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電動キックボードの事業者は現状をどう考えているのか

電動キックボードの事業者は、最近、ルールを守らず電動キックボードを使用するユーザーについて、どう考えているのでしょうか。また、道路工学が専門の准教授は、これについてどう考えているのでしょうか。新たな交通手段の利便性を全否定するつもりはありませんが、やはり、適正なルールの整備や取締、さらには社会的なコンセンサスなどの醸成は必要でしょう。

2024/04/30 16:35追記

サムネイル画像の登録が漏れていましたので修正しています。

自転車は歩行者?それとも軽車両?

改めて指摘しておくと、自転車はもともと「軽車両」扱いであり、もしも自転車が歩道を通行する場合は、歩行者が安全に通行できるよう、最大限に配慮することが必要です。

この点、道路交通法(第2条第1項第11号など)によると、自転車は基本的に軽車両に分類されており、原則として車道を走らなければならないとされ、歩道を走行する際には歩行者優先の原則が適用されることを忘れてはなりません。

ただ、街中で自転車は事実上、歩行者とほぼ同じ扱いで、歩道を自由に走行していますし、「ジャマな歩行者」に向かってベルを鳴らす自転車も多いのが実情です。これなど、長年の慣習もあってか、自転車がほぼ歩行者と同じようなものだと人々が認識しているためではないでしょうか。

この点、従来型の自転車だけだと、そうした理解でもさほど問題にならなかったのかもしれません。

新たな交通手段の利便性と危険性

しかし、『自転車、キックボード、モペッド…法制の見直しが必要』などを含め、以前から当ウェブサイトで議論して来た問題点のひとつが、「新たな乗り物の普及で脅かされる交通安全」、という論点です。

最近だと自転車の性能が上がったためでしょうか、かなりの速度が出せる自転車も多く、街中だと明らかに速度20㎞程度は出ていそうな自転車も見かけ、都内などではうかうか歩道も歩けません。自転車が車道や歩道などを縦横無尽に走り回り、後ろからぶつかられそうになることもあるからです。

とりわけ運転が酷いのが、フード・デリバリー系の事業者などでしょう。システムの都合上、彼らは配達をするのに一刻一秒を争っているフシもあり、スマホを見ながら猛スピードで歩道をかっ飛ばしているケースもあるからです(そのうち幼児や高齢者などを巻き込んだ重大事故が発生しないか、心配でなりません)。

また、最近話題の電動キックボードや「モペッド」なども、乗っている側としては、「自動運転が可能でちょっとラクな自転車」くらいの認識なのかもしれませんが、その速度などを考えると、結構シャレになっていません。

先般から指摘してきたとおり、電動キックボードのうち、歩道を走行して良いのは一定要件を満たす車両を、さらに「低速モード」(時速6㎞以下しか速度が出せないモード)で運転するときなどに限られていますし、さらに一定のモペッドに至っては法的には原付ですので、無免許で運転するのは違法であるはずです。

正直、行政当局には、現時点で違法な乗り物については、ちゃんと取り締まりをしていただく必要がありますし、現時点で法規制が不十分なものについては、あらたな立法措置をお願いしたいところでもあります。

ただし、誤解を恐れずに申し上げるならば、当ウェブサイトとしては、自転車や電動アシスト自転車、電動キックボード、さらにはモペッドといった乗り物を、一律に禁止しろ、などと申し上げるつもりはありません。

道具は「いずれも正しく使えば良い」という話に過ぎないからです。

事業者側はどう考えているのか

したがって、自転車や電動アシスト自転車、あるいは電動キックボードやモペッドなどを巡って、現在何らかの問題が生じているからといって、これらの道具をいっさい非合法化して道路から排除してしまえ、という話ではありません。

あくまでも規制を適正化すれば済む話です。

こうしたなか、キックボードの事業者側が、電動キックボードの問題をどう考えているのかに関し、少し気になる話題が出てきました。オリコンが30日に配信した、こんな記事です。

「ルール守れない人は乗らないで」電動キックボードLUUPへの“厳しい目”強化の意図は? 事業者の苦渋と専門家の見解は

―――2024/04/30 09:10付 Yahoo!ニュースより【ORICON NEWS配信】

オリコンによると、電動キックボードのシェアサービスを展開する株式会社Luupが「春の全国交通安全運動」に合わせ、東京・SHIBUYA109渋谷店の店頭イベントスペースに、「ルールやマナーを守らない人は、LUUPにも乗らないでください」と大きく書かれた啓発広告を掲出したのだそうです。

記事では事業者であるLuup、および交通工学が専門の東海大学の鈴木美緒准教授に、電動キックボードを巡る現状についての見解を尋ねる、というものですが、これによるとLuupの担当者はそもそも同社の電動キックボード利用時には「年齢確認書類の提出」と「交通ルールテストの連続満点合格」義務付けているそうです。

一部の違反者がクローズアップされるがために、正しく利用している方が肩身の狭い思いをされているのではないか。社会からの厳しい目があるということを知っていただくことで、違反は減っていくのではないかと思います」。

その狙いが正しいかどうかはとりあえず脇に置きましょう。

オリコンはこれについて、「本来、事業者側が『厳しく見て』と宣言するのはあまり聞かない話」だとしつつ、「現状に鑑みるとそうせざるを得ない状況」としたうえで、こう述べます。

電動キックボードに限らず、どんな乗り物も最終的には乗る側の安全意識や倫理観に委ねられるところは大きい。それに対して事業者がどこまで責任を負うべきかは悩ましい問題だ」。

鈴木准教授の指摘には頷くところも多い

こうした記事の問題意識に対し、鈴木准教授は現状について、こう指摘するそうです。

『電動キックボードは歩道も走行できる』と誤認識されている方もいますが、厳密には『6km/hモードが搭載された車両のみ』かつ『6km/hモード制限下』かつ『特定の標識・表示のある一部歩道』かつ『歩道の車道側』に限って特例的に走行が認められています」。

要するに、ルールの周知が不十分であり、検挙された人の中にはこのルールを知らず、意図せず交通違反をしてしまっていた事例も多かった、ということでしょう。

やはり、道路の安全のためには、交通違反の責任を事業者に負わせるのではなく、改めて総合的な網をかけ直す、というのが、最も確実ではないでしょうか。

ちなみに記事によると、この「最高時速6km/h」ルールは電動キックボードに限らず、自転車や電動車椅子、シニアカーといった電動モビリティ全般にも、同様に課せられているものだそうで、これは「人間の早歩き程度の速度で、万が一、歩行者がふらつくなどした場合にもよけられるペース」だとしています。

ただ、鈴木准教授が指摘する通り、現実には市販の電動キックボードのなかに、最高速度20km/hを超える車両もあり、これらが一括りに「電動キックボード」として認識されているフシがありますが、これらは本来、原付と同じ扱いが適用されるべきものでもあります。

そして、電動キックボードを巡る鈴木准教授のこんな指摘には、納得する人は多いでしょう。

正しく利用すれば移動手段の選択肢が広がる有用な乗り物だと思われます。現在は都市部で普及が進んでいますが、むしろバス路線が廃止されるなど、移動難民、買い物難民が増えている地方での活用に大いに期待したいところです」。

一方、都市部では自動車移動が減らせることで環境保全に。またシェアサイクル化の促進によって駐輪場が減り、ひいては都市空間の有効活用にも繋がります。ただ、いずれにしても『電動キックボードは長距離移動に適した乗り物ではない』ことは認識しておくべきです」。

この点、電動キックボードが自転車に代替し得るほど優位な乗り物だといえるのかについては微妙なところではありますが、自転車の場合は一定の広さの駐輪場を必要とするなど、案外、都市内交通手段としては微妙なところでもあります。

その意味では、適正なルール整備や見直しは必要ですが、電動キックボードなどの利用に関する社会的コンセンサスが醸成されるのを待ちたいところだともいえます。

自転車が歩道を走らざるを得ない原因は自動車も作っている

なお、当ウェブサイトではどちらかといえば歩行者の立場から、自転車や電動キックボードなどの在り方に苦言を呈することが多いのですが、もうひとつ、自転車の立場から、行政にひとつ苦言を呈しておきたい論点があります。

最近、都内の道路などでは自転車の通行区分が整備されるケースも多く、歩道ではなく車道を走るように意識する自転車も増えていると考えられるのですが、ここでひとつ、大きな問題があります。

とくに幹線道路だと、自動車の路駐が大変に多いのです。

駐車禁止、あるいは駐停車禁止などの区間で、堂々と駐停車している自動車がいると、自転車がその自動車を避けるためは、怖い思いをして車がビュンビュンと飛ばしている道路にはみ出すか、歩行に乗り上げるか、そのどちらかしか方法がありません。

このあたり、罰則を厳密に適用しない日本の警察行政にも大変大きな問題点があると言わざるを得ないでしょう。

新宿会計士:

View Comments (5)

  • 前にも書きましたが何回でも書きます。

    「ことなかれ主義」
    の権化のような警察&国交省が、この件についてだけやたらと敷居が低くて腰も低くて積極的なのが、気持ち悪いのです。

    オラオラと拒絶&禁止ばかり押し付けてきた人たちが、この件についてだけは、微笑みながらモミ手をしながら近寄ってくるような。

    偉そうに語れるほど詳しい訳でもないのですが、チャリやバイクの業界やユーザーのなかで
    「どうしても認可してほしい!」
    みたいな盛り上がりなんかありませんでしたよ。

    なのに役所側が突っ走ったような。
    とにかく、おなしな状況ですよ。

  • 当面の即時対策として道交法を厳に適用すれば良いのね
    現場の警察官がスルーし過ぎ
    「メンドクサ」がっている様にしか観えない
    実際メンドクサいんだろけど

  • なぜこんな危険な乗り物が認可されたのか不思議でならない。
    1、小さな車輪
    2、短いホイルベース
    3、立ち乗りによる高重心
    これらの条件によって安全に乗るのは難易度が高いと思います。
    また走行を想定している道路の端部分は路面状況が悪く、安定性をさらに損います。

    公道を走行するためにには、使用者に学科試験とともに自動二輪の一本橋試験と同等の実技テストをしても良いくらいだと思います。

    認可があっという間に進んだ裏には、なにか利権でもあるのではないかと勘繰ってしまいます。