肉も食えないレバノン兵 恨みつらみはゴーンにどうぞ

以前より当ウェブサイトでは、レバノンがカルロス・ゴーン被告を匿っていること自体、日本の司法に対する深刻な挑戦であると申し上げて来ました。ただ、レバノンは今年に入り、12億ドルの外貨建て国債をデフォルトさせた国でもあります。この点、日本政府は否定しているものの、現地メディアによれば、「日本がIMFによるレバノン支援に反対している」といった報道もあったようです。これに加え、最近ではIMFによる支援が遅れていることで、レバノン経済が混迷の度合いを深めているという報道もあるようです。

「逃亡犯を取り戻すための経済制裁」という考え方

本稿は、ちょっとした「小ネタ」です。

以前、日産自動車のカルロス・ゴーン被告がレバノンに逃亡した件について、当ウェブサイトでは「レバノンへの経済制裁や断交も躊躇すべきではない」と申し上げたことがあります。

ゴーン逃亡、レバノンへの経済制裁・断交も躊躇するな

新年早々、特別背任などで起訴され、保釈されていたはずのカルロス・ゴーン被告が、自身の「母国」(?)であるレバノンに逃亡したという話題が入って来ました。<<…続きを読む>>
―――2020/01/02 06:00付 当ウェブサイトより

この記事に対しては、一部の読者の方からは「あまりにも過激ではないか」という批判もあったのですが、ただ、刑事事件の被告人でもあるカルロス・ゴーンの国外逃亡という行為は日本の司法システムに対する深刻な挑戦でもあり、とうてい看過できるものではありません。

その意味で、当ウェブサイト的には「やや過激かな」と思ったのですが、あえて「国家としての威信をかけてでも、逃亡犯は経済制裁を課してでも取り戻し、刑事裁判を受けさせねばならない」と申し上げた次第ですが、ただ、日本がわざわざレバノンに経済制裁をかけなくても、レバノンは「自爆」したようです。

レバノンのデフォルトと「国債デフォルトの3条件」

武漢コロナ騒動の影であまり目立たないのが、「レバノン国債のデフォルト」という話題です。レバノンといえば日本で刑事訴追されている被告が逃げ込んだ国としても有名ですが、そのレバノンが額面12億ドルの外貨建て債券の償還に失敗する模様だ、と報じられています。<<…続きを読む>>
―――2020/03/09 13:45付 当ウェブサイトより

今年3月、レバノン政府が発行した12億ドルの外貨建国債がデフォルト状態に陥るなど、レバノンは深刻な財政危機にあるようなのです。まさか、日本が制裁をしなくても勝手に潰れることになるとは、世の中よくわからないものですね。

国債デフォルトの3要件

ちなみに金融評論家という立場から見て、このレバノン国債のデフォルトは、「外貨建てで外国市場などで発行されている場合には、たとえ国債であってもデフォルトすることがあり得る」という、非常に良い事例になったとも考えています。

普段から申し上げているとおり、国債がデフォルトするためには3つの要件を満たさなければなりません(いわゆる「国債デフォルトの3要件」)。

国債デフォルトの3要件
  • ①国内投資家が国債を買ってくれない状態
  • ②外国投資家が国債を買ってくれない状態
  • ③中央銀行が国債を買ってくれない状態

この3つの状態が出現しない限り、国債がデフォルトすることはありませんが、外貨建て国債の場合は、たいていの場合、①と③の条件が自動的に満たされてしまっています。

したがって、ロールオーバー(借換)のタイミングで、上記②、すなわち外国人投資家が国債の借り換えに応じてくれない場合には、今回のレバノンのように、たかだか12億ドルであってもあえなくデフォルトしてしまうのです。

なお、この話題については、当ウェブサイトの新刊書『数字でみる「強い」日本経済』にも織り込んでいますので、アマゾンなどで予約済みの方は楽しみにしておいてください。

サイレント型経済制裁

ところで、このレバノンのデフォルトに関しては、今年5月頃に当ウェブサイトで、「レバノンがIMFに支援を要請している(らしい)」、「IMFがその支援に応じるかどうかはレバノンが日本にゴーン被告を引き渡すかどうかで決まる(かもしれない)」、などとする話題を紹介しました。

レバノンとゴーン、そして通貨スワップのチラ見せ外交

レバノンといえば、日産自動車の元CEOでもあるカルロス・ゴーン被告が逃げ込んだ国ですが、それと同時に外貨建国債のデフォルトを発生させた国でもあります。しかも、デフォルトした金額はたかだか12億ドルとのことであり、報道によれば、レバノン政府はこれ以外にも100億ドル前後の金融支援を国際通貨基金(IMF)などに要請しているのだとか。<<…続きを読む>>
―――2020/05/31 09:00付 当ウェブサイトより

当ウェブサイトは今年1月時点で、「ゴーン被告を引き渡さなければ日本は経済制裁をチラつかせるべきだ」、と申し上げて来たのですが、「IMFがレバノンに支援をするかどうかは日本が首を縦に振るかどうかだ」、という点は、まさに形を変えた経済制裁(サイレント型経済制裁)と言えなくもありません。

その意味で、結果的に当ウェブサイトの主張内容もごくたまには当たるものですね(笑)。

あるいは、確たる証拠はありませんが、レバノンがたかだか12億ドルの国債でデフォルトした理由は、武漢コロナ禍の影響もさることながら、圧倒的な資金力を持つ機関投資家(たとえば日本の投資家など)から見放された、あるいは日米欧の証券会社から引受を拒絶された、という可能性もあると思います。

このあたりは個人的に興味深いところです(もっとも、下記リンクでも見るとおり、「日本がレバノン支援とカルロス・ゴーンの引渡しを関連付けている」という考え方について、茂木敏充外相自身は否定しているようですが…)。

茂木外務大臣会見記録(令和2年6月2日(火曜日)14時24分 於:本省会見室)【抜粋】

(問)アラブ・ニュース・ジャパンは、日本が国際通貨基金(IMF)を通じたレバノンへの緊急援助への同意とカルロス・ゴーン氏の引き渡しを関連付けているとの在レバノン日産弁護士の発言を報じています。これは日本政府の新たな立場ということでしょうか。日本は、レバノンに対するIMFを通じた緊急援助とカルロス・ゴーン氏の引き渡しを関連付けているのでしょうか。

(答)レバノンがシリア難民の流入や経済危機、そして新型コロナウイルスの感染拡大に直面している現状や、中東地域全体の情勢に鑑みれば、レバノンを一層不安定化させるような状況を作り出すことは、現時点では避けるべきものだと考えております。

―――2020/06/02付 外務省HPより

肉が食えないレバノン軍

さて、貧すれば鈍する、ではありませんが、レバノンの窮状を巡っては、こんな小ネタもあります。

レバノン軍、すべての食事を肉抜きに 食料価格の高騰で

経済危機が深刻化し、食品価格が高騰しているレバノンの軍当局は、勤務中の兵士に提供するすべての食事で肉の使用を取りやめた。<<…続きを読む>>
―――2020年7月4日 23:07付 AFPBBニュースより

AFP通信によると、レバノンでは1990年に内戦が終結して以来、最悪の景気低迷にあえいでおり、食品価格は昨秋以来、少なくとも72%急騰したそうです。軍では兵士に肉すら提供できない状態にあるのだとか。肉が食えなければ兵隊さんも力が出ないでしょうに、大変ですね(他人事ですが)。

さらに、リンク先記事で興味深いのが、「闇レート」という話です。

同国通貨の対ドル公式レートでは、1ドル(約107円)が1507レバノン・ポンドに設定されているものの、闇市場では1ドルが8000レバノン・ポンド超に急落している。

公式市場と闇市場が併存するというのは、まるで北朝鮮やアルゼンチンのような状態ですね(ただし、貨幣制度が崩壊していないという意味では、ジンバブエやベネズエラよりはマシですが…)。しかも、レバノンは食料品の大半を輸入に頼っているらしく、まさに「中東版ベネズエラ」状態でしょう。

ということは、もしかして「肉が食えない」ことに怒りを感じたレバノン兵が「カルロス・ゴーンや岡本公三らの身柄と日本円の札束を交換しろ」とばかりにレバノン政府を突き上げれば、もしかすると、犯罪者らを日本に連れ戻して日本国内で罰することができるのかもしれません。

ちなみに「食えない」のは肉だけなのでしょうか。スイーツ、コーヒー、コメ、味噌、漬物とかは大丈夫なのでしょうか(おっと、レバノンは中東でしたっけ)。いかんせん、「食い物の恨み」は恐ろしいと言いますからね。

犯罪者を匿う国には然るべき処遇を

もちろん、レバノンという国をしっかり守っている兵隊さんたちが肉すら食べられなくなるという状況は、シンプルに気の毒だと思いますし、当事者としてはおそらく笑い事ではないのでしょう。

ただ、私たち日本人の立場からすれば、犯罪者(厳密には裁判で刑が確定したわけではないので「被告人」)を匿うような無法国家には、それなりの処遇が与えられて然るべきだ、という話でもありますし、逃亡された国の国民という立場からすれば、笑い飛ばしてやるくらいでちょうど良いと思います。

それよりも気になるのは、今年5月末から6月頃に相次いで報じられた、「カルロス・ゴーンの身柄を日本に引き渡さないかぎり、日本がレバノンに対するIMFの支援に反対する」という話題です。というのも、これについてはその後、あまり続報はないからです。

ただ、ボイス・オブ・アメリカ(VOA)の次の記事によると、IMFとレバノン当局の協議はずいぶん難航しているようですし、IMFの支援が遅れるごとに、レバノン経済が置かれた状況も厳しさを増しているようです。

As IMF Talks Drag, Lebanon’s Economy Spirals

Critical bailout talks between Lebanon and the International Monetary Fund may be ‘hitting the rocks,’ according to a former economy minister and central banker, Nasser Saidi. Infighting between the government and the central bank threatens to derail badly needed emergency funding to prop up the country’s faltering economy, analysts say.<<…続きを読む>>
―――2020/07/02 13:07付 Voice of Americaより

この点、VOAの記事で「日本」という単語は出てきませんし、表向き、日本政府は「レバノンをいたずらに不安定な状況に置くのは望ましくない」と述べているため、日本がIMFのレバノンに対する支援を妨害しているという事実は確認できません。

しかし、レバノンが素直に犯罪者の引渡しに応じていれば、少なくとも日本としては、レバノンに対し、もう少し金融支援をやりやすくなるのではないかと思います。その意味で、金融大国である日本をわざわざ怒らせるようなことをするとは、他国ながら愚かな判断だと思う次第なのです。

読者コメント一覧

  1. G より:

    表向きの邪魔はいっさいしないけれど、日本はレバノンの救済には消極的だろうというのは諸外国理解してるので確実にあしかせになっている。
    トルコの危機ではスワップ報道を認めないまでも静観して、飛ばし記事に効果でるくらいにはアシストしてあげた。

    似たようなことが韓国にもおこるでしょう。さすがに日本が韓国のWTOトップ候補の支持をしないのは一目瞭然だし、全会一致のWTOで韓国候補の当選はないでしょう。

    今までは韓国と仲悪そうに見えても国際的な場面ではアシストしてあげたりスワップしてあげたり。なんだ「トムとジェリー状態か」と諸外国に理解されちやってたんでしょうね。
    これからはそれはない。レバノンが一番先に日本の方針転換の犠牲になったかも。

  2. イーシャ より:

    日本は IMF のレバノン支援に反対せずとも、積極的に賛成することもないでしょう。
    犯罪者引き渡しを条件にする必要もないと思います。
    カルロス・ゴーンや岡本公三らが、「レバノンにいるより日本で刑に服する方がまし」と自発的に出頭するまで放置すればよいのではないでしょうか。

  3. 閑居小人 より:

    カルロスゴーンやレバノンの例えでホトトギスを出すのはホトトギスに大変失礼なことですが(会計士様のまねっこをしてみました)

    ①鳴かぬなら殺してしまえほととぎす
    ②鳴かぬなら鳴かせてみせようほととぎす
    ③鳴かぬなら鳴くまで待とうほととぎす

    日本にできそうなのは③かな。レバノンに対してもIMFに対してもレバノンが日本の要求を受け入れるまで放置して欲しい。

    1. 門外漢 より:

      閑居小人様

      ④啼かぬには 啼かぬ訳あり ほととぎす

      というのもありますね。

      1. 閑居小人 より:

        門外漢さま

        >④啼かぬには 啼かぬ訳あり ほととぎす

        この句とっても気に入りました。
        何度も読み返すと詠み人の知性を感じます。自分もこんな句を詠みたいです。

    2. とある福岡市民 より:

      閑居小人 様

       こんなのもありますよ。
       
      鳴かぬなら それもまた良し ほととぎす ー松下幸之助
      鳴かぬなら それでいいじゃん ほととぎす ー織田信成

       自然に任せるだけでも案外なんとかなると思います。自分の蒔いたものを刈り取らない限り、ゴーンが安住の地に落ち着く事はないでしょうから。

      1. 閑居小人 より:

        とある福岡市民さま

        松下幸之助の句は彼の優しさを感じます。
        織田信成の句は現代っ子ですね。

        ゴーンは日本人ではないので日本人らしい矜持はないと思うので、安住の地は恐らくインフェルノかと・・・。

  4. 豆鉄砲 より:

    食べられないものはスイーツと頭にあるあたり、新宿会計士さんは甘いものがお好きなのではないかという考察を投稿する次第であります。笑

    美味しいですよね、甘いもの。

    1. 名古屋の住人 より:

      豆鉄砲様

      横レスすみません。

      名古屋の庶民のソウルフードと言えば、スガキヤのラーメン(330円)。

      名古屋文化圏に生まれ育った人で「スガキヤ」を知らない人は99.9%ないと断言できる(?)チェーン店です。

      そしてスイーツでお勧めしたいのはスガキヤの「クリームぜんざい」(240円)。

      庶民の味方・スガキヤが誇るロングセラーの一品です。店舗で座って食べても良し、テイクアウトも良し。名古屋にお越しの際はぜひお試しあれ・・・(※この投稿は個人の感想です)

      スガキヤ「クリームぜんざい」
      http://www.sugakico.co.jp/menu/sweet_menu/entry-892.html

      1. タナカ珈琲 より:

        名古屋の住人 様

        今から30年ほど前、出張で名古屋駅、東山線の地下街で寿がきやのラーメン食べました。
        感想はしょうゆ味で、ヤスっ〜でした。
        ワタシは味噌煮込みうどんが好きです。

        駄文でした。

        1. 名古屋の住人 より:

          タナカ珈琲様

          コメントありがとうございます。

          スガキヤのラーメン、公式サイトによると「和風豚骨スープ」だそうです。

          しかし、他都道府県の方からすれば「豚骨スープ???」と、「?」が無限大につきそうですが、しょうゆ味でもとんこつ味でもない、「スガキヤラーメン味(?)」として地元民の老若男女を問わず、絶大な支持を集めています。

          スガキヤ よくある質問
          http://www.sugakico.co.jp/faq/entry-450.html

          味噌煮込みうどんと言えば、山本屋本店と山本屋総本家が有名ですが、地元民でもその違いがよくわかりません。どちらも冷凍食品の味噌煮込みうどんをスーパーなどで売っていますが、山本屋本店の方が少し安いぐらいの違いしかありません。

          ググってみたら、こんなサイトがありました。このサイトでも触れていますが、もしどちらに行くべきか?と聞かれれば、「家(職場)から近いところ」「目的地に近いところ」程度で決めています。

          名古屋の山本屋本店と総本家の違いは?
          https://kosodate-journey.com/yamamotoya-honten-souhonke-difference/

          肉も食えないレバノン兵はそっちのけで、むしろ雑談専用掲示板に投稿する内容ですが、どうかご容赦のほどよろしくお願い致します。

  5. りょうちん より:

    >レバノンを一層不安定化させるような状況を作り出すことは、現時点では避けるべきものだと考えております。

    未来的には、もっと追い込んでいくかもよ!

    という文章だと思うのですが、そんな語法をレバノン人は理解できるでしょうかw
    アラブ文化圏の人間に理解できたら、あんな立場にはなっていないですね。

  6. 匿名 より:

    仮に、ゴーンの逃亡自体は本人の責任(又は逃がしてしまった日本の責任)であっての、明らかに法を破って逃亡してしている人物を「匿う」という行為はレバノン政府の責任。
    逃亡犯である事が明らかである以上、身柄の引き渡しは行ってしかるべき。

    「匿う」という行為が正当化されるとしたら、それを行うだけの理由が必要。
    EX)公正な裁判が行われずに、引き渡したら直ちに処刑が行われる場合などの人道的な理由etc

  7. タナカ珈琲 より:

    マサカ、とおもいますが、予行演習。
    ドッカのあの国が経済破綻した時にIMF支援を阻止、、、
    お上品な害夢省には出来ないと思います。
    ゴーン以外に岡本公三もいますし、警察庁、公安調査庁辺りが出てくると面白い結果が付いてくる。
    と、妄想しています。

  8. めがねのおやじ より:

    更新ありがとうございます。

    昨日の読者のコメントで、「圧倒的な資産を持つ経済大国の日本に、逆らってまで韓国を支持する国は無い」という人のがありましたが、形は違えど、日本を怒らすバカモン国家はやはりありました!(笑)

    ゴーンさえ日本に渡せば、多少はイロを付けて有利な話も出来たのに、今のままならIMFに圧力をかけていると見られるかも知れませんネ(笑)。それは無いでしょうが。しかし12億ドルでデフォルトか〜。

    会計士さんのこのゴーンに対する以前の論稿で、『一部の読者の方からは「あまりにも過激ではないか」という批判もあった』とか。いるんですね〜やっぱり(嘲笑)。あ、また幇間のめがねのおやじが来た!って思われるから、辞めとこ。

    でも、ゴーンの国外逃亡は日本の司法システムに対する挑戦です。看過できません。

    で、ベネズエラじゃないレバノンですか、食い物だけが魅力なはずの軍隊で、肉なし。そら、怒るわな。なんなら短気起こして直接、レバノン軍が岡本やゴーンを射殺するか、レバノン政府に突き上げ、食い物と金との取り引き材料にするかですね(笑)

    日本になびいていれば、何も問題なく過ごせたのに。中東人ってホントに分からないです。

    1. 阿野煮鱒 より:

      > 中東人ってホントに分からないです。

      私にとってイスラム世界、なかんずくアラブ世界は精神的距離が遠いですね。もちろん物理的にもですが。

      でもアラブの国々では日本は人気なのです。“Planet Japan(日本は別の惑星のようだ、の意図で)”とか言って持ち上げられます。かつては「おしん」が大流行したり、今でも日本のアニメは人気だし、伝統と先端技術が共存する高い民度の国として認識されているようです。

      そしてお決まりの台詞「日本人はムスリムではないのに、日本ではイスラムの理想が体現されている」

      これ、逆説的に「イスラムだからそんな状態なんじゃないの?」と感じてしまいます。儒教社会が中国や朝鮮を作り出すように、イスラム教があんな国家群を作り出すのではないか、という疑念です。

      でも歴史を振り返れば、十字軍がやってくるまでのイスラム社会は、ギリシャ文明を継承した豊かで平和な社会だったのですよね。文明度においても経済力においても、ヨーロッパを上回っていたと言われています。

      イスラム教=社会を低迷させる教え、ではなく、何かが変質したのだと思いますが、その辺りがピンと来ません。

      1. 墺を見倣え より:

        > 「日本人はムスリムではないのに、日本ではイスラムの理想が体現されている」

        ゴルバチョフ書記長(当時)が、「日本は世界で最も成功した社会主義国だ」と言ったのと似た様な話ですかね。

      2. とある福岡市民 より:

        阿野煮鱒 様

        > 何かが変質したのだと思いますが、その辺りがピンと来ません。

         私は逆で、「変質しなかったから」ではないかと思います。
         圧倒的な力を持つ敵に破れ去った後、どのような態度を取るかでその国や組織の隆盛が変わります。

        1、敵から学習し、アレンジしながら取り入れる

        戦国時代の趙の武霊王、共和制ローマのスキピオ・アフリカヌス、レコンキスタ運動のスペイン王国、三方ヶ原以後の徳川家康、長州藩や明治維新、シャムのチュラロンコーン大王、トルコ共和国のムスタファ・ケマル、戦後の日本、第二次バチカン公会議以降のローマ・カトリック

        2、いつまでも敵、神、同士、運などのせいにして自分を変えようとしない

        ソロモン王の没後のユダヤ人国家、南朝方の公家や武将、分割されたポーランド、室町時代末期の大山崎油座、清朝末期、李氏朝鮮、戦後日本の左派勢力、北朝鮮、シャープ、現代のイスラム諸国やイスラム原理主義

         イスラム教の教えやイスラムの社会情勢は時代に応じて少しずつ変化してますが、基本的なところは7世紀から変わってません。守らなければ神の教えに背く、と考えられたためでしょう。そのため、奴隷解放、西洋の技術の導入、人権意識など、近代化が送れました。その結果、かつては圧倒的に劣位にいた欧米や日本に抜かれ、大差をつけられてました。石油がもたらした富も、すでに存在していたイスラム社会の格差をより大きく、より強固にしてしまいました。
         このような状況で、欧米や日本から学んで改革する事で国力を取り戻そうとする考え方と、イスラムの教えを厳格に守れば7世紀の国力を取り戻せるという考え方の二つが出てきます。インドネシア、ドバイ、20世紀のトルコは前者、イスラム原理主義派は後者、サウジアラビアとイランはその両方といったところでしょう。
         歴史に学ぶのであれば、前者を取った方が賢明かと思われます。ただし、どちらを選ぶかはムスリム次第ですし、その結果発生する困難も受ける必要があるでしょう。

        1. とある福岡市民 より:

          すみません。訂正します。

          誤 近代化が送れました。

          正 近代化が遅れました。

      3. めがねのおやじ より:

        阿野煮鱒様

        お返事遅くなりました。失礼しました。何しろ雨が、、止みましたが。
        阿野煮鱒さんが仰る通りです。アラブ社会ではヘンに日本が人気ですが、「ちょっと、本当に理解出来てるの?」と問いたいぐらいです。

        私の住む街では日本では珍しくムスク?があるのですが、たまに通ると(数年に一度 笑)、あの覆面集団や長いカーテンみたいな服装の方が歩いており、ややキケンを感じます(笑)。

        その人達相手の商店もありますが、チキンなので入りません。日本に在住してても、全く打ち解ける事が無いというか、生活スタイルは変えません。

        僅かな気配すら無いと思います。と言って隣国の輩みたいな悪さをする訳じゃない。まっったく謎です。

      4. 匿名 より:

        阿野煮鱒様

        儒教社会とイスラム社会
        過去を理想化するところが進歩のない共通点カト。

      5. 心配性のおばさん より:

        難しいことは判りませんが、どのような宗教であれ、聖典と呼ばれるものを作るのは、人間です。神様が作ったものではないですよね。であれば、その教義は一人間の頭の範囲から出ることが無い。

        宗教や政治もですが、原理的になるということは、世界を狭くし、人を追い詰めます。追い詰められた人間はそれを他者への攻撃に向けたり、思考停止して身を守ります。本来、人間の精神を救うための宗教が人をこのように追いやるのは皮肉です。

        であれば、自然を神とした原始宗教のほうがよほど健全だと思うのですよ。

  9. 匿名 より:

    キャロル・アントワネット・ゴーン「肉が食べられないなら魚を食べればいいじゃない」
    お粗末でした(ペコリ)

  10. 阿野煮鱒 より:

    私の場合、レバノンと言えば『8時だョ!全員集合』なんですよね。

    ババンバ バン バン バン、アー レバノンノン
    ババンバ バン バン バン、アー レバレバレバ

    デフォルトするなよ!
    借金返せよ!
    肉食べろよ!

    1. H より:

      阿野煮鱒様


      おふざけ珍しいですね
      ドリフ5人に掛けて
      座布団5枚です

  11. H より:

    前にも書きましたが、取引と
    思われるような言動はせず
    黙って制裁でいいと思います

  12. 在タイ隠居老人 より:

     レバノンはイスラーム教国が多い中等地域では少数派のキリスト教徒が多い国ではなかったかと思います。当然、イスラーム教徒も多いですが。
     ちょっと前に目にした記事ですが、これによれば、経済的苦境に陥ったレバノン人の家庭でエチオピア人のメイドを雇い続けられなくなり、エチオピア大使館前に連れて来られて、捨てられるのだとか。大使館も受入をしないので路上生活者になっているとのこと。レバノン人よりもさらに苦しい境遇の人達がいることは胸が痛みますが、恨むならゴーンを恨んで下さい。もっとも、彼女等はゴーンが何者かよく知らないかも知れないですが。

    https://toyokeizai.net/articles/-/130717?ismmark=a

    1. 在タイ隠居老人 より:

      すみません。リンク先の貼り付け間違えました。こちらです。

      https://toyokeizai.net/articles/-/130717?ismmark=a

      1. 在タイ隠居老人 より:

        また間違えました。今度こそ(笑)

        https://www.businessinsider.jp/post-215143

  13. 団塊 より:

    >>刑事事件の被告人でもあるカルロス・ゴーンの国外逃亡という行為は日本の司法システムに対する深刻な挑戦でもあり、とうてい看過できるものではありません。
     と
    いうのは建前ですね。
    (安倍政権には賢い人がいて、ゴーンの逃亡計画の報告に、これ幸いと逃亡を見逃させた…のかな?)
     日産を喰いものにしたゴーンは、フランスとの関係上日本政府にとって面倒この上ない存在であり、ルノーの件もバレてゴーンが邪魔でしかたなくなったお仲間マクロン大統領等フランス上流階級も、レバノンから出られぬのが最悪の罰、無法地帯レバノンの暴徒にでも消されてしまえば、それこそ好都合
     と
    は、両政府とも口が裂けても言えない本音でしょうね。
     まあ、今さらゴーンを引き渡すと言われてもそんな面倒なこと武漢ウィルスがなくとも聞かなかったことにするでしょうね、フランスも日本も。
     勿論IMFの金主日本は、びた一文出しません。
     我が国の莫大な資産を略奪した犯罪者を匿って大きな利得を得た国レバノンに、(IMFを通じてとはいへ)莫大なドルを渡したりしたら、世界中の犯罪国家に舐められるだけでなく、為替市場の超大金持ちらからも舐められる。

  14. はぐれ鳥 より:

    中東イスラム世界の低迷は、上で阿野煮鱒様も仰る通り、イスラム教のせいとばかりは言えない気がします。中世ヨーロッパ社会も、イスラム教社会よりも宗教によってがんじがらめで低迷した社会だったそうです。少しでも異端を語れば火刑になり、些細な教義解釈の違いで血を血で洗う闘争を繰り返していました。ですから、そんな社会から、何故、近代の啓蒙思想や科学(産業)革命が生まれたのか?むしろ、そちらの方が不思議です。十字軍・モンゴル軍によりズタズタにされるまでのイスラム社会の方が、よっぽど自由闊達で、様々な民族を包容し異教徒にも寛容で、思想や科学研究の最先端を行っていましたから。

    ここには、必然と偶然の要因がある気がします。必然の要因とは、イスラム教が本拠とする中東・北アフリカ・中央アジアは乾燥地が多く、自然の生産力ではヨーロッパ・インド・中国のそれに劣ることです。ですから、イスラム社会は早くから文明が開けた地域でもあったのですが、食糧生産に難があり、エネルギ資源(当時は主に森林、石油資源は殆ど知られていなかった)に乏しく、大人口を養うことができず、新たな産業も興りにくく、文明の発展速度が遅くなり勝ちでした。その結果、その後急激に発展した地域(ヨーロッパ社会)に較べ低迷したように見えるのだと思います。

    加えて偶然の要因とは、モンゴル人の世界征服が特にイスラム社会に特に大きな破壊をもたらしたこと。そしてこの時、西ヨーロッパのキリスト教社会はモンゴル帝国の侵略をかろうじて防ぎ得たこと。さらにその後、そのヨーロッパ社会が新大陸を発見した事です。モンゴル軍を水際で防いだこと(それにペスト禍を何とか凌いだこともあるかも)による精神の高揚と、新大陸発見で引き起こされた宗教観・世界観・経済上の衝撃が、ヨーロッパ社会が近代社会へと脱皮する上で大きな契機になったと言われています。

    つまり、キリスト教聖書には新大陸のことが殆ど書かれてないのです(こじつければ全くゼロではないでしょうが)。「それなのに新大陸はあった!」。そのことで、多くのヨーロッパ人はこれをキッカケに聖書・教会の絶対性に疑問を抱くようになり、知識人を先頭にそこから脱することができたということみたいです。その後の世界は、ヨーロッパ人の独り舞台のごとくなりましたから、それに取り残されたイスラム社会は、宗教しか拠り所がなくなり保守化し、進取の気象(気性)を失い、現在のような袋小路に追い込まれたということではないでしょうか?

    私の体験でも、中東アラビア世界はヨーロッパよりも遠く感じられました。それは明治以降の日本がそれだけ西欧化しているということですが、自然環境の違いによるものも大きいです。雨が殆ど降らないので自然の緑がまるでない世界です。半年もいると、地球上には水の流れる「川」が存在することすら忘れてしまいます。とはいえ、人々のものの考え方では、日本人や他のアジア人とそう大きく異なる印象はありませんでした。イスラム教の厳格な戒律とはいうものの、様々な場面でジョークとワイロが通用しますし、飲酒などにも目こぼしがあります。異教徒だからと言って白い目で見られるようなことも無かったです。

    ただ、ある程度教育を受けた人々が誇り高いことは確かです。古代には文明の発祥地であり、中世には世界の中心であり、ヨーロッパ人に文明を伝えたのも我々、との記憶があるからのようです。それなのに、ヨーロッパ人は植民地支配するなど、その恩を仇で返したとの思いも強いようです。現在のレバノンなど中東諸国は、長期にわたる内・外戦で荒廃の極みにあり、そこ生まれた人々は半ば流浪の民と化しています。知り合いにもそんな境遇の人がいますが、「我々は現代のユダヤ人と呼ばれている」と自嘲していました。現在のレバノンは、最早国家の体を為していないと言うべきです。そんな処に、日本が圧力を掛けたりすれば、弱い者いじめとして恨まれるだけで大した国益になるとは思えません。

  15. はぐれ鳥 より:

    中東イスラム世界の低迷は、上で阿野煮鱒様も仰る通り、イスラム教のせいとばかりは言えない気がします。中世ヨーロッパ社会も、イスラム教社会よりも宗教によってがんじがらめで低迷した社会だったそうです。少しでも異端を語れば火刑になり、些細な教義解釈の違いで血を血で洗う闘争を繰り返していました。ですから、そんな社会から、何故、近代の啓蒙思想や科学(産業)革命が生まれたのか?むしろ、そちらの方が不思議です。十字軍・モンゴル軍によりズタズタにされるまでのイスラム社会の方が、よっぽど自由闊達で、様々な民族を包容し異教徒にも寛容で、思想や科学研究の最先端を行っていましたから。

    ここには、必然と偶然の要因がある気がします。必然の要因とは、イスラム教が本拠とする中東・北アフリカ・中央アジアは乾燥地が多く、自然の生産力ではヨーロッパ・インド・中国のそれに劣ることです。ですから、イスラム社会は早くから文明が開けた地域でもあったのですが、食糧生産に難があり、エネルギ資源(当時は主に森林、石油資源は殆ど知られていなかった)に乏しく、大人口を養うことができず、新たな産業も興りにくく、文明の発展速度が遅くなり勝ちでした。その結果、その後急激に発展した地域(ヨーロッパ社会)に較べ低迷したように見えるのだと思います。

    加えて偶然の要因とは、モンゴル人の世界征服が特にイスラム社会に特に大きな破壊をもたらしたこと。そしてこの時、西ヨーロッパのキリスト教社会はモンゴル帝国の侵略をかろうじて防ぎ得たこと。さらにその後、そのヨーロッパ社会が新大陸を発見した事です。モンゴル軍を水際で防いだこと(それにペスト禍を何とか凌いだこともあるかも)による精神の高揚と、新大陸発見で引き起こされた宗教観・世界観・経済上の衝撃が、ヨーロッパ社会が近代社会へと脱皮する上で大きな契機になったと言われています。

    つまり、キリスト教聖書には新大陸のことが殆ど書かれてないのです(こじつければ全くゼロではないでしょうが)。「それなのに新大陸はあった!」。そのことで、多くのヨーロッパ人はこれをキッカケに聖書・教会の絶対性に疑問を抱くようになり、知識人を先頭にそこから脱することができたということみたいです。その後の世界は、ヨーロッパ人の独り舞台のごとくなりましたから、それに取り残されたイスラム社会は、宗教しか拠り所がなくなり保守化し、進取の気象(気性)を失い、現在のような袋小路に追い込まれたということではないでしょうか?

    私の体験でも、中東アラビア世界はヨーロッパよりも遠く感じられました。それは明治以降の日本がそれだけ西欧化しているということですが、自然環境の違いによるものも大きいです。雨が殆ど降らないので自然の緑がまるでない世界です。半年もいると、地球上には水の流れる「川」が存在することすら忘れてしまいます。とはいえ、人々のものの考え方では、日本人や他のアジア人とそう大きく異なる印象はありませんでした。イスラム教の厳格な戒律とはいうものの、様々な場面でジョークとワイロが通用しますし、飲酒などにも目こぼしがあります。異教徒だからと言って白い目で見られるようなことも無かったです。

    ただ、ある程度教育を受けた人々が誇り高いことは確かです。古代には文明の発祥地であり、中世には世界の中心であり、ヨーロッパ人に文明を伝えたのも我々、との記憶があるからのようです。それなのに、ヨーロッパ人は植民地支配するなど、その恩を仇で返したとの思いも強いようです。現在のレバノンなど中東諸国は、長期にわたる内・外戦で荒廃の極みにあり、そこ生まれた人々は半ば流浪の民と化しています。知り合いにもそんな境遇の人がいますが、「我々は現代のユダヤ人と呼ばれている」と自嘲していました。現在のレバノンは、最早国家の体を為していないと言うべきです。そんな処に、日本が圧力を掛けたりすれば、弱い者いじめとして恨まれるだけで大した国益になるとは思えません。・・・・

    1. はぐれ鳥 より:

      管理人様

      最初に投稿したものが1hほど経っても表示されない為、同じ内容を再度投稿してしまいました。どちらか一方を削除お願いします。

    2. とある福岡市民 より:

      はぐれ鳥 様

       その意見も一理ありますが、いくつかお尋ねします。

      > イスラム社会は早くから文明が開けた地域でもあったのですが、食糧生産に難があり、エネルギ資源(当時は主に森林、石油資源は殆ど知られていなかった)に乏しく、大人口を養うことができず、

       おそらく中東を想定しているのでしょう。中東や北アフリカについてはその通りです。ただ、イスラム世界と言っても砂漠の多い中東、寒冷な小アジア半島にクリミア半島、バルカン半島、草原が広がるトルキスタン、インダス流域やガンジス河口、マレー半島にインドネシアと各地に広がってます。地域要因であれば、なぜ中東と北アフリカ以外の地域ではあまり発展してないのか、という疑問が残ります。
       また、石油が発見された後からでも発展する事は可能であり、実際にトルコ、インドネシア、エジプト、ドバイはそうです。イランもそこそこ発展してますね。では他の地域、特にイスラム原理主義がはびこる地域はなぜあまり発展してないのでしょうか。
       また、アジアも日本のように高温多雨な地域はいっぱいありますが、19世紀のうちに近代化を自らの意思で行ったのは日本とタイと清だけ。フィリピン、ベトナム、マレー、朝鮮はなぜそれをしなかったのでしょうか?
       食糧の増産ができるかどうかは非常に重要な要素ですが、気候だけに理由を求めるのは無理があります。

      > モンゴル人の世界征服が特にイスラム社会に特に大きな破壊をもたらしたこと。

       これは事実誤認です。確かにフレグの遠征により、バグダードは破壊されましたが、モンゴル帝国、そしてフレグの建国したイル・ハン国はイスラム諸国に過酷な収奪をしたという証拠はありません。ムハンマドと正統カリフ時代の収奪だって似たり寄ったりです。
       むしろ、イル・ハン国はガザン・ハンがイスラムに改宗して以降、ムスリムを積極的に保護しました。イル・ハン国の後で中東を支配した、チンギス・ハーンの血を引くティムールもイスラムを保護してます。
       モンゴルの支配を受けた地域は近代化が遅れたのは確かですが、ロシアのように追い上げる事はできます。なぜ中東の国々はそれをしなかったのでしょうか。

      > モンゴル軍を水際で防いだこと(それにペスト禍を何とか凌いだこともあるかも)による精神の高揚

       ペストの流行は発祥の地である中国からモンゴルの支配地域を経由して旧大陸各地に広がってます。西ヨーロッパも中東も条件は同じです。
       また、モンゴルのバトゥらは西ヨーロッパに入る「前」に自ら撤退してますから関係ありませんよ。精神の高揚は「勝利」によってもたらされるものです。始めから来なかった場合は「安堵」と「他者への無関心」くらいしかもたらしません。

      > 新大陸発見で引き起こされた宗教観・世界観・経済上の衝撃が、ヨーロッパ社会が近代社会へと脱皮する上で大きな契機になったと言われています。

       新大陸発見は確かに衝撃的なニュースでした。しかし契機となるものはもっと前からもたらされてます。それはペストの流行で多くの人が亡くなった事、中世各地の交易の発展によって他の地域の情報が少しずつ伝わってきていた事です。
       例えば、ローマカトリックは「天地は平らで宇宙の真ん中にある。真ん中にある理由は神が創りし世界であるからだ」と主張してましたが、新大陸発見の少し前には、「地球は丸い」という事が西欧ではとっくに一般常識になってたのです。なぜかというと、「船が沖に出ると、岸からはマストだけが最後まで見えている。地球が平らなら船全体が見えるはず。だから地球は丸いのだ」という船乗りの経験則が交易路を介して広まっていたからです。太陽の回りを回っている、とまでは考えられませんでしたけど。
       中世ヨーロッパって、案外貿易が活発だったのですよ。ハンザ同盟なんかが有名ですね。

      > そのことで、多くのヨーロッパ人はこれをキッカケに聖書・教会の絶対性に疑問を抱くようになり、

       それもあるでしょうけど、それだけでは足りません。
       実のところ、コロンブスのインド(本当はアメリカ大陸)の発見を受けて真っ先に動いたのはローマ教皇・アレクサンデル6世(ロドリーゴ・ボルジア)でして、すぐさま新しい土地の発見を喜び、ほとんどを出身国であるスペインの領土にするよう画策しました。新大陸の発見を教会の絶対性を揺るがす脅威とは全く考えていなかったのです。
       絶対性に疑問を抱かせるようになった直接の要因の一つは、やはりドイツにおける贖宥状(免罪符)の発行とそれに抗議したマルティン・ルターの活動でしょう。ルターの思想を受け継ぐルーテル派は大した勢力になりませんでしたが、これをきっかけに様々な分派が生まれ、カトリックに抗議する(プロテスタントの由来)ようになりました。
       抗議自体はフスやエラスムスもしてたのですが、16世紀に起きた抗議はドイツ各地の領主を巻き込む程になり、血みどろの争いを繰り広げるようになります。

       もう一つの要因は、商業の発展により合理的な思考が生まれた事。
       商人は数字が全ての世界で生きてますので、「世の中お金じゃない」なんてきれい事を言ってはやっていけません。そのため、合理的な思考が自然と身につくようになります。
       ネーデルランドの商人は新しいキリスト教の一派で、「自分の仕事に励む事こそ神の意志に叶う」と主張するカルヴァン派を信じるようになり(←金儲けに励む事こそ神の意志、と解釈したため。金儲けを卑しむ当時にしては斬新な思想)、ついには北部に独立国家ネーデルランド連邦共和国(現在のオランダ王国の前身)を作ります。そして海運業を全世界で展開し、五大陸に領土を持つ大帝国となりました。
       この過程を通じて、カトリックの教えを守っても儲からない事がわかり、自然と新しい思想を受容する下地ができてきます。これは英国の第一次産業革命でも似たような事が起こります。
       余談ですが、商業の発展によって合理的な思考が根付き、新しい思想が生まれた地域がもう一つあります。それは江戸時代の日本です。新しい思想のうち、国学と蘭学は明治維新を生み出す原動力となります。

       オスマン帝国はヨーロッパのような身分制度もなく、商業は発達しており、同じムスリムであれば民族差別もなかったと聞いてます。合理的な思考は備わる下地はあったはずです。それにも関わらず、ヨーロッパどころか日本のようにすらなれませんでした。
       私はオスマン帝国やイラン帝国の統治下にいた人達の話を知りません。この辺の人達の事を知り、ルネサンス以降のヨーロッパや江戸時代の日本と比較する事で、中東が停滞した理由をつかめるかもしれません。

      > 中世には世界の中心であり、ヨーロッパ人に文明を伝えたのも我々、との記憶があるからのようです。

       案外、これもイスラムが衰退した理由の一つなのかもしれませんね。落ちぶれた人は過去の栄光にしがみつくものです。過去の栄光は打ち捨て、自らを凌いだ相手に学ぼうとする姿勢が、復興の原動力となると思います。ムスタファ・ケマルの率いるトルコ、鄧小平の率いる中国、壮年期のマハティールの率いるマレーシアもそうでした。

      1. 成功できなかった新薬開発経験者 より:

        はぐれ鳥様、とある福岡市民様

        「イスラム社会」と、全部、同質化して理解してしまうのは、どうでしょう??

        イスラム世界は、中東の乾燥地帯から、東南アジアの高温多湿地帯まで広がっています。

        近代化の成否は、文化の継続性と思っています。

        日本は、隔離された島国、言語と文化が継続されました。

        欧州、
        ローマ以降、印欧語の世界で他の言語と文化は遮断されました。

        トルコから東は、民族の移動が続き、言語と文化が統一されることはありませんでした。

        インドと一括りにしますが、言語も宗教も文化が多様で、破壊があっても、
        発展的協働はなかったような。

        1. とある福岡市民 より:

          成功できなかった新薬開発経験者 様

          > 「イスラム社会」と、全部、同質化して理解してしまうのは、どうでしょう??

           実は私も思ってました。
           イスラム社会というとサウジアラビア、イラン、イラク、イスラム国をイメージする人が多いと思うのですが、実は結構多様なんですね。
           世界最大のムスリム国はインドネシアですけど、サウジアラビア程ガチガチじゃないし、トルコ、エジプト、ドバイ、モロッコは近代化と欧米との取引でそこそこ発展してるし、マレーシア、インドネシア、バングラデシュの工業製品は日本にもたくさん入ってます。かと思えばシリア、イエメン、スーダン、パキスタンのように混乱してる国もあります。
           そもそも「発展」の定義があやふやです。工業化を意味するなら、イスラム社会にも工業国は半分くらいあるし、G7を意味するなら入ってないのは当たり前だし、OECDを意味するならトルコの方が日本より早く加盟してます。

           ただ、中東諸国が、東アジアや東南アジアのように目立った工業化が進まなかったり、内戦や貧困が続いたりしてるのは何らかの共通点がありそうに思えます。それはイスラムの思想に起因するところもあるのではないか、と考えるのも自然な事と思われます。
           でも実はイスラム諸国もそこそこ経済発展していて、日本にいる私たちに情報が伝わってないだけ、という可能性もありますね。

          > 欧州、ローマ以降、印欧語の世界で他の言語と文化は遮断されました。トルコから東は、民族の移動が続き、言語と文化が統一されることはありませんでした。

           他は概ね同意しますが、これだけは同意しかねます。
           欧州の各国の言語は決して遮断されておらず、むしろ交流しながら今の形を作ってきました。英語やドイツ語の単語に、ラテン語、フランス語、古代ギリシア語由来の単語が多い事がその証拠です。逆にコンピューター関係の用語は英語だらけであり、他の欧州の言語は英語のまま導入してます。英語由来の単語を駆逐する努力を続けているフランス語でさえも。
           文化についても実は地方によってばらばら。イタリア北部のトレンティーノ=アルト・アディジェ自治州はオーストリア領だった歴史が長いので高地ドイツ語圏の文化が濃いです。フランスのアルザス地方はアルザス人がゲルマン民族の一派・アレマン族(フランスでドイツの事をアレマンと呼ぶのはこれに由来)の子孫であるため、やっぱりドイツの文化に近いです。ベルギーに至ってはオランダ系とフランス系が半々なので選挙のたびに揉めます。

           イスラム社会ではクルアーン(コーラン)に書かれた古代北アラビア語が長らく共通語とされてきました。その言葉に外来語英語や近代以降の造語を取り入れて現代にも対応できるように再構築されたものが「現代標準アラビア語」でして、これは今でも中東から北アフリカで公用語となってます。言語はすでに統一されているのです。
           もっとも、現代標準アラビア語は漢文を唐代の発音(漢音)で音読するようなものですので、日常では各地で多様な方言が使われているようです。
           文化もそうでして、ペルシャ湾岸南部は統一国家こそありませんが、文化は結構似てます。
           それにも関わらず近代化が遅れました。発展したところもドバイとオマーンのように差が大きいです。

           つまり、文化や言語の統一は近代化の十分条件ではありますが、必須というわけでもないのです。そうなると工業化、近代化の遅れはイスラムの教義にも理由があるのかもしれません。

        2. 成功できなかった新薬開発経験者 より:

          とある福岡市民様

          「欧州の各国の言語は決して遮断されておらず」

          御指摘の通り。

          欧州内の言語はほぼ同一です。
          遮断されていたというのは、トルコ語とか、日本語とか、朝鮮語とか、
          全く違う言語が入って、既存の文化が寸断されなかった、
          そのような意味でした。

          文化も同様です。
          フランス、イタリア、ドイツ、
          他の文化圏と比較すれば、ほぼ同一。
          異文化圏の日本からの視点にすぎないかも・・・、ですが。

        3. はぐれ鳥 より:

          成功できなかった新薬開発経験

          レス有難うございます。

          >「イスラム社会」と、全部、同質化して理解してしまうのは、どうでしょう??
          確かにご指摘の通りです。イスラム教はサハラ以南のアフリカ諸国にも広まっており、それら、イスラム化の時期や経緯も様々で、地理的・自然環境の異なる国々を一緒くたにイスラム社会と呼ぶのは誤解を招くでしょう。ですから、今回のこの議論でいうイスラム社会とは主として中東及びその周辺の乾燥地帯に展開する国々と考えてください。

          >近代化の成否は、文化の継続性と思っています。
          で、上のように定義し直しても、現代世界でイスラム諸国が「近代化」に遅れていることは否めません。その理由の一つに、貴方が仰るような「文化の継続性」もあるでしょう。現在の中東地域のように戦乱ばかりが続けば、落ち着いて文化経済発展を語る事もできないですから。ただ、それだけでも十分ではない気がします。

          私は、ここは視点を変え、近代化に遅れたイスラム社会が異状なのではなく、近代化というダイヤモンド鉱山(新大陸)をたまたま発見した西欧キリスト教社会の方が普通でなかった(偶然に恵まれた)と考える方が良いのではないかと感じています。ま、トンデモ説に近いですけどね。(笑)

        4. はぐれ鳥 より:

          成功できなかった新薬開発経験者様

          上コメントで、宛先に誤記がありました。
          「成功できなかった新薬開発経験者様」宛です。
          お詫びして訂正します。

      2. はぐれ鳥 より:

        とある福岡市民様

        私も大雑把に理解しているだけであり、その中には事実誤認や誤解もあるでしょう。ですから、理解している範囲で貴方の疑問に答えたいと思います。それ以上は、私の不明と思ってください。なお、今夜は時間も遅くなっているので、最初の一部にのみ回答します。他については明日にしましょう。(老人なので、乞うご容赦www)。

        イスラム社会の発展が停滞したことの「必然的要因」について
        私も、自然条件だけで社会が発展する/しないが決まるとは言っていない積りです。必然的要因とは言いましたが、その条件があれば必ず社会が発展するという意味ではなく、偶発要因に対比する意味での必然です。偶発的と対比するからと言って計画的とは言えないのでこう呼びました。長期傾向として発展を促す要因という程にとって頂きたいです。私はここでは自然条件だけを挙げましたが、中東には、人類文明の十字路にあるという言う地理要因もあるのです。ただこの要因は、様々な文明の成果を総合しやすく社会の発展が促進される半面、他からの侵略を受け断絶・分裂しやすく継続発展が難しいという負の側面もあります。それで必然的要因としては書きませんでした。

        >中東と北アフリカ以外の地域ではあまり発展してないのか
        中世のイスラム社会では、先進地域は中東とイランで、それ以外の小アジア・バルカン半島・大草原地帯などは山がちで交通不便だったり遊牧でしか生きられない土地だったりします。それでもイスラム社会が順調に発展していれば、そのような土地でも、それなりにそこそこ発展したでしょう。ただ、これら地域は小アジア・バルカン半島を除けば分散していますから、相互に影響し合い高度に発展するのは難しかったでしょう。

        >石油が発見された後からでも発展する事は可能であり・・・
        石油が人類社会の主要エネルギ源となって百数十年程度であり、その時間では遅れを取り戻すに十分な時間ではないと思われます。また、石油が中東で発見されたと言っても、その利用は、ヨーロッパ人の利用法・技術で行われました。イスラム社会にはそれを利用できるような技術も産業基盤も殆ど無い処から始めたため遅れているのだと思います。

        >アジアも日本のように高温多雨な地域はいっぱいあり・・・
        そもそも、我々の認識する「近代化」とは、自然の恵みだけに依存した農業社会から、科学技術を利用した工業化社会への脱皮です。後から見ればそれほどの難事には見えなくても、最初にそれを独自に成し遂げるのは容易ではないでしょう。とにかく人類の歴史上、それができたのはヨーロッパで一度きりです。あとはそこからの模倣です。自然条件が整っており、宗教や文化的、他考え方・行動様式的に相似し、そして地理的にも近ければ早く近代化できるというだけだと思います。中には、ジャパンミステリー的な例外もりますが。

        近代科学技術はキリスト文化を基盤に発明されました。故に近代化とは、畢竟キリスト文化、就中、プロテスタント文化に染まる事でもあります。であれば、儒教文化にドップリ浸かった中国・半島・ベトナム、イスラム諸国において、近代化が遅れたのも説明可能でしょう。フィリピンやマレーシアは、それ以前に、歴史的文化蓄積に乏しく、ヨーロッパ文明を表面的に取り入れたにせよ、それを消化し、自分ものにするのに時間がかかっているのだと思います。

        それでは何故、それまで後進地域であったヨーロッパで近代化が始まったのでしょうか?必然的要因だけでは説明しきれません。多分、様々あって複合的に作用しているでしょう。中には歴史の偶然も作用しているでしょう。その一つが、直接的か間接的かは別に、新大陸発見だったと私は考える訳です

      3. はぐれ鳥 より:

        とある福岡市民様

        (続き)
        >モンゴル人はイスラム文化を征服の過程で破壊したが、その後は保護したのに何故停滞したか?
        かの時代にあっては、文化は一度破壊されるとその回復には、数百年以上もかかったということではないでしょうか?さらにモンゴルの支配が終わったあともこの地は戦乱が絶えなかったと思います(詳しくは知りませんが)。ですから、その回復を待つ間に西欧に追い抜かれたという事ではないでしょうか?

        >ロシアのように追い上げる事はできます
        ロシアは地理的にヨーロッパに近接し、近世・近代にはヨーロッパからユダヤ人含む多くの人間が流入し、民族や文化、考え方が似通っていたため近代化が可能だったと思います。地理的近さから言えばトルコあたりでも同様に思えますが、オスマントルコも中期を過ぎたあたりから、東西交易の利益を西欧人に奪われ経済的活力を失い、かと言って、宗教とプライドが邪魔をして西欧に学ぶこともできず、衰退に追い込まれていったのでしょう。

        >モンゴルのバトゥらは西ヨーロッパに入る「前」に自ら撤退してますから関係ありませんよ。
        そうであれば、日本の元寇も、鎌倉幕府の位置する関東から見れば、遠く離れた北九州沿岸でチョットした合戦があっただけに見えますから、似たようなものといえるでしょう。でも、その後ほどなく幕府は亡び、日本人の脳裏には現在もなおその時の恐怖が刻み込まれています。ですから、バトゥ軍がポーランドでヨーロッパ連合軍を壊滅させたことで、西ヨーロッパ人も大きな衝撃と恐怖を感じたはずです。

        >新大陸発見は確かに衝撃的なニュースでした。しかし契機となるものはもっと前からもたらされてます。・・・「地球は丸い」という事が西欧ではとっくに一般常識・・・
        新大陸発見で、ヨーロッパ人が衝撃を受けたのは「地球は丸い」ことが分かったからでありません(私もそんなことは言ってません)。聖書にも地球は丸いと解釈できる記述があるそうですし。コロンブスもそれを信じたが故に航海に出たはずです。衝撃的だったのは、あれほど大きく、珍奇な人・物産に溢れた大陸が、聖書には殆ど記述がないのにも拘わらず、実際に自分たちの西隣(距離は隔たっているが)に在ったという点です。それまで聖書には、宇宙のすべてが書かれていると信じられていたそうですから。

        >絶対性に疑問を抱かせるようになった直接の要因の一つは、やはりドイツにおける贖宥状(免罪符)の発行とそれに抗議したマルティン・ルターの活動でしょう
        新大陸発見が上記のような形で、ルターのような先覚者に、聖書への絶対性について疑問を抱かせるきっかけになったと考えれば、ここでも、間接的ではありますが、新大陸発見の影響と言えなくもないですよね?時期的にも、新大陸発見1492年、宗教改革開始1517年で符合しますし。

        >もう一つの要因は、商業の発展により合理的な思考が生まれた事
        商業が合理的思考を生むだろう事に異存は在りませんが、イスラム文化も元来は商人を基盤としたものですし(ムハンマドは商人だったはず)、中国なども古くから商業が発達しています。ですから、この要因がヨーロッパでだけ特に作用した特別の理由があれば別ですが、他の文化との比較対象の場合には除いて考えても良いのではないでしょうか?

        >オスマン帝国はヨーロッパのような身分制度もなく、商業は発達しており、同じムスリムであれば民族差別もなかったと聞いてます。合理的な思考は備わる下地はあったはずです。それにも関わらず、ヨーロッパどころか日本のようにすらなれませんでした
        ザックリ言って、かつてのイスラム社会は、ユーラシア大陸の中心にあって東西貿易の利益を独占し、それを原資に繁栄していたのだと思います。それが、新大陸発見に前後して海路での交易ルートが開発され、その独占構造が崩れ、経済成長しなくなり繁栄も失われていったのだと思います。で、ヨーロッパの発展は、そのイスラム社会の権益を横取りしただけでなく、新大陸とアフリカとを結びつけその資源を利用できたことにあるでしょう(現在に連なる海洋を通じたグローバル経済の始まり)。さらにその過程で、最初は未知の土地発見、次いで未知の科学技術発見への「投資」→「リターンによる経済成長」→「再投資」→「さらなる経済の拡大」という好循環を見つけた事も大きいでしょう。即ち、イスラム社会での科学技術研究は趣味の域を出ず、社会・経済には大して影響を与えるものではなかったのに対し、ヨーロッパのそれは大いに経済成長を促すものであった点が現在の差になっているような気がします。無論、細かなことを言えば、多々あるでしょうが。

        1. とある福岡市民 より:

          はぐれ鳥 様

           お返事ありがとうございます。
           んーーー賛成半分、反対半分ですねえ。まあ、私も専門家ではありませんので、何が正解なのか断言はできません。
           商人の「物事をありのままに見る」という姿勢が合理的思考と科学の発展に繋がった、と私は考えますが、確かにこれだけでは弱いのも確かです。スペインやポルトガルでは発展してませんので。北イタリア、フランス、英国、ドイツ、オランダ、ベルギーといった国で発達したのは他の要因もありそうです。

           それともう一つ、中東の国で工業化、近代化が進んだ国とそうでない国の違いは、その国が他国から本気で学ぼうとする姿勢があったかどうかが決めてるのではないかと考えてます。例え模倣であったとしても、外国から技術を導入したり投資を呼び込んだりする事を本気でやった国はトルコ、イラン、ドバイ、エジプト、モロッコ、マレーシア、インドネシアのように発展し、せっかくオイルマネーが入っても王族やアラブ人で山分けして産業振興に使わない国はあまり発展してないのではないかと。偏見かもしれませんけど。

           気になった事を少し書きます。
           
          > かの時代にあっては、文化は一度破壊されるとその回復には、数百年以上もかかったということではないでしょうか?さらにモンゴルの支配が終わったあともこの地は戦乱が絶えなかったと思います

           いいえ、そもそもモンゴルが文化を破壊したという証拠がありません。敵対した国には容赦なく略奪しましたのでそういうイメージがどこの国でも先行してますが、実のところ、モンゴルのせいでイスラム文化が断絶に追い込まれたという証拠もないのです。むしろモンゴルは交易を重視しており、イスラム商人や文化の担い手を保護してます。

          > ロシアは地理的にヨーロッパに近接し、近世・近代にはヨーロッパからユダヤ人含む多くの人間が流入し、民族や文化、考え方が似通っていたため

           それを言っちゃうとトルコも同じですね。実際、トルコはオスマン帝国末期からムスタファ・ケマルの時代にかけて近代化に成功してます。
           
          > 日本の元寇も、鎌倉幕府の位置する関東から見れば、遠く離れた北九州沿岸でチョットした合戦があっただけに見えますから、似たようなものといえるでしょう。

           これだけは明らかに違うと申し上げます。鎌倉幕府も朝廷もちょっとした合戦どころか、本気で国難と思ってました。それで国内の反対派を滅ぼしたり押さえつけたりして、挙国一致体制で元と戦いました。
           その一方で、西ヨーロッパに取ってモンゴルの侵入は恐怖だったかもしれませんが、ルーシやポーランドと違い実際には戦ってません。あくまで対岸の火事であり、恐怖や安堵以上のものはもたらしてません。西ヨーロッパに衝撃を与えたのはモンゴルよりもペストの大流行の方です。

          > 新大陸発見で、ヨーロッパ人が衝撃を受けたのは「地球は丸い」ことが分かったからでありません(私もそんなことは言ってません)。

           私が言いたかったのは、教会の言う事と現実は違うという情報が、新大陸発見以前の西ヨーロッパに幅広く伝わっていたという事です。その情報が広く伝わる程に、中世は陸上海上の交易が活発であったという事です。
           新大陸発見が直接的間接的にカトリックの絶対性に疑念を持たせた、というのは根拠が薄いです。新大陸発見をきっかけにルターが教会の絶対性に疑いを持ったという証拠もありません。

           近代化、工業化には資本の蓄積が必要というのはその通りです。その意味で近代化の走りをやった国は北ネーデルランド、つまりオランダです。あんなに小さな国がそれを果たせたのは、交易路の中心が北イタリアから16世紀にネーデルラントへ移ったという下地があります。それは新大陸からの金銀流入だけでなく、アフリカ周りでインドや東南アジアの物品が伝わってきたというのも理由です。ヴェネツィアやジェノバよりアントウェルペンやアムステルダムの方が近く、しかもスペイン領でしたので。
           新大陸発見だけを取り上げるのは過大評価ではないでしょうか。アフリカ・アジア方面の交易路も同じくらい評価するべきと考えます。そして「だから新大陸発見が教会の絶対性を揺るがせた」というのは無理があります。昨日も書きましたが、新大陸発見に際してどこよりも早く歓迎したのはカトリックですから。
           そもそも新大陸発見がカトリックを揺るがしたなら、ラテンアメリカでカトリックが普及した理由を説明できなくなります。カトリックは新大陸発見を脅威に感じるどころか、新大陸での布教にとても熱心でした。むしろカトリックにとって脅威だったのはルター派やカルヴァン派のプロテスタントの拡大です。
           
           もっとも、科学の研究や工業化はカトリック、プロテスタント両方の国で起きてます。ただ、どちらというと宗教の勢力があまり強くなく、自由に物事を研究、実践できる地域(具体的にはオランダ、名誉革命後の英国、帝王の保護を受けたウィーンやパリ)からスタートし、それが他の地域に波及したと考えられます。
           それだったらイスタンブールで起きてもいいはずなのですが、それがなぜできなかったかはわかりません。オスマン帝国の国際関係やイスラム教の影響がないとは言いきれません。

        2. はぐれ鳥 より:

          とある福岡市民様

          >モンゴルが文化を破壊したという証拠がありません
          歴史は実験できませんから、記録・考古学的証拠でもない限り、断定的な事は言えません。さらに言えば、たとえ記録や遺物が残っていたとしても、その捏造や歪曲の可能性は否定しきれません。なので、どうとでも言える面はあります。私は専門家でもないので、Wikiを頼るしかないのですが、それによると1258年、フレグ率いるモンゴル軍がバグダッドを攻略、市内に所蔵されていた何十万冊もの学術書が燃やされたり川に捨てられたとか。死者は数十万とも100万以上とも言われますから、その中にはイスラム文化を担っていた人も多数いたでしょう。また時期的にこれより前ですが、1219~1222年のホラズム・シャー朝征服でもブハラやサマルカンドで似たような大破壊・大量殺戮があったようですね。確かに、モンゴル人は実益を重んじますから、利益を生む商人を殺したりはしなかったでしょうが、すぐには役に立ちそうもない、数学や科学の研究には関心が薄かったのではないでしょうか?

          >新大陸発見が直接的間接的にカトリックの絶対性に疑念を持たせた、というのは根拠が薄いです。
          これは私の憶測というか思い付きで、新大陸発見が「全て」と言っている訳ではなく、様々あるうちの「一つ」ではないかと言ってる積りです。過大評価と言えばそうかも知れません。学問的厳密さに欠けるというのも承知の上です。ただ、学術的な場では確たる証拠がない憶測でものを言うにはマズイですが、このような場で談話のネタとして言う分には構わないと思います。

          >鎌倉幕府も朝廷もちょっとした合戦どころか、本気で国難と思ってました。
          福岡筥崎宮に掲げられたご宸筆の「敵国降伏」扁額を見た記憶もありますし、鎌倉幕府・朝廷が真剣だったことは知っています。ただ、実際の戦闘は北九州でしか行なわれておらず、TVなど無い時代、他の地域の大多数の一般民衆レベルでは話を伝え聞くだけではなかったのでしょうか?それにも拘わらず、現在でもなお、一般日本人レベルでも深く記憶に刻まれている位ですから、西欧人がモンゴル人と直接戦わなかったにせよ、北九州以外の一般日本人同様、大きな恐怖を記憶していてもおかしくはないと推測した訳です。無論、ペスト禍はより身近ですから、それへの恐怖がより大きかったでしょうが。

          >それだったらイスタンブールで起きてもいいはずなのですが、それがなぜできなかったかはわかりません。
          新発見や新発明が、単に好奇心を満足させるだけでなく、金儲けにもなるということを当時のイスラム社会は実証できなかったことも要因でしょう(これも憶測)。処が西欧社会では、新発見はカネになるという事を新大陸からの金銀や他の財貨で実証できたのです。それが好循環を生むキッカケとなったのではないでしょうか?そのことは、後でイスラム社会も知ったでしょうが、時すでに遅く、西欧勢力に抑え込まれており、それを実際に生かす術がなかったのかも。

          いずれ、ここまでの議論でもなお、イスラム社会の近代化遅れの理由について、ピッタリするものは見つけ出せてない感じですね。この理由が分かれば、日本だけが、欧米諸国を除く他の国々に先んじて近代化できた理由も分かるような気がします。

  16. ポプラン より:

    横レス(?)です。
    誤解を恐れずに単純に言えば、「利子」不労所得を認めるかどうかで発展が規定されたのではないかと思います。
    中世のカトリックは、利子を認めずに金貸しはユダヤ教の専売特許だった。ヨーロッパは中世期にその考えを天国と地獄という二項対立に煉獄という贖罪の場を与えることから許容し始めて15世紀にはイタリアに銀行ができる。イスラム教は未だにイスラム銀行なんてヨーロッパの中世レベルのことをしている。イスラム社会は金融システムが中世なので、社会が中世レベルになっている。
    あとユダヤ教とキリスト教、イスラム教の違いは、貨幣をユダヤ教は神に近いもの。キリスト教とイスラム教は神の対極にあるものと思っているからという評論があったと記憶しています。
    宗教と金融についてむかし調べた記憶ですので間違っていたらすみません。

    1. とある福岡市民 より:

      ポプラン 様

      > イスラム社会は金融システムが中世なので、社会が中世レベルになっている。

       そう思うでしょう?実は全然違ってまして、西洋の金融システムとあまり変わらない仕組みがあるのですよ。
       利子は取ったらダメなのですが、出資、買取、リースは認められてます。詳しくは「イスラム銀行」で検索して調べてみて下さい。
       一例を挙げると、100万円を借りたい時に担保になるものを持ってイスラム銀行へ行くと、銀行はその担保を100万円で買い取ってくれます。ただし、必ず契約書を書き、期日になれば借りた人はその担保を110万円で買い戻す事になります。こうして、10%の利子で貸した事と同じになります。
       頭のいい人はどこの国にもいて、いかに戒律に背かずにビジネスをやれるか考えているのだな、と感心しました。ただし、イスラム銀行は物を保管するコストがかかるので、利子を取る銀行より返済の負担が多くなる傾向があります。利子を取る銀行の方が良心的では、と思う事もあります。

      1. ポプラン より:

        とある福岡市民 様

        一応調べたときに現代におけるイスラム銀行調べています。
        読んだ文献は、好意的に書いてましたが、中世レベルじゃんと思いました。
        利子取らないと決めた宗教の無茶がシステムをここまで歪めるかという感想です。
        その時にイスラム世界は、「織田信長」が出現して「比叡山焼き討ち」しないと本格的はってが起きないのではと思いました。

        1. ポプラン より:

          本格的発展の間違いです。
          柔軟な金融体制って大事だなと思いました。良くも悪しくもロスチャイルド家は人類史上永遠に語られる存在なんだと思います。
          あと中世ヨーロッパ初期は、香辛料を貨幣代わりにしたりして今もイタリアでパルミジャーノチーズを銀行の金庫に入れてあるのはその名残かと思いました。

        2. とある福岡市民 より:

          ポプラン様

           買取買戻しによる融資形態(ムラーバハと言います)は独特ですが、出資(ムダーラバ)やリース(イジャーラ)は全く中世的ではなく、現代日本でも普通に行われてます。出資による資金集めについては日本より中東の方が早いかもしれません。日本人から見れば奇異に見えますが、私は歪んでいるとは思いません。ムスリムに取ってイスラムの教えを守る事は自分や家族の命を守る事よりも大事ですから。
           事業活性化に必要な資金集めと戒律遵守を両立するため、ムスリムの頭がいい人達が腐心した事がうかがえますので、むしろ肯定的に評価してもいいでしょう。
           ただし、利子を取る銀行よりも買取や担保の管理コストがかかる事、そのために返済額が高くなる事、銀行の破産リスクが高くなりがちであるという欠点はあります。そのコストやリスクは欧米や日本では看過できないものでしょうが、ムスリムは戒律を守るための安心料と割り切ってるようですので、別に構わないと思います。
           
           欧米の銀行もイスラム銀行に出資してるところがあります。中東では会社が銀行から借りた巨額の借金を踏み倒した時、裁判所が「利子を取る取引はイスラム法に反しており、契約自体が無効。返済義務はない」という判決を出す事がしばしばです。そのカントリーリスクを軽減するためでもあります。

  17. すまないさん より:

    記事更新ありがとうございます。

    レバノンとその国に居るであろう問題ある人達の関係について
     ・泥船に乗ったネズミの様に思いました。
    一緒に沈むもよし、次の船に移るもよし
    ネズミとしては猫に捕まったり、食べられたりするかもしれないです…
    ケージに入れられるか、猫に食べられるか、野垂れるかは今後のお楽しみかと思います。

    あと、船の修理にはお金が一杯要るので、腐ってる・痛んだ部分だけを直すのか
    泥船から木造船に変えるのかは船頭次第

    一番良いのは「ネズミをケージに入れて走らせ続け、その労力でお金を借りて船を買い替える」でしょうか
    ちゃんとしてれば船は良くなるんですけどね。
    拙い文章ですみません。駄文にて失礼します。

  18. みったぁ より:

    もともとレバノンはマロン派(現在は東方典礼カトリック教会の一部。非アラブ系)とドゥルーズ派(一応イスラム?アラブ系)が拮抗する土地でした。
    イスラエル建国によりパレスチ(イスラム スンニ/シーア アラブ系)が流入してバランスが崩れ、レバノン内戦からシリア(支配層はイスラム?アラウィ―派アラブ系 全体的にはイスラムスンニ派アラブ系)の介入を招いています。
    あそこって民族・宗派が入り乱れ過ぎている上に、内戦終結を目的に大野合しているので、中央政府はろくすっぽ機能していないと思っています。
    調整を進められるようなトコロではないのではないでしょうか。

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