【読者投稿】平均寿命で見る経済と「エックス国」の謎

昨日の読者投稿の「後半」です。それもまるで吸い込まれるかのようなに読んでしまう論考です。伊江太様というコメント主の方からいただいた、平均寿命に関する思わぬ議論展開の論考です。昨日の議論では「社会の余裕」と平均寿命の関係について議論したのですが、その続きです。そして、謎の「エックス国」についても、本稿で明かされます。

読者投稿募集のお知らせ

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  • ⑤コピーではなくオリジナルの文章であり、他人の著作権等を侵害していないことが必要
  • ⑥個人情報などを特定される内容を含めない

※ ※ ※ ※ ※ ※ ※

さて、昨日の『【読者投稿】平均寿命から見える経済と「社会の余裕」』の「続編」です。

平均寿命から見える経済、そしてついにあの「エックス国」の正体が(昨日の時点でバレバレでしたが)本稿で明らかにされます。

なお、本稿では昨日の議論で示した図表が前提となっていて、一部は投稿者原文で「再掲する」などと記載されているのですが、本稿では再掲する必要があると判断した図表をウェブサイト側の判断で勝手に再掲していますので、図表番号が逆転している箇所、同じ図表が出てくる箇所などがある点につきご了承ください。

これ以降が投稿です。

平均寿命が意味すること(後編)

世界の主要国にあって、ここ40年以上も最長寿国の座を譲らず、なお平均寿命が伸び続けているのが日本です。

長い平均寿命は、栄養摂取、医療へのアクセス、衛生環境など健康面の良好さ、また災害、治安など安全面への十分な備えがあって、初めて実現されるものであり、それが持続的に伸長する背景には、それらさまざまなファクターが常に改善されている社会がある――。

これが、この稿を書くに当たっての、わたしの立脚点です。

住民の生死に関する情報が全国すべての地方自治体に確実に届き、それが国の統計部局に菜違いなく集約される、そうしたシステムが整備される国に限ってのはなしですが、平均寿命は信頼性においてピカイチの基本統計値です。

国によっては3年間の平均で公表しているなど多少の違いはありますが、国際間の比較をおこなう際に、何らの留保も置く必要が(本来なら)ない数値と言えるでしょう。

一方で、「平均寿命の伸長=国民生活の質の向上」という命題については、証明は全くありません。わたしの個人的解釈に過ぎないと言えます。

2つの項の間には何らの関係もないという論を立てることも可能でしょうし、平均寿命の伸長など国民にとって災厄以外の何物でもないと、真逆の主張だってあり得ます(その実例らしきものは、最後に提示します)。

わたしとて、自分の住むこの国がユートピアだなどと考えているわけでは、無論ありません。ただ、国際比較で言うなら、最もマシな国であり、しかも生活の質の改善は着実に進んでいると言いたいのです、以下その線に沿って、いろいろと書いていきますが、同意を求めているとはお考えにならないように願います。

数値データを元に、ロジカルな思考を加えて、実相に迫ろうというのがこのサイトの趣旨とあらば、わたしが意図するのは、本来の政治経済のフィールドとはちょっと違う方面から、知的好奇心のタネを投入してみようというだけのことです。

興味を惹かれましたら、後はご自身でいかようにもお考えを、とお断りした上で、好き勝手を書かせていただきます。

格差社会と平均寿命

失われた30年といわれた時期、日本衰退論とならんで、よく登場したのが「格差社会」という言葉でした。社会階層間の所得格差を表す指標として、よく使われるのが「ジニ係数」です。以下の記述はSpaceship Earth『ジニ係数とは?日本のランキング推移と世界との所得格差の原因を解説』に拠ります。

国民を所得順に並べ、所得の低い方から高い方に向けて所得額の積算を求めていくという方法で出来上がるグラフが、全国民の所得が完全に均等である0の状態から、どれくらい乖離しているかを計算したのがジニ係数です。

たった一人の人間が国の収入すべてを独占している極端な状態で、ジニ係数は1となります。それぞれの国でジニ係数を求めれば、0~1の間のただひとつの値が得られますから、それで相互比較は可能になります。

計算に用いるデータの質からして、信頼度は平均寿命とは比較にもならないと思いますが、国際的に広く通用する指標であるのは間違いないようです。日本にこれに当てはめれば、1980年代初頭に0.32だった値が2000年代中頃には0.38まで上がっており、この間所得格差の拡大があったことは事実と言って良いでしょう。なお、この値は現在では0.33に低下しています。

ジニ係数が0.4を超えるほど所得格差が広がると、社会が不安定化すると一般に言われるようです。

経済先進国の中で、2019年段階では米国の0.4がトップ、英国の0.37がこれに次ぎ、0.33の日本は3番手といったところです。一時0.4に近いところまでジニ係数が上昇し、今でも多くの西欧諸国よりは上という事実を踏まえるなら、日本に「格差社会」の烙印を押すのも、あながち不当ではないようにも思えますが…。

かつて、これこそ「格差社会」という、印象的な光景を目にしたことがあります。

今から20年以上も前のことですが、米国のアトランタに2週間ほど滞在する機会がありました。滞在中、知人の家に泊めてもらったのですが、そこは、はなしには聞いていたゲーテッドコミュニティでした。高い鉄柵に囲まれた広大な敷地に、1箇所だけの入り口。

ごつい体格のガードマンが数人常時目を光らせています。

内部は深い木立に囲まれ、広々とした芝生の空き地に、道路を挟んで面した2階建てのアパート群が点在する。色とりどりの小鳥が飛び交い、リスが駆け回る環境は、うらやましくも、贅沢この上ない住環境だと感じたのですが、あちらの大富豪の豪邸と比べれば、ごく質素と言えるもののようです。

一日、郊外にある南北戦争博物館に行ってみようと、市の中心街の駅から地下鉄に乗ったのですが、郊外に出て線路が地上の高架になった途端、目に飛び込んできたのは、殺風景な裸地に延々と並ぶ古ぼけたトレーラーハウスの群れでした。

わずか1時間足らずの間に目にしたこの圧倒的な格差。日本は決してこんな国になってはならないと、強く感じたエピソードでした。

あれから20数年、”We are the 99%” のスローガンを掲げて起きたウォール街占拠デモ、米国では禁句のはずの、社会主義者を公言する候補が民主党大統領予備選で大きな支持を集めるなど、この国の所得格差というより、もはや社会の分断は、一層進んでいるように思えます。

その一方で、日本はそんな方向には進まないという確信は、わたしの中でむしろ強くなっています。所得の高低にかかわらず、そんな社会はまっぴらという想いは、日本人に広く共有されていると言って良いと思います。

大きな災害が起きても、欧米なら当たり前の暴動と商店の略奪が、この国では一切起きない。海外からはむしろ奇異の目で見られる日本のこの状況は、おそらく国民の格差を忌避する感情と共通するところがあると思います。

本物の格差の拡大とは、単に階層間の所得の分配割合が変化するというような、生やさしいものではないでしょう。

中流層が没落し、低所得層はより貧しく、富がますます一握りの富裕層に集中していき、所得階層間の反目が露わになっていく。低中所得層の窮乏は、栄養接種状況の悪化、医療費負担の困難化などを通じて、寿命の短縮を招く可能性が大きい。

元々十分な収入を得ている富裕層は、それがさらに増えたとて、より命を長らえる役には立たないでしょうから、そうした社会では、平均寿命の短縮が起きても不思議とは思えません。

前稿『【読者投稿】平均寿命から見える経済と「社会の余裕」』の図表2、本稿では図表7として再掲するグラフを見ると、米国の平均寿命は日本や西欧諸国と比べて顕著に短く、年と共にその差がさらに広がって来ています。英国の平均寿命の推移も、明らかに多くの西欧諸国の水準から取り残されつつあります。

図表2 過去40年間に世界各国の平均寿命はどれくらい伸びたか

(【注記】The World Bank, Life expectancy at birth などをもとに投稿者作成)

この2ヵ国に関する限り、平均寿命の長短とジニ係数の高低はよく対応するように見えます。

ただし、これに日本と他の西欧諸国を加えると、急に話が見えなくなってきます。ジニ係数が0.30で多くの西欧諸国と同等のドイツの平均寿命が、英国のそれとほぼ重なるように推移しているのも、やはり2つの値が必ずしも相関しないことを示していそうです。

平均寿命とジニ係数という国民生活の状況の指標となる2つの値。果たして関係があるのかそうではないのか?国民全体の暮らしの質をより的確に反映するのは、どちらなのか?わたしはもちろん、平均寿命オシなのですが。

ジェンダーギャップと平均寿命

格差という点では、より今日的な話題は「男女間格差」というヤツでしょう。

毎年国際的権威を自称する怪しげな団体が「日本の順位は客観的物差しを当てれば、こんなに低い」とやるたびに、おバカなマスコミが、尻馬に乗って「日本はこんなに女性が生きづらい社会」と、はしゃぎ立てる。

「馬鹿を言いなさい」という論拠は、いくらでも挙げられましょうが、ひとつ、生物学的側面からこの問題を考えてみます。

女性の方が男性より平均寿命が長いというのは、カタールのようなごく特殊な国を除き、洋の東西を問わず一般則と言って良いのですが、これには純生物学的な理由があります。

ヒトの細胞がもつ各2本23組の染色体のうち、性染色体とよばれる一組だけに男女の違いがあります。女性がX染色体2本をもつのに対して、男性はX染色体1本にY染色体1本。

Y染色体は、はじめ男女いずれにも分化しうる生殖原基を、精巣その他の男性器の方向に発育させる性決定遺伝子の他、男性化に関わる少数の遺伝子を含むだけの小さなもので、これらがなければ生殖原基は卵巣その他の女性器に発達して行きます。

X染色体には性決定に関わる遺伝子はなく、男女を問わずヒトとして生きるのに必要な多数の遺伝子が、この大型の染色体に含まれます。

女性の平均寿命が男性より長い基本的な理由は、この違いにあります。

X染色体に多少はたらきの良くない遺伝子が含まれている場合(そんな不良品が一つもないことはまずありません)、女性ならもう1本のX染色体がその不具合を補ってくれる可能性が大きいのですが、X染色体1本の男性にはそれが期待できません。

典型的な例としてよく挙げるのが、X染色体に含まれる血液凝固因子の遺伝子の欠損が原因で起きる血友病で、日本での血友病の発生頻度は、男性が女性より140倍も高くなっています。

出生時の男女比は1.05:1くらいが世界中ほぼ共通しています(それから大きく外れる国は、何か変なことをやっているのかと疑われます)。以前なら思春期までには男女比は1:1になっていました。

男児の死亡率が女児より高かったからです。それが、男児の死亡率が大幅に下がった(女児についてもそうですが)結果、今の日本では60歳近くまで男性過多の状況が続きます。それでもその年齢層以上になると、高齢になるにつれ女性の割合が増えていきます。

遺伝的素因の点で劣る男性は、その辺りから息切れを起こしてくるわけです。結果、平均寿命が延び続けている国では、女性と男性の平均寿命の差は徐々に開いていく、これで生物学的には真っ当な現象と言えます。

そのことを念頭に、図表4をご覧ください。日本と海外7ヵ国で女性が男性よりどれくらい長生きしているか、平均寿命の、差ではなくその比で、表わしたものです。

図表4 「女性は男性より長生き」はいつまで続くのか?

(【注記】The World Bank, Life expectancy at birth などをもとに投稿者作成)

これによると、日本では1995年くらいまで上に述べた女性の平均寿命の伸びが男性を上回る状態が続いていました。それが高止まりとなった後、近年はむしろ男女の平均寿命が再び接近する方向に転じています。それでも、平均寿命の女性/男性比は40年前と変わらない水準にあります。

他方、図表4に掲げた国々では、この40年間を通して見れば、男女の平均寿命の差は明らかに小さくなっています。米国で近年再び差が開いているのは、女性の寿命が伸びたせいではなく、銃による犯罪・自殺の増加やオピオイド薬物の濫用によって、若年男性の死亡率が急上昇したのが原因で、敵失といったところでしょう。

ロシアではソ連邦崩壊の混乱時に、危機において発揮される女性の生命力の強さのゆえか、男女の平均寿命の差が一気に開きますが、その後差は急速に失せて、結局現在までに、40年前の水準に比べてずっと縮小した状態となっています。

わたしには、図表4の含意は以下のようなことではないかと思えるのです。

女性の権利拡大、ジェンダー平等社会の実現云々を謳う、リベラル、意識高い系の物差しで高位にランクされる国というのは、女性が自らの生物学的優位性を放擲することで寿命をすり減らし、逆にその分、楽をする男性の寿命は伸びる、そんな悲喜劇の舞台になっているのではないかと。

良妻賢母式の規範に縛られた昔が、女性にとっての幸せなどと言う気は、毛頭ありません。そうした時代の男女の平均寿命の差は、今よりずっと小さかったのですから。

日本社会の現状は、旧弊を脱しつつも、おかしな言説に惑わされることもなく、しなやかに、そしてしたたかに生きる、そんな女性の割合が、欧米より遥かに多くなっていると言いたいのです。

人口の高齢化と平均寿命

高齢化社会という語が日本に当てられるようになって久しくなります。厳密な定義と言えるのかどうかはともかく、人口の65歳以上の割合が、7%、14%、21%を超えた社会を、それぞれ「高齢化」、「高齢」、「超高齢」社会とするのが一般的な慣習になっているようです。

この定義で行くと日本が高齢化社会に入ったのが1970年、それから40年経った2010年には超高齢社会に突入したことになります。

ただ半世紀前ならそれで良かったかも知れませんが、今時65歳を高齢者のよぶのはどうでしょうか?大企業や公官庁なら、退職年齢とは言っても、まだ先もはたらく意欲は十分、年金支給も繰り下げてという人は今でも多いし、これからも増え続けていくでしょう。

図表5は、年齢ごとに死亡率がどのように増加していくかを、片対数のグラフで表わしたものです。

図表5 死亡率増加の変曲点

(【出所】各年度厚労省『人口動態統計月報年計』掲載の表より取得したデータをもとに投稿者作成。年齢層別の死亡率を片対数目盛のグラフで表示するもの。死亡率は2015-2019年の5年間の平均値)

これで見ると、現在の日本人は75歳あたりを節目に、急激に死亡が増加しているのがわかります。つまり、普通の遺伝的素因をもった人たちは、この年齢くらいまでは大抵が達者でいられるものの、そこを過ぎれば、まだまだ元気というのは長命の素因をもって生まれた人に、次第に限られていくということなのでしょう。

死亡率の急増し始める年齢があることが、平均寿命の求め方を説明する際に言及した、加齢による累積生存率減少を示すグラフで高齢側が寸詰まりになる理由です(前稿図表1)。

図表1 平均寿命の算出法

(【注記】平均寿命の算出については、厚生労働省が公開する各年度「簡易生命表」に記載の「参考資料1 生命表諸関数の定義」に詳しい。図は、同参考資料記載の図を元に、本文の記述に合うよう修正したもの)

上述の理由から、以下では75歳以上を高齢者として議論していきます。

高齢者となった人の割合が増えるということは、それ相応の死亡の増加も同時に伴います。その関係を示したのが、図表6です。

図表6 人口の高齢化と死亡率の関係

(【出所】各国の高齢化率は『Population Pyramid.net』より取得。高齢化率は総人口に占める75歳以上の割合、死亡率は総人口に対する年間死亡数の比を表わす。散布図中の各国の位置は、それぞれ2019年のデータに基づく。日本については、1988~2013年(間隔不同)のデータも併せて表示している【赤色のマーカー、国名の表示なし】)

前稿図表2、すなわち本稿図表7に掲げた8ヵ国の、高齢化率と国民全体について見た死亡率を散布図形式のグラフにしています。図には、1988年以降日本が経てきた高齢化-死亡率関係の推移も併せて表示していますが、2つの値の間にきれいな直線関係が成り立っていることが分かります。

日本のデータを元に描いた高齢化-死亡率直線と比較すると、欧米諸国における両値の関係はすべて死亡率過多となっています。とくに、米国、英国、ドイツで乖離が激しい。高い死亡率がこれらの国々で平均寿命を引き下げ、高齢人口の増加を抑制しているのは明らかでしょう。

米国の人口に占める75歳超の高齢者の比率6.5%という水準は、日本でなら四半世紀も前に到達しています。その当時の死亡率は0.75%程度。現在の米国より0.12%も低い。

それ以後、日本では、高齢化率も死亡率も急速に上昇していき今日に至るのですが、年齢層別に死亡率を見ると、『【読者投稿】武漢肺炎で若年層も含めて超過死亡拡大か』で指摘した通り、全年齢層で年々低下しています。それあってこそ、平均寿命の伸長と高齢化の進展の両面で世界の先頭を走ることができたのです。

日本の高齢化-死亡率直線よりグラフの下方にくる国もあります。

ひとつはシンガポール。この国は最近40年間に人口が2.4倍に膨張し、現在の人口構成が20歳代後半から60歳代に著しく偏った、つまり労働移民によって人口増が実現したという、かなり特異な国です、高齢化率が低く、さらに輪を掛けて死亡率が低いというのも、この特徴を考えれば、理解できます。

もうひとつが謎のエックス国。これについては後に回します。

超高齢社会と平均寿命

平均寿命が順調に伸び続け、一方で出生率は低下の一方という今の日本では、高齢人口の比率が驚くほどの速さで増していくのは必然です。「皆が長寿を享受できる世の中になって目出度い」などという議論はまず目にしません。

ほとんどは悲観論であり、その典型的なものは、国民皆年金制度の発足当時は、多数の勤労世代がひとりの被扶養者を支える「胴上げ型」であったのが、今では3人がひとりを支える「騎馬戦型」となり、将来はひとりがひとりを担ぐ「肩車型」に至るというものでしょう。

馬鹿げた議論だと思います。騎馬の担ぎ手がひとり抜ければ、乗っているものの体重を3分の2に軽減しなければ馬が潰れます。つまり年金支給をその分減額しなければならない理屈です。そうなれば、被扶養者層の生活の質は当然悪化し、死亡率もそれにつれて上がっていくはずです。

結局高齢化は、折り合いが付くところまで自律的に抑圧されるでしょう。

人口の高齢化が言われ初めてもうずいぶんになりますが、70~90歳代の年金受給世代の死亡率は、ほぼ同じペースで一貫して下がり続けています。これを支える勤労世代の死亡率も年々低下しているのですから、生活の質的改善は、老若共に進んでいるとみるべきでしょう。

客観的に見て、過重な扶養負担が若年層の生活を圧迫しているとは言えそうにありません。

高齢化社会悲観論者が見落としていると、わたしが感じる最大のポイントは、将来の高齢者を一昔前の「年寄り」と同じイメージで捉えていることです。

前々稿で指摘したように、日本人の肉体的年齢は暦の年齢に対して、年々若返っています。55歳定年退職が一般的だった時代の50歳代の死亡率は、今の60歳代とほぼ同じです。

この先、平均寿命が90歳、95歳と伸びていくとしたら、70歳、75歳まではたらいて、それからが年金生活というのが普通の世の中になるでしょう。高齢化と勤労世代の拡幅が同時進行する事象とあらば、「肩車型」の扶養負担という時代は決して来ないはずです。

人口に占める要支援、要介護認定者の割合は、70歳代後半で12%。80歳代前半で26%、それが85歳超となると60%に跳ね上がるそうです(公益財団法人生命保険文化センター『リスクに備えるための生活設計』参照)。

この年齢と要介護の関係を見ると、この上社会の高齢化が進むと大変なことになりそうに思えますが、これも若干数字のトリックくさい、現在75歳以上の人口のうち、85歳超の割合は3分の1に過ぎないのです。

昨年度の簡易生命表に拠れば、85歳の人の平均余命は6.2年。介護が必要なまでに体力を失った人の余命はおそらくもっと短いでしょうから、高齢化が進むからと言って、社会に掛かる負担が加速度的に増大するこというものではないと思います。

さらに暦の上の年齢と肉体的年齢が乖離していく傾向はこれからも続いでいくことも期待できるでしょう。

「人口の高齢化大変だ~」な議論の多くは、現在をそのまま外挿して将来を捉える直線型思考か、良くて常微分、定積分のレベル。偏微分、重積分的な思考など出来ない人がやってると言うのは、ちょっと言い過ぎでしょうか?

平均寿命を、今生まれたばかりの世代に社会が与える「生活の質」の指標と見るならば、それが年々伸びる社会は、先行世代が後続世代のためにより良い状況を受け渡していく、そんな健全な状態にあるとわたしは解釈します。

こういうのは順送り、どの世代が得をし、どの世代が割を食うというものではないでしょう。

生産活動からすでにリタイアした後も、何らかの形で社会の質的向上には関わっており、少なくとも足は引っ張ってはいない。総体的に見て社会がそういう具合に推移していない限り、一向に鈍化しない日本の平均寿命の伸びは実現しないだろうと思います。

平均寿命の値の信頼性について

最後に、謎のエックス国について。

誓ってもうしますが、今回の稿の概要を考え始めたとき、この国のことを論じるなど、全く考えてもいませんでした。

しかし、アチラから勝手に絡んでくるのです

前稿のはじめに書いたように、厚労省が公表する人口動態統計の諸表には国際比較の対象として8ヵ国が挙げられているのですが、エックス国もそのリストに含まれています。それに則って、それぞれの国の平均寿命の推移をただグラフにしてみた、それが始まりです。

そのグラフを図表7として改めて掲げます。

図表7 過去40年間に世界各国の平均寿命はどれくらい伸びたか(再掲)

(【出所】図表2に同じ)

この国で過去40数年の間に観察された、平均寿命の急速な伸長は驚くばかりですが、他のどの国にも見られる一時的な停滞や短縮の跡が一切見られないのも奇妙です。表示期間には国がひっくり返るほどの深刻な経済危機が生じたことがあったにも関わらず、です。

この国の存在は、「平均寿命=生活の質の指標」というわたしの仮説に真っ向から反する例証となり、いかにも邪魔なのです。エックス国の具体的国名に見当がおつきの方なら、そう言う理由もお分かりでしょう。

いちいち枚挙せずとも、わが国の大使を務めるなどこの国と長い関わりをお持ちで、また極めて同情的な意見をネット論考などで表明しておられる人物をして、『○国人に生まれなくてよかった』なる書を上梓せしめるほど、の一事を挙げるだけで十分です。

図表6にも、この国のデータの異様さが見て取れます。

欧米諸国の平均寿命をごぼう抜きにして長寿国の頂に迫った今になっても、高齢化の度合いは米国と同程度、国民全体の死亡率は極めて低い。「国際金融のトリレンマ」じゃありませんが、「長い平均寿命」「低い死亡率」「進まない高齢化」の鼎立はちょっと信じがたい。

そのからくりが、「ここらにありそうだ」というのを示したのが、図表8です。

図表8 人口、出生数、死亡数の推移:エックス国と日本の比較

(【出所】日本のデータは総務省e-Sat『人口動態調査』、エックス国のデータはUnited Nations, “World Population Project: Data Portal” を参考に投稿者作成。左軸を人口数、右軸を年間出生数、死亡数の目盛りを配し、左右のグラフそれぞれの目盛りの尺度を、1:2.5の比率に調整して、各要素の相互間の比較をしやすくしている)

この国では、直近40年間に人口が1.3倍に増えたことになっているのですが、日本で同じペースの人口増加が起きたのは、1960~2000年の期間。これをエックス国の人口動態と対比させています。

母数が異なるので、人口と年間出生数/死亡数を表わす数値軸(縦軸)の目盛りをそれに会わせて1:2.5の比に調節してあります。

出生数の変動パターンは両グラフで異なるのですが、トータルとしては大体のボリュームは同じです(もちろん人口比による補正を考慮すれば、ですが)。一方で、死亡数の方は、エックス国の方が一貫して日本より低い。しかも、その間の人口増にも関わらず、1980~2006年くらいまでほとんど増加していません。

なんだかこの国の人間は、地球外生命体みたいな生命力をもっている?

「そんなことありえない」とまでは言いませんが、このデータのわたしの見方はこうです。

  1. 死亡については相当過少に報告されている。
  2. その削減幅は年齢に関わらず一律、ではなく、高齢層で実数に近く、若年になるほど少なくなるように、傾斜が付けられている。

この操作を継続的に続けていれば、そりゃ平均寿命は急速に伸び、しかも高齢化率はそれほど上がっていないように、見せることはできるでしょう。その結果出来上がったのが、「これからどうやって対処するの?」と心配になるほどの、大量の高齢者予備軍を抱えた形の人口ピラミッドです(図表9)。

図表9 最近の人口ピラミッドの特徴:エックス国と日本の比較

(【出所】『Population Pyramid.net』のホームページより取得できる、国別、年代別の人口ピラミッド図を転載。図は両国の2022年相当のもの)

回転し続けなければ倒れてしまう独楽を思わせる姿ですが、実際に上に書いたような統計操作をやった結果であるなら、今更回すのを止めるのは無理でしょう。

止めれば途端に平均寿命の大幅な短縮となって衆目を集めるのは必至。人口ピラミッドに見る中高年層の膨らみは、回転の遠心力で生じた見かけの部分を含むから、急激な高齢化の恐怖も思ったほどのものではないと考えれば、多少の慰めにはなるでしょうが。

なぜそんなことをやるのかと言ったら、まあ「見栄」のためなんでしょう。

なぜかこの国の人たちは、先進国の住人を自認することに異様なほどの執着を示します。「世界がうらやみ、憧れる」なんて赤面もののフレーズを、国のトップが臆面なく口にする。そんなお国柄からすれば、40年前でさえ65歳をようやく上回った程度の発展途上国並みの平均寿命には、とても我慢できなかったんでしょう。

平均寿命を伸ばすのなら、近隣に日本という良い手本があります。大戦前50歳に満たなかった平均寿命を戦後40年間に25年も伸ばしているのですから。

ただしこれやるには、それなりにカネも掛かれば、多方面にわたる地道な努力も必要。それをお手軽にやってのけるウマい方法を思いついたアタマが良い人間が、きっといたんでしょう。しかし、実はそれ、一度やったら、もう離脱できない禁断の麻薬。

粉飾決算、二重帳簿。経理の改竄なら日本でも掃いて捨てるほどあるでしょうが、流石に国の基本統計となると。政策課題をいち早く見つけ出し、また施策の効果を見極める上で、統計の正確性は必須も必須。それが常識と思うのですが、どうもそうではない国もあるんでしょうね。<了>

関連リンク

いかがでしょうか。

昨日の議論で少し気を持たせてしまいましたが、なかなか強烈などんでん返しです。平均寿命という、一見すると健康と医療に関わりそうな話題が、じつは年金制度などの経済問題と密接に結びついているという論点、そして最後は思考の過程でいつもの「粉飾の疑い」を発見(?)するというオチ。

知的好奇心という観点からは、本当に面白いといわざるを得ないでしょう。素晴らしい題材を提供して下さった伊江太様には、心より感謝申し上げます。

最後に、伊江太様から頂いた過去論考のリンクを掲載しておきます。

伊江太様から:「データで読み解く武漢肺炎」シリーズ・全23稿

『【読者投稿】武漢肺炎で若年層も含めて超過死亡拡大か』(2023/08/01 10:00)

伊江太様から:番外編

どれも力作ぞろいですが、いずれも大作ぞろいです。ゆっくり読み返していただいてもおもしろいかもしれません。

本文は以上です。

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読者コメント一覧

  1. CRUSH より:

    さもありなん。

    「そんなことして誰が得する??」

    てな幼稚な見栄張りを極めてナチュラルに選択し実行しますからねえ、彼らは。

    そう言えば某ランキングアニメにあった
    「ギャクザ国」
    てのを、連想しました。

    ま、気のせいでしょう。

    1. バッハ より:

      死んでも謝らないという言い回しが向こうはあるそうで、彼らにとって面子を保つというのは死ぬことよりも大事な事なのかも知れません。

  2. sqsq より:

    ジニ係数、ピンとこない数字ですね。
    アメリカ、イギリスよりもましと言われても彼らの生活を隅々まで知っているわけではないし。日本の格差がひどいなどとは思えないから。

    ところが実感のわく計算をネットで見たことがある。
    日本のプロ野球選手の年俸でジニ係数を計算した人がいたのだ。
    プロ野球は実力の世界。1軍、2軍、育成と全部で1000人弱の選手がいるが上は3億の年収を取る選手がいる一方育成の最低年俸は240万円という。
    結果は確か0.65くらいと記憶している。

    ジニ係数の計算方法はそんなにむつかしくない。例えば上場企業の正社員のジニ係数などを計算して公開したらおもしろいかもしれない。(その会社の給与計算をしている部門でなければできないが)

    1. nanoshi より:

      横入り失礼します
      へえ、と思って調べたらアメリカのスポーツリーグの給与格差の論文が見つかりました。

      Income Inequality in American Professional Sports Leagues
      JS Thurman 著 · 2016
      このTable 4を参照すると、2015年のGINI indexは
      MLBは0.615ぐらい、バスケは0.55ぐらい、アメフトは0.525ぐらいですな。野球は育成期間が長い?ジニ係数が高くなりがちなのかも。

      ただ、チーム単位のジニ係数はまた別の話です。
      Championship inequality in major league sports looks a lot like income inequality in the U.S. economy という2018年のWashington Postの記事を見ると、
      NBA 0.721、NHL 0.706、MLB 0.590、NFL 0.593となっていますね。

  3. バッハ より:

    健康で長生きならば良いですが、現実は寝たきりや家に籠りっきりという人も多く居るので、平均寿命が長いから良いとは一概には言えないという気がします。
    私の理想はピンピンころりなんですが、思い通りに寿命を迎えられる人はどのくらい居るのでしょうね。

  4. めたぼん より:

    本題とは違いますが、

    >>その一方で、日本はそんな方向には進まないという確信は、わたしの中でむしろ強くなっています。所得の高低にかかわらず、そんな社会はまっぴらという想いは、日本人に広く共有されていると言って良いと思います。

    この部分は全く同感です。
    富裕層は先進医療使いまくってるのに貧しくて病院に行くこともできない人がいる、という状況を日本人は望んでいない。
    アメリカだったら年俸10億円以上受け取れそうな雇われ経営者が年収5千万で満足している。
    最近は格差が広がってきた実感はあるものの、まだまだアメリカと比べたら低所得者層が普通に生活できるレベルを保っています。
    富の再分配を容認する日本の富裕層(特に雇われ経営者)は世界に誇れる存在だと思ってます。

  5. たろうちゃん より:

    ○○人に産まれなくてよかった。武藤敏政元駐韓国大使。
    X国→大韓民国。
    外華内貧の整形大国。
    見栄っ張りの10月のノーベル賞発表に異常に執着する国。ノーベル症ともいわれる。日本に集り続け「協力」と云う名のカネくれ、集りのなにが(大)だかわからない乞食国家。こんな国と縁の切れないバカ政治家が跋扈する日本国。
    南も北もカネくれ政策に余念がない民族。あぁ、、朝鮮民族。頼むからこっちは見るな、来るな、日本国のバカ女ども。いい加減目を覚ませ!

    1. たろうちゃん より:

      武藤正敏氏でした。間違えた。それにしても伊江太氏。凄い文章力と考察力。オレには無理だ!羨ましい。又の論考お待ちしています。

  6. 農民 より:

     実態を把握・改善させるための情報として統計を取るところを、統計を改善させるために情報を歪め把握を放棄してしまったら、さて実態は……うん、X人に生まれなくて良かった。儒教圏では寿命以外にも、人為的な男性余りもあるし。

     前稿での議論の際に、長寿だと思っていた沖縄が平均寿命ランクから下落しているということで、日本国内の県別、小地域別の統計を扱っている所を色々見てみたのですが。わかりやすいのは2010年とちと古いものでしたが、沖縄の女性は依然として長寿上位なものの、男性の下落が顕著でした。対比として長野は県別で両性とも1位。総合の平均寿命が長い地域は男性も長寿である、というよりは、弱々しい男性でも長生きできるような好環境であれば平均寿命も伸びる、という感じでしょうか。男ざっこ。

  7. sqsq より:

    OECDは「先進国クラブ」とも呼ばれている。韓国はその一員だ。
    OECD35か国の結核発生率の統計がある。韓国は10万人当たり77人で最下位、しかも 2番目に多いラトビアが37人だから断トツだ。これは日本でいえば1960年代の水準。
    あの国の取り組みはどうなっているのかね。日本は最近10万人当たり10人を割り、やっと低蔓延国になった。

  8. みみこ より:

    格差格差と、少々うるさいようにも感じるこの頃ですが…。
    ジニ係数が昔より上がっている理由の一つは「結婚観の変化」と思います。
    40年ぐらい前は、男性が女性に求める条件の一つに「学歴は自分より下」というのがあったと思います。「収入が自分より上の女性」は論外だったでしょう。
    でも現在は男性も結婚相手に「収入」を求めるようになっているとか。その結果、「学歴」も同等(以上?)になっていることでしょう。
    「高学歴の正社員同士」の結婚が増えれば、その対極の結婚も増えているはず。当然、家庭間の経済格差は以前より大きくなっていると思われます。
    その一方で、高齢者が増えているので、ジニ係数が見せるほどの格差はないのでは、とも思います。
    小中学生が二人いる年収700万の家庭と年金収入300万の老夫婦の場合、生活に余裕があるのはどちらでしょうか。
    なお、男女間格差問題で、よく年金収入の差が言われますが、これは「労働年数が同じ場合」の差で見ないと実態がわかりにくいです。社会で働き続けた女性の数は、男性に比べて圧倒的に少ないでしょうから。
    さらにその数字を出してもそれが「男女格差」を表しているかといえば、今の時点で男性なみの期間厚生年金を払う働き方をしてきた女性は「一般人」と乖離している可能性もあるので(公務員や専門職が多そうなので)、これも疑問符がつきそうです。
    何が言いたいかといえば、データはたとえ正確に取得及び公表していても、見せ方でごまかしが効くので要注意ということです。

  9. 匿名 より:

    エックス国が国内向けに統計データを改竄するのは勝手だけど、「国際比較の際にはエックス国のデータは入れない」 という国際的なコンセンサスが必要だと思う。国際比較のデータを基に政策を立案しようとすると、政策を誤る危険がある。

    それを強く感じたのが新型コロナに関する統計。初期の頃、日本のマスゴミは 「感染を抑え込んでいる」 とエックス国を絶賛していたが、ウォールストリート・ジャーナルが報じた各国の超過死亡数では、「コロナによる死亡数と超過死亡数の乖離」 がダントツだった。(ちなみに当時の2位はロシア)

    世界のコロナ死者数、実際は公表数より上振れか – WSJ 2021年1月15日
    https://jp.wsj.com/articles/SB11721070613559173311104587222350435711924

    昨年の国別 「超過死亡数」 と新型コロナ関連死者数
    https://s.wsj.net/public/resources/images/B3-HP374_0115_0_NS_20210115052824.png

  10. より:

    まあ、アノ国ことだろうなぁと思いながら読んでいたら、案の定というべきか。
    アノ国でいろいろとおかしなことが行われているらしいというのは承知してましたが、さすがに出生/死亡数に関する統計まで操作している可能性があるとまでは想像だにしていませんでした。もしそれが事実であるとすると、総人口数などの基本数値すらも疑わしくなります。アノ国は、現在人口約5000万人と称していますが、実数はもっとだいぶ少ないのかもしれません。まるで、新聞の公称発行部数のようです。折しも、このところアノ国では、前政権による統計改竄が次々と明るみにされており、もはや統計数値を弄るのが習い性というか、政府の仕事の一つになっているのかもしれません。

    そうしたら、もう一ついかにも怪しそうな数字を見つけてしまいました。

    https://honkawa2.sakura.ne.jp/0211.html

    これは主要国におけるエンゲル係数の推移を比較したものなのですが、他の主要国と較べ、アノ国だけが際立って低い数値となっており、どう考えても怪しいと言わざるを得ません。
    一応、外食費/酒などは除外されているという注釈がありますが、私の知る限り、アノ国は中華圏や一部東南アジアのように3食外食も普通などという外食天国ではありません。酒は……まあ、平均して日本よりは多いかもしれませんが、エンゲル係数に大きな差を齎すほどの違いはないと思います。
    ということは、ここでも何らかの改竄、もしくは恣意的な操作が為されている可能性もありますね。例えば、一部の超高所得者の場合だけで計算しているとか。さて?

    1. CRUSH より:

      面白いグラフですね。
      日本の推移を見てるだけでも、とても面白い。

      日本はバブルの頃から継続的に係数低下し、バブルが弾けても低下トレンドは止まらず。
      バブルの頃は財テクにばかり高額支出してたから係数低下し、バブルが弾けたら今度は食うに困って食費を切り詰めたから更に低下、とか?

      韓国の係数推移も、そういう読み取りができませんかね?
      家計負債が膨大なので、収入は借金返済に回されて、食費に回っていないから、世界的に稀に見るジニ係数の低さなのだ!とか。

    2. sqsq より:

      統計いじって見栄張った結果こういうつじつまの合わないグラフになる。
      韓国政府は何と言い繕うのかな。
      「韓国人は白米とキムチがあれば十分なので収入の上昇に伴いエンゲル係数が下がった」

    3. カズ より:

      ぶっちぎり世界一とも言われるインスタント袋めんの一人当たり消費量からもその要因をうかがえそうですね。
      2020以降の指数上昇は、失業率の増加に伴う所得低下だけではなく、袋めんの値上りにもよるのかと・・。

      *彼らのソウルフードが辛い(ツライ)ラーメン・・だって説。

    4. クロワッサン より:

      龍 さん

      エンゲル係数って借金の返済額って考慮されるんでしたかね?

  11. 三門建介 より:

    平均寿命からの考察のようですね。楽しく拝見しました。

    文中で定年年齢の引き上げに触れていましたが、難しいかもしれません。

    健康寿命と言う値があります。健康に関する問題で日常生活が制限されることなく生活できる期間です。
    男女一緒の健康寿命は74歳です。男女別でいうと男性が71歳で女性が75歳だそうです。

    ここから、定年を70歳に上げる話が出たのかな?と言えますね。また、後期高齢保険制度が75歳以上なのはこの辺から来ているかもしれないです。

    健康寿命が男女別で71歳以上ですから年金受給を70歳まで引き上げそうですね。
    ただ、定年後健康に不安が出るとなると、その方向での年金受給年齢は考えたくないですね。
    年金受給年齢は選択制でお願いしたいですね。

  12. 元雑用係 より:

    バツ国の統計改竄を示唆する新根拠の登場ですか。
    これは誰も気づいてないかもですね。

    かの国はコロナの死者数の集計も怪しくて、死因の取り扱いでいろいろ「工夫」してそうに思ってましたが、工夫のノウハウなど常日頃から豊富に蓄積していたのかもですね。

  13. すみません、匿名です より:

    >中流層が没落し、低所得層はより貧しく、富がますます一握りの富裕層に集中していき、所得階層間の反目が露わになっていく。

    アメリカの「絶望死」ですね。白人低学歴層の労働者平均寿命が以前よりも短くなっている。
    資本主義の親玉のアメリカ、相続税の基礎控除額が545万ドル(約8億円)・・・。
    日本では、国税庁はKSKシステムで、個人の財産はある程度は把握していますし
    相続税が高く⁽昭和は75%今は55%⁾3代で財産がなくなると言われます。
    国の意思として、超大金持を存在させない方針なのでしょうか。
    日本は「世界で最も成功した社会主義国」ですので・・・。

    >今時65歳を高齢者のよぶのはどうでしょうか?

    う~~ん、そろそろ年金支給年齢70歳に引き上げる論議が起こりそうですね・・・
    はたらけどはたらけど なお わが生活楽にならざり ぢっと手を見る・・・
    まあ、生涯現役!隠居生活は お墓に入ってから!でしょうか・・・。

  14. がみ より:

    伊江太様

    内容の濃い意義のある寄稿拝読させていただきました。
    ありがとうございます。

    ふと最近自分が調べはじめた
    「日本の労働力不足ってホントなの?」
    にも関係があり勉強になりました 。
    少子高齢化・労働力・労働者不足と言われて久しいですが、産業構造どころじゃない変化があった幕末開国期と第二次世界大戦終戦時に比べても日本人の人口は爆発的に増加しているのにな?

    高齢化はわかるが、外国人を入れて日本政府や企業に都合いい仕事に就いて貰って乗りきり多民族国家になるのが当たり前のように与野党マスコミ経済界までが口を揃えますが、私はマイナスも多く亡国へ向かう頽廃的で安易な施策だと思っています。

    一時的に特定の仕事に就く為に来日した外国人がコロナ禍での休業や失職を挟み別の職や生活を模索しているのは埼玉県川口だけでなく我が神奈川県でも同じです。
    簡単に帰れとは言えないのに、びっくりするほど場当たり的に入国させています。
    難民申請認定問題なんて問題だけではなく日常生活が大きく変わってしまいます。

    現在与野党共に入国して就労して頂く方々の法的な身分や 相互の歩みよりや責任の所在が不明なさいまま感情論が先行して事態は縺れています。

    身の回りでも頻繁に見掛けるようになりましたが明らかに合法・正規の仕事をしていない来日者も相当数確認しています。

    非常に暗澹たる気持ちになります。

    1. sqsq より:

      我々が考えている以上に外国人が入っているかもしれない。

      自宅近くでベビーカーに赤ちゃんを乗せた若いお母さん、その横に銀縁メガネをかけた上品なおばあちゃん。幸せそうな家族に見えたが中国語で会話していた。

  15. さより より:

    以下の考察をしてみました。(当を得ているかどうかは分かりませんが。)

    前稿:【読者投稿】平均寿命から見える経済と「社会の余裕」
    の以下の引用への考察ですが、前後篇通して全体へのコメントとして。

    >>長く日本を苦しめていると言われるデフレですが、本当のところは、価格上昇を伴わない品質の向上という風に捉えるべきではないのか?
    >>生活の質的向上、生命の安心安全を保証するシステムの強化が、日本の平均寿命が持続的に伸長する背景にあるとするなら、前節に挙げたさまざまな事柄のどれを取ってみても、必ず金銭的な裏付けがあるはずです。それも相当巨額の――。
    それらは当然、日本のGDPの中に含まれているはずです。
    日本のいわゆる「失われた30年」は、図表2に表示する約40年の中にすっぽり含まれます。
    ほとんどGDPの拡大がない中、常に平均寿命の伸長を保証するだけの「余裕」が産み出し続けられていたということでしょうか?

    この「余裕」の正体は、国債発行でしょう。国債発行額は、そのまま国家予算として財政支出されれば、GDPに算入されます。
    そして、その支出が、「律儀な」日本政府によって、国民皆保険が厳密に守られることや、災害時やリーマンショック時の民生の安寧に支出されたのです。

    国債発行については、以下のリンク、

    【図解】新規国債発行額と国債残高の推移
    https://news.yahoo.co.jp/articles/6452bbab6615f76a9991846f65ed3f840865f4cb

    によれば、国債発行残高は、1989年の160兆円から、2022年1026兆円へ、866兆円増加しています。
    33年間に866兆円ですから、1年あたり、26兆円が財政支出に回されたことになります。
    (勿論、この支出は、国内の民生だけではなく、若干の海外援助にも回されたと思われますが。)

    この間のGDP(実質)は、1989年の406兆円から、2022年の546兆円へ、と140兆円の増加です。33年間で、140兆円増で34%増、年率平均約0.9%成長です。
    (この中には、国債発行による財政支出分も含まれています。)

    国債発行が民生の安寧の為に行われたことは、上記Yahooニュースの記事中で、
    「一方、新規国債の発行額は、1989年度は約6.6兆円でしたが、2009(平成21)年度に50兆円を超え、コロナ禍に見舞われた2020年度には初めて100兆円を突破しました。」
    と書かれています。
    2009年は、リーマンショック発生の翌年です。
    まさしく、職を失った、段ボールの路上生活者などの対策費としての国債発行だったのでしょう。
    民生の安寧(の結果の平均寿命の伸び)=「余裕」の正体は、国債発行だったのではないでしょうか?

    日本政府が今後も、律儀にきめ細かい民生の安寧政策を続けるためには、やはり、財政支出を民生の安寧のためのみならず、実体経済を力強く発展させるための施策とその為の財政支出をする必要があります。
    そして、それは、増税では実現できないことは明白でしょう。

    1. 伊江太 より:

      さより様

      >民生の安寧(の結果の平均寿命の伸び)=「余裕」の正体は、国債発行だったのではないでしょうか?

      仰るとおり、社会の不具合を吸収するためには、カネが必要なわけで、社会の「余裕」などという漠然とした言い方しか出来ませんでしたが、どうやって工面したかと言ったら、税収減だったはずのこの時期、国債への依存は相当大きかったんでしょうね。

      ただ、この時期、日限の国債の大量引き受けはまだやっていなかったのと、海外機関投資家もそれほど日本国債は買っていなかったと思うので、主な買い手は国内の金融機関。その原資はといったら、国内に存在する大量の預貯金だったんじゃないかと思います。

      「ガベージニュース」というサイトに
      『日本の家計資産残高は増加、2043兆円に…日米家計資産推移(最新)』記事を見つけましたが、
      http://www.garbagenews.net/archives/2067203.html
      その中に日本の家計金融資産構成(1997年-2023年Q1)(兆円)というグラフが出ています。

      これを見ると家計金融資産の総額は、バブル崩壊時、リーマンショック時に減少していますが、それは株式出資額が主で、メインの700兆円を超える現金・預金は全く減少していません。

      つまり不況対策として政府が支出したガネは国債発行で賄ったにせよ、元はといえば国内に蓄積していた国民のカネで、高度成長期からバブル期に掛けて、国の稼ぎの相当部分は経済基盤の拡大に費消されたにしても、国民の取り分については、無駄遣いせずに貯蓄に回った。その堅実性が「余裕」を生み出していたのかなと、ご指摘を受けて、その正体に思い至りました。

      それにしても、日銀の国債大量引き受けが、とんでもない事態を引き起こすかのように騒ぎ立てる向きがありますが、1000兆円にも上る国内の現金・預金額に比べて、高々6兆円弱の引き受け額など、そう目くじら立てる必要はないのでは?

      それよりも、国内の金融資産の半分が投資信託、株式など、恐慌時には紙屑化しかねない投資資金である米国で、連銀があれほど大量の国債を発行して大丈夫なのかと、そちらの方が気になります。

      1. さより より:

        伊江太様

        ありがとうございます。平均寿命とGDPの関係性に着眼された、伊江太さんの、データに基づく客観的で懇切丁寧な論考を読むことが無ければ、このようにじっくり考えて見ようとは思いませんでした。論考・論文は、着眼点が命である事を改めて感じました。
        然し乍ら、日本人の律儀な貯蓄好きと、日本の役人の律儀な政策実行が、良く炙り出された論考でしたね。
        日本は戦前も、占領地を内地と同じ制度で統治するのだ、と先ず学校を作り国民皆教育等を実施し、地産治水をし、道路港湾などの社会インフラを整備しました。それが、他の列強と全く異なる所です。
        このように見ると、民生の安寧は、日本の為政の根幹なのでしょうか?
        これが、米国・ドイツとの差を産み出しているのでしょうか?
        伊江太さんの着眼は、日本の「為政の本質」を炙り出したのかもしれません。

        1. さより より:

          地産治水 → 治山治水

          でした。

  16. 人口比 より:

    エックス国:住民登録上100歳以上8月末8,929人
    日本:2023年9月1日時点住民基本台帳100歳以上92,139人

  17. じゃん🐈 より:

    伊江太さまんっ!
    いつもすばらしい考察、ありがとうございます。
    とりあえず、感謝のきもち!

  18. 赤ずきん より:

    とても好奇心を刺激されました。また皆様のコメントも それぞれに有意義でした。質の高い投稿は質の高いコメントを集めるようです。

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