【速報】あまりに予想通りだった南北首脳会談
ある意味で「サプライズなし」だったのが、本日の「南北共同宣言」です。すでにいくつかのメディアが速報で報じていますが、これをどう読むべきでしょうか?
目次
南北共同宣言に関する速報
北朝鮮を訪問中の韓国の文在寅(ぶん・ざいいん)大統領は本日、北朝鮮の独裁者である金正恩(きん・しょうおん)と「平壌共同宣言」に署名したそうです。
金正恩氏のソウル早期訪問で合意 南北首脳「平壌共同宣言」に署名(2018.9.19 13:24付 産経ニュースより)
ここでは産経ニュースの報道をベースに内容を検討してみます。
産経ニュースによると、合意事項は次のようなものです。
- 北朝鮮北西部にある東倉里(トンチャンリ)のミサイルエンジン実験場とミサイル発射台の専門家の監視の下での永久廃棄
- 米国が相応の措置を取れば北朝鮮は寧辺の核施設廃棄などの追加措置を取る用意がある
- 文氏の招請による金正恩氏の早期ソウル訪問
- 南北軍事共同委員会を早期に稼働させ偶発的な武力衝突防止に向け協議
- 条件が整い次第、北朝鮮での南北経済協力事業の開城(ケソン)工業団地と金剛山(クムガンサン)観光事業を正常化
- 離散家族再会のための常設施設を金剛山に早期開所
- 2032年の夏季五輪の共同開催誘致に向けた協力
これについて産経ニュースは
「今回の首脳会談では北朝鮮の非核化が注目された。金正恩氏は記者会見で、朝鮮半島の非核化への意思を改めて表明したが、あくまでも「米国による相応の措置」を条件にした限定的なものだ。/文氏は20日に韓国に帰還し、会談内容を米国に説明する見通しで、米国の反応が注目される。」
と結んでいますが、これをどう見るべきでしょうか?
北のエージェント・文在寅
明らかに「段階的な核放棄」
端的にいえば、よくここまで酷い内容で合意できたものだと呆れます。
ここで振り返っておけば、米国が北朝鮮に経済制裁緩和の前提条件として突き付けているのは、核兵器、大量破壊兵器のCVIDでした。
このCVIDとは、「完全な、検証可能な、かつ不可逆な方法での廃棄」(Complete, Verifiable and Irreversible Dismantlement)のことであり、核兵器やミサイル、生物・化学兵器なども含めて、大量破壊兵器を広範囲に特定し、完全に武装解除することを意味します。
もっとも、シンガポールでの米朝共同宣言に盛り込まれた合意事項には「CVID」という文言は出て来ませんが、それでも、北朝鮮は朝鮮半島の非核化の努力を義務付けられています。
Reaffirming the April 27, 2018 Panmunjom Declaration, the DPRK commits to work toward complete denuclearization of the Korean Peninsula.(2018年4月27日の板門店宣言に従い、北朝鮮は朝鮮半島の非核化を完了するよう努力することを再確認する。)
また、ドナルド・J・トランプ米大統領は先月、マイク・ポンペオ国務長官に対し、4回目の訪朝を見送るように指示を出しました(『ポンペオ長官訪朝中止:「策士策に溺れる」を地で行く北朝鮮』参照)が、これは北朝鮮が非核化に向けた具体的なアクションを何ら講じていないことを受けた措置です。
逆に言えば、米国が求めているのは「核放棄への具体的なアクション・プラン」ですが、このような観点から合意の1番目と2番目を読むと、米国が納得できる内容かどうかは容易に判断できます。要するに、北朝鮮が言っていることは個別の実験場の廃棄であり、米国が嫌っていた「段階的核放棄」そのものです。
これに対し、米国が求めているのは、「北朝鮮全体で核兵器とミサイルを何個保有しているのか」を明らかにし、「それらをすべて廃棄するための具体的なロードマップ」です。おそらく米国は、これを「ゼロ回答」と判断することは間違いないでしょう。
韓国による制裁破り宣言?
一方、合意の5番目と7番目は、韓国による北朝鮮に対する経済制裁を破るという宣言ともとられかねません。
まず、合意の5番目については、「条件が整い次第」という限定符を付しているものの、北朝鮮に対する経済的利益を与えるという宣言です。このこと自体、国際社会(とくに米国と日本)を激怒させるには十分です。
そもそも国際社会が頑張って北朝鮮に対して経済的圧力を強化しているのに、北朝鮮産の石炭を堂々と密輸してみたり、米国の反対を押し切って北朝鮮に連絡事務所を設置してみたり、と、やっていることは北朝鮮への制裁を逃れさせるようなことばかりです。
また、「核放棄が完了してもいないのに、条件次第では経済的利益を提供する」と宣言すること自体、北朝鮮や国際社会に対して誤ったメッセージを与えかねないものです。
さらに、7番目の合意事項は、「2032年」という具体的な期限を切って、共同で五輪を招致するというものであり、いわば、「2032年には北朝鮮に対する経済制裁が完全に解除されている」という暗黙の前提が置かれています。
この具体的な年限を示したこと自体、文在寅氏は自ら「北のエージェント」を宣言した格好であり、文在寅氏と韓国にとっては大きな失敗だったといえるでしょう。
米国のアクション
会ってくれない可能性もありますよ
以前から私は、文在寅氏が「北のエージェント」として、北朝鮮の利益を最大化するために動いている、という仮説を立てているのですが、今回の南北共同宣言の内容も、まさにこの私自身の仮説を裏打ちするものとなりました。その意味では、まったくサプライズなし、ともいえます。
さて、文在寅氏は今月下旬、国連総会に参加するために訪米し、トランプ大統領らにも会うつもりだそうです。ただ、私自身、『韓国の文在寅大統領がこの時期に平壌を訪問したことの対価』でも説明しましたが、そもそもトランプ大統領自身が文在寅氏と会ってくれない可能性も十分にあると思います。
考えてみれば当然ですが、文在寅氏がやっていることは、「北朝鮮に対する国際社会からの最大限の圧力」という流れと完全に逆行するものであり、かつ、米国や日本の努力を無に帰する可能性があるものばかりです。
ただ、私自身はトランプ氏がいきなり米韓同盟の破棄を突きつけるのではなく、まずは文在寅氏を徹底的に困らせるという行動に出るのではないかと見ています。それは、セカンダリー・サンクションだけとは限りません。
通貨でお仕置き?
これを予想するうえで参考になる材料が1つあります。私も非常に参考にさせていただいている優れた「コリア・ウォッチャー」である鈴置高史氏が、今週初め、日経ビジネスオンライン(NBO)に次の記事を投稿されています。
米国は通貨で韓国に「お仕置き」する/1997年「通貨危機」のデジャブ(2018年9月17日付 日経ビジネスオンラインより)
内容については、直接、リンク先を読んで下さい。記事を読むためには日経IDの取得など、面倒な作業が発生しますが、そのような面倒さを我慢してでも読む価値がある優れた論考です。
ところで、どうして鈴置氏がここにきて「通貨危機」を議論するようになったのでしょうか?その理由は、おそらく、韓国が現在進行形で、米国から「お仕置き」されるようなことをしでかしているからでしょう。今回の南北共同宣言の内容など、「お仕置きされても文句が言えない」ものであることは明らかです。
ただ、具体的に韓国が置かれている通貨ポジション、経済情勢については、少し解説が必要でしょう。
現在の韓国は雇用環境も悪く、家計債務比率も高いため、利下げをするインセンティブが生じていますが、利下げをすれば逆に通貨危機に見舞われる可能性も高く、どうも韓国はにっちもさっちもいかなくなりつつあります。
そこで、できれば明日を目処として、当ウェブサイトの人気シリーズの1つである「韓国の通貨ポジション」に関する記事をアップデートしたいと思います。
どうかご期待ください。
本文は以上です。
日韓関係が特殊なのではなく、韓国が特殊なのだ―――。
— 新宿会計士 (@shinjukuacc) September 22, 2024
そんな日韓関係論を巡って、素晴らしい書籍が出てきた。鈴置高史氏著『韓国消滅』(https://t.co/PKOiMb9a7T)。
日韓関係問題に関心がある人だけでなく、日本人全てに読んでほしい良著。
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【おしらせ】人生で9冊目の出版をしました
日本経済の姿について、客観的な数字で読んでみました。結論からいえば、日本は財政危機の状況にはありません。むしろ日本が必要としているのは大幅な減税と財政出動、そして国債の大幅な増発です。日本経済復活を考えるうえでの議論のたたき台として、ぜひとも本書をご活用賜りますと幸いです。 |
日本語ソースがないのですが、
http://www.asiatoday.co.kr/view.php?key=20180918010011085
[単独]海軍、日本側に観艦式参加艦艇に旭日旗掲揚しない様に要求
一方、
https://japanese.joins.com/article/277/245277.html
<南北会談>18年ぶりに平壌に着いた韓国大統領の「空軍1号機」…姿を消した太極旗
彼らの国家観とか民族の誇りとか、19世紀のnation stateにも達していないんではないかと思われます。
< 更新ありがとうございます。
< 結局、分かり切っていた事ですが、日米にとって、何の進展も無いセレモニーでしたね。南北朝鮮は『意義のある会談をした』と言い張るでしょう。でも、内容がスカスカ。肝心のCVIDには一切触れず、段階的な核の一部破棄しか表明してない。
< また二番目目の『米国が相応の措置をとれば~』辺りは、寝言言うなッですね。恐いもの知らずの文と金。米国も譲歩せよと発言。あほらしい。
< 更に開城工場、金剛山の観光と離散家族面会などすべて北側で設定されている。文句言わんのか?韓国国民は。最後の32年の五輪など、誰も相手にしないよ(日本にタカルつもりだろう。そうはいかんゾッ)。
< 北は想定内だが、韓国の約束破りはここに極めり。どうしようもない極左派政権、米国が熱いお灸を据えるだろう。日本も韓国とは縁切り(即断交ではない)だ。経済制裁をやろう。韓国なんか、日本にとっちゃ、もうイラナイ国だ。敵国認定(笑)。明日の会計士様の解説、期待してます。
毎回世界の動向に対する貴重な視点と卓見を有難う御座います。
結論を先に言うと新宿会計士様はトランプ大統領の見識や能力や意向を買いかぶり過ぎていらっしゃるのではないかと思います。
米国に数十年在住している私にとっては、政策・哲学を全く共有出来ないトランプ大統領が推し進める「ポリティカル・コレクトネス」を完全に無視した言動や政策ですが、それに一種の清清しささえ覚えます。 私を含めた財政的保守主義かつ社会政策的革新派は「ポリティカル・コレクトネス」に引きずられて、「資本主義的な自由競争と無縁な中国からの輸入」を許容したり、「価値観を共有しない大量の移民」を受け入れてしまうような失態を演じてしまうきらいがあります。
第三世界からの移民を自らの偏見を隠さず制限しようとしているトランプ大統領に内心で拍手を送っている高学歴知識層は少なくないと思います。
さて、トランプ氏は基本的に米国の商業哲学に染まった実業家でありそれ以上でもそれ以下でもありません。
「その時、その場、その四半期で成果を出せれば、後の事は跡で考えれば良い」という思考回路が支配しています。
トランプ氏はそれに加えてナルシシスト人格障害の傾向が顕著で、彼にとっての究極のゴールは世界平和でも、米国の栄光でも、選挙民の幸福でもありません。 トランプ氏の最優先事項は「ドナルド・トランプは如何に素晴らしいリーダーであるか」と言う事を全世界に認知させる事です。
トランプ大統領にとっては文大統領が如何に裏切り者的な行動をしようが、「この時、この場、この四半期」で「トランプ大統領が良い仕事をしているように見えさえすれば万々歳」なのです。
ですので、確固とした、深い戦略的定見の無いトランプ大統領が周りのアドバイザーの誰の意見を重視するかによって今後のトランプ氏の行動は激変する可能性を含んでいると私は考えています。
トランプ氏に深い戦略的英知を期待すると、近い将来に落胆が待っていそうです。
>>北のエージェント・文在寅…
…キタの伝書鳩でしょ!!WWWW
ムンちゃんこと、サウスコリアのポッポは~WWWWW…
>北のエージェント・文在寅
かっこよすぎですよね。
まあエージェント・オレンジというのもありましたが。
う〜ん、この人、能天気なのか、それとも韓国と北朝鮮を油断させるパフォーマンスなのか…。
自己コメント、大変失礼致しました。