【読者投稿】将来を食い潰す「某国のダンピング経済」

久しぶりに、大変な力作です。武漢肺炎シリーズでこれまで多くの玉稿を執筆して下さった読者の方が、今回は何と「専門外」であるはずの国際金融に関する興味深い「思考実験」を寄稿してくださいました。題して「自国の将来を食いつぶすダンピング経済」です。経済学者の方が書いた文章とは異なりますが、非常に本質的なところを突いていることは間違いありません。惜しむらくはこの論考、現実に存在する国の考察ではないようなのですが…。

読者投稿

当ウェブサイトでは読者の皆さまからの投稿を募っており、その要領については『読者投稿の募集と過去の読者投稿一覧』などでも示しているとおりです。

当ウェブサイトは「政治経済評論」と名乗っていますが、「読んでくれた人の知的好奇心を刺激すること」を目的としていれば、極端な話、読者投稿の話題は何でも構いません。以前はパチンコに関する話題を取り上げたこともあるほどです(『【読者投稿】パチンコ~三店方式と「不都合な真実」~』等参照)。

「自分も文章を書いてみたい」という方からの読者投稿につきましては、常時受け付けています。『読者投稿の募集と過去の読者投稿一覧』などにも記載している読者投稿要領をご確認のうえ、専用の投稿窓口( post@shinjukuacc.com )までお寄せ下さると幸いです。

さて、当ウェブサイトにときどき武漢肺炎に関連して優れた投稿を寄せてくださる読者の方がいらっしゃいます。「伊江太」様というハンドルネームをご使用になる読者の方で、今年5月の『【読者投稿】流行開始時点で「感染拡大を抑える要因」』という論考を含め、すでに19本の論考を寄稿していただいています。

伊江太様の自己紹介文に基づけば、もともとは某国立大学医学部の微生物関係の研究室での勤務経験を通じ、実際にウイルスも扱っていたということですが、客観的なデータを議論の出発点としつつもさまざまな仮説を立てて考察するという手法は、私たち読者に対し、「科学的思考態度」の重要さを教えてくれます。

その伊江太様からの記念すべき20本目の論考は、なんと国際金融、それも当ウェブサイトで頻繁に取り上げる「国際収支のトリレンマ」に関する話題であり、伊江太様いわく、今回の論考は具体的なデータではなく、あくまでも「架空の国の事例における思考実験」だそうです(どこの国の話なのかはわかりませんが…)。

投稿メールによると、伊江太様は「経済素人」とのことではあります。ただ、こんな記述を読むと、普段の武漢肺炎などに関する「データ」→「仮説」→「考察」という流れと、非常に似ている論考だと感じざるを得ません。

大規模、かつ恒常的にダンピングを続ければ、その直接的帰結としての自国通貨高外貨安の為替レートが、見かけ上は経済規模が順調に拡大しているように錯覚させるものの、跛行的な経済発展の末の行き詰まりを招く」。

内容が正しいかどうかはとりあえず脇に置くとして、まずは伊江太様の論考を読ませていただきたいと思います(※なお、表現、漢字かな遣いなどについては、大意を変更しない範囲において、当ウェブサイト側にて修正している場合がありますのでご了承ください)。

刹那的利益と引き換えに将来を食いつぶすダンピング経済

あるきわめて特殊な事例から考えた「中進国の罠」が生じる理由

このサイトの記事中にしばしば登場するのが、「国際収支のトリレンマ」(=①資本移動の自由、②金融政策の独立、③為替相場の安定、という3つの政策目標を同時に達成することが「絶対にできない」という掟のようなもの)という言葉です。

世界に開かれた自由主義経済の下にある国にとって、3つのうち2つを採れば、残りひとつは自動的に放棄しなければならないのは自明ということなのでしょうが、これも記事中で頻繁に登場するテーマで、「トリレンマなにするものぞ」、の勢いで、国際舞台を堂々驀進中の国があるようです。

この国にとって外資による投資は頼みの綱、だから資本移動の自由は必須。

また国内金融は底が浅く、企業会計、家計ともに抜きがたい借入金依存体質。

そうなれば、必然的に金融政策の匙加減をおろそかにするわけにはいきません。

それでいて、ミエミエの為替介入を、「スムージングオペレーション」と称し、どうやら最近は頻繁にやってるらしいが、

いったいそんな経済運営を長く続けることは可能なのか…。

そんなことを考えているうちに、ふと思いついたことがあります。この国は、少なくとも自国通貨「安」誘導という形での為替操作は、じつは必要ないのではないでしょうか。。

工業化を通じて先進国入りを目指す後発国にとっては、低賃金と並んで自国通貨安政策は輸出先を確保する有力手段であり、為替操作に頼らずにそれを短期間にやり遂げたとするなら、あっぱれというべきなんでしょうが、考えてみればもっと露骨な手段があるはず。

そして、もしそれをいつまでもやり続けたら、どんな国ができあがるのか?

そんな思考実験の一種として、本稿では「ある架空の国」のはなしを書いてみようと思います。

跛行(はこう)的な経済発展を遂げる国

こんなクニがあったとします。

  • 急速な経済発展を遂げ、いまやGDP規模が(国際基軸通貨換算では)世界のトップ10入りしたと評されるあるクニ。一方で、国民生活の利便安全の向上、国土保全などに投下された社会的資本の質は、おおよそその経済規模に見合わないレベルであり、とくに首都圏と地方での格差がひどい。
  • 経済発展の結果、このクニの国民1人あたりの所得は(国際基軸通貨換算では)ライバルと目する近隣国に並ぶ域にまで達したとされる。しかし、直接的所得に加え、各種社会保険、年金など利用できる公的サービスまで含めて比較すれば、額面での評価と実際の生活の質との落差は余りに大きい。
  • 住環境、若年失業率、高齢就業率、犯罪発生率、自殺率等の社会的指標から考えれば、このクニで生活する感覚は、OECD諸国並まで達していないという可能性すらある。
  • 国内経済の規模が大きくなり、また国民所得が伸びれば、本来であれば経済構造がそれに合わせて内需中心のものとなってゆくものだが、このクニでは「外需頼み」の経済構造は一向に改まらず、また貿易は典型的な加工貿易のまま先に進まない。
  • このクニの内側では、自分たちは今や立派な先進国、G7諸国とも肩を並べるほどになったとの高揚感が横溢している。他方国際舞台では、先進国入りしてからの日の浅さを言い立てて、果たすべき責務を極力回避しようとしている。
  • WTOの場でなど、自らを発展途上国と宣言して、農産物等に対して高率の関税が課せる特例を利用することまでやってきた。さすがに一部先進国の顰蹙を買って、途上国宣言そのものは最近撤回したが、未だ具体的な是正措置を執ったわけではない。
  • このクニの人間は他国の文物に対する理解、共感、敬意を抱く能力に著しく欠け、なんでも「自国最高!」、とくに近隣ライバル国に関連するものなら、あからさまな敵意を示し、それを隠そうともしない。
  • その一方で、海外旅行熱は旺盛で、嫌っているはずの某ライバル国にだって、国民人口当たり年間に訪れた数は、コロナ禍以前には、延べにしてなんとコンマ一桁台。なぜ?
  • 毛嫌いしているはずの国の旅行を経験したこのクニの人間の旅行満足度は、そのリピート率から見て、そこそこ高そう。旅行を楽しんだからには、ある程度財布のひもを緩めているのが自然だが、なぜか旅行中の消費額は他国の旅行者に比べて圧倒的に少ないことで、ライバル国では憫笑されているのが実情。
  • エトセトラ、エトセトラ…。

※なお、この文章は「もしこんなクニがあったら」という、仮想のはなしとして書いています。現実の国を名指しして、あれこれ当てこするつもりなら、信頼できる典拠を明示すべきところでしょうが、そうした意図はない(?)ので、付していません。

(このサイトを常時訪れている方なら、ひょっとすると思い当たる国があるかも知れませんが、文中の記述がどれだけ当てはまるのか、そこはあくまでご本人の判断で。筆者は責任を負いません。)

ダンピングと為替操作

為替レートを持ち込むと、途端にはなしがこんがらがってくるので、とりあえず単一の価値尺度(【お値打ち】とでもしておきます)を使って議論を進めます。

経済的な合理性とか、欲求の充足度とかの観点から、取引の双方に共有されていると想定できる尺度です。それを測る具体的な物差しや秤があるわけではありませんが、そうした概念抜きで貨幣の交換を通じた取引はあり得ないでしょう。

【お値打ち】には、ドルだの、円だの、ウ(略)だのといった通貨単位はつきません。どこでも同じ大きさであることを前提とします。

いま、【お値打ち】が75に相当する原材料を海外から輸入し、これに75の【お値打ち】分を上乗せして製造した工業製品を、輸出するというケースを考えてみます。

海外に依存する素材や中間部品、パテント料などの他、輸送費や関税など、輸入品にかかるすべてのコストを合わせたのが75。上乗せ分の75は、労賃、国内部材の調達、製造設備の減価償却、国内輸送、その他諸々の製造コストに、企業の利益も加えた製品の販売価格に含まれる【お値打ち】。

それぞれを75としたのは、単に説明のための方便です。現実のなんらかの事象に対応するものではありません(もともと架空のクニのはなしですし)。

輸入コストに上乗せ分を加えた製品が含む【お値打ち】の150。これを海外に販売して、対価として相応する【お値打ち】の外貨を受け取れば、まっ当な商取引なのですが、売り手さえ納得なら、【お値打ち】100相当の対価と引き換えに取引成立ということはありえます(図表1)。

図表1 加工貿易経済と輸出拡大策としてのダンピング

(【出所】投稿者作成)

販促のために一時的にやるならバーゲンセールですが、恒常的にやったらこれはもうダンピング。

国内でこのような出血大サービスをやれば、前後の価格の違いだけですぐわかるのですが、【お値打ち】と額面との相対関係が見えにくい異なった通貨を介した輸出の場合、これがダンピングかどうかの判定は、なかなか一筋縄ではいきません。

それにこれでも一応25の【お値打ち】の回収は図られているのですから、飢餓輸出というわけではありません。

輸出促進を図りたいなら、技術力を磨き、生産性を上げて、競争力を育てていくのが王道です。しかし、それができない、あるいはもっと手っ取り早くを望むのなら、ダンピング以外にも手はあります。それが「外貨高」「自国通貨安」の状態を、人為的に作り出すことです。

これをやるためには、あらかじめ大量の自国通貨を売って外貨を買うことで、相手側から見れば、よりお安く自国製品を入手できる環境を整えておく必要があります。ダンピングという直裁的な値引きに比べれば、余分な一手間がかかります。

輸出という局面に限れば、ダンピングと為替操作は、同じ効果をもつと言えるでしょうが、国内経済に与える影響はまったく異なります。その理由が、図表2です。

図表2 恒常的なタンピング依存は、為替レートの「自国通貨高」状態をもたらし、外から見た経済規模を膨らませる

(【出所】投稿者作成)

ダンピングの例に使った輸出品の【お値打ち】の大きさと値引き率は、図表1と同じにしてあります。また、それと対比させる為替操作による自国通貨安誘導の方も、同じ値引き率が出るほどの規模に設定しています。

実際にそんな無茶な為替操作をやれば、途方もないインフレの発生で国の経済は破綻してしまうでしょうが、ここでは、この国の財貨の【お値打ち】の見掛けにどういう歪みが生じるかという点だけを問題にし、その余の効果については無視しています。

図表2、つまりダンピングのケースでは、国内で生産された物品に含まれる【お値打ち】(この例では150)の3分の1にあたる50を捨てて、残りの100を、これまた100相当の【お値打ち】を含む外貨と交換しています。

形の上では等価交換ですが、これは値引きした上で国外に出た物品のはなし。輸出のために生産されたものであっても、国内に止まる限り、その2分の3、つまり1.5倍の【お値打ち】をもつことに変わりはありません。

主要輸出品目のほとんどについて同様のダンピングがおこなわれた場合、内外の財貨の交換によって決まる為替レートは、外貨に含まれる【お値打ち】と国内産品の「ダンピング分を差し引いた【お値打ち】」との交換を反映したものになるわけです。

あくまで「外貨建てで評価する限り」のはなしですが、為替レートというレンズを通して外から国内を覗くと、国内通貨も含めて、すべての財貨、それにGDPだの国民所得だのさまざまな経済指標も、5割増しにも膨らんで見えることになります。

重要なのは、構造的なダンピング依存経済というのは、それ自体が自国通貨「高」外貨「安」を意味するということです。

一方、自国通貨安誘導の方は、これと逆になります(図表3)。

図表3 外から見れば貧相に映る「自国通貨安」誘導をおこなっている国の経済規模

(【出所】投稿者作成)

外為市場で自国通貨のたたき売りをやってその価値を減殺するのですから、額面で評価した場合、国内の財物、経済諸指標が含む【お値打ち】の一部は、見かけの上で「蒸発」してしまうことになりますし、その分、国の経済力は小さく見えてしまうことになります。

ただ、これも「輸出を最優先にしている」という経済の場合は、これはこれでやむをえない、という場合もあるでしょう。それに、蒸発分は逆向きの為替介入をやれば、回収は可能。ダンピングとは異なり、【お値打ち】自体を毀損したわけではありません。

輸出促進という目的ではどちらを採っても効果は同じであるなら、通貨安誘導の方がマシなような気もします。しかし、政治や経済の指導層にとっては、大衆からの支持を集める上で、実質より見た目がより大事と言うことはあるでしょう。例え張りぼてでも、貧相に見えるよりはずっとマシというものです。

異なった通貨単位で取引される二国間の貿易で、いったいどれくらいの為替レートを適用すれば、正当な交換になるのか。

絶対的な公式なんかはなさそうですが、肌感覚でなら、案外それに近い値というのが得られるかも知れません。

貯金をはたいて外貨に替え、海外旅行に出かけたとき、気になるのは食事にかかるお値段。観光地によくある旅行客相手のレストランの料金がお高いのはやむを得ないとして、庶民が昼食を取っている食堂辺りだと、まあ価格帯は自国とそう変わらないなと感じたら、為替レートはまず順当。

海外はやっぱり食事が高くつくと身にしみるなら、これは自国通貨安ですね。それが、外貨を持って国を出れば、自国ではとてもこんな値段ではと思える豪勢な食事ができて、お得な買い物、良質なサービスが得られる、ちょっとしたお大尽気分が味わえるとしたら、これはもうダンピング国家からやって来た可能性大というわけです。

ダンピング経済を成り立たせる条件

為替レートの問題は輸出の側面だけで考察することはできません。

ダンピング国家にとって、海外からものを買うとなったら、逆にダンピングの咎めを受ける立場になってしまいます。

これが海外に依存する原材料、部品、製造機械、パテント料などを含め、最終的に輸出品となって出て行くのなら、出入り逆方向の動きでキャンセルされるから、問題は生じないのですが、純粋に国内で費消される財物なら、そうはいきません。

国内に競合品がないなら、安く買えてラッキーで済むのですが、そうでない場合は自国経済に悪影響が出ます。

ひとつの対策は、見てくればかりの粗悪品でいいから、国内でコピー商品を造ってより安値で販売することでしょう。開発コストなんか掛けないから、薄利多売で何とかやれる。先ほどの伝で、外貨換算でならリッチなはずでも、実際の懐具合はそうでもないとしたら、消費者がそちらを選ぶということもあるでしょう。

モノがソフトコンテンツならはなしはもっと簡単。著作権に引っかからない程度の化粧を施して、本質は丸パクリでもウr…じゃなかった、、オリジナル。これで相当の額の輸入は減らせます。

問題は品質なんかどうでも良いというわけにはいかないもの。食品あたりが代表格ですが、それが安値で入ってきたら、国内の農、畜産、水産業が潰れます。

仕方がないから、いくら顰蹙を買おうが、「途上国並みの高率関税を掛けて輸入を制限する」、「科学的根拠などを無視した怪しげな風説で、外国の農水畜産品への偏見を煽る」、なんてのも、得てしてこういうクニに起こりがちな事象かも知れません。

自国通貨「高」自体は目的ではないにせよ、ダンピング政策に必然的に付随するものなら、甘んじて受入れなければならない。ただ、どこでもそれがやれるかというと、結構難しい条件があるでしょう。当該通貨が厳密に自国内だけで流通すること、これは絶対です。

四界海で隔てられる、あるいは陸続きでも、隣国とは経済的に絶縁状態にあることも多分必須でしょう。共通通貨採用以前の西欧諸国がそうであったように、標識があるだけの開けっぱなしの国境をまたいで、隣国民同士が常に買い物などで往来するような環境では、ダンピング経済なんて成立の仕様がないはずです。

ダンピング経済をずっと続けたら

図表1の例に使ったダンピング率であれば、収支計算では一応黒字にはなるのですが、本来、付加価値として売り上げに含まれるべき【お値打ち】のかなりの部分をドブに捨てるようなことになっています。

しかし、正当な為替レートというのは把握しづらいもので、仮にこういうことをやっても、バレないことはあり得るはなしでしょう。

「輸出は伸びる」。「付随する自国通貨高の効果で見かけの(外貨換算での)経済規模は膨らむ」。、国民はホr…、自尊心を満足させられるとなったら、手を出してもいいんじゃないかという気になりそうですが、この誘惑は麻薬のそれに似ています。

すなわち、長く続けると依存症となり、また必ず全身に悪影響が出ます。止めようにも禁断症状が恐ろしいことになりそうです。

額面上は貿易黒字が積み上がっても、要するに薄利多売ですから、国内資本の蓄積はそれほど大きくはなりません。労働分配率にしても、そう高くはできないから、一般国民の懐具合も実質的には大して良くなりません。

経済が自転車操業で回っているだけなら、国内金融の分野も育たないし、典型的加工貿易体質は変わらず、外需に頼り内需の比率はいつまで経っても低いまま、ということになりかねないのです。

あるいは、大いに海外に販路を広げ、華々しく発展する大企業となれば、潤沢な資本を蓄積していそうなものですが、ダンピング依存の結果であれば、内実はそれほどのものではありません。

世界の先進工業国に伍していこうとすれば、大規模な設備投資が必要になりますが、国内での調達がままならないとなれば、外資頼みとならざるを得ません。ただでさえ十分とは言えない利潤のかなりの部分を、配当として海外に持っていかれることになります。

研究開発の投資に回すほどの余裕がないので、新規の分野に先行することもできず、いつも後追い、海外技術の導入ということになり、パテント料の支払いも馬鹿にならない額に達します。ダンピング経済というのは、刹那的利益を追うことで、将来を食い潰す愚策といえるでしょう。

企業、労働者共に収入、所得が【お値打ち】という尺度で測った場合、十分な大きさでないなら、そこから上がる税収も限定的なものにならざるを得ません。

社会インフラの整備は遅れ、公的サービス、年金などの生活保障のための諸制度の充実も、先進国と言える域に達しないままに放置されますし、未来を担う人材育成のための教育の質も劣ることになります。

ダンピングが習い性となった社会は、そうしたさまざまなハンディキャップを背負うことになります。

ここまで想像をたくましくすると、前に「こんなクニがあったら」に挙げた、奇異とも見えるいくつかの事象は、まさにダンピングを長く続けた帰結そのものとなりそうです。

ダンピング経済が止められないとしたら、その理由は?

後発の国が工業国家入りを目指すとき、ダンピング戦術をフル活用して先進国群のなかに割って入るというのは、ありがちなことです。

本来、首尾よく所期の目標が達成できたならば、そういう悪いクセは早めになくすべきなのですが、今考察の対象としている仮想国家は、性懲りなくこれを続けています。そして、そこには「そうせざるを得ない理由」があるのです。

その理由を探るには、もうひとつの国を舞台に上げる必要があります。先にライバル国という名で言及した国。嫉視の対象、打倒目標の国といった方がむしろ適切かも知れません。

このライバル国は、大戦により全国が焦土と化した状態から奇跡のように立ち上がり、世界有数の経済規模にまで上り詰めた国です。この国の経済成長を可能にしたのは、かのダンピング国とは真逆の方策が採用できたからでした。

図表1の例に則して言うならば、海外から輸入した原材料その他の75の【お値打ち】に、国内で75の【お値打ち】を上乗せした上で、これを150どころか200もの【お値打ち】相当の商品として輸出する。そんなやり方です。

そんな裏ワザが使えた理由は、かつては為替レートが固定されていたことによります。生産設備がほぼ壊滅状態となっていたこの国が国際市場に復帰するにあたって、輸出競争力がある産品と言ったら、ブリキやセルロイドの玩具くらい。当然通貨はひどく低い評価を受けるところから始まったのです。

しかし戦禍によって設備は壊滅状態になったとはいえ、軽工業から重工業まで、広い産業分野の生産技術は大勢の技術者のアタマの中に残っていました。通貨激安のメリットを最大限に活かし、安価で良質の製品を大量に世界に供給していくまでに長い時間は要しませんでした。

濡れ手に粟で【お値打ち】が流入してくるとしたら、企業群の成長、労働賃金の上昇を通じての国民所得の向上を補ってもお釣りが来ます。

社会資本の充実、社会保険年金制度の整備、金融力の強化、国内での【お値打ち】の創出が増加し、外需頼みから内需中心の経済への進化といった、その後の社会基盤の拡充が実現していく糸口となったのです。

もちろん、そんなうまいはなしが長く見逃されるはずはありません。為替レートの大幅な修正を迫られ、ついには世界の貿易体制は変動相場制に移行していくのですが、それがこの国の成長の鈍化にはつながりませんでした。

繁栄の果実をその場限りで費消はせず、将来へ向けての研究開発、人材育成の教育などへの投資に充てたからです。

再び、件のダンピング国に戻ります。ライバル国の躍進を羨望の目で眺めていたこの国は、自分たちにも機会が訪れたとみるや、早速真似を始めました。ライバル国から退職技術者を招聘して、製造機械は輸入、口移しで生産のノウハウを獲得すれば、開発投資の費用は浮かすことができる…。

相手の販路を突き崩すには、何より安値販売が一番。つまり、コピペ&ダンピング戦術が身に染みついてしまったのです。

市場を奪われたライバル国は、一時的に痛みを蒙っても、すぐにより高付加価値製品の製造へと主力産業の転換を図る。そうすると、また後追いのコピペ&ダンピング。紡績業に始まって、造船、鉄鋼、家電、半導体と次々にライバル国が開拓した市場を奪っていくものの、追いつき追い越すには至らない…。

一見したところ、このキャッチアップ劇は誇らしい成功譚と思えます。

このクニの人々は、ウr…我々が勝者となるのも間もなくだ、と有頂天になりました。

しかし、競争が先端素材。自動車、精密工作機器、産業用ロボットなど、高度の知識技術の蓄積を要し、産業全体の実力が問われる分野に及ぶと、ライバル国との差は再び歴然としてきたのです。

ゼノンのパラドックス、「亀に追いつけないアキレス」に自らを重ねる思いでしょう。

輸出立国を目指した時点の、置かれた国際環境の違いを理解しなかったのもさることながら、なにより自他の評価が根本的に誤っていたのです。俊足のアキレスとみた己は、実は重い鎖を引きずって走っていたのであり、亀とみたライバル国は、昼寝することなく走り続ける兎だったのです。

コピペ&タンピング経済の限界が見えるとき

競争国の得意とする分野の市場を蚕食していった過程は、実はライバル国自身が過去にある先進工業大国に挑んだ歴史と重なります。

この勝負は、先進工業国の側が土俵を下り、工業国家から金融大国へと転身を図ったことで決着を見ます。「両雄並び立たず」の愚を賢明に避けたということですが、この先進工業国が、かつて七つの海を股に掛け、冒険を厭わぬ貿易商人の末裔であったことが、それを可能にしたのかも知れません。

一方、ライバル国はと言えば、ダンピング国の挑戦に遭っても工業国家の看板を下ろす気はないようです。斜陽産業化したと言われる分野だって、旧リーディングカンパニーは他の追随を許さない高付加価値製品の開発と製造でその後も存在感を維持し、国の産業基盤の一翼を担い続けています。

儲けは二の次、優れた技を製品に込めることに心血を注いだ先人達の職人魂が、今に受け継がれているのでしょう。

そもそもが、コピペ&タンピングなどという手法は、自らに合った独自の産業基盤を築けないことの裏返しとも言えるでしょう。

この「麻薬」に手を染めると、陶酔感に浸っていられる期間は案外短く、依存症の弊害に長く苦しむことになりそうに思えます。安直な手段が功を奏するなら、それを真似る追随国が次々に現われ、せっかく手にした輸出大国の座が脅かされることになる可能性は大でしょう。

もし、それら競争者の中に、ルール破りなど意に介さず、周囲からの抗議には腕力に物を言わせて恫喝してみせる、ならず者のような国が含まれるとしたら、当座の比較優位などあっという間に吹き飛びかねません。

輸出促進をダンピングに頼るなら、必然的に外貨安自国通貨高の状態を招来します。また、それなしに儲けを確保することはできません。後発国の追い上げなどによって、ダンピングの効力が剥げ落ち始めても、さらなるディスカウントはいくら何でも難しいとなれば、まず現われるサインは自国通貨高の漸進的解消でしょう。

これを放置すれば、ダンピングの利が失せ、その存続すら怪しくなってしまいます。そこで自然の成り行きとしてではなく、人為的に自国通貨高を誘導すべく、為替操作が必要になってきます。

こうなって初めて「国際収支のトリレンマ」の壁が立ちはだかることになるのですが、為替操作こそ優先となれば。もう金融政策の独立は諦めるほかないでしょう。

しかし、通貨安傾向が構造的な要因によるのなら、為替介入をいくら続けてもキリがありません。それに、国内で付加した【お値打ち】の一部を、みすみすダンピングで破棄したうえに、これまでに稼いだ虎の子の外貨まで追銭として支払うとしたら、もう何をやっているのか、意味不明の領域に入り込みそうです。

依存症の果て

破竹の勢いと信じた経済成長が半ば虚妄のものであることは、このクニの企業経営や経済政策で指導手役割を果たしてきた人たちには、当然十分に認識されています。ライバル国の打倒を目標としてきた身には、嫉妬と屈辱感がない交ぜとなった憎悪の念が、嫌が上にも募るのです。

しかし、彼らの心理により大きなウェイトを占めるのは、その事実が多くの国民に知られることへの恐怖です。見せられてきた甘い夢がまやかしだったと気付いたとき、怒りの矛先が自分たちに向くのは、必然と言えるでしょうから。

その危惧から逃れるために執れる手段は2つ。

1つ目は、「世界がうらやむ」「どの国からも尊敬される」等の修辞で飾り立てた、自国の虚像をあくまで事実として宣伝し続けること。その裏返しとして、「格下」認定した国に対して軽侮の言辞を吐き続け、国民を優越感に浸らせること。

2つ目は、いくらバラ色のイメージを振り撒こうが、現実の生活の上で募ってくるであろう不満を、「わが国の発展を嫉妬し、邪魔する国」のせいにして、怒りの対象をそちらに振り向けること。

いずれの手段も、国際社会の中でできるだけ多くの国と良好な関係を築こうとするなら、マイナスでしかないでしょうが、もはやなりふりなど構ってはいられません。

幸い(?)というべきか、歴史上の栄光に恵まれなかったこのクニにとって、過去の屈辱の記憶なら掃いて捨てるほどにあります。なかでも悪役を振るのに最も適するのがかのライバル国。

マスメディアから公教育まで動員して、ひたすらライバル国を悪魔化するようなイメージ作りに勤しむのですが、近くとも祖父母、曾祖父母の時代、遠くなればン百年の昔に受けたと称する屈辱を、現世代の人間に実感させようなど無理筋に決まっています。

たとえば、敵国の象徴と見なして「不買運動!」と意気込んだアパレル企業が、「魅力的な商品を新発売!」などと聞こうものなら、早朝から長蛇の列をなす、その程度の底の浅いものにしかなりません。

だから常に新たな火種を用意すべくバージョンアップに励まなければならないし、それが次第におどろおどろしさを増して、ほとんど都市伝説まがいのものにまで変貌していくのも、これまた必然。いくら何でも事実の改竄がひどすぎるという声も、国内で上がらないわけではないのでが、そんなものは片端から芽のうちに踏み潰されます。

動機の強さ、執拗さにおいては、とても比べものになりません。恨みは過去のものではなく、現在進行形のものに向けられているのですから。

かくて、「事実を究明し、合理的な思考を重ねて、理性的な結論に至る」という、近代人に不可欠の知性はその社会から失われていき、扇動されれば、わけもわからず狂騒状態に陥る…。待っているのは国民挙げての精神的退行です。

こうしたライバル国への敵意を陰で操っているこの国の指導層には、より大きな問題が生じます。

彼らが社会で優越的な地位を保つためには、コピー元たるライバル国との良好な関係が不可欠。彼らは内心の敵意を隠し、友好的関係の構築を常に口にしなければならない立場にあります。希ってもいない「共に手を携える未来」を騙るのですが、間違っても過去は忘れようなどとは言いません。

こうした二重人格的有り様、その「どちらを演じようが、本音は嘘」の状態を自らに強いていけば、精神の混乱は避けがたいでしょう。何が目的で、何が国益に適うかなど、最早考えることができない、失見当識に陥るのです。

ここまで来てしまうと、ダンピングという麻薬への依存症も極まったというべきでしょうが、そこからの離脱は多分絶望的。試みれば、待っているのは禁断症状の地獄の苦しみなのですから。

中進国の罠

ダンピングを国の貿易体制に構造的に組み込んだとしたら、という仮定の下に進めてきた思考実験ですが、「いくら何でもそんな馬鹿げたクニ、あるわけなかろう」というところに逢着してしまいました。

ただ、こうして極端にまで考えを進めてみることは、さほど異常とも見なされていない事例の中に潜む問題点を摘出する契機ともなるのではと愚考します。

「中進国の罠」という言葉があります。

一時期華々しい経済発展がもてはやされても、いつの間にか減速、停滞に陥り、先進国の地位に届かずに終わる…。そんな国々がいかに多いことか。

置かれた経済環境はそれぞれに異なるにもかかわらず、半ば必然の如くに陥る「罠」があるとしたら、その正体は何なのか?そして、そうした陥穽に嵌まった国々の多くが、それまでに手にした経済発展の果実を活かし「恒産なくして恒心なし」の状態を脱するどころが、国内の対立激化により混迷を深めていくのはなぜなのか?

国民が餓えの恐怖から免れるのは無論のこと、誰もが健康で文化的な生活を送れ、十分な教育を受けられる環境が整備されるのが当然と考える社会。

思想、信条の自由、またそれを公にすることが制度的に保証される社会。構成員すべてが自らの意思に基づき、選挙を通じて望ましい政府を選択する権利を有する社会。

曲りなりにもそれくらいのことが実現されて、初めて今日的感覚での先進国と胸を張ることができるでしょう。

規模の大小は、先進国であるか否かの物差しにはならないにしても、経済力の裏付けなしに先進国の域に達するのは不可能というのも、また事実でしょう。結局、今日自他共に認める先進国というのは、自らの強みを活かした産業基盤を自力で構築できる国、ということになるのではと思うのです。

野放図に外資を入れ、また多額の援助を当てにして、借り物の技術で経済発展を図る。

一時的な成果を得られても、しょせんはハリボテ。早晩それが行き詰まってしまう背景には、コピペ&ダンピングへの誘惑に負けるという、共通の要因が関わっていそうな気がするのですが、うがちすぎた見方でしょうか。<了>

読後感

…。

はて?いったいどこの国のことを指しているんでしょうかね?ウェブ主にはさっぱりわかりませんでした。

ただ、「自国通貨の為替相場を恣意的に操作している」というあたり、自国通貨が上昇しすぎても困るし、下落しすぎても困るという国があったような気がします。

図体ばかりは大きいけれども、その通貨は米ドルに事実上ペッグしているという「ナカツクニ」ってやつでしょうか、それともその図体ばかりが大きな国に挟まれたエビのような国なのでしょうか?何ともわかりません。

いずれにせよ、「そんな国があるのだろうか」という点もさることながら、もしそんな国があったら、その国の経済をどう考えるべきかという点において、私たち読者の知的好奇心を掻き立てるという意味では、十分に刺激的な論考だと思う次第です。

(※なお、記事本文中、「ダンピング経済というのは、刹那的利益を追うことで、将来を食い潰す愚策」を太字にしたうえで下線を付したのは当ウェブサイト側の判断です。)

伊江太様、非常に興味深い論考を大変にありがとうございました。

参考までに、伊江太様の玉稿のリンクを紹介しておきます。まだの方はぜひご一読ください。

伊江太様から:「データで読み解く武漢肺炎」シリーズ・全19稿

本文は以上です。

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読者コメント一覧

  1. 愛知県東部在住 より:

    そういえば、こんなこと平気でやらかしちゃうクニもあるそうです。

    https://www.mlit.go.jp/report/press/kaiji05_hh_000209.html

    ことの顛末がどうなったのか、詳細は知りませんが、いろいろと彼らが得意とする論理のすり替えとか、ウリナラに愛情はないのかぁー!とか云ってるんじゃないでしょうか?

  2. クロワッサン より:

    読み応えのある内容で面白かったです!

    >繁栄の果実をその場限りで費消はせず、将来へ向けての研究開発、人材育成の教育などへの投資に充てたからです。

    これは、今の日本で内部留保が積み重なっている状況を危惧する理由にもなりますね。

    刹那的利益の追求は、派遣社員率の向上などにも当て嵌まるのではないかと。

    あるいは、人を減らして人件費を浮かす事でブラック職場を創り、病んで脱落した社員従業員の世話を社会に任せて後始末をしない事で自社負担を無くし、使い捨ての果実を手にする、なども。

    日本の将来もどうなるんでしょうね…。

    1. 匿名 より:

      クロワッサン様

      <>

      クロワッサン様の憂いを真面目に考える必要があります。
      人間、自画自賛し始めたら、その時がピークから下り坂に入った時です。下降重力が掛かり始めています。その下降重力に抗する術が分からない時に、自画自賛を始めることが多いです。
      ただし、その自画自賛が、再上昇の為の自己分析の一つであればOKです。
      いわゆるSWOT分析の始まりであればOKです。自己分析と環境分析のマトリックスでやらなくてはなりません。
      そこで、クロワッサン様の言われるように、今まで自分の強みだったものが、環境の変化によって、逆ネジに作用し始めている事に気が付かなくてはならない事もあります。
      1980年代後半に、[エクセレントカンパニー]という本がベストセラーになりましたが、そこで模範とされた企業は、その後10年以内に、1社は無くなり、他も全て厳しいリストラ=生き残りと再生の為の事業の厳しい再編成を行なわなければなりませんでした。
      今日本では、リストラは、社員の解雇の意味で使われる事が多いですが、本来は、再生の為の事業の再編成を行う事です。
      それは、大変に厳しい本当に厳しい自己変革の作業です。
      本当は、どこかのクニを相手にしたり、揶揄している暇はないんです。
      今こそ、厳しく真剣に、再上昇の為の自己分析×環境分析=SWOT分析をやらなくてはならない時です。

  3. 匿名 より:

    途中まで、『なかクニ』 のことかと思って読んでいました。

  4. sqsq より:

    「ヒュンデの車はなぜあんなに安く売れるのか」という記事を読んだことがある。
    要点はEBIDA+開発費の水準では他の自動車メーカーと変わらない。
    つまり開発費に金をかけないということらしい。技術は隣国から盗めばいいと思っているのかもしれない。
    どうりで世界の自動車産業の再編話でこの会社の名前は出てこないはずだ。

    1. 匿名 より:

      今は分かりませんが、昔、エンジンやトランスミッションなどの、クルマの心臓肝臓とも言える構成品は、日本のある自動車メーカーから仕入れていると聞きました。とすれば、安く売り過ぎでは?
      ただ、日本のある自動車メーカーとすれば、自社を含めての生産数が増えるので、自社のコストを下げる効果もあります。
      いずれにせよ、エンジンやトランスミッションは、一番、研究開発費が掛かる所です。
      しかも、研究開発とは、暗中模索ほどではないけれど試行錯誤の塊で、頭脳と探究研究心と根気と粘り強さが、必要とされるものです。
      ここまで書いて、かのクニでは何故、研究開発に熱心になれないのか、分かったような気がします。

  5. 簿記3級 より:

    不当廉売と著作権侵害によってコピー商品による物資を無尽蔵たらしめ、無代に等しい価格で提供する。それによりこの世をウリの極楽浄土にする。ダンピング哲学というものでしょうか。

  6. よし より:

    まさかこんな滑稽な国あるわけないかと。
    全く思い浮かびませんでした。
    ま、それはさて置きとても楽しく
    読ませて頂きました^ ^

  7. sqsq より:

    日本は去年10万人あたりの結核発生率が10人を割ったようで、やっと結核低蔓延国になった。
    韓国の結核発生率は10万人あたり77人、結核死亡率5.2人(2016年基準)と、OECDの中で圧倒的に多い。 2番目に多いラトビア(発生率37人、死亡率2.8人)のほぼ2倍だ。これは日本でいえば1960年代の水準。Kナントカはどうなったのかな?

  8. より:

     とても面白い投稿でした。
     輸出主導の経済成長なんて永続しませんよ。
     一時的にシェアを伸ばしても、自国より割安の通貨を持つ国が追いかけてきます。人間の能力なんて、どの国もそんなに変わりません。日本人にできるなら、韓国人にも、中国人にも、ベトナム人にもできます。
     輸出主導の経済成長なんて、終わらないマラソンです。そもそも、相手国の需要に依存して、相手先に商売敵を作るような商売が長続きするでしょうか。
     今どき貿易黒字を延々と積み上げるなんて、ヨーロッパ全域とレートを固定したドイツくらいです。あれこそドイツ第4帝国。関税自主権も金利決定も許さない上手い仕組みです。

    1. 匿名 より:

      以下、私見を返信させて頂きます。あくまで、私見ですので、ご了承ください。

      ドイツが、
      >>>今どき貿易黒字を延々と積み上げる
      ことが出来たのは、中国との貿易をジャンジャン増やしたからです。
      メルケル首相が、トップセールマンとなって。
      又ある意味、中国と、バーター取引をしたからです。

      ドイツは、生産財、高級消費財を売る、替わりに、中国から、低価格消費財=日用品などを買う。

      毎日、何十両編成だかの長い長い貨物列車が、ユーラシア大陸を横断して、中国からドイツへ物資を運ぶそうです。その列車の本数、毎日30本とか。
      ドイツは、中国と緊密な経済関係を結んでいます。
      それでなければ、
      >>>関税自主権も金利決定も許さない上手い仕組み
      だけでは、一人勝ちはできません。そもそも、お客がいなければ、「上手い仕組み」を作っても意味がありません。
      ドイツの優れた断トツの供給能力を満足させる客は、ヨーロッパにもその他の自由主義圏にも今はいません。

      ドイツが強い経済関係をつくれたのは、やはり、製品力が強いからではないでしょうか?ドイツの製品は皆欲しがります。日本とは又異なる信頼性がありますし。
      やはり、経済の基本は、製品力です。
      某国は、製品力に自信が無いし、そもそも自信が持てる製品を作ろうという意識も希薄なのではないでしょうか?

      ドイツに関してあと加えるとすれば、メルケルの形振り構わない、破廉恥とも言える売り込みです。

      以上、私見です。繰り返しになりますが、
      >>>レートを固定したドイツくらいです。あれこそドイツ第4帝国。関税自主権も金利決定も許さない上手い仕組みです。

      レートの固定、関税、金利、を押さえることだけで、貿易戦争に勝てるものだろうか?という疑問から、この返信を書かせて頂きました。
      わたしが間違っているかもしれませんが、やはり、ドイツは、他の国とは違うことをやっていることは、事実です。

      貿易戦争は、多様な要素があります。
      ドイツは自国にしかない強味を、その強みを活かせる相手を見つけて、提供しているのです。
      ドイツと同じ製品を作れる他国はあるでしょうか?

  9. 776 より:

    >「事実を究明し、合理的な思考を重ねて、理性的な結論に至る」という、近代人に不可欠の知性はその社会から失われていき、扇動されれば、わけもわからず狂騒状態に陥る…。待っているのは国民挙げての精神的退行です。

    昨今の「統一教会問題」をめぐる狂騒をみていると、あまりよそのクニのことは言えなくなりますね。

  10. 元ジェネラリスト より:

    ダンピングはジリ貧に、とても共感します。

    為替の絡む話はいつも頭がこんがらがって苦手なんですが・・・
    何度か読み返しているのですが、どうしても、図表2の、「恒常的なダンピング依存が、自国通貨高をもたらす」のがわからないです。
    為替操作なしの恒常的なダンピングには自国通貨高の効果がある、ということでしょうか?
    でも、経済活動の結果としての為替レートではなく、自国通貨高/安は操作によってなされる表現もあるため、よくわかりません。

    自分がとんでもなく頭が固いところにハマっている気もしています。

    1. 匿名 より:

      元ジェネラリスト様

      匿名です。

      >>>図表2の、「恒常的なダンピング依存が、自国通貨高をもたらす」のがわからないです。

       これについて、考えてみましたことを、「匿名」名で、新しいコメント(2022/09/16 05:14)として、書かせて頂きました。
      ご参照頂けましたら幸いです。
      尚、このコメントの内容は、あくまで、わたしがこのように理解しましたということですので、ご承知おきください。

    2. カズ より:

      >図表2の・・

      この図では、輸出(販売)時にはダンピングの効果で100の値打ちにしかならないものが、国内滞留分(在庫)については150で評価(帳簿上でのカウント)されています。

      >自国通貨高の効果

      出荷ベース(通常は販売ベースだと思います)で計算されたGDPは、在庫分に含まれる”50の未実現利益?”の分だけ実態よりも数値が水増しされることを指してるんじゃないのでしょうか?

      1. 元ジェネラリスト より:

        ありがとうございます。
        ご指摘の点は自分もそう理解します。
        下の匿名さんの返信にも書きましたが、モデル化された架空の世界の前提条件の、私自身の読み取り不足なのかと思いました。

  11. カズ より:

    分水嶺 地盤沈下で 水たまり 涸れ果てるまで 行く宛もなく・・。

    分水嶺に留まりし流水は、刹那の傾斜に誘われるがままに、その身を委ねるのみの存在です。
    おそらく某国の本質もこれに同じ。目先の利益追求は自然の摂理の如き”反応”に過ぎません。

    繰り出される事象に、選択や判断の余地のない社会には大局観が萌芽することはなく、
    どっちつかずの末路に待ち受けるのは、 行き場のない ”太極寒” なのかもですね・・。

  12. じゃん🐈 より:

    伊江太さま

    興味深い..えー歴史書?解析書?
    ありがとうございました。
    大変面白く読ませていただきました。
    感謝いたします。

    あ、いけね、架空のクニの話でしたね。
    >「いくら何でもそんな馬鹿げたクニ、あるわけなかろう」
    そうですね、そんなお莫迦なクニは地上に無かったんだ。
    ヨカッタヨカッタ….

  13. コジna より:

    大変な力作です、また中身が本質的で興味深く最後まで拝読しました、そして勉強になりました。
    伊江太様、サイト主様ありがとうございます。

    サウス国は経済規模に見合う民族資本が形成されなかったと言う悲劇があるとも考えます。
    同じ文化圏であるシーヌ国も国営の金融機関や企業が逆に無茶苦茶な金融拡大をしてしまったため、
    破滅的な酷い状況になっています、やはり民族資本が十分形成されていないと推測します。
    また、ハードカレンシーになることが民族資本形成の決定的条件でしょう。
    (私達の先人が過酷な国際社会の中で真面目に努力してきたことを思う時、目頭が熱くなります。)
    建国から他者に与えてもらった独立、同民族で激しく半島内で争い世界最貧国に落ちたサウス国は
    サン・ライス国から莫大な資金を得て高度な経済成長を達成し、
    オリンピックを成功させ、工業国として発展した中進国となり成長していきます。
    96年サウス国はOECD入り、先進国入りを高らかに宣言しました、内外で派手なパフォーマンスでした。
    その高揚感の中、97年にはIMF経済破綻を引き起こします。
    原因は経済成長の牽引役であったはずの財閥系企業の循環取引や粉飾会計などの不正でした。
    OECD・先進国入りするために、仇敵サン国に見せつけるために無理に無理を重ねた、
    いや不正に不正を重ねた悲劇の経済成長でした。
    その経済破綻はサン・ライス・OZ国の資金によって救済されますが、
    サウス国を信用していなかったんでしょう、ライス国は厳しい見返りを要求しました。
    金融系はライス系資本になり(最終的にはのむ・ひょん氏が野党や国民の圧力に耐えきれず売却)、
    破綻の原因となった企業の借金はさらに国民の負債に転化されていきました。
    破綻前の通貨水準は1弗≒800Wでしたが、その後は1100-1200のレンジとなり元に戻りません。
    やはり金融系をライス系に取られたことは民族資本や国富の毀損イベントとなってしまいます。
    長期的な企業経営だけでなく短期の利益を確実に求められるのは豊かで厳格なライス国基準では
    当たり前、自立できない速成思考のサウス国にとっては厳しすぎる状況が続きます。
    ライス系サウス金融は自国の金融統括機関FEDの意向を汲んだ経営をします、
    自国より海外に金融政策の基準があることになりジェットコースターのような経済になりました。
    97年の破綻以前の安定した経済・社会を懐かしむサウス国民が多数いるのは当然だと思います。
    困り果てたサウス国は家計負債を増加させながら経済成長を維持し限界を向かえました。
    恩人であるサン国への恨は絶対に解消されることはなく、
    仮想通貨・株・土地不動産バブルに最後の望みを掛けましたが・・・
    イソップ童話みたいになってしまいましたが、南○鮮は国家的危機を向かえてると思います。

  14. CRUSH より:

    とても面白い例え話でした。

    個人的に、韓国&韓国人の生き様は
    「聴いてきた事を、他人へ伝える際の、嘘や誇張(落差)で発電する永久機関」
    みたいに思われますので、うまいこと例えるものだと感心しきりでした。

    為替をいじって背伸びするメリットとデメリットには、元日銀総裁の吉野俊彦『円とドル』を思い出しました。

    日本にも、世界恐慌や金解禁や戦後の360円時代など、通貨が安くて産業振興に下駄を履かせてもらえていた時代がありました。

    幸いにしてその当時の日本は、得られた日銭をアブクで消費せず、国民生活を切り詰めて倹約して外債を返済しきった訳でして。

    某ギャクザ国(笑)のみなさまは、どうかしらね?

  15. 匿名 より:

    素晴らしい論文です。
    後でまた、じっくりとコメントを書きたいと思いますが、取り急ぎ、何が素晴らしいかの要点を書かせて頂きます。

    1.経済構造の基本が分かります。
    2.経済構造と為替の関係が分かります。
    3.経済「力」の本質とは何かが分かります。
      従って、国家の経済「力」を維持向上させる為にはどのようにすればいい
      かが分かります。

    (この論文は、経済関係の人だけではなく、国民全員が読んだらいいのにと思うくらいのものです。)

      この1~3についての詳しいことは文章が纏まりましたら後ほど、コメン
    トを追加させて頂きます。(追加しないかもしれませんが。)

    この投稿の著者は、理系(科学的な思考法)の人であることが良く分かります。それは、
    4.物事を根本的に本質から論理的構造的に把握し理解しようとする。
      ※論理的構造的とは、どういうことかであるかの説明は省きます。
    5.そして、その本質を論理的構造的に纏めてを説明することが普通に習性と
      なっています。ですから、どこかに引っかかることなく理解が進みます。
      ※尚、図表1~3の説明は、それぞれもっと字数を掛けてもいいように思
       います。論旨の流れを中断しないために、途中に入れるのではなく、最
       後に注記で纏めてでいいと思います。こういう説明をどこに入れるか
       は、文章を書き進める中で迷う所ですが、論文的な文章を書き慣れてく
       れば、論旨の流れを中断しないことが大切であることが分かって来ま
       す。
    6.当然、主題(テーマ)に関することを隈なく漏れなく複層的に把握し理解
      しようとして、全貌を理解するまで探求的思考を続けることができる。
      当然、この把握し理解する過程は、「仮説」と「検証」を繰り返す。
      真の理解とは、「仮説」なしには訪れないです。つまり、自ら「仮説」を
      立てる素養が必要です。理系の人は、この思考法をどこかの時点で無意識
      的に体得します。これが、体得できなかった人は、理系の知識をもって
      いるだけの人です。そういう人は結構います。
      ですから、話は逸れますが、実験データの捏造をやる人は、そもそもが科
      学的な思考法を習得できなかった人です。

      科学的な思考法をする人は、「仮説」を証明するために、仮説に沿うデー
      タを捏造しようなどとは、露ほども考えません。科学的であるとは、事実
      が科学の元・素であることを骨の髄まで理解しているからです。科学的な
      思考法をする人は、データが集まらなければ、別の「仮説」を立てます。
      ですから、事実に忠実でありながら自由な発想が出来る力が必要になりま
      す。自由な発想力を持つためには、発想できる世界が広くなければなりま
      せん。ですから、有能な研究者には、いろんな分野に興味を持ち造詣が深
      い教養豊かな人が多いのです。

      ※補足します。自ら「仮説」を立てる能力は、いろんなものに興味関心を
       持ち、それらを知的探求心を持って、常日頃から理解しようとする恒常
       的な習慣的とも言える思考活動が必要です。
       この事を書けば、伊江太様が、医学系がご専門でありながら、専門外の
       この論文を書かれた理由が納得できるはずです。

    以上の4~6のことが、この論文からひしひしと伝ってきます。

      ※理系的な知識を持っている人でも、理系的な思考法が出来ない人は、
       研究開発が出来ないです。また、自分の勉強した専門以外のことは理解
       の外です。こういう人は、興味関心の世界が狭い、つまり、知的な探求
       心が余りないので、専門以外のことを理解をしようとも思わないでしょ
       うけれど。

    4~6のことは、著者の伊江太様には、ご納得いただけることだと思います。

    また、国民全部が読んだらいいと思える論文が出来上がった背景は、土台が確りとしたものであることが以上の文章で説明できたと思います。

    このコメント文が、論理的構造的であるかも、問われなければなりませんね。

  16. 美術好きのおばさん より:

    伊江太先生
    楽しく読ませていただきました。
    数字にはトンと弱い私ですが、グラフで示された「お値打ちの消滅とまぼろし」の説明はわかりやすかったです。
    ありがとうございます!

  17. すみません、匿名です。 より:

    理系の人の思考の「見える化」ですね。ある程度の知的水準が必要ですね。
    文系でも仕事において「論理的思考」できなければ、効率よく稼げません
    「仮説」と「検証」・「PDCA]等々、私には厳しいですが・・・。

    >一時期華々しい経済発展がもてはやされても、いつの間にか減速、停滞に陥り、先進国の地位に届かずに終わる…

    麻薬中毒患者の選択として、周りを何とかいろんな手段をとってなんとしてでも
    巻き込んで生きながえる手段があります。
    ライバル国の冷徹な判断を期待したいところですね・・・。

    1. 匿名 より:

      「仮説」と「検証」は、科学的方法論の核です。
      この方法論は、分野を問わず、活用出来るものです。
      セブンイレブンの圧倒的な強さを支えているのは、仮説と検証のPDCAです。
      鈴木敏文さんが、事業推進の核としました。
      セブンイレブンでは、全国のエリアマネージャーを、月一回集めて、仮説検証大会をやっていると聞いた事があります。
      尚、セブンイレブンの圧倒的な強さとは、店舗当たりの日商つまり売り上げが、他の2社より10万円以上上回っている事です。
      これが、分かっていても、他の2社は、この、仮説と検証のPDCAサイクルを回せないので、差をつけられたままです。
      仮説と検証は、恐るべき威力ですね。
      科学技術立国には、そう簡単には成れない、という事です。
      先ず、コピペの誘惑に負けない心を持つ事は、絶対的に必要ですね。

  18. 匿名 より:

    元ジェネラリスト様のコメントの中で、

    >>>何度か読み返しているのですが、どうしても、図表2の、「恒常的なダンピング依存が、自国通貨高をもたらす」のがわからないです。

    という問い掛けがありましたので、伊江太様の論文を読み返して、以下のような「説明が成り立つな」と思いましたので、書いて見ます。

    以下のように考えてみました:

    この論文では、ダンピングの意味を模式的に説明する為に、架空の「お値打ち」という、均衡値=均衡貨というものを想定しています。
    その「お値打ち」=均衡貨を、Even(イーブン)貨=Ev=イブ、とします。
    また、輸出国Aの通貨をエクス、輸入国Bの通貨をインとします。
    正常な普通の状態での 通貨為替レートは、均衡貨を想定しているので、1エクス=1イブ=1イン、とします。
     
    つまり、1エクス=1イン、です。
      
    ある商品Ⅽの取引をします。その時、A国は、B国での販売を有利にするために、本来、150エクス=150イブの商品Ⅽを、「密かに」50エクス=50イブ値引きして100エクス=100イブで輸出します。
      当然、この商品のB国での価格は、100イブ=100インとなります。そして、A国の収入は、100エクスです。

    しかし、ここで留意しておかなければならないのは、商品Ⅽは、全ては均衡であるという前提の下、B国でも、本来、150インの価値があるはずのものです。ここは、確認しておきます。このことが、「架空」の均衡前提であると認識しておかないと、本来のダンピングとは、何をやっていることかが分からなくなります。
    これが、1回あるいは、短期間の販売価格であれば、市場獲得のための出血値引で、値引き分を、初期特別費用(損失)としているのであれば、A国のダメージは、一過性のもので済みます。

    しかし、この出血値引きをずっと続けた時に、どうなるかというと、均衡通貨イーブンは、ものの価値は全世界ですべて等価であるという前提を想定していますから、B国で150インのものを、A国では、100エクスで生産できる、の
    だという認識に至ります。誰が認識するのかと言いますと、均衡の神様です。つまり、均衡の原理、が働くということです。

    均衡の原理は、自然の摂理です。

    これは、どういうことかと言いますと、150イン=100エクス、ということに帰着するということです。
    つまり、1.5イン=1エクス、ということになり、輸出国Aの通貨は、高くなるということです。

    これが、「恒常的なダンピングは、輸出国の通貨高を招く」ということの原理です。

    さてしかし、ここで、ライバル国のように技術力が高くて、この値引き分が、本来のコストダウンによる「自然」価格として、150イブのものを100イブに出来たのならば、自然の摂理による価格ですので、ライバル国の輸出では通貨高という現象は発生しません。

    ここで、無理な値引き輸出をすることを、ダンピングといいますが、本来の製造コスト以下で輸出することを特に、飢餓輸出と言います。  

    本論文の内容を、別の言い方で説明して見ましたが、果たして合っているでしょうか?

    1. 匿名 より:

      当コメ主です。

      上記コメントに補足します。

      輸出国Aは、自国通貨エクスの通貨高を阻止するために、為替市場に自国通貨売り介入をして対抗します。
      これは、ダンピング輸出をする前に行って、事前に自国がダンピングをしていないかのように見せかけることもある。つまり、バレないように、ということです。
      勿論、自国通貨が上がり始めた時にも、上がってしまった時にも為替介入を行います。

      これをやるとどうなるか?

      ダンピングで、自国内に残る利益は少ない上に、為替操作が上手く行かなくて、自国通貨安が続けば、輸出品や国内向け品を作るために輸入する、設備や物資やパテント料などが高くなる上に、国内消費の為の輸入品も値上がりします。社会インフラやその他国家運営の為の物資も高くなります。
      輸出依存、輸入依存、という「両依存」体質な上に、このようなダンピングと自国通貨安誘導を行えば、益々、国内に残るお金が少なくなり、国内内部留保が少なくて、金融機関に資金が残らない、社会保障や、社会基盤つまり、インフラ整備の資金も足りない、という国家に成ります。
      そして、この悪循環から抜け出せなくなります。
      ここから抜け出すためには、ライバル国(と勝手に決めつけている)と同じように独自の技術開発力を身に付けることが必須であるのにも拘わらず、安易な目先のコピペに頼っている、という姿が見えてきます。

      これが、伊江太様が、論文に書かれたことの要約になると理解しました。
      某国の有り様をみていて、何故なのかなあ?、とその経済構造がずっと気になっていました。
      伊江太様のこの論文によって、長年の疑問が解消しました。

      伊江太様、本当にありがとうございました。
      また、このような秀逸なサイトを運営して頂いている、新宿会計士様にも、革めて心よりお礼を申し上げます。

      本当にいつも知的な刺激を与えて頂ける投稿を拝読させて頂けることに感謝いたしております。

    2. 匿名 より:

      当コメ主です。

      コメ主のコメントに誤りがありました。

      >>>さてしかし、ここで、ライバル国のように技術力が高くて、この値  
         引き分が、本来のコストダウンによる「自然」価格として、150イ  
         ブのものを100イブに出来たのならば、自然の摂理による価格です 
         ので、ライバル国の輸出では通貨高という現象は発生しません。

       これは、間違いです。均衡の原則では、必ず、通貨高になります。

       がしかし、ライバル国が目覚ましく成長できた理由は、伊江太様が詳しく説明されています。

      以下、伊江太様の論文の中で説明されていることですが:

      >>>海外から輸入した原材料その他の75の【お値打ち】に、国内で75
         の【お値打ち】を上乗せした上で、これを150どころか200もの
         【お値打ち】相当の商品として輸出する。そんなやり方です。
         そんな裏ワザが使えた理由は、かつては為替レートが固定されてい  
         たことによります。生産設備がほぼ壊滅状態となっていたこの国が
         国際市場に復帰するにあたって、輸出競争力がある産品と言った
         ら、ブリキやセルロイドの玩具くらい。当然通貨はひどく低い評価
         を受けるところから始まったのです。
         しかし戦禍によって設備は壊滅状態になったとはいえ、軽工業から  
         重工業まで、広い産業分野の生産技術は大勢の技術者のアタマの中  
         に残っていました。通貨激安のメリットを最大限に活かし、安価で
         良質の製品を大量に世界に供給していくまでに長い時間は要しませ
         んでした。
         <<<(以上引用)

         敗戦国だったためかどうか、通貨激安の固定相場のメリットがあり
         ましたが、そのメリットだけに依存することなく、DNAのように
         受け継がれた独自の技術開発力を最大限に活かし、いずれ訪れるこ
         とになる変動相場制にも対応できる新たな技術開発力・生産技術力
         を更新し続けていました、ということです。

         これによって、対外債権を蓄積し、輸出依存度も減少しているの
         で、自国通貨安は却ってメリットになる経済構造になっているの
         が、ライバル国であるということが、新宿会計士様の主張です。
         自国通貨安がメリットになるのは、今のライバル国(だけ?)であ
         る、と。
         ただし、課題は輸入依存が高いエネルギー資源であるから、積極的
         な対策をして行かなければならない、と。

    3. 匿名 より:

      当コメ主です。
      更に、追記します。

      この世界には、お値打ち=均衡値=均衡点、というものがあることを、資本主義の原典「国富論」を書いた、アダム・スミスは、「神の見えざる手」と言いました。
      つまり、この世界には、最後は「均衡点に帰結する」という摂理がある、と言うことです。
      そもそも、この原理=摂理が無ければ、自由主義経済は成立しません。

      さて、かのクニは、この自然の摂理に反することを、延々としてやろうとしている訳です。
      この所業を、昔の人は、「水を山に昇らせる」という重力の法則に反することをやることに例えて言いました。

      伊江太様は、この摂理を説明された訳ですね。
      アダム・スミスの言った原理について、かのクニを仮定して、このような説明の仕方があるとは、アダム・スミスも驚いているかもしれません。

      それにしても、自分達が本質的な真面目な努力(独自の技術開発など)をすることが嫌なものだから、安易な道を選び、自然の摂理に反することを延々とやっていて、それが上手く行かないとなると、ライバル国を、これ又、延々と責め続ける、しかも、それに、つまり、自分が何をやっているかにも気が付かない、とは・・・。

      技術力の欠如の前に、哲学が欠如していますね。

      伊江太様のこの論文からは、いろんなことを読み取ることが出来ますね。

    4. 元ジェネラリスト より:

      丁寧なご説明をありがとうございます。
      本来為替レートの変動要因は様々ですが、この例示された商品取引によって為替レートが決まってしまうのであれば、という前提が隠れていると言う解釈ですね。
      多分、そういうことなのだろうなと思いました。

      記事本文のそれ以降の部分には異論はなく、この点だけが疑問でした。便宜的なモデルのことなので納得することにします。
      昨夜は寝付きが悪くて寝不足気味なのですが、今夜はゆっくり寝れそうです。(笑)

      ありがとうございました。

      1. 匿名 より:

        こちらこそ、ありがとうございます。
        元ジェネラリスト様のお問い掛けのお陰で考えて見ることができました。

  19. CRUSH より:

    御参考までに、金本位制の頃についての城山三郎の書き方です。
    (記憶頼りの書き散らかしでスミマセン。)

    ・日露戦争の戦費などで莫大な外債を抱えた日本は、償還する時期に円安だと割高になるので、円高方向に誘導したい。
    (返せないか借り換えできなければ下手したら破産)
    ・でも、
    ①円安の方が輸出競争力が保てて国内工場は儲かる。
    ②輸入品が割高なので国産品の競争力も保てる。
    経済界としては円安大歓迎!
    ・時に、戦争が終わって一時的に兌換を停止していた世界各国の中央銀行が、次々に通貨と金との兌換に復帰しつつあり。
    ・時の浜口内閣(井上蔵相)は、帳尻合わせを最優先。
    つまり、外人から借りた金はきちんと返す。
    そのために、為替レートは円高方向になるように金との兌換比率を決定。
    ・その結果
    ①国際競争力が低下して国内製造業は不況に突入。
    ②輸入品との競争で国産品が売れなくなる。
    経済界からは大ブーイング。
    浜口も井上も、暗殺されてしまいます。

    ・ただし、城山三郎の解説によれば、為替で楽をしてコストダウンや品質向上の努力をおこたる風潮に、喝を入れるとともに、外資に依存しないと工作機械などをまったく内製できない脆弱な産業基盤しかない当時の日本は、切詰めて切詰めて前倒し返済を続けることが、長期的に戦略的にはベスト!だったのだ、と。

    ご先祖さま世代の、熱く燃える話ですが、今の日本とはずいぶん状況が違います。
    どちらかといえば、お隣の半島の方がダイレクトな教訓になりそうな。

    1. 匿名 より:

      城山三郎の冷静な分析も必要です。
      このような冷静に将来的な視野できちんと前倒しまでして返済をしてくれた先人には感謝したいです。
      しかし、そういう冷静な面ばかりでは無い面もあるように思います。

      高橋是清自伝に、この時、日本の外債を買ってもらう為に、英米国を奔走した様子が細かく書かれています。外債を買ってもらえたのは、高橋是清の人柄に依る所も大きかったようです。
      日本を信頼して買ってくれたのです。金融機関や富豪ばかりで無く、個人の主婦まで貯金を叩いて買ってくれた様子も書かれていたような記憶があります。
      こういう人達に返さなかったら、今日の日本の信用力はなかったでしょうね。
      城山三郎は、高橋是清自伝を読んでいなかったのかな?

      教訓という高度な概念を持てる人間や民族は少数派ではないでしょうか?

      1. 匿名 より:

        「教訓という高度な概念を持てる人間や民族は少数派ではないでしょうか?」
        これを、
        「恩義や教訓という高度な概念を持てる人間や民族は少数派ではないでしょうか?」
        と、「恩義」を加えます。

        1. CRUSH より:

          城山三郎をはじめ経済理論は、ホビーとして勉強&観察している程度です。

          為替レートのもたらす光と闇は、素人なりの受け止め方としては
          「円高は大リーグ養成ギプス」
          「円安は宇宙船での無重力生活」
          みたいな感じで受け止めておりました。

          普通なら嫌なんですよ、ギプス付で日常生活するの。
          無重力でフワフワとらくちんに生活したいのですよ。

          でもフテ腐らずに円高環境でも頑張れば、コストや品質で実力が磨かれます。
          円安無重力でラクしていると、骨からダメになってしまいます。

          そんな個人的な所見を、伊江太さんが理論家・数値化しようとしているので、ナルホドなぁと膝を打った次第。

          城山三郎は高橋是清を存分に研究なさった上で執筆したと思いますよ。
          また、円高をポジティブに例えていますが、民主党時代の1ドル=80円なんてのは過負荷なので、鍛えるという主旨とはまた別の次元の話かとも思っています。

          1. 匿名 より:

            本来、CRUSHさんのコメントの内容の主旨と、高橋是清の話は直接関係なかったのですが、CRUSHさんのコメントで、高橋是清自伝の内容が感動的だったことを思い出し、先の内容の様な返信を書きました。

            (もし、高橋是清自伝が、是清の直筆であったなら、作家としては、城山よりは上であろうと思わせるような筆致です。城山の作品はかなり読みましたが、感動したものはありません。が、是清自伝は、ダルマと呼ばれた愛嬌が感じられる温かみのある文章です。)

            何故かと言いますと、繰り返しになるかもしれませんが、外債は、英米のユダヤ人富豪たちが、ロシアに住むユダヤ人達がポグロムなどの迫害を受けているので、何とか現地のユダヤ人を救うためにロシア帝国を倒して欲しいと言う気持ちから、外債を買うことで日本を支援した、という面が強かったと言うことです。
            実際、当時の国際的な信用力がほぼ無い日本の外債を買うことは、普通には考えられないことです。
            国債を買った主婦の話は、ユダヤ系の証券会社が、一般人に日本の国債を売り出すときに大々的な宣伝をして、それに応じて一般人が多数購入した事例の一つとして、書かれていたエピソードです。
            ですから、城山三郎の分析の内容だけでなく、日本は国際的な信用力を失わないためと、ユダヤ人の恩義を裏切らない為にも、外債をきちんと償還することは絶対的に必要なことであるという強い信念があったろうと思われます。

            今もいつの時代もそうですが、一般民衆にはそういうことは分かりませんから、暗殺されてしまったのでしょうが、暗殺されるかもしれないことが薄々分かっていても、国のトップ責任者として国債の償還を優先させたということでしょう。
            (最近も、暗殺がありました。)

            城山三郎は、小説家ですから、その辺りの考察なり言及なりがあっても良かったかな、と言う気持ちです。

            金融とは、厳密な通貨の数値的な分析だけで動くものでは無く、ユダヤ人富豪のように同胞を救うためであったり、それに応じた一般庶民の何とかロシアを打倒して欲しいという気持ちであったり、という志(こころざし)的なものでも動きます。実際、ユダヤ富豪たちは、外債が償還されなかったとしても仕方が無いと思っていた節があります。実際、そうでしょう、当時の日本の国債を買うことは、半分お金を捨てても良いという気持ちが無ければ買えなかったと思われます。

            尚、CRUSHさんが読まれたであろう城山三郎の本は、読んでおりません。このコメントは、CRUSHさんが書かれたコメントをベースにして推測を交えて書いております。

            日本は、戦後、東海道新幹線の建設費用を世界銀行から借り、その借入を10年の期限内にきちんと返済したようです。世銀の融資では、期限内に全額返済するのは珍しいという記事を読んでことがあります。
            ただ、第二次大戦後は、流石に100分の1デノミをやって、チャラにしてしまいました。デノミは、国民を裏切ることですが、これをやらなければ、戦後復興は出来なかったでしょう。

            尚、「教訓」の話は、人の恩義に応えるという信義の背景が、当時の外債の償還にはあったのだろうと推測しましたので、隣の国には馴染まない教訓だろう、と感じましたので、付け加えて書きました。
            恩義なら、猶更ではないか、と思いさらに追加しました。

            CRUSHさんのコメントのお陰で、高橋是清自伝を読んだ時のことを思い出し、感動が甦って来ました。
            ありがとうございました。

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