例の「コロナウィルス・シリーズ」に関する最新の読者投稿を掲載することが出来そうです。今回の論考は現役の医師である「りょうちん」様というコメント主から頂いた読者投稿で、以前からの投稿と少し視点を変え、行政の観点から見た初動体制や現在の日本の地方衛生研究所の根本的な問題点について触れていただいています(ただし、あらかじめお断り申し上げておきますと、今回の論考からは、私自身の判断で一部の記述を削除しています)。
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目次
読者投稿
『お知らせ:読者投稿を常設化します』などでお知らせしたとおり、当ウェブサイトでは昨年以来、「読者の皆さまからの記事投稿窓口」を常設化しており、読者投稿を歓迎しております。なお、その投稿要領、過去の読者投稿については、それぞれ次のページにまとめております。
こうしたなか、コロナウィルスに関連し、現役の医師の方や理系研究者、工学研究者の方から、相次いでコロナウィルス関連でのご投稿を頂いています。
ちなみに①と②が「りょうちん」様という現役のお医者様、③と④が「ケロお」様という理系研究者、⑤が「イーシャ」様という工学研究者の論考であり、いずれも客観的事実をもとに積み上げた、非常に良質な論考です。
こうしたなか、本日は有難いことに、①と②をご投稿いただいたりょうちん様から、少し趣向を変えた論考を頂戴しています。いったいどんなことが書かれているのでしょうか。
(ここから先がりょうちん様の投稿です。なお、適宜、中見出しや小見出しを付しているほか、文体については文意を変えない範囲で修正している箇所があります。また、後述するとおり、丸々一節を削除しています。)
初動体制を行政の観点から考察する
医学的な側面から見たエントリはすでにいくつか書かれているので、本稿では少し趣向を変え、初動体制について、行政の観点から考察してみることにします。
検疫や指定感染症の扱いは、行政の分野です。
といっても、本職の保健行政に関わっている人たちは、今は、死ぬほど忙しいと推測されます。そこで、本稿では外野が公開資料などを基に、勝手に考察してみます。
どうやって兆候を知るのか
まず、日本の保健行政に関わる人たちはどうやって、外国のアウトブレイクの兆候を知ることができるでしょうか。
これが西側の先進国相手であれば、普段からのお付き合いで、直接一報を貰うことも、WHOやCDCといった組織からの警報を受けることもできるでしょう。しかし、今回の相手は、中国です。
その中国は、初期段階での米国人医師団の派遣を拒絶しただけでなく、今に至っても、この分野の権威であるCDCの研究者の入国を拒否しています。
アフリカの小国などであれば、慈雨の如きCDCの支援チームを素直に受け入れ、新興感染症の自然史の情報を初期から知ることも、信頼できる統計的情報を収集することもできたでしょう。
しかし、相手は中国w。
2002年のSARSアウトブレイクにおいても、中国政府は当初発生を隠蔽し、WHOの調査団の受け入れを遅らせました。このことは今でも非難されています。
SARSは最終的には封じ込めに成功しましたが、なぜ成功したのか、どうして日本には感染者が出なかったのかは、未だにはっきりとした理由はわからないようです。
世界保健機関(WHO)西太平洋地域事務局SARS対策チームに参加 (平成15年4月)(長崎大学熱帯医学研究所HPより)
これについては、少なくとも、
- SARSのときには当時の行政がうまくやった
- 2009年の豚インフルエンザ-A(H1N1)pdm09では水際防御に失敗し、すっかり季節性インフルエンザの仲間入りを果たした
- おそらく全世界的なものになる今回のSARS-CoV-2の流行でも水際防衛に失敗した
といった話でもなさそうです。
そもそも、中国は、今回のSARS-CoV-2発見に関する経緯を明らかにしていません。原因ウィルスを分離同定し、塩基配列を発表した手際が良すぎるので、じつは相当前から、うすうす新興感染症の発生を覚知していながら、暖めていた疑惑すらあります。
今回ばかりは、中国にアウトブレイクにおける国際査察・調査団の無条件受け入れの義務化などを約束させるなどのペナルティを科すべきだと思います。
加藤厚労相の初動
まあ、その辺はさておき、日本の対応に移りましょう。
保健行政当局がいつごろ今回のSARS-CoV-2を覚知したのかという正確な情報については、「中の人」でないと知り得ませんが、それでも公開資料を漁ると、そのヒントが出て来ます。まずは令和2年1月7日の厚生労働相会見です。
加藤大臣会見概要(令和2年1月7日(火)11:53 ~ 12:05 省内会見室)(抄)
大臣:中国の湖北省武漢市の発表によりますと、同市内において原因不明の肺炎患者が発生しており、1月5日時点で、7人の重症者を含む59人の患者が確認されたということであります。(中略)入国の際に検疫のブースがありますが、そこにおいてこうした感染症があるということの周知を図るには、掲示をしようということで、今文章を詰めておりますが、早々にそうした掲示も掲げていきたいと思っております。(後略)
―――2020/01/07付 厚生労働省HPよりこの時点で59人の感染者などという数字を挙げていることから、あまり切迫感は感じられませんし、「検疫を指示しよう」「文章を詰めております」なんて言ってるところからすると、おそらく厚労省の担当者自身は既に動いて上程していたのではないかと推測します。
トップがトロいw。私が「1週間動きが遅い」と思ったのはこの発言からです。
そして1週間後の令和2年1月14日の厚生労働相会見です。
加藤大臣会見概要(令和2年1月14日(火)10:22 ~ 10:35 省内会見室)(抄)
現在まで、1月13日現在でありますが、我が国において、この肺炎に関連する患者の報告はございません。この肺炎については、現時点ではヒトからヒトへの感染が確認されていないこと等から、我が国でも、現在行っている検疫体制等に遺漏がないようにするとともに、1月11日から12日にかけて中国から公開された当該ウイルスの遺伝子配列情報に基づき、国立感染症研究所において、検査方法の確立に向けた作業をいま進めているところであります。
―――2020/01/14付 厚生労働省HPより
この時点では、SARS-CoV-2に対する検査方法が存在しなかったことがわかります。
その後の検査体制の整備
その後の検査体制の整備に関してはこちらの文書が詳しいです。
新型コロナウイルス感染症の現状の評価と国内のサーベイランス、医療体制整備について(※PDFファイル)
- 検査体制:当初、中国から開示されたゲノム情報に基づき、感染研においてコンベンショナル PCR検査を実施する準備を整え、検査に対応した。
- また、地方衛生研究所において、コンベンショナル PCR 検査が可能となるよう、1 月 23 日に国立感染症研究所から試薬が配布された。
- 1 月 24 日に、国立感染症研究所にて開発を進めていたリアルタイム PCR 法による検査系が完成し、所内で実施する検査はリアルタイム PCR
- 法に変更された。
- また、それに合わせて 1 月 30?31 日に地方衛生研究所、検疫所へリアルタイム PCR 用の試薬が配布された。
- 行政検査を実施する場合の検体採取と輸送の手引きは 1 月 21 日に国立感染症研究所のウエブサイト上で公開された。
当初、国立感染症研究所でしかできなかったSARS-CoV-2に対する検査が、試薬の配布により、1月23日以降は地方衛生研究所で行うことができるようになり、さらにその1週間後にはリアルタイムPCR法に変わったことで、それまで5時間もかかった検査がたったの3時間wで済むようになりました。
行政的手続の面では、1月28日には、このSARS-CoV-2による肺炎について、感染症法に基づく「指定感染症」と検疫法の「検疫感染症」に指定する政令が閣議決定され、2月1日に施行されました。
これにより、疑い症例患者に対して、医療費の公費負担、地方自治体の長等が検査を受けることを命令できるようになりました(調べてから「武漢からの帰国便で検査を拒否した人がいた」という報道について疑問に思ったのですが、法理上、拒否できるたぐいの話ではなかったのではないでしょうか?)。
PCR法での検査
こうした感染疑い患者から採取した検体は、「ウィルス行政検査」という制度で、国立感染症研究所ないし、地方衛生研究所で「PCR法」での検査にかけられました。
さて、PCR法自体は、いまやコモディティ化した検査手技であり、ン十年前に医学部を卒業した私ですら、学生実験で行ったことがあるような代物です。実際、『Yahoo!ショッピング』のサイトを見ても、PCRを行う検査機器一式は1000万円もしないようです(ランニングコスト別)。
いくら予算不足に悩む地方衛生研究所(後述)でもおそらく数台ずつは持っていることでしょう。国立感染症研究所なら三桁とかあるのでは?(勝手な想像ですが)。
当初、検査できるのは1500検体/日だとかいう噂を聞きました。おそらく一度に96検体を処理できる機械で5時間かかるとしても、4列あればこなせてしまう数です。
このブログのコメント欄に、(※)「なんでできないんだ!」と吐き捨てるようなコメントがありましたが、「そりゃ試薬(プライマー)が足りなかったんじゃねーの」、と、素人でも推測ができます。
(※新宿会計士注:当ウェブサイト側の判断にて表現を一部修正しています。)
ウイルス検査の対象の拡大
そして、2020年2月18日のニュースでは、厚労省はウイルス検査の対象を拡大し、渡航歴などがなくても感染が疑われる場合には検査を行うよう、全国の自治体に通知したと報じられています。
新型ウイルス 検査体制拡充 最大一日3800人検査可能に(2020年2月18日 4時44分付 NHK NEWS WEBより)
この記事によれば、5つの企業で900人、2つの大学で150人のウィルス検査が新たに可能となるため、18日からは検査件数が1日最大3800人に増えるそうです。やったねたえちゃん!検査件数が倍以上に増えるよ!
おそらく、試薬の増産体制をこつこつと増やしたのだと思い、その作業に従事されている方々の苦労に思いを馳せます。しかるに3800人で、これから医療機関に押し寄せる
「私、新型肺炎じゃないかしら?!調べて!!!!」
というゾンビ映画の如き襲撃に耐えられるわけないじゃないですか!ヤダー!!!
省略節
(※新宿会計士注:今回のりょうちん様の論考でいちばんおもしろい箇所がこれに続くのですが、今回は私自身の判断により、この部分の掲載を見送ります。)
国立感染症研究所
とまあ、こんな感じで日本や各国の行政やが動いているようですが、ここで話を変えます。
米国のCDCと言えば疫学の最高権威と言って良いですが、その日本のカウンターパートは、国立感染症研究所になります。その傘下に各都道府県に支店のように地方衛生研究所という組織があり、指定伝染病のサーベイランスや発生した時の「ウィルス行政検査」を行う施設です。
こうしたネットワークにより、日本の保健衛生は守られているのです(イイハナシダナー)と思っていた時期が私にもありました。この辺の資料を読んであげてください。
終わっていますね。そもそも、地方衛生研究所には国の法的根拠が存在しないというのにはビックリしました。予算措置は地方自治体や民間の手弁当ですよ。
「研究所も含めて行政改革の影響を受けるため、平成30年度においては、対19年度総員の3割削減することになる。」
唖然とします。こんな冷遇をしておきながら、「まともに検査できないのか!」とか罵声を浴びせる人がいるのですよ。
余談
以下、余談です。
雑談スレで、「BSL4施設が稼働できなかった」状況が今回のような事態に影響が云々とか書いていた人がいましたが、ほぼ関係ありません。BSLとリスクグループ、NIMBY問題とかの関係を合理的に理解できていない類感呪術(似たような事象には何らかの関係がある)的思考です。
あえてムリクリ関連付けるなら合理的にはNMBY的には帰国者を受け入れたホテルに関連付けるべきでしょう。
病院船に至っては、現代では少人数なら大型艦の医療施設で間に合い、臨時には輸送艦に野外手術システムを搭載したりすることもできるのでふだん使い道がない専用船が作られることはないでしょう。
医官も全然足りません。
また、東日本大震災での「戦訓」ですが、少なくとも日本の激甚災害では、現地でどうにかしようとするより、インフラの損壊のない地域に速やかに搬送する方が良い結果になります。
まあ日本が外国に渡洋侵攻するようになったら、必要になるかもかもしれませんね。
あと、読者コメントの中には、
「多くの先進国では軍が関与する国防安全保障として対応したが、日本や韓国はそうでなかった。」
こういうのが、ありましたが、私の調べた限り、そんな事実はありませんでした。アメリカのバイオ関係のクライシスには、疾病だろうがテロだろうが、まずはCDCが動き、関連した組織を顎で使います。カッコいいですね。
炭疽菌テロではCDC+FBIで動いていました。バイオテロの場合、陸軍の生物兵器研究所であるフォート・デトリックが動きますが、いわゆるDEFCONに相当する、アメリカが生物学的脅威に曝されている状況を示す『HPCON』はゼロです。
こちらに解説されていますが、『HPCON 0』は「風邪を引かないように気をつけて!」というレベルです。福島のトモダチ作戦では活躍してくれた海兵隊のCBIRFもピクリとも動いている様子はありません。米国は少なくとも通常営業ですね。<了>
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読後感
さて、いかがでしょうか。
じつは、本文中にも示したのですが、今回、りょうちん様の論考のなかで、いちばん過激な(あるいはいちばん興味深い)部分については、ギリギリの判断で丸ごと削除することにしました。
私自身、ここ数日間の当ウェブサイトの読者投稿をじっくり読んだ結果、「当ウェブサイトの読者層であれば、ギリギリ掲載しても大丈夫かな?」とも思ったのですが、ここ数日、ツイッターを通じて当ウェブサイトの知名度が上昇してしまっている、という事情を考慮しています。
せっかく執筆して下さったりょうちん様には大変申し訳ないのですが、現在はこれを公表できるタイミングではありません(あるいは読者コメント欄に投稿していただく分には問題ありません)。もっとも、機が熟せば、今回削除した記述について復活させられるかもしれませんが…。
また、削除した記載に含まれていたリンクについては、下記に再掲しておきます。
【毎日更新】新型コロナウイルス国別発生状況まとめ|世界感染者数の推移グラフも(『コミカルピース』より)
※ ※ ※ ※ ※ ※ ※
ただ、今回削除した箇所以外についても、大変に参考になる論考です。とくに「公表されている資料のみ」を用いて、ここまでの論考を執筆する力量は、大変なものだと思います。りょうちん様、本当にありがとうございました。
引き続き、このような冷静な見地に基づく論考をお願い申し上げたいと思います(※もちろん、「お時間が許す限りは」、ですが…)。
※本文は以上です。
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