【昼刊】日中スワップとQFIIと利権の匂い

日中金融協力を巡って、またしても「媚中派金融機関」の利権の匂いがプンプンしてきました。

日中金融協力の実態

財務省の報道発表

昨日は東京で日中韓3ヵ国会談が行われましたが、そのサイドラインで日中首脳会談も行われ、金融面ではつぎの3点で合意しました。

日中首脳会談における日中金融協力に係る合意(2018/05/09付 財務省HPより)
  1. 中国は日本に対して2000億元(約3.4兆円)のRQFII(人民元適格外国機関投資家)枠を付与する
  2. 日中双方は、人民元クリアリング銀行の設置、円‐元の通貨スワップ協定の締結のための作業を早期に完了させる
  3. 中国は日系金融機関への債券業務ライセンスを早期に付与するとともに、日本の証券会社等の中国市場参入に関する認可申請を効率的に審査する

この3点をどう読むべきでしょうか?

QFIIと利権の匂い

まず問題になるのは「適格外国機関投資家」(Qualified Foreign Institutional Investor)の概念です。要するに、日本の機関投資家(銀行、年金、生命保険など)に対して約3.4兆円分の金融商品への投資枠(対外証券投資など)を認めるということです。

現在、中国本土に対して外国人投資家が有価証券などに投資する許可のことです。現在、中国は厳しい資本規制を導入していて、外国人投資家の資金が無節操に自国の市場に流れて来ることを厳格に規制しています。

その例外として、事前に承認した相手国の機関投資家に対し、一定金額の範囲内で中国本土に投資する許可を与えるという制度です。もちろん、日本、香港、欧州連合(EU)、米国などの市場にそんな制度はありません。

しかし、そもそも論で考えるならば、中国の通貨・人民元は2016年10月時点で国際通貨基金(IMF)の特別引出権(SDR)に含められたのですから、日本が中国に要求すべきは「QFII制度の撤廃と資本フローの完全自由化」でしょう。財務省、いったい何をやっているのでしょうか?

さらに、このQFIIの認可に加え、合意事項の3番目に「日経金融機関への債券業務ライセンス」「日系証券会社等の中国市場参入」などが含まれていますが、おそらく今後、金融機関などの機関投資家の間で、中国共産党に媚を売る動きが加速することが懸念されます。

日中スワップは通貨スワップ?為替スワップ?

一方、合意事項の2番目には、「人民元クリアリング銀行の設置」と「円-元通貨スワップ協定」という項目が含まれています。これについては正直、よくわかりません。というのも、「人民元クリアリング(決済)機能」は「中央銀行同士の為替スワップ」という話であり、「通貨スワップ」ではないからです。

「通貨スワップ」と「為替スワップ」は一見すると良く似ていますが、まったく異なるものです。「通貨スワップ」(一般に “Bilateral Swap Agreement” を略してBSAと称します)の場合は、通貨当局同士が通貨を交換する協定です。

一方で「為替スワップ」(当ウェブサイトでは “Bilateral Liquidity Swap Agreement” を略してBLAと称しています)の場合は、相手国の民間銀行に対して自国通貨を供給するという協定であり、通貨スワップ(BSA)とはまったく異なるものです。

財務省が報道発表している協定は「通貨スワップ」となっていますが、民間銀行間金融に関わるスワップ協定は「為替スワップ」であり、正直、この発表については、よくわかりません。これから締結される協定が通貨スワップ(BSA)なのか、為替スワップ(BLA)なのかについては、見極めたいと思います。

それはさておき、ところで、以前、『危険なパンダ債と「日中為替スワップ構想」』で報告したとおり、日本企業の間で中国に擦り寄る動きが再び強まって来ています。そして、そもそも論として、日経金融機関、証券会社などが中国に擦り寄る動きは、日本の金融システム全体を危機に陥れる可能性があります。

日本の金融システムは日本にとっては重要なインフラであり、日本国民の共通の財産です。それを、一部の媚中系金融機関のために、国全体のコストを費やして日中金融協力を進めることが妥当なのかどうか、冷静に判断する必要があるでしょう。

日韓スワップ?何それ?

さて、もう1つは割とどうでも良い話ですが、昨日は日韓首脳会談も行われています。

日韓首脳会談(2018/05/09付 外務省HPより)

ただ、日本が求めている「慰安婦合意の着実かつ誠実な実行」についてはゼロ回答でしたし、「日本人拉致問題」についても韓国のスタンスはよくわかりません。さらに、核のCVIDについては、韓国側からの同意は得られませんでした。

一方で、韓国側では、日韓通貨スワップ協定の復活に期待を掛ける報道が相次いでいましたが(『【夕刊】呆れた韓国メディア「日韓通貨スワップの追憶」論』などもご参照ください)、日韓首脳会談ではスワップの「ス」の字も出なかったようです。

まぁ、当然でしょうが…(笑)。

本文は以上です。

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読者コメント一覧

  1. めがねのおやじ より:

    < 昼刊ありがとうございます。
    < 財務省は「QFII」と「人民元クリアリング銀行」について、一般庶民にも理解できるよう、かみ砕いて発表すべきです。新宿会計士様のようなプロフェッショナルでも不明の部分があるのは、国民を蔑ろにしています。詳細は発表しない、または後日では通らない。しかし媚中派の金融機関、儲かれば何処とでもくっつく連中は動くでしょう。国益、国民の血税なんて考えが及ばぬのか。財務省はいったい何をやっているんだ。早く解体して欲しい!さて事ここに及べば、私も僅かな抵抗だが、メガバンクの取引口座を無くそう。DKB時代からお高くとまっていたが、嫌いなので辞めます(笑)。
    < 「日韓スワップ」の再燃機運という韓国報道(デマ)もこれで減るでしょう。何を厚かましい事を、、と思ってましたが、韓国はチョープライドのお高い国、『日本から言い出せ』と念を入れてたと思います。しかし、無視された(笑)。CVIDも日本人拉致被害者救出にも一言も言わない『単なる扱いにくいお隣さん』だから、頼らなくていいです。安倍首相からケーキ貰ったんやろ、早よ帰れ。コチラにはメシも出さんくせに!以上。

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