「北がミサイル発射したからウォン安に」の言い訳は渡りに船
複数のメディアの報道によると、本日日本時間の午後4時半と5時前に、北朝鮮は何らかの飛翔体を打ち上げたそうです。これ自体、私個人的には北朝鮮の「いつもの瀬戸際外交」に過ぎないと思っていて、米国としては泰然自若としているのが一番だと感じているのですが、じつはホッと胸をなでおろしているのは、韓国銀行総裁なのかもしれません。なぜなら、通貨安を北朝鮮のミサイルのせいに責任転嫁できるからです。ただし、今回のウォン安局面には、北朝鮮のミサイル(?)発射はほとんど関係なく、「売られるべくして売られた」とみるべきとも思います。なぜなら、北朝鮮のミサイル(?)発射が行われる前の時点から、同国の通貨は売られていたからです。
北朝鮮のミサイル(?)発射
各種メディアの報道によれば、本日午後4時29分と49分の2回、北朝鮮が同国北西部の平安北道(へいあんほくどう)亀城(きじょう)から何らかの飛翔体を東に向けて打ち上げたようです。韓国メディア『聯合ニュース』(日本語版)はこの飛翔体を「短距離ミサイルと推定される」と報じています。
北朝鮮 短距離ミサイル推定の飛翔体2発発射=東海上に落下(2019.05.09 20:34付 聯合ニュース日本語版より)
一方、わが国のメディアである共同通信は、「国連安全保障理事会決議に違反する短距離弾道ミサイルの可能性がある」、「北朝鮮の相次ぐ発射は、軍事力強化を誇示して米韓を牽制し、膠着状態が続く非核化交渉を優位に進める狙いがあるとみられる」としています。
北朝鮮また発射、弾道ミサイルか/飛翔体2発、交渉膠着米韓けん制(2019/5/9 21:27付 共同通信より)
この共同通信の「軍事力強化を誇示」「非核化交渉を優位に進める狙い」という記述は、正直、何が言いたいのやらよくわかりません。
ただ、私自身は今回の「ミサイル(?)発射」について、「米国を刺激しないギリギリのところ」を狙った瀬戸際外交の一種と考えており、その意味では北朝鮮が今月4日にもミサイルのようなものを打ち上げたのと軌を一にする動きに過ぎないと思います。
その意味で、韓国の自称元徴用工らが日本企業に対し、「徴用工判決に伴う資産差押え」を仕掛けて来ているのと同様、その狙いとは、「ギリギリのところ」を攻めることで、米国を再び交渉の座に戻すことにある(逆に言えば、米朝交渉が膠着している)ということでしょう。
現段階ではあまり深刻に受け止めず、北朝鮮の挑発に乗らずに泰然自若としているのが正解ではないでしょうか。
ミサイル(?)発射でウォンは売られたのか?
ところで、私が最近、日課のように眺めているWSJサイトの「韓国ウォンの対米ドルのレート」(USDKRW)は、日本時間の午後10時時点では1ドル=1185ウォン前後を示しており、前日(1173.10)と比べて、ドルあたり10ウォン以上は売られた格好です(※)。
(もう少し厳密にいうと、日本時間午後10時12分時点で1ドル=1185.74ウォン)で、少なくとも今年に入ってからの最安値です。)
ただ、本日の『「プチ・ワロス曲線」とやっぱりおかしい韓国の外貨準備高』でも説明したとおり、韓国ウォンは売られているときに突如として買い戻され、再び売られてまた買い戻される、という、いわゆるネットスラングでいうところの「ワロス曲線」に似た動きを見せていました。
しかし、北朝鮮がミサイルのようなものを発射した瞬間(日本時間の午後4時25分と4時50分)に微妙に「飛び出す」格好となったものの、その後は成り行きに任せるような動きが続いており、じわじわとウォンが売られる展開です。
これについては、ミサイル(?)発射の瞬間に微妙にウォンが下落しているものの、その後はむしろ「通貨当局が介入を止めた」かのようにも見えます。
いったい、これをどう考えるべきでしょうか?
そもそも論として、「韓国の通貨が売られていて、行き過ぎたウォン安を回避するために通貨当局がウォンを買い戻している」というのは、チャートの動きだけで提示している、当ウェブサイトの仮説に過ぎません。単純に「そう考えると辻褄が合う」というだけの話です。
ただ、私自身はその可能性が高いと考えていて、本日の動きもウォン安が「市場参加者が米中貿易戦争の交渉を見守る中でのリスク回避」という説明を付けることができるため、通貨当局が成り行きに任せた、という側面があると思うのです。
そのように考えると、ミサイル発射はウォン安の「ちょうど良い言い訳」ではないでしょうか?
本当のウォン安要因は別の所にある?
しかし、とくに今週に入ってからのウォン安は、ともすれば「米中貿易交渉の先行き不透明感」を受けたリスク回避的なものだ、という見方もできてしまうのですが、私自身、ウォン安の本当の理由は、どこか別の所にあるのではないかと疑っています。
それはずばり、韓国の経済指標が市場参加者の想定以上に悪化している、ということではないかと思うのです。
ひどい経済指標の典型的にはマイナス0.3%成長となった同国のGDPですが(『韓国は典型的な「縮小均衡経済」の罠におちたのか?』参照)、それだけではありません。
雇用の悪化、輸出の急減速など、もそうであり、韓国を巡る市場参加者の不安心理が高まっている証拠ではないかと思います。実際、韓国の株価指数KOSPIは、今月、5月2日の2212.75をピークに、本日(2102.01)まで5営業日連続して下落しています。
もちろん、株安を直接のきっかけとして通貨危機が起こるというものではありませんが(『「韓国経済崩壊」論、本当の脅威は株価暴落ではなく外貨不足』参照)、何となく韓国の経済が現状、きな臭く見えてしまうのです。
本文は以上です。
日韓関係が特殊なのではなく、韓国が特殊なのだ―――。
— 新宿会計士 (@shinjukuacc) September 22, 2024
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自称元徴用工問題、自称元慰安婦問題、火器管制レーダー照射、天皇陛下侮辱、旭日旗侮辱…。韓国によるわが国に対する不法行為は留まるところを知りませんが、こうしたなか、「韓国の不法行為に基づく責任を、法的・経済的・政治的に追及する手段」を真面目に考察してみました。類書のない議論をお楽しみください。 |
【おしらせ】人生で9冊目の出版をしました
日本経済の姿について、客観的な数字で読んでみました。結論からいえば、日本は財政危機の状況にはありません。むしろ日本が必要としているのは大幅な減税と財政出動、そして国債の大幅な増発です。日本経済復活を考えるうえでの議論のたたき台として、ぜひとも本書をご活用賜りますと幸いです。 |
市場は無慈悲ですね、為替にしろ株式にしろ
日本は日本でダメージが大きくなりそうな
こんな時流で増税なんて無理無理
北朝鮮の再度ミサイル発射をあげていただいて、ありがとうございます。
韓国のウォン防衛も面白い話題でしょうが、自分にとっては北朝鮮のミサイルが最重要懸案です。
リーマンショック時の関ヶ原(1600年)越えを見ている自分としては、このたびの鎌倉幕府(1192年)越えは些細なものに見えてしまうのです。(もちろん、設定した防衛線を突破されれば、ズルズルとウォンが落ちてしまう危険性があることは知っています)
岩屋防衛大臣は『我が国の領域や排他的経済水域への弾道ミサイルの飛来は確認されていない。現時点において、我が国の安全保障に直ちに影響を及ぼす事態ではない』と発言しました。
自分は当初より岩屋防衛大臣を応援しているのですが、これはいけない…
『直ちに影響はない』は禁句でしょう。枝野幸男元官房長官が福島原発のおりに発言して、どれだけ長い期間叩かれ続けて来たことか…
岩屋防衛大臣をそれでも応援したいのですが、やはりセンスは無いかもしれません…
頑張っていただいて、北朝鮮包囲網をさらに強めて欲しいのですが…
現代国語が古文になる頃には
「ただちに○○ない」は「不安を煽る係り結び」と呼ばれているかも
いやー、これからアメリカと中国が国家の威信をかけて正面衝突するタイミングで未確認飛行物体を飛ばすとは三男もやりおる。どっちになっても最悪なタイミングで嫌がらせしたことに、米中両方からきつい制裁を受けることになるのでは。周りの反応が薄いのは今はそれどころではないからでしょう。
空気を読めない、間が悪い、やること全てが想定の逆に実現するという三重苦を持ち、何もかも最悪なタイミングで起こるという世にも稀な天運に恵まれたブンブンは、多分この一番めんどくさい時期にきっと何かをやらかしてくれるでしょう。ただ本当にすごいところは一周回って朝鮮の赤化統一の最短ルートを走ってることなんですよね。期待しましょう。
確かに最悪のタイミングのようですが、
イランの動きに呼応?触発されているのでは。
中東、極東、南シナ海と米軍が多方面で展開出来ないと踏んでの、ミサイルマン復活でしょう。
いつも秀逸な分析ありがとうございます。参考にさせていただいております。
今日1日で、kospiは3%下げているのですが、これは、飛翔体とは関係ありませんものね。いろいろな指標を見たらKRWが下がるのはまあ納得ですが、一番の原因はアメリカとの関係がまずくなっていることをみんなが感じているのが大きいのではないですかね。ぜひ、愛国心あるミセスワタナベにも参戦していただきたいものです。
ただ、韓国ウォンのFXを扱っている国内証券会社てほんとにないんですね。SBIくらいか。国内の会社でKRW/USDがやれる会社どこかありましたら教えてほしいところです。 KRW/JPYでWON売りのポジションは、スワップが痛いので、持久戦になるとつらいんですね。
今、ニューヨークが結構きつい状況になってますので、明日の市場もあれそうですね。(東京も含めて)
取引コストはダブルになりますが、KRWJPYのショートとUSDJPYのロングはいかがでしょうw
米中経済戦争がホットウォーになっただけで、韓国などその局面の一つにしか過ぎない。
米国は中国共産党を潰すまであらゆる手を使うでしょう。そのためにあらゆることは利用されるでしょう。矢面に立たないよう、自制せねばなりません。
お題とは、違うのですが、こちらの皆さんが紹介されていた韓国の李栄薫教授のコメントが日本語で紹介されていました。今の今まで、読んでいたのですが、日本語訳がひどくて読解に苦労しておりました。
<李栄薫教授『反日種族主義を打破しようシリーズを始めるにあたって』李承晩TVより>
http://asian-reporters.com/hannichiminzokusyugiwodaha/
4頁にも及ぶ長いものですが、4頁目が結びです。
李栄薫教授のコメントを紹介した論者のコメントもそこにあります。
マスコミなど記事に求めるもの。
この韓国のマイナス0.3成長ですが、
「前期比」「前年同期比」「前月比」「前年同月比」なのかさらに
(年率換算)なのか否かでも、
記載があるなしで親切さがかわってくると思います。
経済素人にどうかご考慮を。
ウォン相場は、1ドル1164、1173、1185と1%ずつ下値抵抗線を段階的に切り下げては反発(半発?)する「2降1昇」で推移しています。
ローソク足を日足でみると、この2週間ほど上値下値が総じて切り下がっているので通貨当局からの強力な為替介入はないのでは?と、思います。むしろある程度のウォン安傾向は容認している可能性も否めません。
*****
通貨当局は市場において自らの指値に自らの成り行き注文を被せることにより、外貨残高を消費することなく為替操作ができてしまうのでは?と、考えます。
現在のところ、米国に要報告なのは、為替介入の取引総額ではなく「純取引額」なんです。
だから自己売買であれば、売買の取引差額が発生しないので為替介入を堂々と実施しながらも「為替操作国」との疑惑をかわし続けることができてしまうのだと思います。
韓国、為替介入実績を公表へ
2018/5/17 18:09 日経
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO30642540X10C18A5FF1000/
>「(米国やIMFに)公表するのは米ドルの買い入れ額から売却額を差し引いた【純取引額】」
と、あります。
USDKRWの日足ローソクではこのところ長い上ヒゲがしばしば見られます。上昇が加速しないよう、小規模なKRW買い介入をしてる可能性は大いにありかなと思ってます。
アウトライトではないなら問題にならないと?しっくりこないのでもう少し解説求む。
個人的には日本売りの外人も多いと感じている。ヘッジ付きで。なぜか?ヘッジコストではなくベネフィットがあるから。
レスポンスありがとうございました。
ローソク足のヒゲが長くなるのは「戻り圧力が存在する」との認識でいいんですよね。
確かに、グッと押した後にすっと戻してますので下落の加速抑制のためのスムージング介入はあるのかもですね。
為替操作国認定の件は、米国から過去12か月のドル売り介入額がGDPの2%以内までは許容されているので、介入は必ずしも自己売買のようにステルスである必要はありません。(結果として、ドル売りが超過してると四半期ごとに介入総額のつじつま合わせが必要になるかもですけどね。)
スムージング介入のようにサイレントな通貨防衛については、「投機による乱高下を抑制するため」にも不可欠なのだとは思うのですが、これも「ご利用は計画的に!」なんですよね・・。
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↓米国は「韓国はもはや脅威ではない」と判断したのでしょうか?
米為替報告書、為替操作監視リストの対象国拡大へ=報道
5/10(金) 8:23配信 ロイター
https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20190510-00000029-reut-bus_all
>インドと韓国は監視対象リストから除外される見込み。
と、あります。
*私はチャートの形だけ見て「なんちゃってコメント」を投稿してます。
レスポンスいただきましたが、為替には浅識なので満足な返信はできません。ゴメンナサイ。