日本が6割、韓国が3位に浮上=米ドル為替スワップ

本稿は毎週の「資料集」です。『速報:米FRBが9つの中央銀行と為替スワップを締結』などでも報告したとおり、日英欧瑞加5ヵ国・中央銀行に加え、世界の9つの中央銀行・通貨当局(FIMA)は現在、米連邦準備制度理事会(FRB)と為替スワップを締結しています。当ウェブサイトでは「FRB-FIMA為替スワップ」に関して、その実行残高を定期的に報告しているのですが、今週もその最新の残高が公表されていますので、本稿ではその残高、平均金利・借入期間、時限スワップに関する返済予定表などの概要をまとめておきたいと思います。

FIMA為替スワップ

速報:米FRBが9つの中央銀行と為替スワップを締結』などでも報告したとおり、日英欧瑞加5ヵ国・中央銀行に加え、世界の9つの中央銀行・通貨当局(FIMA)は現在、米連邦準備制度理事会(FRB)と為替スワップを締結しています。

この為替スワップは、通貨スワップと異なり、「通貨当局同士」が通貨を交換する協定ではありません。あくまでも通貨当局を通じ、相手国の民間金融機関に対して外貨を供給するための契約であり、一般に “Bilateral Liquidity Swap Agreement” などと呼ばれます。

なお、国際金融協力の世界における通貨スワップや為替スワップと、デリバティブの世界における通貨スワップや為替スワップについては意味合いが異なりますので、これについては『【総論】4種類のスワップと為替スワップの威力・限界』あたりをご参照くださると幸いです。

一般に「為替スワップ」でも通用するのですが、いわゆる民間金融機関の提供する「為替スワップ」(Buy-Sellあるいは “FX swap” )と区別するため、本稿では敢えて、「FIMA為替スワップ」と呼称したいと思います(※ただし、この表現は一般的なものではありませんが…)。

現時点における米FRBとのFIMA為替スワップは、日英欧瑞加5ヵ国の中銀が常設型で金額上限を設けていないタイプのものを保有しており、それ以外の9つの中銀・通貨当局は、期間6ヵ月以上、上限600億ドルないしは300億ドルの為替スワップを3月に締結しています。

米FRBとのFIMA為替スワップ
  • 常設・金額上限なし…日本、英国、欧州、スイス、カナダ
  • 期間6ヵ月~・金額上限600億ドル…豪州、ブラジル、韓国、メキシコ、シンガポール、スウェーデン
  • 期間6ヵ月~・金額上限300億ドル…デンマーク、ノルウェー、ニュージーランド

最新残高は4470億ドル、うち日本銀行が半額借入

また、ニューヨーク連銀の “Central Bank Liquidity Swap Operations” のページにあるエクセルファイル “U.S. Dollar Liquidity Swap – Operation Results” に、3月2日以降の入札実績がすべて公表されています。

見たところ、このエクセルファイルはおおむね週1回、現地時間の木曜日に更新されているようであり、現時点で公表されているデータは6月11日(水)入札実施・6月12日(金)貸付実行分までのものです。

これをベースに、6月12日(金)時点の借入残高をまとめたものが、図表1です。

図表1 6月12日(金)時点の各中央銀行のFIMA為替スワップ借入残高
相手先元本と構成比平均金利・日数
日本銀行2129.62億ドル(60.4%)0.33%/81.03日
欧州中央銀行695.69億ドル(19.7%)0.33%/83.92日
韓国銀行187.87億ドル(5.3%)0.62%/83.89日
イングランド銀行133.80億ドル(3.8%)0.34%/84.00日
スイス国民銀行108.33億ドル(3.1%)0.33%/83.62日
シンガポール通貨庁96.21億ドル(2.7%)0.50%/82.56日
メキシコ銀行65.90億ドル(1.9%)0.77%/84.00日
ノルウェー銀行54.00億ドル(1.5%)0.34%/84.00日
デンマーク国民銀行42.90億ドル(1.2%)0.34%/82.36日
豪州準備銀行11.70億ドル(0.3%)0.32%/84.00日
カナダ銀行なし(0.0%)
NZ準備銀行なし(0.0%)
リクスバンク(スウェーデン)なし(0.0%)
ブラジル銀行なし(0.0%)
合計3526.02億ドル(100.0%)0.36%/82.11日

(【出所】ニューヨーク連銀の “Central Bank Liquidity Swap Operations” のページにあるエクセルファイル “U.S. Dollar Liquidity Swap – Operation Results” を参考に著者作成)

トータルの金額は先週・5日時点の4469.65億ドルから943.63億ドル減って3526.02億ドルですが、その減少要因は欧州中央銀行(ECB)の借入残高が754.07億ドル減ったことであり、結果として日銀だけで全体の6割を借り入れている計算です。

一方、順位には変動が生じており、イングランド銀行が前週の231.25億ドルから133.80億ドルに残高を減らしているため、結果的に韓国銀行が借入額上位3位に浮上しています(※といっても、韓国銀行が新たに資金を借り入れた、というわけではありません)。

また、くどいようですが、『日米為替スワップ「本当の意味」と国債372兆円増発』でも述べたとおり、日本が巨額のFIMA為替スワップの引出を行っているというのは、日銀の円資金を米FRBに預け、米ドルの緩和を行っているのと同じ効果でもあります。

その意味では、間接的には米国も日銀の資金で米国債のファイナンスをしている、という言い方をしても良いのかもしれません(※ニューヨーク連銀が預けられている円資金で日本国債を買ってくれているならば話は別ですが…)。

非常設型スワップの返済予定表

一方、非常設型のスワップ締結国の場合は、最も多額の借入を行っているのが韓国銀行で187.87億ドル(全体の5.3%)、2番目に多くの借入を行っているのがシンガポール通貨庁で96.21億ドル(全体の2.7%)です。

また、常設型スワップ締結国のなかではカナダ銀行、非常設型スワップ締結国のなかではNZ準備銀行、リクスバンク(スウェーデン)、ブラジル銀行の借入残高が引き続きゼロです。

ここでは、6月12日時点の残高についての「返済予定表」を確認してみましょう。

まずは韓国銀行です。韓国銀行は6月12日時点で187.87億ドルを借り入れており、加重平均金利と日数はそれぞれ0.62%と83.89日ですが、その返済予定表は図表2のとおりです。

図表2 韓国銀行の返済予定表
返済日金額金利/期間
6/25 (木)79.20億ドル0.91%/84日
7/2 (木)41.40億ドル0.53%/84日
7/9 (木)20.15億ドル0.36%/83日
7/16 (木)21.19億ドル0.34%/84日
7/23 (木)12.64億ドル0.33%/85日
7/30 (木)13.29億ドル0.29%/83日
合計/平均187.87億ドル100.00%/84日

(【出所】ニューヨーク連銀の “Central Bank Liquidity Swap Operations” のページにあるエクセルファイル “U.S. Dollar Liquidity Swap – Operation Results” を参考に著者作成)

次に、シンガポール通貨庁(MAS)です。MASは6月4日時点で95.71億ドルを借り入れており、加重平均金利と日数はそれぞれ0.50%と82.55日で、その返済予定表は図表3のとおりです。

図表3 シンガポール通貨庁(MAS)の返済予定表
返済日金額金利/期間
6/17 (水)2.48億ドル0.32%/28.00日
6/24 (水)21.75億ドル1.09%/84日
7/8 (水)31.49億ドル0.34%/84日
7/22 (水)25.06億ドル0.33%/84日
8/5 (水)14.43億ドル0.30%/84日
8/19 (水)0.50億ドル0.30%/84日
9/2 (水)0.50億ドル0.32%/84日
合計/平均96.21億ドル100.00%/83日

(【出所】ニューヨーク連銀の “Central Bank Liquidity Swap Operations” のページにあるエクセルファイル “U.S. Dollar Liquidity Swap – Operation Results” を参考に著者作成)

同様に、デンマーク国民銀行、メキシコ銀行、ノルウェー銀行、豪州準備銀行についても残高をまとめておきましょう(図表4)。

図表4 その他の中央銀行
返済日金額金利/期間
デンマーク国民銀行
6/19 (金)28.25億ドル0.34%/81.00日
7/2 (木)14.25億ドル0.33%/85.00日
7/10 (金)0.40億ドル0.45%/84.00日
デンマーク国民銀行 合計42.90億ドル0.34%/82.36日
メキシコ銀行
6/26 (金)50.00億ドル0.91%/84.00日
7/1 (水)15.90億ドル0.36%/84.00日
メキシコ銀行 合計65.90億ドル0.77%/84.00日
ノルウェー銀行
6/22 (月)10.75億ドル0.37%/84.00日
6/29 (月)5.00億ドル0.32%/84.00日
7/13 (月)2.75億ドル0.33%/84.00日
7/20 (月)35.50億ドル0.33%/84.00日
ノルウェー銀行 合計54.00億ドル0.34%/84.00日
豪州準備銀行
6/19 (金)0.50億ドル0.34%/84.00日
6/26 (金)6.00億ドル0.32%/84.00日
7/7 (火)5.00億ドル0.33%/84.00日
7/24 (金)0.20億ドル0.30%/84.00日
豪州準備銀行 合計11.70億ドル0.32%/84.00日

(【出所】ニューヨーク連銀の “Central Bank Liquidity Swap Operations” のページにあるエクセルファイル “U.S. Dollar Liquidity Swap – Operation Results” を参考に著者作成)

金融不安は去ったかに見えるが…

以上より、FIMA為替スワップの残高については毎週、定点観測的に眺めているのですが、非常設型スワップ締結国(9ヵ国)に関しては、今週の新たな引出はシンガポール通貨庁(MAS)の6月10日実行・9月2日返済の5000万ドル分に過ぎません。

また、図表1でも明らかなとおり、現時点でも多額の借入国は日本くらいなものであり、また、欧州中央銀行、イングランド銀行、スイス国民銀行はいちおう新たな借入を起こしているものの、残高は徐々に減らしている、という状況にあります。

その一方で、FIMA為替スワップについては3月中旬の「金融市場の緊急避難」としての役割を果たしたものの、現時点ではその役割は薄れており、実際、9つの中央銀行・通貨当局はこのFIMA為替スワップをさほど使っている様子もありません。

結局、このFIMA為替スワップについては、邦銀勢が「安い資金調達手段」として使っているのを除けば、現状では「危機対応」としての意義は薄れていると考えられます。

もっとも、「ポストコロナ」の経済危機が各国で本格化する可能性もあるため、9つの中央銀行・通貨当局のFIMA為替スワップについては9月以降も延長されるのかどうかについては、引き続き注目したいと考えている次第です。

読者コメント一覧

  1. めがねのおやじ より:

    更新ありがとうございます。

    韓国銀行の第1回目返済、6月25日木曜日は、79.20億ドル で金利0.91%/84日ってちょっと大丈夫?金額も大きいし、金利も高め。シロウトの私が言える事ではありませんが、愉しみにしておきます(笑)。

    どうぞ好きなようにしなさい。日本はカンケーネー。

  2. 阿野煮鱒 より:

    経済ド素人の戯れ言と、事前に逃げを打ってから、用語についての感想を一つ。

    通貨スワップと為替スワップの混同・混乱は韓国のみならず、楽韓さんのところでは、楽韓さんご自身が韓国に倣って、こちらで言う為替スワップを通貨スワップと書き続けているため、コメント欄で論争が起こり、楽韓さん支持派が主流となっています。

    また、このサイトにも時々半可通な方が現れて「間違いの指摘」をなさいます。それだけ、これらの用語が社会通念として行き渡っていないという事だと思います。

    そもそも、通貨スワップと為替スワップという言葉が似ていて紛らわしく、それぞれの用語が意味するところは、かなり国際金融に精通した人でないと、理路整然と説明できません。また理路整然とした説明の中身が、またその業界の事情に詳しい人でないと理解できません。

    私の分野で言うと、ポジティブ・フィードバック(Positive Feedback)は「正帰還」とも呼ばれ、出力の発散を狙って出力を反転させずに入力に戻すことです。系の増幅率は大きくなり回路は不安定になります。発振回路やコパレータに応用されます。ネガティブ・フィードバック(Negative Feedback)は「負帰還」とも呼ばれ、出力を反転して入力に戻すことです。(実際には反転して受け取る入力に反転しない出力を戻すことが多いです。)系の増幅率は下がり、歪みは少なくなり、回路は安定します(例外多々あり)。

    何のことだか分からないでしょう? 当然です。ポジティブ・フィードバックと言ったら「お客様から好意的な感想が寄せられた」とか、ネガティブ・フィードバックと言ったら「お客様から否定的な反応が寄せられた」とか思いませんか? せめて「正帰還/負帰還」なら、「ああ、良く分からないけど専門用語だね」と押しのけられ、変な誤解は生まないと思います。

    新宿会計士様が、『【総論】4種類のスワップと為替スワップの威力・限界』 で説明なさっているように、近年に日銀が使い始めた用語だそうですから、敢えて分かりにくい用語を作って国民を煙に巻く意図があるのではないかと邪推したくなります。

    英語版Wikipediaを見ますと、

    Central bank liquidity swap
    https://en.wikipedia.org/wiki/Central_bank_liquidity_swap

    Central bank liquidity swap is a type of currency swap used by a country’s central bank to provide liquidity of its currency to another country’s central bank.

    とありまして、これは二国間の中央銀行どうしの流動性交換ですから、こちらで言うところの為替スワップではなく、通貨スワップと読めます。

    Wikipedia内では“Bilateral Currency Swap Agreement”は見つかりませんでした。他では日本絡みの報道で見つかります。

    通貨スワップの直訳である“Currency swap”を見てみますと、

    Currency swap
    https://en.wikipedia.org/wiki/Currency_swap

    In finance, a currency swap (more typically termed a cross-currency swap (XCS)) is an interest rate derivative (IRD). In particular it is a linear IRD and one of the most liquid, benchmark products spanning multiple currencies simultaneously. It has pricing associations with interest rate swaps (IRSs), foreign exchange (FX) rates, and FX swaps (FXSs).

    とありまして、広く国際間の通貨交換全般について述べられています。中央銀行間の通貨交換に関しては、同ページ内に

    To defend against financial turmoil by allowing a country beset by a liquidity crisis to borrow money from others with its own currency, see Central bank liquidity swap.

    とありまして、上述の“Central bank liquidity swap”を指し示しています。

    Wikipediaが絶対正しいと主張する根拠は持ちません。少なくとも、英語版Wikipediaは、中央銀行どうしの流動性交換は認識しているが、民間金融機関が自国の中央銀行を通じて相手国の流動性を調達するオペレーションなるものを説明する必要を感じていないようです。

    提案:
    カタカナ言葉を使えば格好いいという風潮を改め、明治の初心に帰って、専門用語は和語・漢字語を作り出して普及させてはいかがでしょうか。

    1. カズ より:

      阿野煮鱒 様

      難しいことはともかくとして・・。

      ↓無理に感字(カンジ)をあてれば、

      政府間のスワップは「信用融通枠付(シンヨウスワップ)」
      中銀間のスワップは「抵当融通枠付(テイトウスワップ)」

      ・・って感じなのでしょうか?(先人の偉業にはカナイマセン) 

      ↓意味を詰めすぎないで、

      政府間:「セーフスワップ」
      中銀間:「バンクスワップ」

      とかの言い換えの方が私には解りやすいのかもです。

      片やセーフティーで片やバンキングなのですし・・。

  3. 雑把 より:

    う~ん

    韓国、普通に6月25日に返しちゃいそうですね

    ドルより、ウォンの方に期待ですかね?

    韓財政と国債に注目します

  4. 匿名 より:

    レバノンの通貨危機はどっかに飛び火するのかな?

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