本日は「日韓スワップ協定」について、久しぶりにアップデートしておきたいと思います。というのも、最近またぞろ、日韓スワップに関する「待望論」が出現して来ているからです。本日の記事は少し長いですが、正確な統計に基づいて日韓スワップに関して議論しておきます。

※本文はお知らせの後に続きます。

本文の前に:最新記事のお知らせ!

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  • 2017/04/15 00:00 : 民進党の危機はメディアの危機 (マスメディア論)
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  • 2017/04/14 00:00 : 北朝鮮リスクと韓国の6つの未来 (韓国崩壊)
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  • 当ウェブサイトでは現在、1日1~2回、記事を更新しており、「知的好奇心を刺激する最新記事」のサマリーをトップページにて常時30件、タイトルを常時100件、それぞれ表示しています。これを機に、ぜひ、「新宿会計士の政治経済評論」をブックマークに登録してください。
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    ここからが本文です。

    韓国側の「スワップ待望論」

    今年は「アジア通貨危機」の発生から20年が経過する節目の年です。先日も紹介しましたが、アジア開発銀行研究所(ADBI)などが主催する、「アジア通貨危機から20年」をテーマにしたシンポジウムが、昨日、東京で開催されました。

    韓国財務副大臣「資金フロー管理が必要」、日韓スワップ協定再開訴える―東京で「アジア通貨危機から20年」シンポジウム(2017年4月14日 15時00分付 excite.ニュースより【レコードチャイナ配信記事】)

    リンク先記事(レコードチャイナ)によると、シンポジウムに参加した韓国の財務副大臣は現在の経済状況について、

    世界経済の伸びが鈍化する中で、米連邦準備制度理事会(FRB)が利上げを志向(しており)、キャピタルフロー(資金の流れ)をいかに管理していくかが重要だ

    と述べたのだそうですが、これについて『レコードチャイナ』は

    日韓関係のもつれから15年2月から凍結状態となっている日韓通貨スワップの再開が望ましいとの考えを示唆したものと注目される

    と指摘しています。この発言をどう解釈したら「日韓通貨スワップの再開」につながるのか、私には今一つわかりかねる部分もありますが、それでも韓国側で日韓スワップの再開に対する期待が強まっていることは事実のようです。というのも、韓国のメディア『中央日報』(日本語版)も、一週間前にこんな記事を配信しているからです。

    韓日中財務長官会議開催…韓国メディア「韓日通貨スワップに関心」(2017年04月07日14時08分付 中央日報日本語版より)

    『中央日報』の記事では、

    韓国メディア「ニュース1」等はこの日、日本とは釜山(プサン)少女像撤去問題で協議が中断している韓日通貨スワップ問題、中国とはTHAAD(高高度防衛ミサイル)葛藤に伴う経済報復と10月に契約が終了する韓中通貨スワップ交渉の糸口を探れるかどうかに関心が集まっていると報じた

    と述べています。

    つまり、情報源が『レコードチャイナ』なのか、『中央日報』なのかという違いはありますが、短期間に複数のメディアが「日韓スワップ再開」論に言及したという点は重要でしょう。言い換えれば、韓国側でメディアや企画財政部関係者らが、日韓スワップ再開に対して強い関心を示すだけの事情が生じている、ということでもあるからです。

    そこで、本日は、「金融規制の専門家」という立場から韓国側で日韓スワップに対する関心が急激に高まっている事情に迫るとともに、改めて日韓スワップの本質について確認してみたいと思います。

    国家も破綻する!

    今年は「アジア通貨危機」から20年の節目

    「アジア通貨危機」は、1997年にタイで発生した通貨の売り浴びせをきっかけに、インドネシアや韓国など、広範囲に通貨危機が伝播した事件を指します。この時のアジア諸国の経験を踏まえて、日本が主導する形となって成立した広範囲な協定が「チェンマイ・イニシアティブ」です。また、アジア諸国を中心に、「いざというときの外貨準備」を積み増す動きが広まりました。

    ただ、それでも新興市場(EM)諸国を中心に、何らかの危機が発生することはあります(図表1)。

    図表1 国家の危機
    危機の名称 概要 備考
    アイスランド危機 リーマン・ショック後の為替相場の急変により、2008年10月に、人口30万人程度の北欧の小国・アイスランドの3つの銀行が外貨建てでかき集めた預金が返せなくなったもの 英国などの市民がアイスランドの銀行に大量にお金を預けていたため、被害が拡大した
    ギリシャ危機 共通通貨・ユーロ建てのギリシャ国債について、2012年3月に事実上「デフォルト」した事案 欧州連合(EU)・欧州中央銀行(ECB)・国際通貨基金(IMF)という「トロイカ」側は「秩序あるデフォルト」を強調
    キプロス危機 国内の金融機関が経営危機に陥り、2013年3月に預金封鎖により、一人10万ユーロを超える金額については銀行の株式と強制的に交換する措置が取られた ロシアなどの富裕層がキプロスを身近なオフショア投資先にしていたが、ギリシャ語圏であるキプロスの銀行が保有していたギリシャ国債の焦げ付きなどが響いた
    アルゼンチン危機 2001年に「デフォルト」したアルゼンチンのドル建国債について、債務交換に応じなかった米国のヘッジファンド勢との訴訟に敗れ、2014年7月に「第二次デフォルト」に陥った アルゼンチンは国内法で強制的な債務交換を義務付けたものの、米国の裁判所はこのアルゼンチンの国内法を「米国では無効」と判断した

    ここに列挙した4つの事例のうち、3つは欧州で生じていて、そのうち2つはユーロ圏・ギリシャ語圏であるというのは非常に興味深いところですが、それはさておき、いずれの事例においても、一国の銀行システム、あるいは国家そのものがデフォルトの危機に陥っているという点に注目すべきです。そして、これらの事例には共通点があります。それは、「お金を借りている主体が政府か民間銀行であること」と、「債務が外貨建て(あるいは共通通貨建て)であること」という2点です。

    私は、アジア通貨危機のような広範囲な通貨危機がすぐに再発する危険性は少ないと見ていますが、それでも、アジア通貨危機以降も、いくつもの国で通貨危機が生じていたことは事実です。

    最新の資金循環統計が公表されない!

    ところで、私にとっての「ライフワーク」は、資金循環統計の分析です。

    ここで、「資金循環統計」とは、国・通貨圏全体の「お金の流れ」を示した統計です。一国の経済主体は「家計」「法人企業」「中央政府」「中央銀行」「金融機関」などに分かれますが、資金循環統計を見れば、その国の特徴が金融面から明らかになるため、極めて有益です。そして、日本の資金循環統計の分析については、今月初めに『資金循環統計を「きちんと」読む』という記事の中で示した通りですので、経済に興味がある方であれば、是非、ご一読くださると幸いです。

    一方、「日韓通貨スワップ協定の再開議論」が出てきて以来、私は韓国の資金循環統計についても興味深く読むようになりました。ところが、韓国銀行のウェブサイト上、資金循環統計の最新版(2016年12月分)については、いまだに公表されていません。この理由は定かではありませんが、大統領が裁判所により罷免されるなどの国ですから、基本的な統計書の公表が遅れたとしても、別に不思議ではありません。

    そこで、仕方がないので、やや古い2016年9月末時点の資金循環統計をベースに、韓国の問題点を探ってみましょう。

    韓国経済の3つの問題点

    ここでは、「資金循環統計」という客観的かつ確実な資料を使って、韓国経済の3つの問題点を指摘しておきましょう。昨年の記事『「韓国経済崩壊論」を金融面から検証する』でも触れましたが、資金的に見た韓国の問題点とは、

    • 民間企業や銀行が多額の対外債務を抱えていること、
    • 家計が抱えている債務が極めて多額であること、
    • 銀行セクターが「オーバーローン状態」となっていること、

    という3つです。

    家計債務の問題

    まずは「家計債務」の問題から見ていきましょう(図表2)。

    図表2 韓国の家計のバランスシート

     

    一目見てわかるのは、家計の借金(資金循環統計上の項目でいう「貸出」)の金額が、家計が保有する現金預金の金額とほぼ等しい、ということです。比較のために日本の家計のバランスシートを眺めてみると、その違いは一目瞭然です(図表3)。

    図表3 日本の家計のバランスシート

    日本の場合、家計が抱えている債務(資金循環統計の項目でいう「貸出」)の金額は321兆円で、家計が保有する莫大な現金預金の金額(936兆円)の3分の1程度に過ぎません。これをみると、韓国の家計が日本の家計と比べて、明らかに多額の借金を負っているということは間違いなさそうです。もっとも、日本の家計が健全過ぎるのか、韓国の家計が不健全すぎるのかはわかりませんが…。

    預貸率の高さ

    次に、預金取扱機関(銀行等の金融機関)のバランスシートについても眺めてみましょう(図表4)。

    図表4 韓国の金融機関のバランスシート

    韓国の金融機関のバランスシートを見て、真っ先に気付くのは、貸出金の多さです。特に、預金総額が2,262兆ウォン程度なのに、貸出金がほぼ同額です。この「出金と金の比率」のことを、それぞれの頭文字を取って、一般に「預貸率(よたいりつ)」と呼びます。

    もちろん、「預貸率が高い」こと自体、問題となるものではありません。預金金融機関の場合、預貸率が高いということは、本業である貸出業務がうまく行っている、ということだからです。比較のために、日本の預金取扱金融機関のバランスシートを紹介しましょう(図表5)。

    図表5 日本の金融機関のバランスシート

    これを見ると、日本の金融機関の「預貸率」は50%少々に過ぎません。つまり、私が言いたいことは、韓国の金融機関が日本の金融機関と比べて、極めて高い預貸率を誇っている、という事実です。このような状態だと、経済がうまく行っているうちは良いのですが、いったん貸出金が焦げ付くと、金融システム不安が一国に蔓延してしまいます。

    特に、韓国の場合は家計の債務負担が重いため、仮に家計が債務に耐えられなくなった場合には、金融機関経営を家計不良債権問題が直撃することになります。「家計債務爆弾」が炸裂した場合、韓国の金融機関が直ちに経営不安に陥る、ということです。

    以上、家計債務の問題と金融機関の預貸率の問題は、いわば「表裏一体」の関係にあるといえるでしょう。

    基本的な統計でウソをついている!

    ところで、韓国の資金循環統計を読んでいると、もう一つ、深刻な問題があります。それは、「意味不明な項目が存在している」、という点です。

    このことを明らかにするために、中央銀行のバランスシートを眺めてみましょう(図表6)。

    図表6 韓国銀行のバランスシート

    資産側にある「その他の外国債権債務(Other Foreign Claims and Debts)」、これはいったい何なのでしょうか?正直、意味不明です。ですが、韓国政府が国際通貨基金(IMF)に対して「外貨準備」として報告している金額とほぼ一致します。というのも、2016年9月末時点で、韓国が「保有している」と主張している外貨準備高は、約3711億ドルです。一方、「その他外国債権債務」に計上されている金額は、358兆8,170億ウォンであり、「1ドル≒1000ウォン」と換算すれば3588億ドルです。

    主要国は外貨準備を中央銀行か中央政府のいずれかの勘定で保有しており、日本の場合は中央政府(財務省の外為特会)が保有しています。ちなみに、日本の場合、資金循環統計上の外貨準備高は、おそらく中央政府が保有している「対外証券投資」や「外貨預金」などに含まれています(図表7)。

    図表7 日本の中央政府のバランスシート

    ただ、韓国が保有していると主張する外貨準備高(3711億ドル)については、相当のウソが混じっていると考えて良いでしょう。というのも、米国政府・財務省が公表する「財務省国際証券投資統計(TIC)」上、韓国が保有する米国債の金額は、どんなに多くても、せいぜい1000億ドルに過ぎないからです。

    いずれにせよ、韓国は基本的な統計でウソをついているため、韓国が発表する「外貨準備高3711億ドル」という情報についても、どこまで信頼して良いものか、分かったものではない、ということです。

    日韓スワップ協定とは?

    アジア通貨危機がそのきっかけ

    ところで、以前から話題になっている「日韓スワップ協定」とは、もともとは1998年に発生した「アジア通貨危機」を契機に、日本が主導して、2000年5月にタイのチェンマイで開催された「ASEANプラス3」(ASEAN諸国に日中韓3カ国)の財務大臣会議で合意された「チェンマイ・イニシアティブ」(CMI)に起源が求められます。

    このCMIは、「二カ国間協定のネットワーク」を網の目のように構築したものです。たとえば、「日本と韓国」、「日本とタイ」、「日本とインドネシア」、「日本とフィリピン」、などの形で、たくさんの「二カ国間協定」が成立しました。そして、「二カ国間協定」の英語表現“Bilateral Swap Agreement”を略して「BSA」と呼ばれます。日本が韓国に対して提供していた通貨スワップも、こうした「BSA」の一形態だったのです。

    日韓BSAの経緯

    日韓BSAについて、公表物から判明する内容をまとめると、図表8図表9の通りです。

    図表8 日韓BSAの経緯(日本円部分のみ)
    時点 概要 上限額
    2005年5月27日 中央銀行同士のスワップが発効 30億ドル相当(JPYとKRW)
    2008年12月12日 中央銀行スワップを200億ドルに増額 200億ドル相当(JPYとKRW)
    2010年4月30日 増額措置が終了し30億ドルに戻る 30億ドル相当(JPYとKRW)
    2011年10月19日 10倍増にする、いわゆる「野田スワップ」 300億ドル相当(JPYとKRW)
    2012年10月31日 「野田スワップ」が失効し30億ドルに戻る 30億ドル相当(JPYとKRW)
    2013年7月3日 中央銀行同士のスワップ自体が失効

    (【出所】日本銀行と財務省のウェブサイト。ただし、日銀も財務省も過去のデータをウェブサイトから削除しているため、正確な情報ではない可能性がある)

    図表9 日韓BSAの経緯(米ドル部分のみ)
    時点 概要 上限額
    2001年7月4日 CMIに基づく韓国への一方的スワップ開始 日⇒韓:20億ドル(USDとKRW)
    2006年2月24日 CMIスワップを増額・双方向化 日⇒韓:100億ドル(USDとKRW)
    韓⇒日:50億ドル(USDとJPY)
    2011年10月19日 いわゆる「野田スワップ」 日⇒韓:400億ドル(USDとKRW)
    韓⇒日:50億ドル?(USDとJPY)
    2012年10月19日 「野田スワップ」部分が失効 日⇒韓:100億ドル(USDとKRW)
    韓⇒日:50億ドル(USDとJPY)
    2015年2月16日 CMIスワップが失効

    (【出所】日本銀行と財務省のウェブサイト。ただし、日銀も財務省も過去のデータをウェブサイトから削除しているため、正確な情報ではない可能性がある。また、特に「2011年の野田スワップ」に関しては、財務省等の公表物「韓国から日本へのスワップライン」に一切の言及がないため、記載が誤っている可能性が極めて高い)

    日本とアジア諸国のBSAは現時点で3本しかない

    ただ、日韓スワップを含め、「たくさんのBSAが同時並行で存在する」という枠組みだと、個別の国同士でスワップ協定を存在させるということになり、契約関係が非常にややこしくなります。そこで、現在はCMI自体を「マルチ化」しており(いわゆるCMIM=CMIマルチ化協定)、日本がアジア諸国と保持するBSAは、わずか3本しかありません(図表10)。

    図表10 日本が現時点で保持するBSA
    相手国 契約条件 契約日
    インドネシア(片方向) 日→尼 227.6億ドル 2013年12月12日
    フィリピン(双方向) 日→比 120億ドル
    比→日 5億ドル
    2014年10月6日
    シンガポール(双方向) 日→星 30億ドル
    星→日 10億ドル
    2015年5月21日

    (【出所】財務省ウェブサイト『アジア諸国との二国間スワップ取極』)

    というのも、日本は諸外国とのスワップ協定を、CMIマルチ化協定(CMIM)に集約しているからです(図表11)。

    図表11 CMIM
    拠出額 引出可能額
    日本 768億ドル 384億ドル
    中国(※) 768億ドル 405億ドル
    韓国 384億ドル 384億ドル
    インドネシア
    タイ
    マレーシア
    シンガポール
    フィリピン
    各 91.04億ドル 各 227.6億ドル
    ベトナム 20億ドル 100億ドル
    カンボジア 2.4億ドル 12億ドル
    ミャンマー 1.2億ドル 6億ドル
    ブルネイ
    ラオス
    各0.6億ドル 各3億ドル
    合計 2400億ドル 2400億ドル

    (【出所】財務省・2014年7月17日付ウェブサイト「別添2」。ただし、中国については香港との合算値。また、香港はIMFに加盟していないため、中国の引出可能額に占める「IMFデリンク」の額は他の国と異なる)

    各国は韓国からのCMIM要請に応じるか?

    ただし、CMIM参加国(14カ国・地域)のうち、事実上、米ドル資金を提供する能力がある国は、日本と香港に限定されていると見るべきでしょう。

    図表11に示したCMIMでは、各国が引出限度額の30%を超えて資金を引き出すときには、IMFが関与して来ます。ただ、30%以下であれば、IMFと無関係に、各国が資金を引き出すことが可能です。つまり、韓国の場合、384億ドルのうち30%(115億ドル)については、IMFの関与なしに引出が可能だ、ということです。

    では、韓国が外貨資金不足に陥った時に、日本はCMIMに応じるでしょうか?

    そもそも、このCMIMとは、もともとはASEAN諸国の通貨危機を防ぐための枠組みとして導入されたものです。そして、日本がCMIMに応じたとしても、他の加盟国(中国や香港、ASEAN諸国など)がこれに応じなければ、韓国は115億ドルのうち、日本の拠出分(32%、つまり約37億ドル)しか入手できないという可能性もあるでしょう。

    また、プライドだけは無駄に高い韓国のことですから、ASEAN諸国にも「頭を下げる」必要があるCMIMは、なおさら資金を引き出すのが難しいというのが実情ではないでしょうか?

    500億ドルスワップという「無茶」

    ところで、韓国が「欲しがっている」日韓スワップの金額は、500億ドルなのだそうです。これについては約半年前に『日韓スワップ「500億ドル」の怪』で述べたとおり、韓国側のメディアは昨年、「新たな日韓スワップの額は500億ドル」で、「全額を米ドルで引き出すものとなる」、という、韓国政府高官の希望的観測を、何度も何度も報道しています。

    ただ、ここで改めて図表10を読み返してみるとわかりますが、現在、日本が外国と締結しているスワップの最大額はインドネシアとの227億ドルです。500億ドルといえば、その倍額以上であり、ある意味で「常識はずれ」でしょう。

    ちなみに、韓国が外国と保有しているスワップの額は、米ドルに換算して約700億ドル少々ですが、そのうちの大部分は中国とのスワップです(図表12)。

    図表12 韓国が外国と保有するスワップ
    相手国 締結日 失効日 韓国ウォン 相手国通貨 米ドル換算
    オーストラリア 2014/2/8 2020/2/22 9兆ウォン 100億豪ドル 約76億ドル
    マレーシア 2017/1/25 2020/1/24 5兆ウォン 150億リンギット 約34億ドル
    インドネシア 2017/3/6 2020/3/5 10.7兆ウォン 115兆ルピア 約86億ドル
    中国 2011/10/10 2017/10/10 64兆ウォン 3600億元 約524億ドル
    (合計) 88.7兆ウォン 約721億ドル

    つまり、韓国にとっての「命綱」であるBSAのうちの73%は中国とのスワップであり、しかも、オーストラリアとのスワップ(100億豪ドル、米ドルに換算して76億ドル程度)を除くと、いずれのスワップも国際的に通用しない「ソフト・カレンシー」ばかりです。

    昨年9月以降、韓国のメディアが頻繁に報じていた「日本とのスワップは500億ドル」「引き出す通貨は米ドルか日本円」という「ガセ情報」は、中国とのスワップ(3600億元)を念頭に置いて、「日本が中国との対抗上、500億ドル程度の大型スワップを締結してくれるに違いない」という、韓国政府の希望的観測に基づいたものだと考えて良いでしょう。

    日本国民としての心構え

    日韓スワップ協定とは、国際的に通用しない韓国ウォンを、国際的なハード・カレンシーである米ドルや日本円と交換してあげるというものであり、明らかに韓国に対する金融支援です。

    2014年4月16日に行われた、「第186回国会・衆議院財務金融委員会」で、「日本維新の党」の衆議院議員だった三木圭恵(みき・けえ)氏(※2014年12月の総選挙で落選)が日韓スワップについて質問したところ、参考人として国会に招致された財務省の山崎達雄国際局長(※当時)が、日韓スワップについては「日本にもメリットがある」と述べました。山崎氏の発言は、次の通りです。

    日韓通貨スワップを初めとする地域の金融協力は、為替市場を含む金融市場の安定を通じまして、相手国、日韓の場合は韓国だけじゃなくて、日本にとってもメリットはあります。

    というのも、日本と韓国との間の貿易・投資、あるいは日本企業も多数韓国に進出して活動しているわけでありまして、その国の経済の安定というのは双方にメリットがある面、それからまた通貨という面でいうと、むしろ通貨を安定させるという面、ウォンを安定させるという面もあるわけであります。

    そういうことで、私どもとしては、当時、日韓通貨スワップを拡大したのは、むしろ、韓国のためだけというよりも、日本のため、地域の経済の安定のためということがあったということだけ申し上げたいと思います。

    ヒトコトでいえば詭弁です。日本は「自由主義経済」を国是としており、民間企業がどこの国に進出し、投資し、貿易を行うのも自由です。山崎達雄氏の見解だと、自分たちの判断で韓国と関係を持った日本企業を、間接的に国民の税金で助けているというのと全く同じです。私は有権者の一人として、財務省のこのような答弁を、到底看過するわけにはいきません。

    いずれにせよ、財務省にいた山崎達雄氏のような日韓スワップ推進派による詭弁をまとめておくと、次の通りです。

    • 日韓スワップで韓国経済が安定すれば、貿易や投資を通じて韓国と関係している多くの日本企業にもメリットがある。
    • 日韓スワップがあれば、両国の為替相場の安定にもつながる。
    • 日韓スワップは「通貨の交換」であり、きちんと相手国通貨という「担保」を取っているのだから、日本から韓国への資金援助ではない。

    いずれも完全な詭弁ですので、騙されないように気を付けましょう。

    そして、私たち日本国民が賢くなれば、この手の詭弁に騙される可能性も減少します。朝鮮半島危機のドサクサに紛れて日韓スワップを再開させようとする動きが生じないように、私たち有権者は財務省を監視すべきです。そして、私たち有権者は、次回の国政選挙でも、是非、賢明な判断を下したいものです。

    その意味で私は、「日韓スワップ議論」が復活しないように、有権者の一人として、監視活動を続けたいと考えているのです。

     

    ※本文は以上です。

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    著者のコンタクト先:info@shinjukuacc.com

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