与信管理ができていない中華金融:カネ借りる側も狡猾

世界最大の債権国は「中国」ではなく「日本」です

中国のスワップ外交・金融外交は、はたしてうまくいっているのか――。これについて調べれば調べるほど、「あり得ない」と言わざるを得ません。とくにスワップを巡っては、いわゆる「与信管理」がまったくなっていないからです。考えてみれば、中国からカネを借りる国は「困っている国」ですが、これらの国はときとして狡猾です。スリランカのように中国から山ほどカネを借りたあとで日本などの国際社会を関与させることで、「債務再編」、つまり借金の棒引きを狙うというパターンもあるからです。

スリランカと中華金融

スリランカは中華金融の「被害国」?

中華金融の問題点のひとつは、その内容や条件の不透明さに加え、相手の債務償還能力を無視した無理な条件でおカネを貸し付け、相手が返せなくなったとみると借金のカタに相手の資産を取り上げるという強引な手法にあります。

その典型例が、スリランカでしょう。

スリランカと中国・債務の罠:人民元経済圏の落とし穴』などでも取り上げたとおり、中国が「一帯一路構想」を推し進めるなかで、中国の援助で建設されたスリランカ南部のハンバントタ港が2017年12月、中国企業に引き渡されるという出来事が発生しました。

たとえば2018年1月5日付の産経ニュースの記事によれば、スリランカ国営企業は港を中国に引き渡す代わりに、2億9200万ドル(当時の為替レートで約330億円)を受け取ったとされています。

まるで高利貸し 借金のカタでスリランカの港を奪った中国のやり口とは

―――2018/1/5 09:00付 産経ニュースより

産経ニュースの記事ではまた、両国の国営企業が2017年7月29日、スリランカ川が中国側に港の管理会社の株式の70%を99年間譲渡する11億2000万ドルの取引の合意文書にも調印していた、などともしています。

「株式を99年間譲渡する」のくだりについては、日本語表現としてやや不自然ですが(99年後に買い戻す特約付きで株式を譲渡した、という意味でしょうか?)、スリランカ側がこうした契約を取り交わした理由は、「最高6.3%にものぼる高金利によりスリランカ政府が債務返済に窮し」たからです。

いわば、スリランカは中華金融の「被害国」のようなものだ、という言い方もできるのかもしれません。

コロナ後にデフォルトしたスリランカ

ちなみにこの「ハンバントタ港事件」はコロナ前の話ですが、近年、スリランカはさらに困窮しています。スリランカ政府は2022年、外貨建債務のデフォルトを発生させたからです(『一帯一路で知られるスリランカが外貨建債務デフォルト』参照)。

スリランカはコロナ禍により主力産業である観光業が壊滅的な打撃を受け、外貨準備が枯渇してしまったのです。図表1は、国際通貨基金(IMF)のデータに基づくスリランカの外貨準備高ですが、たしかに外貨準備が急減していることが確認できます。

図表1 スリランカの外貨準備の推移

(【出所】International Monetary Fund, International Reserves and Foreign Currency Liquidity をもとに著者作成)

2015年9月以前はデータの収録がないため、グラフが生成可能なのは15年10月以降ですが、これで見るとコロナ禍が深刻化したためか、2020年後半ごろから外貨準備が減り始め、有価証券を売却して外貨準備を取り崩している様子がうかがえます。

一般に外貨準備は現金・預金(キャッシュ項目)だけでなく、有価証券(とくに米国債など)で運用されることが多いのですが、スリランカの外貨準備高を見ると、有価証券の残高が2021年11月頃にほぼ枯渇していることが確認できるでしょう。

企業も国も、有価証券を売却するのは、よっぽど資金繰りに困っている場合の証拠でしょう。

中国「1兆ドル融資」の具体的な中身

世銀データで見る中華金融の実態

ただ、スリランカについて考える前に、本稿では中華金融の実態について、少し探っておきましょう。

中華金融は何かと不透明ですが、その総額は一体いかほどなのでしょうか。

中国はいったい、どういう形でいくら、どんな国におカネを貸しているのでしょうか。

これについては残念ながら、先進国並みの信頼に値する統計は存在していません。

世界最大債権国・日本の「アジアとのつながりの薄さ」』などを含め、当ウェブサイトでときどき紹介している、国際決済銀行(BIS)が公表している「国際与信統計」(CBS)だと、中国はデータ提供国ではないため、中国「が」外国にいくらおカネを貸しているかを知ることはできないのです。

ただし、断片的に出てくる統計からは、中華金融の全貌を予測することはできます。

昨年の『意外と小さい「一帯一路」:中華金融の実情を考察する』でも取り上げましたが、世界銀行のデータに基づけば、中・低所得国や新興国などに対する中国からの貸付金は、2021年12月末時点において1800億ドル程度と集計されています。

もちろん、この「1800億ドル」には、中国が国際的な金融機関(たとえばアジアインフラ投資銀行=AIIBなど)を通じて貸している金額は含まれませんが、そのAIIBにしたって、最新の2023年3月末時点の財務諸表によれば、本業融資はせいぜい250億ドルにも満たない金額であり、無視して良いでしょう。

(※なお、AIIBの2023年3月期決算の分析については、稿を分けて紹介したい思います。当ウェブサイトに掲載するのはおそらく後日になろうかと思います。)

もうひとつの中華金融は「人民元スワップ」

ただ、中国が主導する「中華金融」は、それだけではありません。

中国による外国支援の形態としては、これらに加えて、通貨スワップや為替スワップなどを通じたものが考えられます。それが「人民元スワップ」を使ったスワップ外交です。

これについて中国当局はその全容を一覧にしたものを作成していないため、非常にわかり辛いのが実情でしょう。

ただし、世の中面白いもので、中国人民銀行のレポートをもとに、一覧表を作ってしまったサイトがあったようです。それが、山手線の駅名を冠する、会計士を自称する怪しげな者が運営する、こんなサイトです。

【総論】中国・人民元スワップ一覧(22年8月時点)

―――2022/11/18 08:00付 新宿会計士の政治経済評論より

これによると、中国人民銀行が公表するレポート『人民币国际化报告』をもとに、中華スワップの一覧表が提示されています。

これらのすべてが現在でも有効なのかどうかはよくわかりませんが、「有効期間は約5年間」という前提を置き、2017年7月以降、2022年8月末までに締結されたスワップについて重複を除外し、参考値としてのドル換算額を出すための為替レートをアップデートしたものが、図表2です。

図表2 中国の人民元建てスワップ一覧(2022年8月末時点、期間5年と仮定)

(【出所】中国人民銀行『人民幣国際化報告』をもとに著者作成。なお、米ドル換算額は国際決済銀行 “US dollar exchange rates (daily, vertical time axis)” の2023年5月29日時点のレートを使用。ただし、同データに収録がない通貨に関してはネットサイト等を参考に換算しているが、最新データではない可能性がある点には注意)

これによると中華スワップの本数は合計33本で総額は約4.1兆元であり、1ドル=7.076062元で換算すれば5801億ドルと弾き出すことができます。これがスワップ外交の「最大値」でしょう。

期間3年と仮定した場合の総額は5000億ドル弱か

ただ、これら33件のスワップのなかには、すでに失効しているものもあるでしょうから、現実の金額はこれよりも少し少なくなると考えられます。仮に中華スワップの期限が5年ではなく3年だったと仮定すると、中華スワップの残高は図表3のとおり、合計23本で約3.5兆元、すなわちドル換算で4972億ドルです。

図表3 中国の人民元建てスワップ一覧(2022年8月末時点、期間3年と仮定)

(【出所】中国人民銀行『人民幣国際化報告』をもとに著者作成。なお、米ドル換算額は国際決済銀行 “US dollar exchange rates (daily, vertical time axis)” の2023年5月29日時点のレートを使用。ただし、同データに収録がない通貨に関してはネットサイト等を参考に換算しているが、最新データではない可能性がある点には注意)

いずれにせよ、4兆元だろうが3.5兆元だろうが、それはなかなかの額だという言い方もできます。

中華スワップの額が3.5兆元から4兆元だったとして、すなわちドル換算で5,000~6,000億ドルだったと仮定して、先ほどの世銀の1,800億ドルという金額と合算すれば、スワップと合わせて中国が世界に貸しているカネの総額は、ざっと7000~8000億ドルくらいです。

このあたり、著者自身はかつて、「中国が世界に1兆ドルを貸し込んでいる」などと主張する記事を見かけたことがあるのですが、この「世銀データ」と「人民幣国際化報告」のデータをあわせると、1兆ドルにはほんの少し足りませんが、だいたい近い数値に落ち着くようです。

中華金融の実態

このあたり、通貨スワップを中国が外国に対し、実際に貸し付けている額にカウントするという考え方は、金融の世界では、決して一般的ではありません。

国際金融協力の世界における通貨スワップは、普通の民間金融機関の感覚だと、「コミットメントライン」に近い考え方です。「コミットメントライン」とは、わかりやすくいえば、「あなたが必要なときに、この額を上限として、いつでもおカネを貸しますよ」という約束のことです。

中華スワップはコミットメントラインとして見たら、決して優秀なものとはいえません。

なぜなら、中国の通貨・人民元自体、国際的な金融市場で自由に利用可能な通貨であるとは言い難く、国際的な商取引における利用はまだまだ中途半端ですし、ましてや機関投資家を中心とする巨額の資産運用ニーズには、ほとんど対応できていない状態にあるからです。

しかも、スリランカが中国に対し、通貨スワップの引出を要請したところ、中国がこれを断った、という「事件」も発生しています。『スリランカからの通貨スワップ発動要請を拒否した中国』でも取り上げましたが、中国側は「輸入3ヵ月分をカバーするだけの外貨準備がなければスワップ発動に応じない」などと述べたというのです。

中国のスワップは、「いざというときに使い物にならない、非常に頼りないツールである」、というのが、金融評論家的に見た正直な感想、というわけです。

担保価値割れ:杜撰すぎる与信管理

中華スワップの引出残高は1000億元を超えたが…

では、現実にそのスワップを引き出している国は存在するのでしょうか。

これについては『トルコが中国との通貨スワップを実行し人民元を引出す』と『アルゼンチンが新たな「人民元建てのスワップ」を発動』で紹介したとおり、少なくともトルコとアルゼンチンの2ヵ国が、中国からスワップで人民元を借り入れていることは確実です。

その具体的な金額については以前の『中華スワップ残高増から考察する中華金融のお寒い実態』でも取り上げたとおり、中国人民銀行が公表する『货币政策执行报告』という四半期レポートに基づけば、直近の2023年3月時点で初めて1000億元の大台に乗ったのだとか。

いわば、中国のスワップ引出残高が順調に伸びている、というわけです(※ただし、具体的にどの国がいくらスワップを引き出しているのかについては明かされていません)。

て、これについて報道された数字を中国人民銀行が公表している一次データと突合しようとしたところ、生データ自体がどうしても見つからず、当ウェブサイトとしてはどうしてもデータを集めたいと思ったため、先日の記事ではやや強引に、中国語のPDFファイルからスワップの引出状況を2018年まで遡って集計・記録しました。

具体的には2018年分までの全レポート中、「通貨スワップ」を意味すると思われる「本币互换」という表現を手掛かりに検索し、たとえば次のような文章を「相手国の人民元引出残高は1090.85億元、中国人民銀行が受け入れている外貨は4.17億ドル相当」と解する、という手法です。

在人民行与境外货币当局署的双换协议下,境外货币当局用人民额1090.85亿元,人民用外折合 4.17 亿美元,边贸易投资发挥极作用」。

これについて、その後も少しずつ作業を進めており、このほど、2015年3月分までの解読が終了しました。そこで、今回はそのグラフを公表しておきたいと思います(図表4)。

図表4 中華スワップの引出額の状況

(【出所】中国人民銀行・過去の『货币政策执行报告』をもとに著者作成)

これで見ると、中国のスワップは相手国によって最近、かなり引き出されていることがわかります。

相手国からの担保額が絶対的に足りない!

ただ、問題はそれだけではありません。

相手国から担保として受け入れているはずの外貨のドル換算額は、ほとんど伸びていないのです。

正直、「与信管理」がなっていません。1ドル=7.076062元で換算すると、図表5のとおり、中国が貸し付けている額が相手から受け入れている担保の額を大幅に超過していることがわかります。

図表5 中華スワップの引出額の状況(ドル換算)

(【出所】中国人民銀行・過去の『货币政策执行报告』をもとに著者作成。なお、便宜上、一律に1ドル≒7元と仮定)

これは正直、なかなかに酷いです。

2023年3月末で1,091億元ということは、米ドル換算で154億ドルを相手に貸しているというわけですが(A)、相手から受け入れている相手国通貨の米ドル換算額は4億ドルに過ぎず(B)、直近だと、「A÷B」は、じつに37倍もの格差が開いてしまっているのです。

正直、相手国がこれを踏み倒したときに、中国はいったいどうするつもりでしょうか。

いかに最近、軍事大国を目指して軍備を増強しているとはいえ、さすがに外国に軍隊を派遣して強制的に取り立てる、といったことは非現実的です。まさか1091億元をとりっぱぐれた場合、泣き寝入りでもするつもりなのでしょうか?

本当に謎です。

アルゼンチンが中国のスワップの条件更改と発表

こうしたなかで、中国の「カネ貸し外交」が、果たして本当に中国自身にとって正しいのか、どうも疑問に思える話題も出て来ています。そのひとつが、狡猾な「あの国」に関するものです。

Argentina doubles China currency swap access to $10 bln

―――2023/06/03 2:33 GMT+9付 ロイターより

ロイターが数日前に発信した記事によると、アルゼンチンは現地時間2日、中国当局との間で通貨スワップを3年延長するとともに、その規模を巡り、スワップのうち「自由に利用できる額」を、現状の350億元から700億元へと倍増させることで合意したのだそうです。

先ほどの図表2ないし図表3でも触れたとおり、中国とアルゼンチンは現在、中国側から提供するスワップは上限1300億元(184億ドル)ですが、現実にはその全額を自由に使用できるわけではない、というのが実情なのでしょう。

ただし、ロイターの記事によると、今回の発表はあくまでもアルゼンチン中央銀行からのものであり、中国人民銀行の側の発表ではないようですが…。

スリランカは国際社会を関与させた

さて、冒頭に取り上げたスリランカの事例では、もうひとつ、さりげなく大変に重要な話題が出ています。

First meeting of the Creditor Committee for Sri Lanka【※PDF】

―――2023/05/09付 財務省HPより

財務省によると、スリランカの要請に基づき、インド、日本、フランスの3ヵ国を共同議長とする公式な債権者委員会を、パリクラブの債権国を含めた17ヵ国が正式に発足させ、スリランカの債務再編プロセスを開始させたと宣言しました。

スリランカはこの会合で、債務再編に関する同国としての要望を正式に提示し、「債務処理の透明性と比較可能性」にコミット。国際通貨基金(IMF)や世銀もスリランカに関するマクロ経済情勢などを実施するなど、この問題に関与することとしています。

「債権国」としての中国にとっては、いわば、最悪の状態が出現したようなものでしょう。日本を含めた国際社会がスリランカの債務再編に強く関与することとなったからです。場合によっては中国がスリランカに貸し付けているカネも元本の一部または全部が切り捨てられる(つまり中国が泣き寝入りする)という展開もあり得ます。

国際社会に出られると、中国としてはもう打つ手がなくなります。

私たちの印象では「中国は狡猾な国だ」という思い込みもあるのかもしれませんが、少なくともスリランカの件に関しては、狡猾どころか杜撰であり、スリランカに良いようにやられてしまった、というのが実情に近いでしょう。

「1兆ドル」は決して多くない

そのうえ、身もふたもないことを申し上げるなら、「国際社会に1兆ドルを貸し付けている」といっても、それは国際社会のスタンダードに照らし、決して多い額ではありません。

先ほど、「中華金融の規模は1兆ドル弱、うち貸付金が1800億ドル、スワップが5000~6000億ドル程度」という話題を取り上げましたが、じつはこの「1兆ドル弱」、すなわち1ドル=140円で換算して140兆円という金額は、日本が実際に外国に貸し付けている額よりも少ないのです。

先ほども名前を紹介したBIS統計(CBS)によると、2022年12月末時点で日本の金融機関が外国に貸し付けている額は約4.6兆ドルで、これはもちろん世界最大です(図表6)。

図表6 CBSランキング(最終リスクベース、債権国側、2022年12月末)
ランク(債権国側)金額構成割合
1位:日本4兆5979億ドル15.35%
2位:英国4兆0993億ドル13.68%
3位:米国4兆0922億ドル13.66%
4位:フランス3兆1591億ドル10.55%
5位:カナダ2兆5544億ドル8.53%
6位:スペイン1兆9994億ドル6.67%
7位:ドイツ1兆6945億ドル5.66%
8位:オランダ1兆4063億ドル4.69%
9位:スイス1兆0623億ドル3.55%
10位:イタリア9663億ドル3.23%
その他4兆3235億ドル14.43%
報告国合計29兆9552億ドル100.00%

(【出所】BISウェブサイト “Download BIS statistics in a single file”, Consolidated banking statistics (CSV) データを参考に著者作成)

当然のことながら、国際金融の世界においても日本は中国に比べ遥かに経験も豊富で何枚も上手ですし、カネを借りる側の国もときとして極めて狡猾だったりします。

スリランカは習近平(しゅう・きんぺい)中国国家主席の「一帯一路」に深くかかわっている国ですが、そのスリランカに対し、日本が故・安倍晋三総理大臣の置き土産である「自由で開かれたインド太平洋(FOIP)」の一環として、債務再編に深く関わることは、非常に重要です。

いわば、慣れない金融を武器に、途上国を支配しようとした中国ですが、おカネを借りる側は中国よりも狡猾ですし、スリランカのようにいざとなったら日本に泣きつくことで、国際社会のルールに従い債務再編を始めてしまうのです。うまくすれば、中国からの借金をチャラにしてしまうことだって可能でしょう。

中華金融についてはもちろん油断ならないものではありますが、金額や実情を詳細に調べていくと、案外「お寒い実情」が浮かび上がってくるのかもしれません。

本文は以上です。

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読者コメント一覧

  1. カズ より:

    通貨スワップの言い出しっぺは、基本的に窮する者たちです。そして契約に基づく引出しだから、担保不足も受け手の責務。

    恩に着せるのが目的ならば採算度外視もありなのでしょうが、「見境のない借主たち」って、恩に着たりはしないんですよね。

  2. 迷王星 より:

    いつも興味深い話題を取り上げデータに基づく深い洞察で拙の知的好奇心に刺激を与えて下さり本当に有難うございます.

    ですが,このエントリのスリランカの債務問題に関する次のような結論的(あるいはまとめ的)な主張には全く同意できません.

    >いわば、慣れない金融を武器に、途上国を支配しようとした中国ですが、おカネを借りる側は中国よりも狡猾ですし、スリランカのようにいざとなったら日本に泣きつくことで、国際社会のルールに従い債務再編を始めてしまうのです。うまくすれば、中国からの借金をチャラにしてしまうことだって可能でしょう。

    率直に申し上げて,スリランカ債務問題に関する現在の状況からどう理解すれば,上の引用部分のような結論が出てくるのか私には全く理解できませんでした.

    スリランカの債務問題を扱う債権国会議を企画するに当たっては,当然ながら最大の債権国である中共(北京に政府を置く共産主義国家のことで,従来,共産チャイナと呼んでいたものですが長ったらしいのでこの様に呼ぶことにします)に参加を求めた訳ですが,中共は債権国メンバーとしての正式な参加を拒否し単なるオブザーバーとしてしか参加しません.

    つまり,債権国会議で例えば「個々の債権国は保有する債権の××%を放棄する」といった形でスリランカの債務を減らすことによって同国の再建を促す結論を出したとしても,中共はその結論には束縛されない,即ち,中共は他の債権国とは異なり対スリランカ債権を全く放棄しないとか放棄する比率をずっと低く抑える,といった行動が国際法的に合法で可能な外交的な自由度を中共は手放す気など全く無いということです.

    更に言えば,スリランカ問題を扱う債権国会議は,最大の債権国である中共からの支援が得られない見通し(注※)ということがあるのでしょうが,スリランカから日本政府に依頼が来て債権国会議は日本主導で行う,つまり債務の大幅な削減など債権国が負担せねばならない処置は議長国である日本が陣頭に立って行わねばならなくなった,ということです.

    中共に靡き中共の口車に乗って身分不相応なインフラ整備に走り,その結果として中共から莫大な資金を借り入れ建設作業は中共の企業や労働者が行うことで借りた建設資金の大半は中共に回収されてしまって後には莫大で返済不能な巨額の債務が残り,その借金のカタとしてインド洋を扼する港湾の支配権を中共に奪われ中共によるインド洋支配を助けているスリランカ,その(過去の日本からの対スリランカ経済援助の総額や多数の留学生を受け入れて返済不要な奨学金という日本の国費を使って人材育成に協力して来た事実を勘案すれば)敵方に寝返ったと言っても良いスリランカの経済破綻を見返りもなく自分の身を削って助けようとするとは,本当に(馬鹿が付くほどの)お人好し日本(別名,「世界のためのATM日本」)の面目躍如といったところでしょう.

    狡猾なのはスリランカではありません.借金漬けにして,部分的にせよその莫大な借金の棒引きは他の債権国に押し付け,自分はこれからもスリランカから搾り取れるだけ搾り取ろうとする中共こそ狡猾の極みでありエゲツナイとしか言いようがありません.そして中共とスリランカから全てのツケを回されて嬉々として引き受けるお人好しの馬鹿は今回も我々の国,日本,これがスリランカ破綻問題の構図です.

    裏切られ続けて来た韓国がちょっとこちらに向いただけで喜んで,やれ技術協力だのスワップだのと手を差し伸べようとするのと,スリランカ債務問題の債権国会議を日本が引き受けるのとは何も変わりません.どちらもお人好しという大馬鹿な国家だけが為せる愚行です.

    注※:何しろ,いざという時のために中共と結んでいた通貨スワップ協定の発動をスリランカが通貨防衛の為に求めたら「貴国の外貨準備はGDPの20%に満たないからNG」と中共から拒否された訳ですからスリランカ政府も中共の冷酷さを骨身に染みるほど分かったことでしょう.そもそも中共が拒否の理由とした「外貨準備がGDPの20%以上」というスワップ発動制限条件が中錫通貨スワップ協定締結時に,きちんと協定の文書に明記されスリランカ側に通告されていたのか大いに疑問です.スリランカからの発動要請を受けて,急遽,要請を拒否する理由として後から中共政府が(強引に)主張し押し通したのではないのか?と個人的には疑っています.

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