを、日本が生産しているという様子が、この統計からは浮かび上がってくるのです。

輸出先は中国と米国がツートップ

次に紹介するのが、輸出相手国の上位10ヵ国です(図表2-1)。

図表2-1 日本の輸出高(国別、上位10ヵ国、2019年)
相手国金額シェア
米国15兆2468億円19.82%
中国14兆6827億円19.09%
韓国5兆0442億円6.56%
台湾4兆6879億円6.09%
香港3兆6655億円4.76%
タイ3兆2909億円4.28%
ドイツ2兆2052億円2.87%
シンガポール2兆1987億円2.86%
ベトナム1兆7971億円2.34%
オーストラリア1兆5798億円2.05%
その他22兆5286億円29.29%
合計76兆9273億円100.00%

これによれば、2019年における日本の最大の輸出相手国は米国、2番目の輸出相手国は中国です(といっても、米中ともに日本の輸出高に占めるシェアは20%前後であり、米国と中国の順序は年によってしばしば入れ替わります)。

米国と中国の大きな違い:モノづくりのための材料

ただし、米国に対する輸出品目の圧倒的なトップは11兆円以上を占める輸送用機器(図表2-2)ですが、中国に対する輸出品目のトップは同じく輸送用機器であるものの、化学製品や原料別製品といった「モノづくり」のための品目が上がって来ます(図表2-3)。

図表2-2 対米輸出高(2019年、品目別)
品目金額シェア
0_食料品及び動物857億円0.56%
1_飲料及びたばこ204億円0.13%
2_原材料712億円0.47%
3_鉱物性燃料1313億円0.86%
4_動植物性油脂66億円0.04%
5_化学製品1兆0660億円6.99%
6_原料別製品9703億円6.36%
7_機械類及び輸送用機器11兆2538億円73.81%
8_雑製品7988億円5.24%
9_特殊取扱品8425億円5.53%
合計15兆2468億円100.00%
図表2-3 対中輸出高(2019年、品目別)
品目金額シェア
0_食料品及び動物982億円0.67%
1_飲料及びたばこ201億円0.14%
2_原材料2487億円1.69%
3_鉱物性燃料1523億円1.04%
4_動植物性油脂13億円0.01%
5_化学製品2兆5425億円17.32%
6_原料別製品1兆6666億円11.35%
7_機械類及び輸送用機器7兆9423億円54.09%
8_雑製品1兆2174億円8.29%
9_特殊取扱品7932億円5.40%
合計14兆6827億円100.00%

韓国と台湾に対しても「モノづくりのための製品」

そして、輸出相手国としてのシェア第3位の韓国(図表2-4)、第4位の台湾(図表2-5)についても、中国と同じような傾向が確認できるでしょう。

図表2-4 対韓輸出高(2019年、品目別)
品目金額シェア
0_食料品及び動物350億円0.69%
1_飲料及びたばこ73億円0.14%
2_原材料2020億円4.01%
3_鉱物性燃料1921億円3.81%
4_動植物性油脂22億円0.04%
5_化学製品1兆2569億円24.92%
6_原料別製品7939億円15.74%
7_機械類及び輸送用機器1兆9067億円37.80%
8_雑製品3575億円7.09%
9_特殊取扱品2905億円5.76%
合計5兆0442億円100.00%
図表2-5 対台輸出高(2019年、品目別)
品目金額シェア
0_食料品及び動物730億円1.56%
1_飲料及びたばこ101億円0.22%
2_原材料577億円1.23%
3_鉱物性燃料438億円0.93%
4_動植物性油脂6億円0.01%
5_化学製品9358億円19.96%
6_原料別製品5334億円11.38%
7_機械類及び輸送用機器2兆4228億円51.68%
8_雑製品3407億円7.27%
9_特殊取扱品2699億円5.76%
合計4兆6879億円100.00%

輸出細品目・相手国のトップ10

さて、ついでに輸出品の細品目と相手先についても、トップ10を示しておきましょう(図表3)。

図表3 輸出細品目・相手先トップ10(2019年)
相手国細品目金額
米国70503_自動車4兆2889億円
中国70323_半導体等電子部品9807億円
中国70131_半導体等製造装置9006億円
米国70101_原動機8975億円
米国70505_自動車の部分品8346億円
中国70503_自動車7867億円
中国81101_科学光学機器7503億円
香港70323_半導体等電子部品7411億円
台湾70323_半導体等電子部品7136億円
オーストラリア70503_自動車7041億円

これでみると、日本の産業にとって、いかに米国に対する自動車の輸出のシェアが重要であるかは一目瞭然ですが、それと同時に半導体等電子部品、半導体製造装置、科学光学機器(スマホ用カメラでしょうか?)の中国や台湾に対する輸出高も上位に入っているのが印象的です。

輸入高

輸入品目のトップは機械類だが…

一方で輸入に目を転じてみると、トップは「7_機械類及び輸送用機器」(29.43%)、2位が「3_鉱物性燃料」(21.58%)です(図表4-1)。

図表4-1 日本の輸入高(品目別、2019年)
品目金額シェア
0_食料品及び動物6兆2416億円7.94%
1_飲料及びたばこ9478億円1.21%
2_原材料4兆6705億円5.94%
3_鉱物性燃料16兆9576億円21.58%
4_動植物性油脂1877億円0.24%
5_化学製品8兆1515億円10.37%
6_原料別製品7兆0709億円9.00%
7_機械類及び輸送用機器23兆1258億円29.43%
8_雑製品9兆8719億円12.56%
9_特殊取扱品1兆3490億円1.72%
合計78兆5742億円100.00%

これについては、「日本の輸入品のトップは石油じゃないの?」と思っている方が多いと思うのですが、じつは、日本は数年前から「機械類及び輸送用機器」のカテゴリーに属する製品の輸入量が非常に増えているのです。そこで、図表4-1を細品目別に分解してみましょう(図表4-2)。

図表4-2 日本の輸入高(細品目別、2019年)
品目金額シェア
30301_原油及び粗油7兆9677億円10.14%
30501_石油ガス類4兆8865億円6.22%
70307_通信機2兆8458億円3.62%
70105_事務用機器2兆8194億円3.59%
70311_半導体等電子部品2兆5815億円3.29%
30101_石炭2兆5329億円3.22%
81101_科学光学機器1兆8135億円2.31%
50101_有機化合物1兆6910億円2.15%
30303_石油製品1兆5369億円1.96%
80705_メリヤス編み及びクロセ編み衣類1兆4891億円1.90%
上記以外の品目48兆4098億円61.61%
合計78兆5742億円100.00%

…。

いかがでしょうか。

おそらく、おもに中国からスマートフォン(上記図表でいう『70307_通信機』)やPC・タブレット類(上記図表でいう『70105_事務用機器』)を輸入しているため、このカテゴリー全体の輸入高を押し上げているのです。

輸入高のトップは中国

実際、日本がどの国から最も輸入しているか、という視点からデータを確認してみると、かつての最大の輸出相手国だった米国や資源国のオーストラリア、サウジアラビア、アラブ首長国連邦、日本の近隣国である韓国や台湾を押しのけ、圧倒的なトップが、中国なのです(図表5-1)。

図表5-1 日本の輸入高(国別、上位10ヵ国、2019年)
相手国金額シェア
中国18兆4446億円23.47%
米国8兆6217億円10.97%
オーストラリア4兆9548億円6.31%
韓国3兆2292億円4.11%
サウジアラビア3兆0152億円3.84%
台湾2兆9274億円3.73%
アラブ首長国連邦2兆8551億円3.63%
タイ2兆7642億円3.52%
ドイツ2兆7177億円3.46%
ベトナム2兆4497億円3.12%
その他26兆5947億円33.85%
合計78兆5742億円100.00%

そして、その中国からの輸入品については、圧倒的なトップが「7_機械類及び輸送用機器」であり、このカテゴリーだけでじつに11兆円を超えていることがわかります(図表4-2)。

図表5-2 対中輸入高(2019年、品目別)
品目金額シェア
0_食料品及び動物857億円0.56%
1_飲料及びたばこ204億円0.13%
2_原材料712億円0.47%
3_鉱物性燃料1313億円0.86%
4_動植物性油脂66億円0.04%
5_化学製品1兆0660億円6.99%
6_原料別製品9703億円6.36%
7_機械類及び輸送用機器11兆2538億円73.81%
8_雑製品7988億円5.24%
9_特殊取扱品8425億円5.53%
合計15兆2468億円100.00%

輸入細品目・相手国のトップ10

ちなみに、先ほどの図表3を、輸入についても表記しておきましょう(図表6)。

図表6 輸入細品目・相手先トップ10(2019年)
相手国細品目金額
サウジアラビア30301_原油及び粗油2兆8393億円
アラブ首長国連邦30301_原油及び粗油2兆3817億円
中国70105_事務用機器2兆0574億円
中国70307_通信機2兆0166億円
オーストラリア30501_石油ガス類1兆7970億円
オーストラリア30101_石炭1兆4891億円
台湾70311_半導体等電子部品1兆1070億円
中国80705_メリヤス編み及びクロセ編み衣類8782億円
中国80701_衣類7493億円
中国70305_音響・映像機器(含部品)7273億円

つまり、日本は明らかに、サウジアラビアやアラブ首長国連邦(UAE)などからの石油の輸入、オーストラリアからのガス、石炭類の輸入と並んで、中国からのPC・タブレット類、スマホ類の輸入の比率が非常に増えているのです。

また、中国からの衣類の輸入(図表中でいう『80705_メリヤス編み及びクロセ編み衣類』と『80701_衣類』)が上位10位に入っているというのも、実に印象的ですね。

日本は長良川の鵜匠

さて、以上、非常にざっくりとではありますが、2019年におけるわが国の『普通貿易統計』をレビューしてみました。

上記からわかることは、いくつかあります。

そのなかでも印象的なことといえば、日本の家電、PC、スマートフォンなどは、自動車を除けば、もうすっかり存在感がないということでしょう。なぜなら、これらは日本国内で製造しているのではなく、その多くが中国からの輸入品で占められているからです。

ただ、その一方で自動車に関しては依然として大きな存在感を占めていることに加え、産業の基幹となる製品(とくに半導体製造装置や半導体等電子部品、カメラや化学薬品等)においては強みを維持している、という事実です。

その意味で、「1300年以上の歴史を誇る『長良川の鵜飼い』」のようなものでしょうか。

【参考】長良川の鵜飼い

(【出所】日本政府観光局

※鵜飼い(うかい)とは:鵜飼人(鵜匠)が鵜(う)を使役してアユなどを捕る伝統漁法。1300年の伝統を有する長良川で行われているものが有名。

要するに日本という「鵜匠」が中国をはじめとする組み立て国に対し原材料を提供し、それが全世界に輸出され、日本は貿易収支ではなく所得収支でその果実を回収する、という新たなビジネスモデルですね。

その意味で、貿易赤字体質が定着しつつあるといっても、過度に恐れる必要はないのかもしれません。

※ ※ ※ ※ ※ ※ ※

もっとも、石油の輸入については依然として、日本の輸入高全体の20%を超えているのですが、原発が完全に再稼働した場合や自前資源の開発に成功した場合、石油類の輸入高は現在よりも減少し、貿易赤字の削減に役立つであろうことは想像に難くありません。

いずれにせよ、日本経済の姿を議論するにあたって、たまには『普通貿易統計』のような基礎統計をじっくり読み込んでみるというのも面白いのかもしれません。

読者コメント一覧

  1. だんな より:

    統計を見やすく説明して頂き、ありがとうございます。
    大事な統計なのに、コメント人気無いですね。

  2. はにわファクトリー より:

    デフレで低成長、この先まっくらなどと卑下した報道ばかりの日本ですが、長く続く物価安定がもっぱら中国からの輸入品で成立しているのはこの数字が示す通りです。

  3. 通りすがりその1 より:

    百の説法より一つの事実
    FACT2割で感想や意見が8割といったところがブログの世界では普通ですが
    本日の記事のように9割方がFACT(の確認)というのもいいですね。
    事実をなおざりにしたまま勝手な議論をいかに多くしていることか。 反省。
     

     

  4. ボーンズ より:

    日本の産業の重心が、昔より上流に近づいたということがよく判る統計ですね。
    最近行っている事象で、日本の産業の幅が下流方向にも拡大する動きが増えて来そう。

  5. とある福岡市民 より:

    > 貿易赤字体質が定着しつつあるといっても、過度に恐れる必要はない

    まさしくアメリカ経済がそういう体質ですね。
    20世紀前半はモノづくり大国だったアメリカはベトナム戦争あたりから貿易赤字が常態化し、株価が長い停滞期に入りました。その頃から新興国への投資を行う事で配当や値上がり益を増やす経済へ少しずつ転換しました。今では自動車は別としてモノづくりはさっぱり、新興企業である情報通信系も製造はアジアに任せてしまってますが、製造会社の資本を押さえているおかげで配当と値上がり益を手にし続けてます。
    「体を動かす労働は他国人に任せ、後は寝てるだけで金が入る」という状態、というと意地悪な物言いですが、寝てても金が入るというのは資産運用の上では理想的な常態です。
    ITバブルをきっかけにアメリカの株価が再び上昇し、それが世界中からの投資と資金流入を呼び、アメリカは金融立国になりました。その結果が、全世界の株式の時価総額の50%以上です。VTや全世界株式の投信は全世界分散を謳うものの、アメリカ経済に左右されずにはすみません。

    モノづくり大国は陰りが見え、イノベーションがあまり起きない日本ですが、「体を動かす労働は他国人に任せ、後は寝てるだけで金が入る」という経済体質に変えていった強みは大きいですね。また、モノづくりの基礎をしっかり押さえていれば他国がモノを作れば作る程利益が上がるので、貿易赤字もむしろ歓迎するべき事になるでしょう。
    後はこの利益を教育と科学研究に思い切って投入して欲しいものです。

  6. 伊江太 より:

    このサイトでしばしば採り上げられている貿易統計から見た日本経済の現状分析という話題.その都度なるほどとは思うものの,なんとなく普段から抱いている日本の強み,弱みといったイメージからは乖離があるんですよね.おそらく時代的状況の変化に適応するために日本の企業が日々行っている努力,その総体として水面下で生じている思いのほか激しい経済の潮流といったものが,私など市井の民の目には相当のタイムラグを置いた後にしか見えてこないということなんでしょうか.

    通産省の振り付けと大蔵省のサポートの元,メイドインジャパンの目を見張る興隆が世界の耳目を引くや,エコノミックアニマル,日本株式会社などと悪意をこめた揶揄が浴びせかけられるに留まらず,覇権を脅かされることを恐れたアメリカの恫喝の結果,半導体,自動車,国産OSなど将来の支えとなるべき産業資産を献上するという,外堀を埋めるに等しい屈辱的講和に追い込まれたのは,それほど昔のはなしではありません.その後国が前面に出て目立つことを控え隠忍自重している間に,ほぼ民間の自助努力だけでいつの間にか「鵜」から「鵜匠」の立場に変貌を遂げてたってことでしょうか.この間の中国,韓国といった開発独裁型の経済発展の華々しさに比べると,なんとなく見劣りしてしまいますが,そういうことなら,大坂冬の陣で外堀を埋めることでなんとか踏みとどまった豊臣政権が,内堀には手をつけさせず,ワシントン幕藩体制の中で有力外様大名の地位を保って生き残り,次第に力を涵養して枢要譜代の地位にも迫ろうとしているなんて,もしこうなったら的歴史ドラマ風にたとえてみることもできそうです.

    一帯一路戦略,中国製造2025戦略などと国家主導の経済発展を標榜し,今かつての日本の轍を踏もうとしている中国ですが,さて先ほどの日本史のたとえからいけば,国粋主義的原理主義に駆られてのお先走りで自滅してしまった,水戸藩てことになるんでしょうか,それともかつての仇敵薩摩と結んで倒幕を成し遂げた,長州ということになるんでしょうか.

    1. とある福岡市民 より:

      伊江太様

      「なんとか踏みとどまった豊臣政権〜」の下り、おもしろいです。歴史上の出来事に例えるとわかりやすいですね。史実ですと、島津氏がこれに近いでしょうか。九州全土を制圧しかけたところで豊臣に薩隅両国と日向の一部に削られたものの、関ヶ原後を巧みな外交術で乗り切り、幕末は島津大隅守久光公が幕政の中心を担う程に地位が上昇しますから。

      国産OSはトロンの事ですね。あれを基本OSにできなかったせいで省庁、大企業から家庭に至るまでマイクロソフトに巨額の富を吸い取られ続けています。本当に悔やまれます。
      さて、中共は水戸になるか長州になるかは見ものですね。どうせなら水戸になって欲しいものですけど。

  7. H より:

    私は楽観視していません
    消費税増税の影響が長期化するか
    そこまでではないかが心配
    現時点では前回の増税ほどは
    ないようですが、注視する必要は
    ありそうです

    https://www.jri.co.jp/report/medium/indicator/

    鵜飼いのお話は以前の
    BSプライムニュースで真田さんが
    米国を鵜飼の鵜匠に日本やアジアは
    鵜に例えていたのを思い出しました

  8. 迷王星 より:

    新宿会計士さま、
    >日本は貿易収支ではなく所得収支でその果実を回収する、という新たなビジネスモデルですね。

    >その意味で、貿易赤字体質が定着しつつあるといっても、過度に恐れる必要はないのかもしれません。

    残念ながら最後の行に関しては私は同意できません。

    その理由は自前の産業で稼ぐのと海外投資の配当で稼ぐのとでは日本国内の雇用を生み出す力が全く違うからです。その行き着く先は現代のアメリカ、即ち人々の貧富の差が極端にまで広がった社会です。私は社会主義者ではありませんが、貧富の格差が極端に広まり貧困層が発生すれば(既に派遣社員など非正規雇用によるワーキングプアの発生によって準貧困層とでも呼ぶべき階層が日本社会には誕生していますが)、日本が世界に誇るべき最大の長所である世界でもトップクラスの安全な社会というのはこの国から失われてしまうのは確実です。

    それと、簡単には追随できない重要な工業原材料(例えば半導体生産に欠かせない高純度フッ化水素など)を握っているから平気だというのにも必ずしも諸手を挙げての賛成はできません。その理由は付加価値の額が原材料段階と半導体素子や最終のコンシューマー製品段階とでは桁が全く違うので、結果としてどちらを握っているかでその国の産業の稼ぐ力が桁違いになるからです。(例えば、我が半導体産業が我が世の春を謳歌し「NOと言える日本」などという傲慢に酔いしれていた当時の我が国の国全体でなく国民の稼ぐ力と電機産業が壊滅してしまった現在の日本国民の稼ぐ力とを比較すれば明らかです)

    今の日本は少子高齢化のために「人手不足」と騒いではいても、都市部のコンビニ等のアルバイトを除けば賃金も上がらず、非正規を正規雇用にして待遇・賃金を上げる動きも殆どない。つまり人手不足と言いながら、その実は低賃金かつ不安定な使い捨て的な雇用が増えているだけであって良質の雇用に関する状況は改善されないままです。私はこのような現状になっている最大の理由は我が国から良質の雇用を生み出せる産業が失われたままになっている(その元凶は言うまでもなく民主党政権4年間にある)ことです。

    国全体として配当による収入があるから産業で稼ぐのが消える(消えた)のは構わないとは私は思えないのですよ。既にリタイアしつつある私達の世代は別にどちらでも構いません(日本の国としての収支の帳尻があっていればその中身で区別する必要はない)が、子供たちの世代の幸福を考えると、ということです。

    1. 阿野煮鱒 より:

      > その元凶は言うまでもなく民主党政権4年間にある

      この一文をのぞき、お説に全面的に共感・賛同いたします。

      賛同できない部分だけ書いて恐縮ですが、私は日本の産業と雇用の問題は、民主党政権以前からあったと考えています。例えば功罪・毀誉褒貶ある小泉純一郎政権で経済政策を担った竹中平蔵(敢えて呼び捨て)などは、日本経済をグローバリストの餌食に差し出したと見ています。さらに時代を遡れば、90年代に中共の工作に屈したとおぼしき日経新聞が盛んに対中投資・対中進出を煽っていたのも、長きにわたる日本の不況と産業空洞化を生み出したと思います。

      産官がこぞってグローバリズムをはき違え、日本の強みをディスカウント・セールしてきた結果、本当に物作りができる技術者を疲弊させ、日本の未来を担う若者を薄給に甘んじさせているのだと思います。

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