日韓通貨スワップとホワイト国「同時復活」もあり得る

これは「日韓問題」ではなく「岸田問題」だ

おそらく財務省は日韓通貨スワップを復活させるつもりなのではないでしょうか。想像するに、夏以降の内閣改造で西村康稔・経産相を更迭し、韓国を「(旧)ホワイト国」に戻す政令改悪とともに、日韓通貨スワップ復活が正式決定される、という流れも考えられます。こうした読みが正しければ、岸田「宏池会」政権、どこまでも国民を舐め腐っているものだと思わざるを得ません。

日韓通貨スワップ復活へ

当ウェブサイトでは今年3月の『詐欺師が狙う次の「鴨葱」:日韓スワップ交渉本格化へ』でもすうでに指摘したとおり、日本政府はおそらく日韓通貨スワップを再開させるつもりです。

これに関し今月29日に日韓財務対話が開催されますが、それを機に、おそらく、日韓通貨スワップが復活する可能性が高まってきました。実際、韓国メディアで最近、日韓通貨スワップに関する話題が増えています。韓国メディア『中央日報』(日本語版)が27日に配信した、次のような記事がその典型例でしょう。

29日に韓日財務相会議、7年ぶり再開…通貨スワップ復活するか

―――2023.06.27 11:09付 中央日報日本語版より

これについて、「韓国メディアの報道をうのみにするな」、といったお叱りがあるケースもあるかもしれません。

しかし、今年3月の自称元徴用工問題を巡る「岸田ディール」(『岸田ディールで垣間見える「キシダの実務能力」の低さ』等参照)以降、日本による韓国に対する理不尽な譲歩が相次いでいることは事実です。

個人的には、3月以降の日本政府による理不尽かつ不自然な韓国への譲歩の動きには、木原誠二・内閣官房副長官あたりが関わっているのではないか、といった疑いも持っているのですが、これについてはまだ確証は得られていません。

通貨スワップは韓国への支援

それはともかくとして、そもそも論として、通貨スワップについて勘違いしている人が大変に多いのですが、この通貨スワップ協定自体、「通貨ポジションが強い国が通貨ポジションの弱い国に対して支援を与える」という性質を持っています。

韓国はGDPでこそ世界10位圏入りを伺う、(韓国人曰く)「世界10大国」の一角を占めているはずですが、その通貨・ウォンは、SWIFT、IMF、BISなどのさまざまな統計資料で確認してみても、国際的にはほとんど存在感がない、いわゆる「ソフト・カレンシー」です。

したがって、韓国企業が国際的な生産活動を行ううえでは、どうしても外国の金融機関などから外貨(とくに米ドルなど)でおカネを借りるしかありません。このため、行き過ぎたウォン安にはどうしても警戒せざるを得ないのです。これが、外国から外貨でほとんどおカネを借りていない日本企業との最大の違いでしょう。

これに加え、韓国では最近、貿易赤字が常態化し、国内的には不動産PF問題や限界企業の問題(『金利高止まりの韓国、「限界企業」と不動産PFが信管』等参照)も顕在化しつつあります。

この点、『韓国「リショアリング税制」が次の通貨危機の原因に?』でも指摘したとおり、韓国ではいわゆる「リショアリング税制」――海外子会社などから配当金でキャッシュを吸い上げる際の税制優遇――のおかげで、経常収支は一時的に黒字化しています。

しかし、このことは逆にいえば、韓国企業にとっては海外拠点での資金繰りが悪化する可能性を示唆しており、いざというときのドル不足という懸念は払拭できません。

だからこそ、本来ならばドル資金繰りのためには利上げをし、通貨危機を防ぐべきなのですが、利上げをすれば国内各地で債務問題が顕在化し、金融危機が実現しかねない状況です。

しかし、日韓通貨スワップがあれば、韓国は利上げをしなくても、通貨危機を回避することができます。「後ろに日本がついているぞ」というアナウンス効果が得られるからです。

これが、韓国が日本からの通貨スワップで支援を受けたがる、最大の理由なのです。

日韓通貨スワップで韓国は「日本を非難した」

ちなみに日韓通貨スワップを提供したことで、日本が韓国から感謝されたという事実はありません。

たとえばリーマン・ショック直後の2008年12月、日本が韓国に対する通貨スワップを300億ドル(うち米ドル100億ドル、日本円200億ドル)に増額してあげたとき、韓国の尹増鉉(いん・ぞうげん)企画財政部長官(当時)は翌・09年7月に、日本の姿勢を激しく非難しました。

「韓国が厳しい時、日本が最も遅く外貨融通」

―――2009.07.07 08:07付 中央日報日本語版より

尹増鉉氏の言い分は、「韓国が最も厳しい時に外貨を融通してくれたのは、米中日の中で日本が最後だ」、「(当時は)世界第2位の経済大国なのに、日本は出し惜しみをしている」、といったものであり、こんな注文も付けています。

日本は周辺国が大変な時は率先し、積極的に支援の手をさしのべてほしい。アジア諸国が日本にふがいなさを感じるゆえんだ」。

支援を受けた側のものとは思えないほどに傲慢な発言ですが、私たち思い出しておかねばならないのは、それだけではありません。野田佳彦首相(当時)が2011年10月、2回目の増額に応じてやったときのことです。

韓国はこの「700億ドルの野田佳彦スワップ」に当時の李明博大統領は感謝するでもなく、それどころか自称元慰安婦問題を突如として蒸し返し、2012年8月には島根県竹島に不法上陸し、天皇陛下を侮辱する発言を行い、野田首相の親書を郵便で送り返すという狼藉を働きました。

しかも、日韓通貨スワップは韓国にとって、「安心して為替操作に手を出すための安全装置」であり、これによりかつて日本の産業が潰されたという経緯もあります(『日韓通貨スワップこそ、日本の半導体産業を潰した犯人』等参照)。

財務省の詭弁

ただ、財務省あたりはこの日韓通貨スワップについて、「日韓双方にメリットがある」と誤認させようとしています。参考になるのが財務省の山崎達雄・国際局長(当時)のこんな趣旨の答弁です(『【資料】2014年4月16日の日韓スワップの議事録』等参照)。

  • 日韓通貨スワップなどの金融協力は、為替市場を含む金融市場の安定を通じ、韓国だけでなく日本にとってもメリットをもたらす
  • 日本と韓国との間の貿易・投資関係、とりわけ日本企業も多数韓国に進出して活動しているという事情を踏まえると、その国の経済の安定というのは双方にメリットがあり、通貨という面では、むしろ通貨ウォンを安定させるという面もある
  • 財務省が当時、日韓通貨スワップの規模を拡大した理由としては、韓国のためだけというよりも、むしろ日本のため、ひいてはアジア地域の経済安定のためという側面があった

端的にいって、とんでもない認識であり、理屈になっていません。ただ、それでも岸田文雄政権、鈴木俊一財相はおそらく、日韓通貨スワップを再開するつもりでしょう。

日本大使館前や日本領事館前に慰安婦像を設置され、日韓慰安婦合意を破棄され、自称元徴用工問題を巡る違法判決問題も未解決のままです。

しかし、韓国による日本に対する明確な犯罪行為である火器管制(FC)レーダー照射問題を「不問にする」と表明する(『FCレーダー照射は不問?自民岩盤支持層失う岸田政権』等参照)くらいの政権ですので、岸田首相や宏池会政権関係者、財務省などにとっては、スワップくらいはどうでも良いのかもしれません。

「ホワイト国」復帰は西村氏が抵抗しているのか?

さて、対韓譲歩に関連し、もうひとつ気になるのが、韓国を「(旧)ホワイト国」に戻すためのパブコメの件(『パブリック・コメント大募集!入力方法を解説します!』)です。

これについては、パブコメ自体がすでに先月末時点で締め切られているにも関わらず、現時点においてまだ続報は出て来ていません。2019年に韓国を「(旧)ホワイト国」から除外した際は、4万件を超す意見(うち賛成が95%)が寄せられ、8月上旬には政令改正が閣議決定されていたのと対照的です。

これはもしかすると、官邸側と西村康稔経産相が対立している、という事情でもあるのでしょうか。

読者コメント欄の報告などから想像するに、韓国を輸出貿易管理令別表第3の国に追加する政令改悪案に対しては、8000件近いコメントが提出され、その圧倒的多数が反対意見だったのではないでしょうか。もしそうだとしたら、経産省としても、完全に身動きが取れなくなっているのかもしれません。

実際、当ウェブサイトの読者コメント欄でも、100件を超える読者の方々からの報告のうち、「私は賛成意見を提出しました」と明確に述べたのは(発見した限りは)たった1人であり、残り99%以上が反対意見を出したと明らかにしているからです。

ただし、この見方が正しかったとしても、仮に夏以降の内閣改造で、もしも西村氏が経産相を外れるようなことがあれば、後任経産相次第では、日韓通貨スワップと前後して、この「韓国ホワイト国戻し」も実現するはずです。

その後、韓国で政権が変わるなどし、韓国が再び日本に対し、自称元徴用工問題や自称元慰安婦問題などの不法行為を再開することで、日本が韓国に与えた恩が仇で返されるまでがセットでしょう。岸田首相、本当に「歴史に名を遺す首相」なのかもしれません。

いずれにせよ、安倍晋三総理大臣が狂人に暗殺されてからのたった1年で、よくぞここまで悪くなるものだと思いますし、宏池会政権はどこまでも国民を舐め腐っていると言わざるを得ないでしょう。

「日韓通貨スワップ」も「ホワイト国」も「レーダー照射不問」も、結局のところ、すべては「日韓問題」ではなく、日本の国内問題、もっと言えば「宏池会問題」であり、「岸田問題」に尽きるからです。

余談ですが、自民党の安倍派の皆さんは、宏池会政権にここまで好き勝手やられて、いったい何をして過ごしているのでしょうか。

はなはだ、疑問です(もっとも、『「徴用工解決で安保協力が進む」という松川議員の詭弁』などでも指摘したとおり、最近の自民党安倍派には明らかにおかしな者もいるようですので、このあたりは注意が必要かもしれませんが…)。

本文は以上です。

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読者コメント一覧

  1. 元一般市民 より:

    既に7月21日にグループAに戻すことが閣議決定されましたね。残念ですが・・・

    1. 墺を見倣え より:

      「7月21日」って未来の日付なので???と思ったら、

      >>> 6月30日に公布、7月21日に施行する

      という事なんですね。

  2. 奧の細道 より:

    日本の国益をどのように守り、日本の繁栄を確保していくかとの観点ではなく、①岸田→私的利益確保最優先(=国民から付託された公的権力の私的流用) ②財務省→省益最優先(=何があっても増税第一と権限維持を通じた天下り先確保)という、要するに両者(政権担当者と財務省)の優先事項の中の妥協の一つとして、この韓国に対する通貨スワップも処理されるような気がします。要するに国益など全く考慮せず、その後、それをとってつけたような表面的な説明でやり過ごす、という例のパターンが踏襲。やはりこの最悪政権には可及的速やかに退場願いたいし、その為の行動を主権者たる国民一人一人がとっていきたいところです。その行動を一つ一つ示すなかで、対韓国向け通貨スワップも阻止したい。しかし、LGBT理解増進法でついにこの政権は底が抜けてしまったような気もします。

  3. DEEPBLUE より:

    とりあえず岸田自民に選挙でノー出さないと暴走は止まらないでしょう。選挙で勝った途端に書いてない自分のやりたい事を熱心にやり出したのですから。
    一度全否定しないとこの方針は変わりませんよ。

  4. ライダイハン より:

    全体で何割が反対意見であったのかの数値一切が書かれていない。賛成意見は、官僚が作文したのかも。

  5. 名前 より:

    韓国は日本円が下がった今通貨スワップしても意味ないといってます。結ばなくていいのに。

  6. 普通の日本人 より:

    岸田は馬〇なんだなあ。
    宮沢政権と比較してどちらが馬〇か投票されると言うのを知らないのか?
    衆議院解散を早くやってくれ。
    北と会談したくらいで支持率が上がるなんてあり得ないよ

  7. より:

    為替市場を含む金融市場と言っても日韓間ではどうなのでしょう?と考えると為替スワップもありですけどFIMAレポファシリティの日本版作ってのほうがどうなんでしょう。
    担保となる紙屑でもミズポ銀に渡せばドルにしてくれるし、利息もらえるし取りっぱぐれる心配しなくて良いと思うのですが…。

    でもキシダニ政権だと首相もですが害務・罪務もポンコツ揃いだけに期待薄かしら。

  8. クロワッサン より:

    ま、岸田文雄が総理やるのと白眞勲が総理やるのと大差ないんじゃないですかね?

    解散総選挙の延期も、岸田が韓国に供与する利益を積み増しする為でしょうし。

    岸田文雄が1日でも早く総理ではなくなるよう祈ります。

  9. 匿名 より:

    菅前首相(安倍路線の継承者のはず)、麻生元首相(元財務相)が次いで訪韓、大統領と会談したことはどのような思惑があってのことなのか。麻生氏はスワップ交渉を停止した本人であり、菅氏は日韓議連会長を引き受けた。
    このようなブログを主宰する会計士なら当然に彼ら2人の行動について考察して然るべきだろう。

  10. 比翼 より:

    更新ありがとうございます。

    韓国の運命を考えるとき、よく思い起こすのが芥川龍之介の「蜘蛛の糸」の寓話です。
    一匹の蜘蛛を救ったカンダタのことを思いやり、お釈迦様が蜘蛛に糸を垂らせてやって、地獄の池から救い出すチャンスを与え、その悲しい顛末を記したお話しです。

    新宿会計士様は尹政権に対して日韓スワップを締結すると、過去の李明博政権と同じように、韓国は手のひらを返して侮日に走り出すのではないかと懸念しておられます。過去の愚かな繰り返してをしてはならないと、岸田政権に対して警告を発しておられます。韓国が利益を得た瞬間に手のひらを返して恩を仇で返して来る癖は、韓国ウォッチャーならば常識です。
    日韓スワップは日本に対しても、韓国に対しても、愚かな結果を招くことになる可能性はかなり高いと言わざるを得ません。

    こう考えてはみてはどうでしょうか?
    岸田政権は韓国が手のひらを返し、カンダタのように蜘蛛の糸が切れて真っ赤な血の池に堕ちて行くことを見越した上で、あえて日本の先見性のある有権者の期待を裏切り続けているのではないか、と。
    蜘蛛の糸を垂らさせたお釈迦様の慈悲は愚かな判断だった、これと同様に韓国に対し無軌道な慈悲を施そうとしている岸田政権は愚かな選択をしようとしている。
    こうした方向性で読売新聞(LGBT法案反対論)もNHK(徴用工問題の発端となった端島の報道内容が戦後、昭和30年のものであった暴露)も報道を重ねて来ているように思えます。

    アメリカが韓国を放棄しないのならば、日本は韓国を放棄しない。
    アメリカが韓国を放棄するのならば、日本もまた韓国を放棄する。

    自分は韓国がカンダタになるのか、ならないのか、それを見届けるのみである、と思案しています。

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