【読者投稿】第5波を膨張させた「無秩序な検査拡大」

データで読み解く武漢肺炎と「第5波の本当の規模」

当ウェブサイトでは読者投稿を歓迎しており、読者投稿要領等につきましては『【お知らせ】読者投稿の常設化/読者投稿一覧』にまとめています。さて、例の「武漢肺炎」を巡り、こちらから「ぜひ最新論考が読みたい」と要望させていただいたのが通じたのでしょうか、これまで合計15本の読者投稿を寄せてくださった「伊江太」様というハンドルネームの読者様から、嬉しいことに16本目の投稿を戴きました。

読者投稿につきまして

当ウェブサイトは「読んで下さった方々の知的好奇心を刺激すること」を目的に運営していますが、当ウェブサイトをお読みいただいた方々のなかで、「自分も文章を書いてみたい」という方からの読者投稿につきましては、常時受け付けています。

投稿要領等につきましては、『【お知らせ】読者投稿の常設化/読者投稿一覧』等をご参照ください。また、読者投稿は専用の投稿窓口( post@shinjukuacc.com )までお寄せ下さると幸いです。

※ ※ ※ ※ ※ ※ ※

この読者投稿のなかでも、「伊江太」様というハンドルネームの読者様からは過去に15本、非常に優れた投稿を寄せていただきました。

伊江太様から:「データで読み解く武漢肺炎」シリーズ

第1稿によると、伊江太様は某国立大学医学部の微生物関係の研究室での勤務経験を通じ、実際にウイルスを扱っていたそうです。

実際、これまでの投稿でもわかるとおり、どの論考も力作ぞろいで、とくに豊富なデータと合理的な着眼点で、マスメディアが垂れ流す言説をバサバサ斬っていくさまは、圧巻です。

もっとも、伊江太様からは、前回の15稿目をもって終了、との断り書きがあったのですが、これについては、ここまで優れたシリーズが終わってしまうのは大変にもったいないことだと思っていましたし、実際、読者コメント欄などを通じ、しばしば伊江太様に「続きはいかがですか?」とあつかましくも「おねだり」をしてしまった次第です。

こうした願いが通じたのでしょうか、嬉しいことに、伊江太様から16稿目を戴くことができました。

いったい、どんなことがかかれているのでしょうか、さっそく読んでみましょう(なお、原文、タイトル、小見出し等につきましては、当ウェブサイト側にて修整している箇所もありますのでご了承ください)。

武漢肺炎流行の第5波は本当に伝えられているようなものだったのか?

泣き一回の「数字で読み解く武漢肺炎」番外編

もう止める、言うたやないか」。

そう言われると、バツが悪いことこの上ないのですが、どうしても言いたいことが出てきたということで、もう一度だけ(多分)投稿をお許しいただきたいと思います。

この武漢肺炎拡大の第5波。

正直に言うと、これほどの規模になるとは思ってもいなかったのですが、それでもわたしは、これまで何度か繰り返されてきた感染拡大・収束と、質的には何ら違いはないものと考えています。

入院数や、重症者数、死亡数などの報告値もようやくピークを越したかに見えますが、実際の感染はオリンピックが終わった頃にはすでに下降局面に入っていたはずです。

これから10月にかけて急速に感染は下火に向かい、その後再び拡大のフェーズに入ったとしても、そのときにはワクチン接種は幅広い年齢層に及んでいます。次に来る流行の波はもっと目立たないものになるでしょう。

そう思うんやったら、黙って見とったらええやないか」。

自分でもそうは思うのですが、マスコミを通じて伝えられる、政府、自治体のアドバイザリーボードに関わる人たちも含め、専門家連のこの流行第5波の最中に発せられた2つの見解。

いわく、「この感染拡大は制御不能」。

いわく、「デルタ株は従来のウイルスとは別物。非常に危険性が高い。」

これには、まったく同意できません(※もっとも、前の方はすでに結果が出ていますが…)。

注意喚起とか警鐘などのレベルを通り越して、もはや煽りとでも言うべきではないのか。

ええ加減にしいや」。

これくらいは言いたくなります。

そして、こうした見解に対しての正面切っての反論が、知る限り一向聞こえてこない方が、むしろわたしをうそ寒い気分にさせます。

「誰も言わんのやったら」、というのが、この文を書いた理由です。

感染対策の中心にいる人たちとわたしとでは、接しうるデータは質量ともに雲泥の差ではあるでしょうが、みるべきが、自治体から上がってくる、多くは誰にも公開されている、諸種の感染、医療統計である点は同じはず。要はそれをどう解釈するかの問題だと思います。

どちらの解釈に分があるのか、そこのところは、お読みくださった方の判断に委ねたいと思います。

なぜこんなに検査陽性数が膨れ上がったのか?

日々報告される全国のPCRと抗原検査の陽性件数は、8月末には一時26,000を超え、1月の第3波の際のこれまでの最大値である約8,000件を3倍以上も上回ったのですが、これにはからくりがあります。

図表1は、厚生労働省新型コロナウイルスに関するオープンデータサイトからダウンロードできる全国のPCR検査実施数を記録したCSVファイルの一部です。

図表1 国内の武漢肺炎のPCR検査に生じた統計方針の変更

(【出所】厚生労働省『新型コロナ感染症について:オープンデータ』からダウンロードされるPCR検査実施数を示すCSVファイルの一部。①~⑦の表示、および色つきの枠線は筆者が記入)

7月12日以降、新しい検査機関のカテゴリーが加わっていることがわかるでしょう。

図中⑦で示したもので、自費負担の民間検査となっていますから、主要駅の近辺によくある、通勤の途中にでも2,3千円程度の料金で手軽に検査が受けられる類いの施設が主なものでしょう。その分だけで、他の①~⑥の機関でおこなわれた検査数の合計を上回る日もしばしば見られています。

こういう検査自体は以前からあったのですが、陽性判定を受けた人が保健所に申し出、再検査を受けない限り、これまでは公的統計に反映されてきませんでした。

オリンピックの開幕を控えた微妙な時期に、急になぜそんな数値を公的統計に取り入れることになったのか、その理由は知りませんが、ともかくこれを境に、それまで低値で推移していた自治体も含めて、全国一斉に検査陽性数の高騰が始まっています。

このカテゴリーの検査値は、これまでわたしがしばしば槍玉に挙げてきた、診察、治療には関与せず、検体の採取をおこなって検査機関への仲介の役割を果たしている、図中⑥「医療機関」から出てくるデータの質と同等、あるいは輪を掛けてひどい(偽陽性を多数含む、あるいは異様に検出感度が高い)ものだとみています。

一方で、この検査陽性数をそのまま感染者数と受け取る立場の人にとっては、考慮する検査対象を大幅に増やしたことで、より感染者の掘り起こしが進んだとみるのでしょう。結局ここのところが彼我の「解釈の違い」の最大のポイントとなると思います。

流行第5波の本当の規模は?

ちょっと大きな表になりますが、上記の統計方式の変更を挟んで、緊急事態宣言と蔓延防止措置の対象となった33都道府県(~9月12日)で、感染者数、入院数、重症者数、死亡数がどのように変動したかを、図表2に示します。

図表2 武漢肺炎流行第5波の間に起きた各種報告値の拡大

【図表説明】

緊急事態宣言および蔓延防止措置の指定を受けた33自治体について、9月8日時点の感染者数(検査で陽性判定を受け、未だ退院/療養解除となっていない人数)、入院数、重症者数、死亡数を示す。死亡数の値は日ごとの振れが大きいため、当日と前後3日間の値の平均値を採っている。カッコ内の値は、流行拡大前の7月7日の報告値と比較して、倍率(感染者数)、または増減した数を示している。第4波以前の流行時のデータと比較して、最大となっている報告値は、黒字白抜きの数字で表している。データの取得は、過去データが容易に得られる自治体については、それぞれの新型コロナウイルスに関するホームページ(図表3の脚注参照)、それ以外の自治体分は東洋経済オンライン『新型コロナウイルス国内感染の状況』、およびNHK『特設サイト 新型コロナウイルス:病床使用率 全都道府県グラフ』による。

感染者数は検査で陽性判定を受け、いまだに退院または療養解除に至っていない人の数です。

退院/療養解除者の数は陽性判定者の動きに追随しますが、両者の間には10日程度の時間差があるため、感染の拡大時には感染者数は累積的効果で飛躍的に増加します。対象期間(7月7日~9月8日)の間に、感染者数が数十倍にも増えている自治体が多いのはこのためです。

北海道を除く32自治体で、感染者数はかつてない規模に達しています。

ただ、どの自治体でも入院数も大幅に増えてはいるのですが、その規模は感染者数の膨張に見合うほどのものではありません。また、3割近くの自治体で、かつての流行の際のピーク値を大きく下回っています。

もっともこれだけでは、感染とされたもののほとんどが入院の必要がない程度と決めつけることは出来ないでしょう。

かつてのように検査陽性となれば、即指定医療機関に入院というわけではなく、施設、自宅療養を含め、どのように対応するかは自治体の判断に委ねられているのですから、病床の空き状況によって入院数が大幅に抑制されているということもありえます。

この点はのちのど改めて論じますが、第5波の流行がほぼピークに達した時期に、重症者の数が過去の流行時を下回っている自治体が33都道府県の約半数もある点は注目すべきでしょう。「重症化の恐れがあるケースに絞られたために入院数が低目に抑えられている」、とする説明にとっては不都合な事実です。

さらに、今次の流行で生じた死亡数は、第3波、第4波のそれよりずっと少ない。

これら「本当の」疾患に関わる指標に着目すれば、流行の規模に関する見方はかなり違ったものになると思います。

確保病床の使用状況(NHK特設サイト新型コロナウイルス『病床使用率 全都道府県グラフ』)を考慮すれば、今次の流行で真に医療状況の逼迫にまで至っているのは、首都圏3県に加えて、大阪府と沖縄県くらいと言えそうなのです。

過ちて改めざる、これを…

東京、大阪、愛知、北海道の4都道府県について、過去からのデータを含め、感染者数、入院数、重症者数、死亡数がどのように変動してきたかを見たのが図表3です。

図表3 大都市圏の武漢肺炎流行のパターン

【図表説明】

取得できるデータの制約のため、グラフに表示した期間は、東京都と北海道の3月1日以降に対して、大阪府と愛知県は5月1日以降となっている。感染者数、入院数、重症者数、死亡数の各値は、自治体の報告に基づき7日間移動平均値を計算して掲げている。図中、Ⅰ~Ⅴのローマ数字は、第1波~第5波の流行を示す。グラフ作成に使用した元データは以下のサイトから取得。

それぞれの値は対数目盛のグラフにして示しているので、見かけは日常感覚とややずれがあるでしょう。1が2に増えるのも、1000が2000に増えるのも、この表示法では同じ距離の動きとなってグラフ上に表れますから。

感染の拡大、収束時に感染指標の値が直線的に上がり下がりして見える部分は、2、4、8、…倍、あるいは2分の1、4分の1、8分の1、…、というぐあいに、一定の時間間隔で同じ比率で変化していることを示します。

直線の傾きが大きいほど、その変化の速度が大きいことになります。

東京都のグラフについて見ると、流行第5波の間、拡大がもっとも急速だった時期には、感染者数は約13日ごとに倍加しています。一方で入院数の倍加時間は約30日。

こうした状態が1ヵ月以上も続いた結果、入院した人は7月初めには感染者「3人弱にひとり」だったのが、9月初めには「9人にひとり」にまで縮小しています。

無理にでもこの数字を受入れようとすれば、感染拡大の初期から病床の逼迫を見越して入院制限をやり、その強度を継続的に上げていったとか、流行の経過とともにウイルスの病原性が低下していったとか、相当馬鹿げた理屈をひねり出さなければいけなくなります。

おかしいとするなら、それは感染者数、その算出の元となった検査陽性判定の数に帰するしかないでしょう。

第5波における感染者数の増加ペース、じつはこれまでで最速というわけではありません。

昨年7~8月に起きた第2波(東京、大阪、愛知)、北海道では9~12月の第3波の拡大時、絶対数は少ないものの、拡大ペースは今次のものより速かったのです。

東京では倍加時間は約11日になっています。

この先行する急速な感染者数の膨張。

日本の感染拡大を抑え込む上で、重要な役割を果たしていた保健所による発症者周辺の濃厚接触者調査を、多数の疑陽性症例を発生させることで台無しにしてしまった元凶として、わたしが呪詛して止まない、あの「ドラブスルー検査」などと称した無秩序な検査拡大によって生じたものです。

以来、日本の感染はもう元の低水準に戻ることはなくなってしまいました。この第5波の流行観について、わたしが感じている憤懣の第一は、その愚行をまたも繰り返したという点です。

デルタ株は本当に危険な変異ウイルスなのか?

第5波では流行に関わっているウイルスは全国的にほぼデルタ株に置き換わっていることが分かっています(厚生労働省『都道府県別の懸念される変異株の国内事例数(ゲノム解析)について』)。

図表3のグラフで、第5波で観察された入院数、重症者数、死亡数の増加ペース(直線部分の傾き)を過去の流行と比較すれば、どの感染指標も最速で拡大したのではないことが分かります。ことこの日本に関しては、デルタ株が従来のウイルスの2倍もの伝播効率をもつという話しは、明らかな「ウソ」と断言できると思います。

では、その病原性についてはどうか。

図表4は、第2~5波の際、流行したウイルスがどれほどの病態を伴ったかを示したものです(※流行への対応や治療方針がまだ不確定だった第1波は除外しています)。

図表4 流行次別にみた疾患の重篤度の比較

(【出所・説明】図表3のデータをそのままアレンジして表にしている。入院数、重症者数、死亡数、それぞれの値は、流行期間中の最大値で、必ずしも同じ日付で得られたものではない。表中の値は有効数字2桁の概数で示している)

この図表は、感染の重篤度を、入院数と重症患者数の比、および重症患者中で死亡が発生する頻度によって、評価するものです。流行中の諸条件、罹患年齢層が違ったり、コロナ指定病床、なかでも重症者専用病床の空き具合が影響したりすることはあるでしょうが、大まかな目安としては使えると思います。

こうしてみると、第5波の流行を引き起こした主なウイルス、デルタ変異株は、従来のものに比べ、病原性はむしろ「低い」と言えるでしょう。

第5波の流行中、重症患者の中から死亡が発生した頻度は、大阪、愛知、北海道の場合、以前の流行時に比べておおむね半分程度です。東京では第2波のときの値を上回っていますが、第3、第4波の死亡発生頻度よりは明らかに低い。

母数となる重症患者数はほぼワクチン未接種者のものと見ていいでしょうから、この死亡頻度の低下はワクチンの普及とは無関係です。

重症者/入院数比は、東京都を除く3自治体でデルタ株の関与がない第4波に比べて低下しています。

これに反して、値が以前の流行時を大きく上回るのは首都圏1都3県に共通して見られる現象です(神奈川0.15、埼玉0.13, 千葉0.11)。

今次の流行について、非高齢層の重症化リスクが高いこと、また病状の進展が速いことが、第一線で治療に当たる多くの医師から報告されています。

重症患者、死亡者の年代別内訳が公表される大阪府でも、40~60代の割合が増えている傾向が見られてはいますが、はっきりした統計上の数の増加に現われるまでに至っているのは、首都圏に限られます。

死亡頻度の減少と非高齢層の病状の重篤化。

明らかに矛盾する現象ですが、前者は全国共通、後者は首都圏でとくに目立つ。わたしは、非高齢者の病状の悪化は、デルタ株感染の特徴というより、別の要因が絡んでいると考えます。

昨年はほとんど流行することがなかったRSウイルスの感染報告数が5月頃から急増し、7月にピークを越えたあとも、未だ高値が続いています。(国立感染症研究所『感染症発生動向調査週報』)

注目するのは、図表5に見るように、今次RSウイルスの流行に地域ごとの濃淡があり、中心的流行地のひとつが首都圏であった点です。

図表5 本年夏期に発生したRSウイルスの流行

【図表説明】

厚生労働省感染症サーベイランス事業で、全国約3,000の小児科定点から報告されたRSウイルス感染症の発生動向を、定点ごとの報告数の平均値によって示す。グラフ作成に使用した元データは、国立感染症研究所『感染症発生動向調査 週報』から取得。

東京都で重症者数が急増していく7月下旬から9月初旬の時期は、それらの患者が実際に感染してから1ヵ月程度経過していると考えれば、RSウイルスの流行と重なります。つまり、首都圏で見られた非高齢者の異常な重症化は、武漢肺炎ウイルスとRSウイルスの重感染の結果という可能性があるかも知れません。

RSウイルスは乳幼児の肺炎の主要な原因です。

一度感染しても免疫が長続きしないため、生涯に何度も感染するとされますが、症状は逓減するため年長児以降の感染は、ただの風邪程度なのが普通です。

しかし、潜在的には肺の組織でも増殖できる能力はもっているのだから、武漢肺炎のウイルスと同時に感染したら、症状が増悪する可能性は考えられましょう。

もとより物的な証拠があるわけではなし、今更検証することも不可能です。ただ、非高齢の感染者に重篤化をもたらす何か特別な性質がデルタ株にあるかの議論について、その反駁する材料には十分なりうると考えています。

発祥地インドにおけるあの感染爆発、ワクチン普及の先頭を走ったイスラエルや英国で起きた、めざましい流行収束のあとを襲った急激なリバウンド。デルタ株の国内流行が本格化する前のこうした報道に、武漢肺炎対策の要にあった人たちが、警戒を払うのは当然のことです。

上に述べたわたしのデルタ株観など、時間が経過し、ある程度の見通しが立った後で言うはなしですから、それだけで見当外れだったじゃないかなどと批判するのは不当でしょう。

しかし、武漢肺炎が世界で、そして日本で流行し始めて、まもなく2年。

海外でこれまでのものとは違うと騒がれながら、国内に入ってみれば別に代わり映えしなかった変異株がこれまでにいくつあったことか。世界各地で顕著に異なる武漢肺炎の流行像が、ウイルス自体の性質の違いによるのではなく、それぞれの流行した社会に固有の状況に依拠しているとなぜ考えないのか、

わたしにはそのことが不思議です。

デルタ株が従来のものより危険な存在という説が抵抗なく受入れられたのは、野生動物を宿主としていたウイルスが人の社会に侵入し拡がっていくうちに、「より人に適応し、感染力を高める変異形質を獲得していくに違いない」という、一見もっともらしい解説がセットになっていることが大きいと思います。

しかし、「生存や増殖に有利な遺伝的変異が集団の中で優勢となって拡がっていく」というようなナイーブな考えをもった集団遺伝学、分子遺伝学分野の研究者は、今ではほとんどいないと言っていいでしょう。早い話が、存在が遺伝子そのものと言ってよいウイルスがその好例です。

具体的なモノとして科学の対象となってからまだ100年にもなりませんが、その間、人の社会に侵入してきた新型ウイルスは数多く、瞬く間にパンデミックを引き起こしたインフルエンザ(H2アジア風邪、H3香港風邪)をはじめ、急性出血性結膜炎、エイズ、SARSなどのウイルスもそれに含まれます。

そのなかのひとつとして、感染力、病原性を流行の継続とともに増していったという例はありません。危険なものは初めから危険。危険性が減弱、ないし存在そのものが消滅することはあっても、逆は観察されないのです。

専門家と称する人たちが率先して「危険なデルタ株」なるイメージを振りまいた。これが第5波の感染拡大に絡んで、わたしが憤懣を抱いている第2の点です。

大都市に内在する感染拡大エンジン

図表3の入院数のグラフを見ると、ある特長に気付きます。

「流行第2波(北海道では第3波)が収束のフェーズに入った頃には、ある範囲内(東京都なら3,000人、大阪府なら2,000人、愛知県、北海道では1,000人程度)でその規模が周期的に拡大・収縮する」、といったしくみが、大都市の営みの一部となって定着してしまっているように見えるのです。

常時少量の燃料の供給を受けてアイドリング回転を続ける内蔵エンジンに、余分の燃料が注がれれば噴き上がり、尽きれば元のアイドリング状態に戻る、そんなイメージです。

世界を見渡しても日本だけに観察される、この4~5ヶ月という短い周期の感染拡大と収縮の繰り返しについて、次のような理由が考えられるのではないかと、これまでの投稿で論じてきました。

  • ①日本人の大多数は、その生活習慣、衛生意識のおかげで武漢肺炎の感染リスクは低い。感染リスクの高い少数は、包囲、分断されて、家庭、職場など日常生活の場で感染の頻度が低く保たれている。
  • ②大都市には感染リスクの高い人たちが好んで出入りする場所(例:キャバクラ、カラオケ喫茶)や寄り集まる機会が多く、そこで繰り返される不用意な行動により、感染が維持され、ときに拡大する。
  • ③このような感染機会に触れる人数は、武漢肺炎に対する社会の警戒心が高まるたびに減少し、緩めば増加に転じるので、それが感染者数の増減に反映される。

人的往来はあるにしても、大都市圏の流行状況は基本的にはそれぞれの内部要因によって決まっていると思います。

それにもかかわらず、福岡県なども含め、大都市圏の流行の波がほぼシンクロナイズしており、とくに感染数が収縮に向かうタイミングがほとんど同じということについては、マスコミ報道の影響が大きいのではないかと考えます。

そのときどきで最も深刻な地域の状況を連日全国に報道する。

それが実際には感染拡大がそれほど目立つ段階に至っていない地域でも、警戒心を喚起する「炭鉱のカナリア」的役割を果たしているのではないかと思うのです。

重症病床が100%塞がり、医療崩壊状態にまで陥った大阪の状況を、ワイドショーなどがいやというほど報道したことが、東京の流行第4波を比較的小規模に止めたというのも、あながちこじつけとは言えないのではないでしょうか。

流行第2波の収束に緊急事態宣言は関わっていません。

それ以外の流行の際には、緊急事態宣言等は発出されていますが、第5波の場合など、東京では感染はその後2ヵ月近く拡大を続けています。

感染が収束に向かっても、アイドリングストップの状態までももって行けないのであれば、現行の強度程度の行政的措置では、大きく効果を期待することは出来ないだろうと、わたしは考えています。

上述の感染モデルで「感染リスクの高い少数」としたのが、実際にはどれほどの数かは分かりませんが、仮に人口の1割としても、東京都なら140万人。

これまでに報告された累積感染者数は37万人あまりですから(わたしは本当に感染した数はその半分以下だろうと思っていますが)、ワクチンが普及する以前だったら、これからまだ何度も流行の波が訪れたはずです。

それでは、接種希望者のほぼ全員にワクチンが行き渡ると想定される10月以降になれば、状況はどう変わるのか。

感染リスクの高い人の数は、その生活態度に関係なく、大幅に減少しているには違いありません。

しかし、武漢肺炎の場合、ワクチン戦略が、かつてポリオや麻疹(はしか)で見たような、疾患の廃絶をただちにもたらすかというと、そこは疑問です。行動範囲が限られる幼小児が対象である疾患と、大人が自らの意思でいくらでも感染リスクに接近できる武漢肺炎とでは、ワクチン普及の効果は自ずと異なったものになると予想されます。

ワクチネーション完了率が高々60%を越えたくらいの段階で、マスクを投げ捨て、皆が野放図な行動に走ればどうなるか。

ワクチンによるせっかくの感染減の6割方が吹っ飛んでしまった米国の現状は、そのよい見本でしょう。「3回目の追加接種をやればOK」、という話しでもないと思います。

ちょっと面白いなと注目しているのが、英国における死亡数の動向です(感染数=検査陽性数の方の動きは、どんな検査やってるんだと呆れるほど無茶苦茶ですが)。

1月には1日に1,200人を超えていたのが、ワクチン接種率と足並みを揃えて5月には1桁台にまで減少。そこが底で、以後じわじわと増加して、今では1日150人くらいになっています(日本経済新聞社『新型コロナウイルス感染 世界マップ』)。

日本でもこの第5波が来月にでも底を打てば、感染が再び増加に転じることは十分ありうると思います。

ワクチン普及の効果で、それが極めて緩慢なペースであれば、今度は抑制のメカニズムがはたらきにくくなる。

わたし自身は、ウィズコロナなんて時代が長くは続かず、そう遠くない将来、このウイルスは消えていくんじゃないかと、願望半分で思っているのですが、ともあれ今は、これまでと変わらぬ慎重な行動を当分続けていく必要があると思います。

読後感

…。

以上が、伊江太様からの投稿です。

雑な検査による偽陽性の可能性は、『【読者投稿】流行状況の把握を歪める「多数の偽陽性」』などを含め、これまでもしばしば、伊江太様からの投稿で指摘されてきた内容ですが、それを「誰でも入手可能な客観的なデータ」のみで説明していく技量には、毎度ながら、本当に驚かされます。

ただ、ひとつだけ不満を述べるなら、「これで最後」、などと区切らないでいただきたい、といったところでしょうか。

当ウェブサイトにも客観的なデータを科学的に読み解くことの重要性を理解する読者はおおぜいいらっしゃいますし、武漢肺炎の状況が終息するのかどうか、終息するならいつそうなるのか、など、現時点ではまだ不確実なことがたくさんあります。

伊江太様の論考を楽しみに待っている読者は、ウェブ主自身を含め、多数います。

まことに厚かましいお願いではありますが、ぜひ、今後とも、継続的に伊江太様の分析を読ませていただきたいと願う次第です。

読者コメント一覧

  1. まんなっか より:

    大筋の部分では納得できる投稿です。データを基にした考察を見せてもらえるのは参考になりますが…
    医療機関勤務の者としていくつか記します。ただし自分は末端現場作業員なので医学的な正確性は担保されません。ご了承ください。

    ・デルタ株の感染力はCOVID19の中では極めて高く、危険性もある。ただ他と比べて危険かは自分にはわかりません。世界中で蔓延しているのがデルタ株であり、ミュー株を除くと他の株は感染が広がっていないのが証拠です。(https://news.yahoo.co.jp/byline/kutsunasatoshi/20210801-00250999)
    ・医療機関の状況も報道通りどころか、首都圏なんかはもっと酷かったと推察します。伊江太様も本文で言っていますが、入院数は病床の空き状況によって左右されますが、表向けに出てる病床数は参考数値で実際はその何割かでしか入院できません。コロナ病棟の看護師が月給100万で募集されたことがあるように、スタッフ数の限界が主で使用率を上げるには限界があります。ましてや病床拡張は急にはできません。するならば医療スタッフの人権を黙殺するか、学徒動員するか、医療の質を大幅に落とすか、といったところでしょうか。
    入院率が上がらないのは元々余剰が無く、無理に隙間作って入れたので若干の上積みができたに過ぎないでしょう。
    ・そしてボトルネックは保健所・救急搬送にもあり、北陸の片田舎ではまだクラスターを追うことが能力的に可能でしたが、感染爆発地域では感染経路が多すぎるのと人員不足で負えなくなっています。同時に本来入院が必要な人でも搬送の人員不足および前述の病床不足もあってすぐには入院できなくなっていました。自分の勤務先でも病床逼迫が如実にわかる事態がいくつかありました(詳細は言えません)。
    ・重症化率の低下は如実にワクチンの効果と言えます。実際陽性者の中でワクチン接種が先行した高齢者の割合は激減しています。これは新宿会計士様も過去に指摘されました。地方での感染拡大がさほどでもないのは地方が高齢化率が高く、ワクチン接種率が高いのも一因としてあるでしょう。感染者数に比して入院・重症化・死亡率が低いのはワクチンと感染者の平均年齢の低さによるものと考えるのが自然では。
    ・ただ検査数の不自然な多さ、感染拡大エンジンについては完全に同感です。不必要な検査の拡大で偽陽性・偽陰性の多発が医療資源圧迫や感染拡大に寄与していると思います。感染対策の上で最重要なのは、人々の行動様式の変化でありましょう。ワクチン接種と行動様式さえ見直せれば、withコロナでの正常な生活は見えると個人的には確信しています。

    1. 伊江太 より:

      まんなっか様

      拙文の内容を十分読み込んだ上での的確なご指摘、ありがとうございます。

      自宅でオンラインでえられる数字を読んでいるだけのわたくしと、実際に現場で武漢肺炎の治療に当たっている方では、事態の捉え方に差が出るのは当然のこと。どちらの視点も必要とは考えているのですが、わたしがずっと書いてきた、PCR検査等によって捉えられている、武漢肺炎の日本の流行像が明らかに水膨れしたものという主張は、この疾患の怖さを小さく言いくるめようと意図するものではないことは、改めて強調しておきたいと思います。むしろ、検査陽性数との比較で捉えてしまえば、本当の有病率、重症化率、死亡率は過小評価されてしまう。インフルエンザと大差はないのだから、5類疾患扱いで良いなどの議論は、とんでもない暴論と考えています。

      医療逼迫の問題は、いつも気にはなっているのですが、医療現場について正確に知るよしもない身で、おかしなことは書くまいと自重してきました。病床使用の状況で、流行の規模を捉えるのは問題があるというご指摘は、即時的、局所的状況の実際をご存じの方ほどその思いは強いだろうと思うのですが、図表3に見るように、入院数の動きは流行が始まった頃から本格化していった時期まで、なめらかに指数的に増加しており、逼迫度が増すにつれ下押し圧力がかかったという様子は見えません。状況を俯瞰的に見る上で、入院数というのは完璧とは言いがたいものの、流行状況の有用な指標と考えます。

      >医療スタッフの人権を黙殺するか、学徒動員するか、医療の質を大幅に落とすか、

      このご指摘は、わたしがどこかで書こうかと思っていたことと重なり、全面的に同意します。これまでの平時の医療体制の延長、病床数や設備の補充くらいで事態を乗り切ろうとするのが、そもそもの間違いだと思います。重症呼吸器疾患の治療に対応できる、医師、看護師など、急に増やすことは出来ない相談ではあるでしょう。それでも、全国的に見れば、医療リソースがそこまで払底しているわけではなかろうと思います。流行が深刻な一部地域、その特定の医療機関、その特定の診療科の医療スタッフだけが過労死レベルの仕事を引き受けたからこそ、何とか医療を回してきた、それが実態だと思います。

      DP号の検疫、防疫業務、看護師派遣を通じておこなわれた大阪、沖縄などで生じた医療崩壊事態への支援、ワクチン集団接種の設営など、自衛隊医療班の機動性、効率性は際立ちました。しかし如何せんその数は知れたものです。今盛んに言われだした、政府、自治体が医療スタッフをより効率的に運用できる体制をつくろうというアイデアは、まあ出てくるべくして出てきたとは思いますが、法的には無理筋と思うのですが、どうでしょう。社会の喫緊のニーズという理由で、医療人にだけ職業選択、居住地選択の自由を制限するなど、やっていいとは思えません。どうせお願いレベルだと言いくるめるつもりでしょうが、実質強制になるのは目に見えていると思います。

      いみじくも「学徒動員」の語を出されましたが、この武漢肺炎の教訓を本気で今後に活かそうとすれば、医療人だけに責任を負っかぶせるのではなく、国全体の非常事態への対応、「有事法制」の整備は避けられないのではないでしょうか。まあ、こんなことを言い出せば、これまで政府の無為無策を言い立てていた野党、マスコミは、手のひら返しで、「ささいな」事柄を口実に、長年の野望を実現しようと企んでいる、とかなんとか、大騒ぎするでしょうが。

      「自分は末端現場作業員」などとご謙遜はなさらず、現場の目を通してみた武漢肺炎についての論考を投稿して頂ければと期待します。

  2. バシラス・アンシラシスは土壌常在菌 より:

    十年以内に中国から新たな感染症が輸入される可能性は高い

  3. 匿名 より:

    世論が不確定でなかなか理解しづらい情報とマスコミに踊らされ、不安だけが無駄に掻き立てられる中、データを噛み砕いてシンプルに解説いただいている伊江太様の論考は貴重でありがたいものです。
    今回も首肯しながら読ませていただきました。

    ウイルスよりもだんだんと実態の掴めなさやそもそもデータの出し方が怪しいなど、人的な問題が目立つこの頃、ご負担にならない程度にまた論考を書いていただきたいです。

  4. 匿名 より:

    公的検査は有症状者、濃厚接触等の感染の疑いがある人間に対しての確定診断的な検査で
    検査陽性者≒感染者といえなくもありません。
    民間検査は安心の為、陰性証明(に使える使えないは別として)のための検査ですから検査精度からくる偽陽性者、検査精度が正しくとも、採取部にウイルスの痕跡があった、ウイルスが存在したことを示しただけに過ぎないので
    検査陽性者≠感染者となります。

    7月10日から民間の自費検査がカウントされた時期と第五波が急増した時期と重なるのは偶然とは思えません、第五波は確かに存在したがそれを過大に増幅させたのは民間の自費検査をカウントに入れたから、という筆者の見立ては正しいのでしょう。

    >とくに感染数が収縮に向かうタイミングがほとんど同じということについては、マスコミ報道の影響が大きいのではないかと考えます。

    初期はそのような効果があったのでしょうが「狼と少年」の様にその効果は薄れてきていると思います。
    私の家族の職場で同僚の方が感染しました、幸いにも発症4日前から接触していなかったので濃厚接触者扱いにもならず、その後も感染の兆候は見られませんでした、いつ感染するのかとびくびくしていましたが、いざ身近に感染者がいる状況に出くわすと意外と感染しないものだなと思った次第です。
    感染が拡大するのはスーパースプレッダーのような体質を持った人間、自己免疫機能が弱い人間、感染対策に無頓着な人間等から感染が広がり、感染が拡大するにつれて相対的にそのような人間の比率が低くなり収束に向かうのではないか。
    そしてマスコミのアナウンス効果により感染対策に無頓着な人間がさらに少なくなり、第五波はワクチン接種も進み始めた時期なので相乗効果で急速な収束につながったのではないかと思います。

    1. 解せぬ より:

      前回の同じ著者の読者投稿でもコメントしましたが、いい加減な検査が増えたということが正しいとすればその偽陽性者は無症状のはずです。しかし厚労省の新規陽性者の公表データでは過去の例とは逆に有症者が9割以上となってます。
      前回もそんな偶然は無かろうという意味でただの夏風邪をひいただけの非感染者が特異度99%以上のPCR検査で多少ずさんだったとしても数十パーセントも陽性判定になるわけがないです。
      そして投稿者が指摘するずさんな検査機関が判定した陽性者が百パーセント偽陽性だったとしても厚労省発表の新規陽性者数は半分も減らないでしょう。
      デルタ株の感染力という点での脅威は25千人以上/日が証明しています。

      正直この投稿者やその共感者も反ワクチンだとかの教祖と支持者と同類に思えてきてます。

  5. はにわファクトリー より:

    短い周期で拡大と収縮を繰り返している実態をたとえて、
    アイドリング回転を続ける内蔵エンジンに、余分の燃料が注がれれば噴き上がり、尽きれば元のアイドリング状態に戻る
    とは実に見事な要約と感嘆します。

  6. りょうちん より:

    PCR法検査と言いながら、実はお手軽なTRC法だったりして。
    爆売れらしいですよ>TRCReady-80

  7. namuny より:

    私としては、デルタ株は感染力が強いものの毒性が低かった、という説を押します。
    グラフを描きたいところですがだめなので、
    https://www.mhlw.go.jp/stf/covid-19/open-data.html
    の重症化した人数の推移と、死亡者数の推移から以下のデータ(真の重症者増分)を作ります。
    重症化した人の増分+死者数 =真の重症者増分
    これと死者数を日付ごとに並べます。
    すると、7月半ばまでは真の重症者増分がほぼ死者数の3週間前を表しています。恐ろしいくらい一致します。このトレンドは1年以上変わりません。
    ところが、7月半ば以降、明らかにこの2つのグラフが乖離します。

    感染から発症、確定まで2週間、重症化まで1~3週間とすると、感染タイミングでの変化の開始点は6月半ばです。
    もしワクチンがこの乖離の原因であったなら、初期はファイザーなので、接種間隔3週間、有効になるまで2週間、合計5週間、つまり5月前半になりますが、大規模接種が始まったのは6月に入ってから。
    そして、いくら1日100万人接種してもそこまで早く効果が出るわけはない。

    つまり、変曲点の主原因はワクチンである可能性は低い。(1回目のワクチンで十分な効果が出始めているなら別です)
    となると、デルタ株である可能性が高いです。デルタ株は6月1~7日時点で34人検出されており急速に広がり始める時期がちょうどこのころです。

    以上から、第5波で死者が少なく済んだ要因として、デルタ株の毒性が低かった、ということを押します。ワクチンの効果を否定するわけではありませんが。

    1. はにわファクトリー より:

      namunysさま

      ワクチン接種奏功だけで乖離現象は説明でないのではとの指摘には首肯します。ワクチン接種の効果はそれなりにあったに違いないと自分は考えてます。

      >もしワクチンがこの乖離の原因であったなら、初期はファイザーなので、接種間隔3週間、有効になるまで2週間、合計5週間、つまり5月前半になりますが、大規模接種が始まったのは6月に入ってから(なので)いくら1日100万人接種してもそこまで早く効果が出るわけはない

      報道記事を執筆しているのはいわゆる現役世代で後回しになってきましたので、4月からこっち接種がどうゆう順序で進行したかに実感がなく敏感でもありません(いい加減な記事書くなよ)
      ワクチン到着量に限りがあったことから、自治体は限られた割り当て量を特養・老人保養施設入所者および職員に対する接種へと大急ぎで振り替えました。施設側の準備不足は甚だしく混乱は激甚を極めたそうです。入荷量がこんなになるんだったら最初から言ってくれよ、投げやりな呻きが関係者すべてにあったに違いありません。
      クラスター化しやすく重症化耐性が脆弱だった老人施設がエクスクルーシブな重点接種対象となったことで、さもなくば死者数に直結したに違いないウイークポイントが期待通りにカバーできたのではとそう考えてます。

      1. namuny より:

        はにわファクトリー様

        お返事ありがとうございます。
        ワクチンのピンポイントが効いた可能性も多少なりともありますね。

        ただ、その後、気になって、ワクチンとコロナ型以外の要素がないかを探していましたが
        一つありました。カクテル療法です。
        カシリビマブ/イムデビマブは、7月に日本で正式に薬事承認されました。
        これで死亡率が下がっていると考えることもできます。

        1. namuny より:

          補足:カクテル療法の承認は7月19日でした。ほぼ変曲点にあたります。

    2. 伊江太 より:

      namuny 様

      拙文の内容をよく吟味した上での的確なコメント、ありがとうございます。

      コメントの内容、わたしにはよく理解できるのですが、いかにこのサイトの読者に科学的、論理的思考において、一般的水準を抜いた人が揃っているとは言え、ここまで専門的な議論をすんなり受け止められるかと言えば、ちょっと難しいのではないかと思います。まんなっか様のコメントへの返信にも書いたのですが、やはり図表なども使い、省略無しに順を追って議論を進める文章を投稿して頂くのが良いのではないでしょうか。

      デルタ株に関わる問題は、狭い専門家のサークル内の議論に止めず、大勢の人が科学的、論理的な議論を戦わせる上で、よい題材になるものではないかと思っています。さまざまな人がそれぞれが培った知識を背景に見解を披瀝すれば、複眼的に理解が進むでしょうし、この国の知的水準を高める一助にもなるのではないかと思います。そういう議論のプラットフォームを用意するという意味で、「新宿会計士の政治経済評論」のサイトのユニークさと有用性はおおきいと、普段から思っています。

      1. namuny より:

        伊江太さま

        コメントありがとうございます。
        確かに図表があるといいですね。ここに直接貼ることができればいいのですが、そこまでは望みすぎとも思いますので、画像共有サイトに貼ってみました。33日間のみ保存されます。いかがでしょうか。

        https://firealpaca.com/get/vgksmLMp

      2. はにわファクトリー より:

        namunyさま

        図表拝見しました。面白いですね。
        高齢者ワクチン接種が実際に「始まった」のは、早いところでは5月連休前後。本格的に数を打ち始めたのは連休がすっかり終わってからのはずです。
        遠地に住む今年83歳の「元気な」叔母は2回目接種を6月頭に完了したと話しており、場所によっては粛々と進んでいたようです。

        1. namuny より:

          確認しました。接種開始は5月連休頃ですね。失礼しました。

      3. はにわファクトリー より:

        連投すみません。
        ファイザー製剤の輸入・配送・接種カウントのグラフは
        厚労省自治体向け説明会第8回資料
        https://www.mhlw.go.jp/content/10906000/000834747.pdf
        4枚目スライドに図表として示されています。
        接種回数はVRS発表に基づくと思われますが、アレはアレですので、現実は違っています。

  8. より:

    最初にちょっと些末的ですが、元々「感染力」という用語は無かったと思います。これは「女子力」とか「免疫力」と同じレベルのマスコミの造語です。

    さて以下、とりあえず、伊江太さんと見解の違うところだけ述べます。

    いつも気になっているのですが、私自身の経験から言うと、リアルタイムPCRで偽陽性が常時大量に発生することはありません。偽陽性が発生するとすればコンタミ事故です。
    「粗悪な民間会社?」は、概ねプール法でやっているので、流行前にむしろ偽陰性を出していたのではないかと考えております(流行時はプール法は使えないでしょう)。ある会社からの結果が陽性率が異様に高く、実際の感染者の症状などと合わなかったりすれば、判別可能と思いますし、平均的に民間会社の陽性率が異様に高いというデータがあるのでしょうか?

    それから、死亡率が低い原因ですが、重症化した人の年齢構成が若くなっていたことと、やはり治療の進歩というものがあるためと考えております。コロナ担当の医療チームは長期間の経験を積んでおり、日々治療が改善されているであろうこと、またちょうど抗体医薬の本格導入が第五波の前か最中ぐらいに重なっていたことも大きいのではないでしょうか。

    デルタ株の感染性については、そもそも現代の状況で基礎再生産数を算出するのは困難と考えます。おそらく5だの9だのと言っているのは、マスク無しでクラスターを起こした事例などが大量に含まれていると推測しております。それも、基礎だか実効だか分からない再生産数の数字です。当然、日本では遥かに低いでしょうが、正確な算定はまず不可能と考えます。

    1. 伊江太 より:

      現様

      >ある会社からの結果が陽性率が異様に高く、実際の感染者の症状などと合わなかったりすれば、判別可能と思いますし、平均的に民間会社の陽性率が異様に高いというデータがあるのでしょうか?

      この点こそ、わたしがもっとも知りたい点であり、また部外者には手に入れようがない事柄でもあります。

      実はかつてわたしは、国立感染研究所に所属する方が班長となったある疾患の調査研究事業に加わったことがあり、PCR検査等の検査精度の検証を班内で常時やっていたことを知っていますから、検査法自体がそんないい加減なものであるとは、毛頭思っていません。昨年3月頃だったか、感染研が主催して、全国の検査衛生部署の人員を集め、武漢肺炎のPCR検査法の統一を図ったと聞いていますが、この方式は現在も踏襲されているでしょうし、その後検査実施機関を、従来から病院の検査業務を引き受けていた大手の民間会社に拡げたあとも、崩れたということはないはずだと思います。

      こうした行政検査をおもに扱っている機関からのデータは十分信頼に値すると思っています。流行が沈静化している際、出てくる検査結果は行政検査の比重が高いでしょうから、そうしたときには入院数と感染者数の比が小さくなるのでしょう。

      例えば大阪府では、毎日の検査実施数とその陽性率が報道発表で見られますが、9月1ヶ月をとっても、陽性率は最小1.1%、最大26.2%。大きく変動しています。
      https://www.pref.osaka.lg.jp/iryo/osakakansensho/happyo.html

      いかに検査対象者が一般市民の無作為抽出標本ではないとは言え、880万府民のうち、1万人以上が毎日検査を受けていて、これほどの差が出てくる。日によって恐ろしく偽陽性の発生率が高い(あるいは検出感度が異様に高い)検査機関のデータが、さまざまな割合で紛れ込んでいるはずだという考えに傾かざるを得ないのです。

      なぜそれが放置されているのか? わたしこそ誰かにそれを教えて欲しいと思っています。

      1. KN より:

        以前、伊江太様がご指摘されていたと思いますが、
        兵庫県では、日祝の翌日だけ、陽性率が異様に低くなっています。
        https://web.pref.hyogo.lg.jp/kf16/coronavirus_data.html
        実は、この低い陽性率が、検査方法やCt値が適正で、実態に近いものではないかという気がします。

        ところで、陽性判定された検体のCt値は、個別に特定されるものなのでしょうか。
        もしそうならば、追跡調査をすれば、他人に対して感染力のあるCt値を推定できないのでしょうか。
        「他人に対して感染力のあるCt値」については、論文も出ていたと思います。

      2. KN より:

        Ct値を個別に報告している民間会社があります。この会社ではでは陽性判定のCt値を「40」としているようです。
        https://www.s-cyuken.co.jp/library/56b978613951d6ec3d3cf616/60d3fbedb768882843dcc40d.pdf

        他人の感染力があるのは、厳しめにみてもCt値「35」くらいまでではないでしょうか。「40」では大量にゴミを拾ってしまう気がします。
        https://www.nikkei.com/article/DGXMZO65910480W0A101C2CE0000/
        https://corona.go.jp/expert-meeting/pdf/senmonka_sidai_r020531.pdf

        「英オックスフォード大学の研究チームはPCR検査が死んだウイルスの残骸を検出している可能性があると報告。英国の別の研究では、値が「25」より小さい陽性者の85%以上は他人に感染力があるウイルスが培養できたが、「35」を超えると8.3%しか培養できなかったとの結果もある」

  9. はぐれ鳥 より:

    このようなテーマに、ボランティアで取り組み、真摯かつ精緻な論を組み立てる伊江太さまには頭が下がる思いです。私は、感染症はおろか医学医療分野には全くの門外漢です。なので、伊江太さま論考を云々できるほどの力量は無いのですが、以下、的外れを承知で感想を書かせて頂きます。

    本テーマは、何やら私も過去に経験したことがある製造工場における「製造不具合」の原因探しに似ていると思いました。この場合にも、伊江太さまが本件で行っているのと似たアプローチをするのが通例です。つまり、製造プロセスをつぶさに逐一点検し、関係しそうな要因を洗い上げ、それら要因と不具合とのデータを突き合わせ原因を絞り込んでいきます(FTA :故障の木解析とか魚の骨要因図の作成など)。

    ただ、感染症と製造不具合との違いはここからですね。後者では大抵の場合実験(再現実験)が可能で、実験計画法(医学の分野にも一部応用されているようですが)などの統計的手法で、多くの場合、絞った要因が真因か否か見極めることが可能です。私が直接体験した訳ではなく伝聞ですが、ある半導体工場では、ある時突発的一時的に歩留まりが低下し、その後ランダムにそれが繰り返され、その原因が分からないで悩んでいた処、数年後にひょんなことから、工場敷地外の公道を大型運搬車が通過したことが原因だったと分かったという例もあるそうです。

    ですから、新型コロナの感染拡大・縮小波動の要因には意外な要因が潜んでいる可能性もあります。その観点で、伊江太さまは、今回の第5波感性拡大に関して、見落としているかも知れない要因として、新たに出現した「民間検査会社」による検査を指摘されていますが、新しい視点だと思います。

    ともあれ、感染症の場合には、物理的要因だけでなく、集団(サイズによっても異なる?)としてのヒトの習性や心理に関する洞察が欠かせず、要因がより複雑で多岐にわたります。また、仮説検証のための実験も極限られた範囲でしか許されません。従って、どこまで行っても、異論百出、群盲像を撫でる、の感が残るのは仕方ないのでしょう。昨日のwebニュースでは、国民の「ノリ(気の緩み)」で感染拡大し「ノリ(急速な感染拡大に対する恐怖感)」で減少しているなんて、おおよそ科学的とは言い難い論まで横行している始末です。

    とはいえ、困難だからと言って諦めていては、進歩は有りません。感染症の脅威は今回限りではないのですから。この打破の為には、この伊江太さまがやっておられるような地道な努力と、日本も、ある程度の社会的実験(英国でやったような)を許容するような社会に変っていくべきだと思いました。しかし、我国社会の現状(理性的にリスクに向き合えない)を見る時、最低でもあと数十年は無理でしょうね?最後はグチになってしまいました、すみません。(笑)

  10. 迷王星 より:

    デルタ株が感染力は強いが弱毒化しているというのはどうでしょうか?

    ウィルスの遺伝子解析から日本同様にデルタ株が感染の主力となっているアメリカなどでは,Our World in Dataでの国別の人口100万人当たりの感染者数および死亡者数のグラフを見る限り,致死率が第4波までに比べて大幅に低下した(これはOur World in Dataのグラフからも読み取れます)日本とは異なり,致死率はあまり変化していないように見えます.

    遺伝子的には同じデルタ株なのにアメリカなど欧米諸国とは異なり日本だけが致死率が大きく下がったという現実から推量すると,第5波で日本の致死率が大きく下がった原因は,デルタ株が弱毒化したからではなく,日本固有の何らかの別の要因によると考えるのが妥当なのではないでしょうか.

    1. りょうちん より:

      宿主を殺してしまう株は淘汰されてしまうというのがありますね。
      うまいこと殺さずに繁殖するのが生物学的には強い。

※【重要】ご注意:他サイトの文章の転載は可能な限りお控えください。

やむを得ず他サイトの文章を引用する場合、引用率(引用する文字数の元サイトの文字数に対する比率)は10%以下にしてください。著作権侵害コメントにつきましては、発見次第、削除します。

※【重要】ご注意:人格攻撃等に関するコメントは禁止です。

当ウェブサイトのポリシーのページなどに再三示していますが、基本的に第三者の人格等を攻撃するようなコメントについては書き込まないでください。今後は警告なしに削除します。なお、コメントにつきましては、これらの注意点を踏まえたうえで、ご自由になさってください。また、コメントにあたって、メールアドレス、URLの入力は必要ありません(メールアドレスは開示されません)。ブログ、ツイッターアカウントなどをお持ちの方は、該当するURLを記載するなど、宣伝にもご活用ください。なお、原則として頂いたコメントには個別に返信いたしませんが、必ず目を通しておりますし、本文で取り上げることもございます。是非、お気軽なコメントを賜りますと幸いです。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。