ビッグマック価格という物差しを用いると、「日本円」は「スウェーデンクローナ」と並んで、世界の他の通貨を圧して、「米ドル」に対する相対的価値を増し続けているのではないか――。そんな仮説が出てきました。事実だとしたら、世間で唱えられている「悪い円安」論とは、まさに正反対の話です。「悪い円安」論自体、物差しにすべきでないものを使って事物を測り、誤った結論を導き出しているという典型的な事例なのかもしれません。
目次
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その際、当ウェブサイトの普段からの論調や主張などと整合している必要はありません。筋道さえきちんと立っていれば、極端な話、当ウェブサイトの論考を批判するような内容であってもまったく問題ありません。
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さて、本稿では、おもに公的な統計データをもとに、武漢肺炎(コロナ禍)に関する独自の研究を精力的に当ウェブサイトに寄せてくださってきた伊江太様という読者の方が、「悪い円安」論に関する検証に乗り出したようです。
端的にいえば力作ですが、さっそく、本文を紹介したいと思います(本文は以下に続きます)。
「ビッグマック指数」再考
昨年暮れ、「特殊相対性理論のドル円関係への適用」と銘打ったコメントを、『読者雑談専用記事通常版(2023/12/31)』に書き込んでいます。
内容をかいつまんで言うと、英エコノミスト誌が毎年報告している「ビッグマック指数」、これをユニバーサルな物価、生産力、購買力などを総合した経済力の尺度、「絶対座標系」としたとき、
「円」というローカル通貨で回っている日本経済は「準静止座標系」、
「米ドル」の価値に左右される米国経済は亜光速で移動している「運動座標系」、つまり系内に暮らす限りは気づかすとも、静止座標系から観察すれば価値の尺度が縮んでいる、
そう見るなら、両国の経時的なビッグマック指数の動きの違いが説明できる、なんてあくまで例え話、雑談レベルのものです。
当時は、円ドル相場が近年にない円安に振れる中で、新聞、ネット評論などで「悪い円安」論が喧しかった時期です。このサイトでは、円安、円高の利害得失を挙げながら、現状では日本にとって円安はむしろメリットの方が大きいと、これら大方の論調に反論する記事が、たびたび掲載されていました。
この「悪い円安」論、たいていの場合、書き手は、これが一時的な現象とは見ていないことを暗に匂わす書き方をしています。つまり、「円安」=「日本の経済力の弱体化の表れ」→「長期円安傾向」=「日本経済没落の不可避的過程」と言いたいわけです。
しかし、ずっと円安が進行してきたここ10年の日本社会の有様は、よほど歪んだ目で見ない限りは、「ひたすらに劣化しつつある社会」などという結論には到底たどり着かないとわたしは思っています。
サイト主さんが主張しておられる円安が日本経済に及ぼすメリット。
これが否定しがたい現実となって現われてきている現在、さすがに正面切った「悪い円安」論は下火になってきているようですが、こうした論を唱えてきた経済学者、評論家のアタマの中身、「円安」=「日本経済の弱さの反映」という固定観念まで改まったというわけではなさそうです。
手を替え、品を替え、新しいネタを見つけ出すたびに、クセ球、変化球がこれからも出続けてくると思います。
そもそも、円の対米ドルレートが、彼我の経済力比較の指標となるものなのか。
「そうだ」を疑いのない前提とする限り、米国経済を「世界中から投資マネーが集まり、移民を集め続け、GDPも伸びる一方の、繁栄状態として描き、日本経済の方はと言えば、「生産性は伸びず、GDPは低迷し、優秀な海外人材からはそっぽを向かれる」情けない状態と、なにがなんでも強弁し続けねばならない陥穽に陥ってしまいます。
「悪い円安」論者達が、無理にも日本下げに精を出さざるを得ない理由がこれでしょう。
経済学というのは、社会科学の中でとりわけ数学的頭脳というか、数字の物語る意味を読み取る能力が必要な分野だと思います。その意味で、手もなく論破されてしまうレベルの「悪い円安」論を吹聴している人達の「経済学」への造詣と言ったら、どんなものかなとついつい思ってしまいます。
まえの雑談専用記事への投稿は、その辺の固定観念をちょっとおちょくってやれ、くらいの気分のものだったのですが、その後考えていくと、この「ビッグマック指数」という提唱、軽いノリの会話に格好の面白ネタ以上の、もっと深遠な意味に繋がる概念ではないかと、思えるようになってきました。
これを使うと、どんな結論に行き着くか、改めて書いてみたいと思います。
ビッグマックのお値段は通貨の「購買力」を表わすだけのものなのか?
考えれば考えるほど、ビッグマックという商品に目を付けた「エコノミスト」誌の慧眼には感心するほかありません。
全世界に展開している「マクドナルド」全店の主力商品。すべての工場で同一の食材、同一のレシピで加工され、すべての店舗でほぼ同じ器具を使って、定型化された手順で調理される。
これが長期にわたり変わることなく提供され続けています。
格別に高度な機器もスキルも不要。接客もマニュアル化され、誰もが特段の経験もなしにできる画一的なもので、店頭価格も日本でなら1個450円とお手頃。これにフライドポテトに飲み物としてコーラが付いた「ひるマック」のセットで650円。標準的な都市サラリーマンなら、懐具合を気にすることもなく、腹が満たせるお値段。
つまり、大抵の国で、平均的な都市住民が、日常生活で普通に必要としている物品、それをどれくらいの価格で生産できるか、国ごとの特殊要因を除いて比較参照できる指標があるとしたら、この「ビッグマック」という商品ほどぴったりの条件を備えているものは、そうはないと思うのです。
ビッグマック指数については、各国通貨のもつ購買力を比較するための「共通の物差し」という評価が、一般的です。
しかし、この「購買力」という言葉は結構くせ者で、ビッグマックという商品が富裕層しか口にできない類いのものでないのは、どの国においても確かだと思いますが、それにしても、「今日は時間がないから、とりあえずは腹の足しに」くらいの感覚の国と、「仕事が殊の外うまく運んだから、今日はちょっと張り込んで」で選ばれる国とでは、だいぶ意味合いが異なってくると思います。
この指数はむしろ、ビッグマックという「世界中のどこへ行っても、自国のものと同じと見なせる商品」が、「その国の生産力を以てすれば、どれだけの価格で提供されているのか」、そういう比較の目安になるのではないかと考えます。
ここで言う「生産力」とは、原材料の調達力、製造加工能力、運送費、労働力と賃金、資金調達力、製造者の儲け、更には消費者の購買力、その他諸々の、一国の経済実力とでもお考えください。
ビッグマック1個の値段を、その製造に要する【生産力】の目安とみるとき、「ビッグマック指数」という数値は、単なる通貨の購買力以上の意味を持つと考えてはどうかということです。
ビッグマック1個の値段の日米比較
図表1は、2006~2024年の各年、日本と米国のマクドナルドの店舗で販売されたビッグマックの、米ドル建て価格をグラフにしたものです。
図表1 日米のビッグマック販売価格(米ドル換算の値)の推移
(【出所】グラフ作成に用いたデータは「セカイハブ」より取得)
日本での販売価格は、当然そのときどきのレートに応じてドル換算したもので、数値軸には反映されていません。
グラフが示すところは明らかでしょう。日米のビッグマックの販売価格は、2011年頃一時的に釣り合ったのですが、その前後の時期は常に日本の方が安い。そして、2011年以降現在まで、途中中休みの期間はあったものの、一貫して割安な度合いが増しているのです。
米国との比較で、ビッグマックの値段はこの間に半値にまで落ち、今や日本で1個買えるだけの金額を米ドルに替えても、アチラでは半個分にしかならない。平均すると年に4%ずつ、米ドルの使い勝手が低下しています。これって、その割合で日本円が米ドルの値打ちを上回り続けているって意味なんじゃ?!
別の解釈も可能です。
日本の生産力上昇のペースが米国のそれを年平均にして4%ずつ上回っている。であれば、ビッグマック1個をつくるのに、米国は日本よりますます手間暇掛けざるを得ない。その累積結果が、図表1のような日米の差を生む。
そうとも説明はできるでしょう。
「生産力」の尺度としてのビッグマックのお値段
図表2も日米両国の販売価格の推移。対象期間も図表1と同じです。
図表2 日米のビッグマック販売価格(両国通貨表示)の推移
(【注記】データ取得先は図表1に同じ)
両図の見掛けの歴然たる違いは、もちろん日本でのお値段が「円」表示になっていること、そしてそこには対ドルレートというファクターが、関与して来ることによって生じます。
この図表の面白いところは、グラフにある仕掛けをすると、日米のビッグマックの価格がほとんど同じように推移していることが分かる点です。
その仕掛けとは、米ドル表示の目盛り(左軸)1ドルに日本円80円を対応させることです。こうすると、ビッグマックのお値段は、日米両国とも平均1年に4%ずつ、足並みを揃えて値上がりしていることが、一目瞭然となります。
図表2に収録した2006~2024年の期間、日米とも経済状況は決して一様なものではなかったし、また両国の景況感にはときに正反対とも言える違いもありました。
リーマンショックあり、原油価格の乱高下あり、最近では宇露戦争、日本では失われた30年からアベノミクス、東日本大震災なんて日本に固有の要因もあった。しかし、この斉一的なビッグマックの販売価格の推移は何なんでしょう。
そのときどきの社会、経済的な状況に応じて移ろう景況感。おそらく、図表2に現われたビッグマックのお値段は、そうした表層的なものに乱されることなく、より根底を流れる動きを示しているのではないでしょうか。
それがその社会がもつ「生産力」。
先に述べたように、単なる製造コストいった概念より包括的な、生活に密着した日用品を過不足なく提供するだけの能力、その尺度と考えれば、それが刹那的に乱高下することはないとして良いでしょう。
「たかがビッグマックごときに、なにを大袈裟な」、などという事なかれ。
自由経済の下、市場原理が透徹している社会では、需給関係を通じて、生活、経済活動に必要な個別の汎用品の加工、製造にどれだけの「生産力」を振り向けるかの調整は常に行われているはずです。
これほどまでの長期間、内容も製法も変えず、名を聞けば誰もが知っているほど社会に浸透し、なおかつ世界中で同じ物として通用する。各国「生産力」の比較をおこなう際、これほど価値のある商品は滅多にないと思います。
以上を踏まえるなら、図表2のグラフに顕れた、日米のビッグマックの価格がほぼ直線的と言って良いペースで値上がりしている事実の捉え方としては、両国ともに経済の基調が長期的、安定的にインフレ傾向で推移していると見るのが正しいのではないでしょうか。
つまり、ビッグマック1個のお値段に仮託された両国の「生産力」。それへの需要が十分に高いために、通貨発行量またはその流通速度が増え、「生産力」に対する通貨の額面価値が低下する。
そう見るべきだと思うのです。
日米両国の「生産力」、これを絶対値で評価することはできないけれど、それぞれの通貨で評価した大きさの比でなら示すことができるでしょう。「日本のビッグマック1個のお値段(円)」÷「米国のビッグマック1個のお値段(ドル)」=80で、少なくともここ20年間は一定。
もちろん、米国の「生産力」が日本より80倍も高いという意味ではありません。また、円/ドルという摩訶不思議な関係によってねじ曲げられてのものですから、「一定」=「不変」というのでもありません。
日米の「生産力」と円/ドルレートのパラドックス
図表3は、円/ドルレートの推移です。
図表3 日本円-米ドル為替レートの推移
(【注記】データは「世界経済のネタ帳」(出典:IMF)より取得。グラフでは、80円を1円*として、為替レートを円*/ドル、ドル/円*の2通りの値にして表示している。各年度の値は年間の変動値を平均して求められている(2024年は1~3月))
このグラフにも仕掛けが施されています。単純に円と米ドルの比を掲げるのではなく。日本円の80円を1単位として、米ドルとの比を計算しています。こうした表示方法を採ることで、図表1~3の関係が良く整理されるでしょう。
図表1のグラフは、米ドルを共通の変数とすることで、ビッグマックのお値段が、日本では米国より相対的にドンドンお安くなっていることが分かります。
図表2では、円、ドル、それぞれ双方が実際の支払いに使う現地通貨で比較してみたら、どちらも判で押したようなインフレ的な値上がりで、実質的な価格差なし。
そして図表3では、日本円と米ドルの交換比率が、2011年以降一貫して円安方向に動いていることが示されます。
図表3のグラフには、円/ドル、ドル/円、両方の比率で為替レートの推移を示しています。このうち、濃色で示したドル/円(80円単位)の折れ線グラフを、図表1に見る日米のビッグマックの価格比を示す折れ線と比較していただければ、2つのグラフがほぼぴったりと重なっていることがお分かりになるでしょう。
つまり、図表1に見るビッグマック価格に関する日米両国の関係は、図表2に含まれる数値と図表3に含まれる数値を掛け合わせることで、自動的に出てくるものなのです。
算術的に言うなら、図表1~3の物語るところに互いの矛盾はない。
しかしそれぞれがもっている経済学的な含意を考えれば、これは極めておかしなはなしではないでしょうか。
自由主義経済の下、市場原理によって通貨価値や商品価格の決定が行われているのであれば、たとえば、ビッグマックという商品については、米国マクドナルド社は自国で生産するより安くできるなら、日本から調達することで儲けを増やすことを考えるはずです。
日米双方で生産されているさまざまな財物にこの関係を当てはめるなら、それらによって生じる貿易不均衡は、為替レートを円高方向に振れさせ、円の割安感を解消させるはずです。
円の実質的価値が相対的に低めに見積もられているのであれば、米ドルで円を買う金融取引が増え、結果的におなじく相場は円高方向に向かうでしょう。
つまり、2011年には実際そうであったように、1ドル80円が適正水準であるとするなら、為替レートはその近辺を小幅に上下するだけで、その後10年少しで1ドル=150円などという相場が出現することはないはずです。
このパラドックス的状況がなぜ生まれたか?
その理由は「日米間の商取引、金融取引が、自由主義市場経済の枠組みで行われているものではない」。
その一言に尽きると思うのです。
対米従属は日本の擬態?
政治的意味合いならともかく、米国が経済的に自由主義の旗頭などと考えるのは、あきらかにまちがいだと思います。
旧いところでは、金本位制時代、激烈な通貨切り下げ競争を繰り広げた挙げ句、大英帝国を経済覇権国の座から蹴落とした米国。
西側諸国を糾合したCOCOM体制によって、ソヴィエト連邦を締め上げ、その崩壊をもたらした米国。繊維、鉄鋼、自動車、半導体と、成長する日本に対して、次々に高関税、輸入制限、更には自己規制まで迫って、飽くなき経済覇権への執着を見せつけた米国。そして今、新たな標的としてチャイナにロックオンした米国。
そこには、自由主義経済へのこだわりなど微塵も見られません。
「戦狼」っちゃ、こちらの方が数枚上手という気さえします。
その意味で、理想家というより夢想家肌のオバマが進めようとしたTPP構想から、実利一辺倒のトランプが離脱したのは、当然と言えば当然でしょう。高率関税、輸入制限、更には自国市場からの締め出しなど、米国がもつ経済的武器を自ら手放すなど、愚の骨頂と言うべきでしょうから。
稼ぎの中心を金融にシフトさせることによって、苦境からの脱出を図った英国では、製造業はすっかり色褪せてしまいました。その二の舞を避けるべく日本が取った戦略が、強い「生産力」を保とうとする限り流入して来ざるをえない額以上に、わざわざ上乗せ分を買い取ってまで、ドルを米国に再注入することだったのではと思うのです。
具体的には日本企業の現地進出、米国企業への資本参加、買収、米国公債、社債の買い取りなど。第三国への企業展開なんてのも、迂回策と言えるかも知れません。これやれば、日本から米国へのドル環流の流れが出来上がり、為替レートの米ドル高、円安の傾向が定着する。
日本円の対米ドルレートが80円とほぼ実力通り(?)となった2011年は、東日本大震災があった年。
巨額の復興費用が発生して、流石に米国にまでカネを回す余裕がなくなった結果と考えれば、円安についての上記の説明と整合するでしょう。国民に復興特別税と称する負担を求めながら、その一部を米国に横流ししていたなんてことになれば、言い訳が立たないでしょうから。しかし。それもすぐに元に戻ったようです。
良貨を悪貨と交換するかの如き、この対応。何となく「みかじめ料」という言葉が頭に浮かびますが、必ずしも日本が一方的に損をしているとは言えないかも知れません。
国内の生産力の減退を最小に留める狙いもさることながら、投資先の利潤の回収や配当金の受け取りが、年率4%のドルの実質的劣化を上回るのであれば、少しずつではあっても、損失の回収は図れる可能性もあるでしょうから。
問題は、こうして日本から環流したドルが、一向に米国の「生産力」の向上に寄与していないかに見える点です。
自らの経済的実力に見合わぬ過剰消費体質が改まらない限り、相対的に劣化していく「生産力」と、反対により顕著になっていく「米ドル高」の傾向は、この先も続きそうに思えます。「悪銭身につかず」と言ったところでしょうか。
対米ドルの実質価値の増加率では日本円が多くの通貨を圧倒する
ビッグマック価格という物差しを介して、「日本円」に限らず、他の通貨と「米ドル」の関係がどう推移しているかも、見ておきたいと思います。
図表4は、手近な資料で2011年~2024年のビッグマックのお値段(米ドル換算)が知られる28カ国について、その期間にどの程度変動したのか、米国のケース(4.07→5.69ドル、1.40倍)との比で示したものです。
図表4.世界各国で2011年~2024年の間に生じたビッグマック価格の変動比較
(【注記】ビッグマックの価格は全てドル換算の値で評価している。データの取得先は、図表1、2と同じ。「ビッグマック価格変動比」欄の値は、2024年の価格を2011年の値と比較した上、その割合を米国の価格変動($5.69÷$4.07=1.40)との相対比で示している。日本の場合なら、($3.04÷$4.08)÷1.40=0.53となる。「対ドルレートの騰落率」欄の値は、各国通貨の2011年と2024年の対ドルレートを比較して、その間の上昇または下落の割合を算出したもの。値が1.0超の場合は現地通貨高、1.0未満の場合は現地通貨安の方向に為替レートが動いたことを意味する。データの取得先は図表3と同じ)
例えば日本では、2011年に4.08ドルだったビッグマックのお値段が、2024年には3.04ドルになっていますから、米国と比較した価格変動比は0.53($3.04÷$4.08÷1.40)となります。参考までに、表にはその国の同期間における対ドルレートの騰落率も、分かる国については付してあります。
ビッグマック1個が買える額面でその国の通貨の実力を測れるとすると、この13年間に「日本円」は「米ドル」より2倍近く強くなったと言えるのですが、図表4に掲げた顔ぶれの中には、自国通貨がほぼ同じ程度強くなっていると判定される国が4ヵ国見つかります。
ロシア、スウェーデン、アルゼンチン、ブラジルです。
アルゼンチンの名を出したら、「オイオイ」と言われそうですね。
確かにアルゼンチンペソの対ドルレートはこの間に200分の1にまで下落しているのですが、ビッグマックのお値段が額面で100倍ほどにしか値上がりしていないので、こういう結論になるのです。
ただ、この例は、アルゼンチンがビッグマックの主原料である小麦と牛肉の一大生産国であることと、ハイパーインフレーションの下、国民の食の基本であるこの2品目に価格統制が行われているという、特殊事情が関係していると思われます。
ブラジルはアルゼンチン産小麦と牛肉の最大輸入国ですから、この国のビッグマックの価格が低めに抑えられているのも、同じ事情が関わっていそうです。
ロシアでは、ウクライナ侵攻によって米マクドナルド社が撤退したため、現在では国民がビッグマックを楽しむことはできません。表の数値は2021年のビッグマック価格から算出したものですが、米ドルに対してルーブルの実力が増していたのか、それとも原材料品の統制価格の問題なのか、今はどちらとも決めずに措きます。
より興味があるのが、スウェーデンです。
ビッグマックのお値段の変動も、対ドルレートの騰落率も日本の数値と瓜二つ。
水力発電によって供給される豊富な電力、鉄鉱石などの鉱物資源に恵まれ、製造業の地力も強い。それが恒常的な貿易黒字を生んでいたのが、最近は赤字黒字を往復するようになっている一方、経常収支は変わらず大幅黒字。
なんか、最後の一行、日本の状況にそっくりな気がします。
この国の対米通商、金融戦略についての知識は全くないのですが、その辺も日本と似た者同士ということかも知れません。
ビッグマック価格という物差しを用いれば、「日本円」は「スウェーデンクローナ」と並んで、世界の他の通貨を圧して、「米ドル」に対する相対的価値を増し続けているという結論に至ります。「悪い円安」論とは、まさに正反対の話になってくるのです。
「米ドル」を価値基準に置くことで犯す「愚」
米国や欧州のGDPが伸びていく中、独り日本が取り残されるのは、「その低い労働生産性が原因だ」という多くの経済学者の唱える意見を、たびたび目にします。
この種の言説に触れるたび、「そんなこと、あるわけないじゃないか」と、胸の中で呟いていました。
日本人の平均的に高い教育水準、労働意欲に富み、年金を受け取れる年齢になっても、元気なうちはまだまだはたらきたい人間が大勢を占める。製造や建設などの現場に生きる職人気質、わざとではなく接客の際ににじみ出る「おもてなし」の振る舞い。そんな国の労働生産性が「低い」だって!?
「日本でならビッグマック1個買えるはずの米ドルが、本国では半個分を充当するに過ぎない。10年少し前には、そんなことなかったのに!」。
そう言うのと、「米国でビッグマック1個買えるだけのドルを日本に持ち込めば、今では2個分の円に替えることができる」とでは、同じことを言っているのに、ずいぶん印象が異なります。
ビッグマック1個を価値評価の基準とするか、1ドルを物差しにするかによって、両国の通貨の強さについての印象が正反対になります。
ビッグマックはどちらの国でも売られているが、日常の暮らしでは、円は日本で、ドルは米国でしか、通用するものではないことを考えれば、どちらを基準とすべきか――。
わたしには自明に思われます。
日本の財貨を、相対的に実質価値が低下する一方の米ドルに換算する様なことをすれば、そりゃ。労働生産性は低く評価されるわ、GDPはちっとも伸びんわ、ということになりますよね。
「日本円」に拘ってもやはり見誤りが
図表5は、日本の高度成長期が終わり、西側先進国の一員として安定期に入った頃、1980年から現在までの消費者物価指数(CPI)の推移を見たものです。
図表5 日本の消費者物価指数の動向
(【出所】データは、総務省統計局「消費者物価指数」より取得。2000年の値を100として表示している。図表のグレーで塗った領域は、図表1~3で対象とした期間に当たる)
図表1~3で対象とした期間を図表のグレーで塗ってあります。
長く続いたデフレ不況の終盤、そしてアベノミクスとともにようやく始まった消費者物価の上昇。しかしそのペースは13年間の平均で、年率たったの1%弱です。図表2で見たビッグマック価格の年率4%のインフレ傾向とはあまりに大きな差があります。
ビッグマックのお値段(だけ)が、他の諸物価とかけ離れた動きをしているなら、ここまで縷々書き連ねてきた「生産力」の尺度としてのはなしはどうなるのか。
わたしはもちろんビッグマック推しです。日米の価格差と外為レートの関係を整合的に説明できる物品と言ったら、ビッグマックが最適と思うからです。
では、それ以外の物品の値段が、なぜ日本の「生産力」の状況を的確に反映しないのか。
それにはチャイナファクターが絡んでいるのではないかと思うのです。
あのデフレ不況と言われた時期、日本社会で輝きを放った業態と言ったら、「100均」がその代表。大抵の日用品なら、百円玉1枚で手に入れられる。そして、100均の隆盛はチャイナ抜きにはあり得ないはなしです。
一方で、そのチャイナファクターは、ビッグマックの生産には大して関与しないから、デフレ圧力の影響を受けなかったということじゃないでしょうか。
「日本円」に加わったこのような歪みの表れが、常々当サイトで指摘されている「川下産業」の衰退と「川上産業」の生き残りということだと思うのですが、もう少し積極的な評価もあるかも知れません。
労働人口の増加によってもたらされる人口ボーナスが消滅し、人口オーナス期に入った日本では経済の長期的衰退は不可避、それが「失われた30年」をもたらしたと言われます。
労働人口が減少に向かえば、従来の生産規模を保ち続けるのは無理。
いずれは産業構造の改変は不可避だったでしょう。
それが、外圧によって労働力移動の必要性やその方向をはっきりさせられたとなれば、意識的に行えた分、失業者の増大など派生するさまざまな問題に、即時的に対処できた可能性も考えられそうです。
さらに、ビッグマックの製造販売などは川下産業の最たるものとも言えそうですが、その「生産力」に衰えの兆しが感じられないのであれば、それは川上だけでなく川下においても、日本経済の実力がさほど落ちてはいない証し、とさえ思えます。
「失われた30年」という錯覚
長引くデフレ不況、GDPは伸びず、失業あるいは雇用の質の劣化が進み、庶民の所得も目減りする一方、こうした認識が「失われた30年」の語を生んだのですが、図表2のグラフに顕れた、この期間日本では実質価値において年率4%のインフレを伴う経済成長があったとする見解との落差は、あまりに大きいことになります。
この1990年に始まる期間が本当に「失われた30年」とよばれるべきものなのか、その疑問を以前にも投稿したことがあります。
それまで順調に伸びてきた日本人の平均寿命が、この期間に入っても一切減速することなく続いた事実から、見掛けのデフレ不況が個人の生活の質や社会的サービスの提供に、劣化や減少をもたらしたことは、実質的にはなかったはずとした内容です。
実際、1990年当時と現在を比較して、われわれの生活や社会にこれだけの沈滞、衰退の兆しが現われていると指摘できる具体的根拠を見つけるのは困難だと思います。
既に高い水準にまで達していた生活、社会サービスの質を保ち、更に上昇させようとするなら、それに見合った経済拡大を必要としたはずです。「失われた30年」の間、日本経済は年率4%のインフレを伴う拡大基調にあったとするのは、決して噴飯物の主張ではないと思っています。
デフレ不況の中、さまざまな日本の暗澹たる未来を予言する言説が聞こえてきました。
いわく、人口減少、高齢化が同時進行する日本では、デフレが定着し、産業のイノベーションも期待薄。
いわく、少子高齢化の進展によって、日本の国民皆保険、皆年金の維持は、早晩不可能になる。
いわく、発展を遂げる国々に劣後した日本にとって、経済大国の座から滑り落ちる未来は遠くない。
いわく、食糧自給率の低い日本は、穀物等の基本食糧をチャイナに買い負け、やがて食糧不足に陥る
――等々。
これらの言説は、今すぐそういう事態が起きるとは決して言っていません。
それにしても、何百年先のことでもない。せいぜい今世紀中葉、末くらいがデッドラインでしょう。であれば、それからもう10年以上も経っているのですから、社会が相当そちらの方向に進んでいて然るべきところが、むしろ最近ではそうした言説を耳にする機会が減っていると感じます。
本質的にはドル円関係の見方から発したこの議論、逆の米国の側を眺めたら、もっとはっきりするかも知れません。円安日本が辿るのが没落への道だとしたら、ドル高米国は繁栄へと突き進むことになる、少なくとも相対的には。
元々西側先進国の中で平均寿命が短かった米国ですが、10年前からなんと短縮のフェイズに入り、今では日本との差は6歳近くにまで広がっています。
この一事を以て、日米経済の優劣を論じることなどできはしないでしょうが、国民の生活の質の点では、総合的には日本の方が上だと言って差し支えないと考えます。生活の質の向上に寄与しない「経済的繁栄」というものがあるにしても、そんなものに重きを置く必要なんてあるんでしょうか?
「悪い円安」を唱える経済評論家連と「リベラル」勢力の共通点
バブル経済が最高潮に向かう中、人口に膾炙した「ジャパン・アズ・ナンバーワン」のフレーズ。
振り返れば、米国という国の経済覇権への飽くなき執念を軽視した脳天気さに、苦い思いを禁じ得ませんが、その後の日本経済への大方の見方と言ったら、これはこれで過小評価が過ぎるのではないでしょうか。
バブル崩壊時の円ドルレートは1ドル145円、それが1ドル80円まで円高方向に進んだ後、最近10年余りで1ドル150円の円安に。
円高になっても、円安に振れても、そのときそのときの理屈で、米国経済の強さと日本経済の弱さに結びつける。とくに、円安の持続は日本経済の衰退というストーリーとの相性の良さもあって、あたかもそれが経済的実力をストレートに反映しているかの如き論調が、最近は定着したかの感があります。
【円安】=「弱い円」=「衰えた日本経済」。
こういう等式に絡め取られると、一時的な円安なら輸出競争力の強化によって国内経済にプラスに作用するが、今の衰えた日本経済にそのような効果は期待できない。必須輸入品の値上がりばかりが作用して、国民の懐を痛めるばかり、という「悪い円安」論に繋がってしまいます。
これがまともに事実を見ない議論であることは、サイト主さんが繰り返し述べておられるところですが、簡単な話、この等式に固執する結果が、今や欧州の病人扱いされるドイツ経済が、再び昔日の輝きを取り戻したかに見える日本経済を追い抜いたという、トンデモ主張をして見せなければならない羽目に陥らせるのです。
物差しにすべきでないものを使って事物を測り、誤った結論を導き出す。これはドル-円に限ったはなしではないに思えます。
- 地球環境の破壊に繋がるエネルギー利用はすべて悪。再生可能エネルギー一択であるべきところ、エネルギーミックスなどと妄言を吐く日本は、ケシカラ~ン!
- 地球上に暮らす人間は皆兄弟。困った人達を温かく迎え入れるべきところを、難民の受入れに極めて冷淡な日本は、ケシカラ~ン!
- かりに受入れても、彼らの文化、習慣を尊重せず、日本の社会に合わせて生きろというのは、差別だ、ヘイトダ~!
- 「自助、共助、公助」、日本で当然とされるこの順序は間違い。あるべき社会は順が真逆でなければならない。これでは強者の論理のごり押し、弱者切り捨てダ~!
- 出生時の性別はあくまでカラダの属性の一部に過ぎぬ。上位にあるアタマが判断した「性自認」こそが本質。未開な因習に囚われたまま漫然と続いている日本の社会慣習は、即刻打破すべきダ~!
こんなの、リベラル左派の面々が常々主張する日本下げ議論のほんの一部ですが、美辞麗句で飾り立ててはいても、いずれもアタマの中に出来上がった(吹き込まれた)想念を真理と思い込むことでしか成立しない論理。社会の成り立ちへの冷静な分析と洞察を経て出てきたものではありません。
そんな独りよがりを以て、間違っているのは社会の方だと決めつける。目盛りの精度すら怪しげな物差しを当てて事物を測るという点では、「悪い円安」論と相通ずるところがあるように思えます。<了>
過去論考
正直、ちょっとしてやられた感があります。
本来であれば、ビッグマック指数は当ウェブサイトの本領であるはずですが、先を越されてしまいました。著者自身としては嫉妬心もあり、本稿の掲載を見送ろうかとも思ったほどですが(笑)、いつもの伊江太様のわかりやすい口調もあり、思わず掲載してしまった限りです。
個人的な感想はいろいろあるのですが、これらについては取り急ぎ、本稿では控えておきたいと思います。
伊江太様といえば、これまで武漢肺炎に関する論考シリーズで、独自の視点からかなり興味深い論考の数々を投稿してくださってきたのですが、それらについてのリンクを示しておきます。
数えてみると武漢肺炎シリーズは全部で24稿を数えるに至りましたが、それ以外にも経済的な論考もあり、大変興味深い限りです。
伊江太様から:「データで読み解く武漢肺炎」シリーズ・全24稿
- 『【読者投稿】5類移行の武漢肺炎と超過死亡の関係は?』(2024/04/02 05:00)
- 『【読者投稿】武漢肺炎で若年層も含めて超過死亡拡大か』(2023/08/01 10:00)
- 『【読者投稿】「武漢肺炎」、警戒を緩めるにはまだ早い』(2023/05/30 08:00)
- 『【読者投稿】オミクロン株の病原性は低下しているのか』(2023/02/27 08:00)
- 『【読者投稿】「感染力強烈」?オミクロンの実態に迫る』(2023/02/07 12:15)
- 『【読者投稿】流行開始時点で「感染拡大を抑える要因」』(2022/05/18 08:00)
- 『【読者投稿】日本ではなぜか「自発的に」収束する流行』(2022/05/02 07:00)
- 『【読者投稿】ワクチン接種国「リバウンド」の謎を追う』(2021/11/01 06:00)
- 『【読者投稿】第5波を膨張させた「無秩序な検査拡大」』(2021/10/01 06:00)
- 『【読者投稿】ここまで歪んでしまった武漢肺炎状況把握』(2021/07/27 06:00)
- 『【読者投稿】新型コロナは「人間社会の縮図そのもの」』(2021/06/16 06:00)
- 『【読者投稿】流行状況の把握を歪める「多数の偽陽性」』(2021/05/17 09:30)
- 『【読者投稿】データで読む武漢肺炎「第4波到来せず」』(2021/04/08 07:00)
- 『【読者投稿】武漢肺炎が日本で広まらない理由・その2』(2021/03/29 07:00)
- 『【読者投稿】武漢肺炎が日本で広まらない理由・その1』(2021/03/13 13:00)
- 『【読者投稿】これだけある!「検査至上主義」への疑問』(2021/02/03 07:00)
- 『【読者投稿】「検査数と感染者数は比例する」は本当か』(2020/12/08 07:00)
- 『【読者投稿】武漢肺炎の死亡率はなぜ低下しているのか』(2020/08/19 05:00)
- 『【読者投稿】あまりに不自然な東京都のPCR検査結果』(2020/07/23 05:00)
- 『【読者投稿】武漢肺炎「6ヵ国データ」を比較してみた』(2020/05/30 09:00)
- 『【読者投稿】武漢肺炎で中国はわざとウソを流したのか』(2020/05/17 09:00)
- 『【読者投稿】アビガン解禁で、医療崩壊危惧は遠のいた』(2020/05/10 12:00)
- 『【読者投稿】それでも日本では感染爆発は起きていない』(2020/04/20 05:00)
- 『【読者投稿】武漢肺炎、なぜ日本で感染爆発しないのか』(2020/03/23 11:15)
伊江太様から:経済論考
また、本稿などを読み、自分でも読者投稿に応募したいと考える方は、是非ともお気軽に投稿してください。投稿先は post@shinjukuacc.com で、当ウェブサイト側からの返信が受け取れるような設定にしてくださると幸いです(なお、詳細は『読者投稿の募集と過去の読者投稿一覧』などをご参照ください)。
View Comments (63)
「流石は伊江太さん、分かり易いし面白い内容だなぁ」がひとつ目の感想です。
もうひとつは、マックのアルバイトを主たる収入源として働く人達にとって、この10年間や20年間の暮らし易さはどう変化したのだろうな、と。
原価管理がしっかりしてるだろうから、バイト代も指標として機能するのでは?と言うのがふたつ目の感想です。
ありがとうございました。
>もうひとつは、マックのアルバイトを主たる収入源として働く人達にとって、この10年間や20年間の暮らし易さはどう変化したのだろうな、と。
>原価管理がしっかりしてるだろうから、バイト代も指標として機能するのでは?と言うのがふたつ目の感想です。
具体的には、2、4、6、9、11月は168時間でそれ以外の月は176時間働くとして、得られる賃金の額でどの程度の生活を送れるのか、って感じですかね。
168×5+176×7=2070時間
時給1000円として、
2070×1000=2,070,000円
年収207万円。可処分所得で、150万円程度。月12万5千円程度。
つい、1年程前までは、東京の最低賃金は1000円少し上回る程度。東京以外は、これより低い。
マクドナルドに限らず、時給は、最低賃金より少し上回る程度で設定されるから、上記の、金額の辺りで収入は決まっているでしょう。
現在の東京都の最低賃金は、1135円/時、ですから、上記の計算の1割増し程度。
過去10年20年の最低賃金がそんなに変わらないレベルだから、そんなに収入が増えて良い生活が出来るようになる訳でもないでしょう。
非正規雇用の時給は、最低賃金の辺りで決められるのだから、こんな感じでしょう。
>日本国憲法第二十五条は、(1)「すべて国民は健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有する。」 (2)「国は、すべて の生活部面について社会福祉、社会保障及び公衆衛生の向上及び増進に努めなければならない。」 と、規定して いる。 こ れは国民には生存権があり、国家には生活保障の義務があるという意である。
これからみれば、現在の最低賃金は、この憲法の規定を満たしているかどうかは、疑問かもしれませんね。
まあ、東京都で、1500円以上にはしなければならないようには感じます。
コロナ禍が始まる前に、アメリカで、マクドナルドの時給を15ドル、当時の換算で1500円以上にせよ、というマクドナルド・アルバイターによるデモがありました。それが、今は、時給3000円、20ドル位になっているそうです。
アルバイターの時給を上げたことで、景気の浮揚になったのでしょうか?
しかし、一方、韓国では経済の実力に沿わない、最低賃金上げを行ったせいで、中小事業者がバタバタと潰れたという話もあります。
過去1-2年、東京都の時給を約100円上げて、それが原因で中小事業者の倒産・廃業が増えたというニューズはないようですから、もう少し上げてもいいのか?
いずれにせよ、政府が最低賃金を上げる努力をしなければ、景気は浮揚して行かないことは確かでしょう。
個人的には、最低賃金を更に200~300円上げても、日本経済は大丈夫なような感じはします。理由は特にありませんが、感じです。
はっきり言えば、派遣会社が儲け過ぎ、中間マージンの取り過ぎていると思います。
>年収207万円。可処分所得で、150万円程度。月12万5千円程度。
ありがとうございます。
健康を維持出来る最低限度の生活は出来ても、文化的な最低限度の生活が出来るかは覚束無い額に思えますね。
最低賃金を上げた場合は、雇用側へは人から機械への労働力の移転を進める圧力になるでしょうね。
飲食店なら食券機を導入したり、配膳設備を導入したり。
結果、都市部ではアルバイトの需要が縮小し、『生産拠点の国内回帰』ならぬ『労働力の地方移転』の圧力になる…?
むしろ、失業者が路上生活者となって溢れ出し、都市部の治安や景観を悪化させそうですが。
風呂ウザい、じゃなくて浮浪罪を適用し易くしたところで、今のところ働く事を強制は出来ませんしね。
>はっきり言えば、派遣会社が儲け過ぎ、中間マージンの取り過ぎていると思います。
メキシコでは人材派遣が原則禁止ですし。
メキシコ、人材派遣を原則禁止に
2021年4月21日 10:51
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGN210WV0R20C21A4000000/
人間らしい働き方や豊かな人生に資するか否かで、日本の人材派遣のあり方は反するところ大には感じますね。
変動リスク無しの多国間通貨決済手段と言われていた仮想通貨も結局は投機商品に成下がっていますが、ビッグマックなら本当の決済手段として使えるかも、、、と思ってしまいました。
【アメリカで】
ビックマックを食べるには
『日本の倍近いお金』を出さなきゃならないんだ。
日本のお金『円』は、アメリカのお金【ドル】の約2倍の価値がある...ということか!
ビックマック一個食うには
日本 480円でビックマックが食える
アメリカ 887.64円=156円×5.69ドル
アメリカで日本の金額じゃ日本の約半分しか食えない=アメリカのドルの価値は日本の円の半分!
所々で感じた点について書かせて頂きます。ただし、伊江太さんが書かれたように十分な推敲の上ではなく、一読しただけの感想ということですので、ご了承ください。
>>ビッグマック1個を価値評価の基準とするか、1ドルを物差しにするかによって、両国の通貨の強さについての印象が正反対になります。
これは、大きな気付きを与えてくれて、視点の180度転換をまたらしてくれる一文です。相対性理論的な視点です。しかし実は、これは、自国通貨でも割とやっていることだと思います。
インフレの時は、モノに替えろ、とか、来月から値上がりするから今余計に買っておこうとか。
つまり、通貨とはモノの値段だということで、逆に、「通貨とはモノによってその価値が決められるものだ」ということに気付かせてくれます。
これが、「ビッグマック指数」の意味する所だろうと思います。
次に、
>>この指数はむしろ、ビッグマックという「世界中のどこへ行っても、自国のものと同じと見なせる商品」が、「その国の生産力を以てすれば、どれだけの価格で提供されているのか」、そういう比較の目安になるのではないかと考えます。
ここで言う「生産力」とは、原材料の調達力、製造加工能力、運送費、労働力と賃金、資金調達力、製造者の儲け、更には消費者の購買力、その他諸々の、一国の経済実力とでもお考えください。
ビッグマック1個の値段を、その製造に要する【生産力】の目安とみるとき、「ビッグマック指数」という数値は、単なる通貨の購買力以上の意味を持つと考えてはどうかということです。
>>長く続いたデフレ不況の終盤、そしてアベノミクスとともにようやく始まった消費者物価の上昇。しかしそのペースは13年間の平均で、年率たったの1%弱です。図表2で見たビッグマック価格の年率4%のインフレ傾向とはあまりに大きな差があります。
>>あのデフレ不況と言われた時期、日本社会で輝きを放った業態と言ったら、「100均」がその代表。大抵の日用品なら、百円玉1枚で手に入れられる。そして、100均の隆盛はチャイナ抜きにはあり得ないはなしです。
一方で、そのチャイナファクターは、ビッグマックの生産には大して関与しないから、デフレ圧力の影響を受けなかったということじゃないでしょうか。
この中の
>>ビッグマック価格の年率4%のインフレ傾向
という点については、インフレだとは見ておりません。
どういう訳か、2006年当時、日本のマクドルドは、値段が安すぎたのですね。ですから、日本マクドナルドの業績も悪かった。あの当時は、日本マクドナルドは本業で稼ぐことよりも、直営店をフランチャイジーに転換する(売る)ことで粗利を稼いでいたので、経営が歪だったのです。そこで、社長が変わり、本来の商品で稼ぐ路線に正常化する過程で、安すぎた価格を徐々に上げてきたのです。ですから、物価上昇率1%よりは高い水準で価格が上がって来たのです。ですから、年率4%というのは、日本マクドナルドの利益回復の過程を示しているだけで、物価上昇率との連動がなくても可笑しい話ではなく、日本マクドナルドが、チャイナファクターから外れているということではありません。
ですから、
>>そのチャイナファクターは、ビッグマックの生産には大して関与しないから、デフレ圧力の影響を受けなかったということじゃないでしょうか。
という見解は、間違っているというよりも、無理してこのような見解を持つ必要は無いと思います。
何故なら、
>>ここで言う「生産力」とは、原材料の調達力、製造加工能力、運送費、労働力と賃金、資金調達力、製造者の儲け、更には消費者の購買力、その他諸々の、一国の経済実力とでもお考えください。
という日本全体が、チャイナファクターの影響というよりも、チャイナファクターで成り立っていたからです。(今もそうですが)。ですから、ビッグマックの生産が国内で行われている以上、チャイナファクターは織り込まれています。
>国民の生活の質の点では、総合的には日本の方が上だと言って差し支えないと考えます。生活の質の向上に寄与しない「経済的繁栄」というものがあるにしても、そんなものに重きを置く必要なんてあるんでしょうか?
バブル崩壊時の円ドルレートは1ドル145円、それが1ドル80円まで円高方向に進んだ後、最近10年余りで1ドル150円の円安に。
いやむしろ、この記述を読んで、145円から80円そして150円。このジェットコースターのような中で、余り生活実感が変わらないのは、案外、日本経済は、為替の変動を受けない体質、つまり、内需型の経済であるから、円安円高といちいち騒ぐ必要が無いということなのだろう、と。
つまり、
>>円高になっても、円安に振れても、そのときそのときの理屈で、米国経済の強さと日本経済の弱さに結びつける。とくに、円安の持続は日本経済の衰退というストーリーとの相性の良さもあって、あたかもそれが経済的実力をストレートに反映しているかの如き論調が、最近は定着したかの感があります。
こんなストーリーは、日本経済には必要ないと分かるはずだが、ということですね。
所で、何でも為替換算で考えなきゃいけないのかというのは、以前から感じていたことです。
例えば、ベトナムから働きに来た人が日本で2000万円貯めて、ベトナムへ帰ってからそのお金で家を建てたとします。すると、多分、日本で言えば、5000万円以上に匹敵する家が建てられるのではないかと思います。
ベトナムの方が日本よりも経済力が弱いと思われています。が、実際には、あらゆる物価が安くて、建設資材も安いからでしょう。ですから、生活し易いということがあります。
残念ながら、こういう実態は、ビッグマック指数でも表せませんが。
日本ではアメリカの半値でビッグマックが食べられる。日本はなんて豊かな国なんだ。
アメリカでは、日本の約2倍のお金を出さなきゃビックマックを食べられない。
ということは、
『円』の価値は【ドル】の約2倍!
なるほどアメリカ政府が、インフレを止めなきゃ(=ドルの価値をこれ以上毀損できない⇒ドルを守らなきゃ)と必死になるわけだ。
さすが伊江太さん、面白い論説だなあ、というのが最初の感想です。
ビッグマック指数って、複雑な物価指数より、ある意味庶民にとっては、肌感覚に近かったりする。
円安と言われるけれど、日本の物価はそれほど騰がっていないから、その分実質価値が上昇している=強くなっている、というロジックですよね。
でもね、私はやはり、経済が成長し、物価も安定的に上昇し、賃金も増加し、(ドルベースで)円が強くなっていくのが理想ですね。
日本経済がなかなか低成長から抜け出せない要因はいくつもあるとは思うのですが(最も大きいのは少子化)、その一つに消費者の倹約志向、マスコミの節約礼賛にあるのでは、ないか、との仮説を持っています。ロシアのウクライナ侵攻で仕入原材料があがっているのに、企業は、製品価格に転嫁できず、量を減らして単価を維持する、これってやはり異常ですよね。
まあ経済は複雑な要因がいくつも絡みあうので、何が正解かはすぐには判らないものですけれど。
いずれにせよ、伊江太さん、面白い論説をありがとうございました。そして、これを紹介して頂き、知的好奇心を刺激していただいている新宿会計士さんにも、御礼申し上げたい、と存じます。
>仕入原材料があがっているのに、企業は、製品価格に転嫁できず、量を減らして単価を維持
これはロシアのウクライナ侵略よりずっと前のこと。
ウクライナ侵略のときには量は1/3から4/1に減っていて、かつ、じわりじわりと値上げを繰り返してきた価格は1割どころき2割は値上げ済みでした。
ロシアの侵略でこうしたイジコイ値上げをかなぐり捨て大手を広げて日本中が堂々と値上げ値上げの値上げラッシュ!
超円高だった時メディアがどんなこと言ってたか。
東京都心のホテルのコーヒーが20ドル近くする。日本に出張(海外から)するのはコストがかかりすぎる。
円高は円安の逆なのに決して日本が豊かになったという論調はなかった。
大半のメディアが"報道"などと称して"恣意的な情報発信"をしている/してきた証しがまた積み上がった、といふことでせう
特に直近の20年程はその検証も容易なカタチで証拠積んでるのに、その自覚には乏しいようですから、加速度的に信頼感が低下している実感を持てずオノレラの影響力低下傾向に右往左往しよるげにありまんちゃうけ
知らんけど
おもしろいな。伊江太氏の論考はこれまでほとんど読んでない、わずかな程度に読んだだけだけれど、その僅かに読んだ論考での方法論をざっと見渡すと、前職はおそらく理系の大学教授か研究職だったのだろうと勝手に想像します。
暇を見つけてじっくりと読んでみたい。
円安は悪いと感じている人が大半だと思います。理由は食品を初めとした値上げラッシュにあります。
値上げの理由は大半が材料費の高騰に挙げています。
円安で良いと感じているのは政府(財務省)と大手で輸出メインの企業やインバウンドで潤う観光業界や資産家くらいでは無いでしょうか?
ただし、良い円安と考えれば政府への収入が増えますのでそれを原資に減税をすれば、多くの人が円安があっても値上に対して緩和できるはずです。当然ながら価格が上がると消費税も連動して増えますので減税がさらに容易になるはずです。
それが無いどころかさらに増税方に舵を切ってしまう現政権では到底円安を容認できるわけがありません。
多くの人が自民党もダメだけど野党もとおっしゃいますが、「悪夢の民主党」と名つけたのは、確か阿部元首相では無かったでしょうか?
検証をしていけばもちろんダメ部分も多くあったのかも知れませんが、では自民党が合格点であるか?というとそうでは無いと思います。
田中真紀子さんも言ってましたが、現状を変えるには野党を育てなければならない。それには数年はかかり不満も出るかも知れないが、未来を切り開くためには国民も一緒に勉強しなければならないとおっしゃってました。
ですので野党がへぼなら与党もへぼです。どちらのへぼを選ぶかで未来が懸かっているかと思います。
野党のことでっけど少なくとも「もういっぺん(自民党以外に)やらせてみよか」と思わせる程度の"へぼ"度合いには達してへんと政権交代なんぞ無理ちゃいますか
ソレナリの実績は一応有るクズとワヤクチャにした結果以外見えへん(しかも仲間割れして更に烏合)クズの二択とかキッツイわあ~で"第三極狙い"が雨後の筍的にヒョコヒョコ見えてきとるくらいなし、とりま一番ましに見えるクズが底堅いんはシャーナイわな
"へぼ"自覚しとんやったら選挙民のせいにせんとへぼ脱却クズ返上できるナリ見せれるようにやりゃええのに未だブーメラン振り回しとる様じゃなあ
知らんけど
あー要するに
五十歩百歩のへぼとへぼやったらわざわざ代える意味あらへんやん
と思う人が多そうやけど
といふおはなしです
ネットでは
>「悪夢の民主党」
と
いってたと思いますよ、安倍首相より遥か前から。
よくわかってらっしゃる。円安で困っているのは低所得者、格差拡大で大量発生している下流の人なんです。こう言った人も円安のメリットで賃金が上がる事もありますが、ピンはね後の賃上げなので物価高の補填にはなりません。また元手がないので株やFXで儲ける事もできません。少なくとも円安を応援する人は、こうした人がいる事を理解してませんね。
あなたはわかってませんね。
為替レートは通貨供給量を加味したほうがよいんでしたっけ?
通貨供給量を絞り金融緩和をやめて金利上げに誘導すると円高になりますよ。
そうすると、金利上昇で困るのは低所得者、格差拡大で大量発生している下流の個人、零細事業者です。
そういう人たちこそ金利上昇で借金も返せず、新規借入もできず真っ先に詰む人たちです。
マイナス金利の撤廃以降、市中では既に預金金利も貸出金利も上がっています。
まんさくさんは金利上昇で影響を受ける人たちの心配をしてあげたほうがよいのではないですか?
今の円安は、アメリカが盛大にばらまき過ぎたドルを回収しているから。
ドルの供給量が減り、円の供給量は変化なし。そりゃあ少なくなったドルが高くなりますよ。
ドル高/円安を逆転できるのはアメリカだけ。日本がどうこうできるものではない。
皆様が色々と世の経済について考察される場合の基本、前提条件に付いて認識していただきたい事
渋沢 栄一が初めて渡米した時の感想です。アメリカについて、この国は経済の為に政治がある。そして軍事力も、然るに我が国は、政治の為に経済があると、これを理解すれば全ての霧が晴れるのかと。
米国以外の国は全て、政治の為に経済がある。その政治は、政治家の為にある様な?
この「感じ」、久方ぶりに思い出しました。この世界で生きていて普通に情報に接していて、少々鋭敏な感性を持っていれば、これは、気がつくことですね。しかし、凡人と天才の違いはここですね。渋沢栄一は、それを悟ると、経済に邁進して、日本資本主義の神様と呼ばれる程に、日本の経済発展に大貢献しました。方や、凡人は、ネットのサイトで知識をひけらかす程度です。
それは兎も角、やはり、この地球上でアメリカだけは、歴史上、成り立ちが異なるということなんでしょう。
アメリカ以外は、過去のシガラミの上で国が出来ており、つまり、誰が支配階級になるか?の闘争の果てに国が出来ているのですから、政治=支配であり、全ての事柄は、政治の為に行われることになるでしょう。
方や、アメリカは、改めて説明するまでもなく、建国の経緯は皆知っている通りです。
人民の人民による人民の為の政治ですから、人民は、最大の関心事である金儲け=経済に邁進出来る訳です。逆に言えば、これを阻害する政治は許さん、です。
其の渋沢栄一の、殖産興業、会社設立にしても所詮政
其の渋沢栄一の、殖産興業、会社設立にしても所詮は政治主導であったかと。当時の日本の何処に資本家が居たのかとも言えるが、結果は結果として、あれから時を経て官から民へ、規制緩和と叫びながら、気が付けば政府が一番の大株主で一番の機関投資家とは?天才渋沢栄一にして何思ふ!
文章が長くなると中身が怪しくなると言う法則にはまってますね。ビッグマック指数はネタとしては面白いかも知れませんが、複雑な世界経済を語るには役立たない指標です。
世界企業と言えど、一つの企業の一つの製品の価格で経済を語れる訳がありません。マクドナルドと言えど、地域事に違ったマーケティング戦略をとっているでしょうから、それだけでもデータに揺れが発生します。
>文章が長くなると中身が怪しくなると言う法則にはまってます
こんな法則初めて知りました。
ただ、まんさくさんの文章は、長くても短くても意味不明ですね。
ですから、まんさくさんのコメントは、必ず読みます。
しかし、読んだ後、自分の頭の位置が分からなくなり、元に戻すのに、読んだ内容を一度完全に消去しなきゃなりません。正に、迷宮です。
文章が長いと内容を理解し切れなくなる人が居る、という法則もあるのかな?
ビッグマックの製品自体は輸出入をしてる訳では無く各国の現地生産ですから、各国内の経済状況を示す指数としては適切ですが、為替を含めた各国間の比較に適してはいないというのが伊江太氏の指摘だと思いますけどね。
>良い円安か悪い円安かは、その人の立場によって違います。
良いえんも悪い円安もない。円安は円安でしかない...が、あえていうなら
日本人には
>良い円安
です。特に、住宅ローンを抱えている日本人には、円安になってもゼロ金利政策を続けてくれる日銀様々です。
勿論経営資金を借りまくってる中小企業の社長さんも日銀総裁様々ですよ。
>良い円安か悪い円安かは、その人の立場によって違います。
大韓民国にとっては
>悪い円安
です。通貨安政策は近隣窮乏化政策!
民主党政権時、極端な円高/ウォン安に日本は苦しんだ
現在のように極端な円安/ウォン高は、得てしてデフォルト状態の大韓民国!