韓国紙「通貨スワップがなくてもFIMAレポがある」
韓国はジャネット・イエレン米財務長官の訪韓にも関わらず、通貨スワップ締結に失敗した模様。こうしたなか、韓国メディアには、本日、興味深い記事が2本掲載されました。1本は「韓米は通貨スワップの糸口をつかんだ」とする記事、もう1本は「通貨スワップがないならFIMAレポがあるじゃないか」という記事です。
目次
米韓通貨スワップが「あり得ない」理由
韓国ではジャネット・イエレン米財務長官の訪韓を前に、「イエレン氏が韓国の企画財政部長(あるいは韓国銀行総裁)との間で通貨スワップ締結に同意する」、といった観測がみられていました。
しかし、『「米財務長官との米韓スワップ議論」があり得ない理由』を含め、何度も指摘しているとおり、米国が韓国と「通貨」スワップを締結する可能性は極めて低く、かつ、仮に米国が韓国と「為替」スワップを締結する可能性があるとしても、それは少なくとも「いますぐ」とは考え辛いところです。
その理由は簡単で、現実に米国が外国と締結している通貨スワップ、為替スワップには、基本的には①特別な協定が存在している場合、②米国自身にメリットがある場合、③何か特別な目的が存在している場合、3つのパターンしかないからです。
①特別な協定が存在している場合
まず、重要な事実を指摘しておくと、現時点において「NAFAスワップ」を除くと、米国は外国との間で、いわゆる「通貨スワップ」、つまり「通貨当局が自国通貨を担保に相手国から外国通貨を借りることを可能とする取り決め」を結んでいるという事実はありません。
米FRBはカナダ、メキシコの両国中銀との間で「北米枠組み(NAFA)」に基づく通貨スワップを結んでおり(カナダが20億ドル、メキシコが30億ドル、これとは別に米財務省がメキシコと90億ドル)、この2ヵ国・3本のスワップ以外に、米国が外国と締結している通貨スワップは存在していません。
②為替スワップは相互にメリットがある場合にしか結ばない
一方、米国はFRBが5つの中央銀行との間で常設型・金額無制限の為替スワップ協定を結んでいますが、これらは相手国の市中金融機関に対して直接、お互いの通貨を貸し付けるという「外国為替流動性スワップ協定(foreign exchanre liquidity swap)」であり、通貨スワップではありません。
また、FRBが日英欧瑞加5ヵ国・地域の中銀と締結している為替スワップは、FRBが相手国の金融機関にドルを貸し付けなければならないというものであるとともに、米国の要請に基づき、米銀に対してユーロ、円、ポンド、加ドル、スイスフランの融資を受けることができるという協定でもあり、米国にもメリットがあります。
③FRBにとっての金融緩和となる場合
米国はこれら5ヵ国・地域以外にも、昨年末まで9ヵ国・地域の通貨当局と為替スワップを結んでいましたが、これらは2020年3月、コロナ禍発生直後の「金融緩和政策」(市中金融機関にドル資金を貸し付ける政策)の一環として導入されたものであり、あくまでも例外的な措置です。
そして、現時点においてはFRBが金融引締め局面にあるのに加え、流動性危機の状況にはなくすでに「FIMAレポ・ファシリティ」などの流動性ファシリティが存在する以上、終了した9ヵ国・地域との為替スワップをわざわざ復活させるとは考え辛いところです。
それなのになぜかスワップの「端緒」と勘違い
すなわち、米国は①韓国との間で何らかの特別なフレームワークを有しているわけでもなく、②韓国ウォン自体が国際的なハード・カレンシーではなく、米韓常設型為替スワップを結ぶメリットが米国側に存在しないこと、③現在は金融緩和局面ではないこと――を考えると、米韓スワップは「あり得ない」とわかるでしょう。
ただ、実際にイエレン氏が19日に韓国を訪問した際、韓国政府・企画財政部はイエレン氏が通貨スワップまたは為替スワップの締結を示唆するような発言をしたかのような発表を行いました。それが、次の趣旨の記述でしょう(『韓国待望の米韓通貨スワップはほぼゼロ回答=財相会談』等参照)。
「秋慶鎬副首相とイエレン長官は、韓・米両国が必要流動性供給装置など多様な協力方案を実行する余力がある(have ability to implement various cooperative actions such as liquidity facilities if necessary)という認識を共有した」。
自然に考えて、イエレン氏が本当に韓国政府が発表したような趣旨の発言をしたのだとしたら、それは「またしても流動性クランチが生じたときには米国として何らかの流動性ツールを準備する(かもしれない)」、という一般論でしょう。
しかも、果たして本当にイエレン氏がこんな発言をしたのかどうか、という疑問も残ります。
米国財務省が7月19日付で発表した、次の4つの記事のどこを読んでも、「スワップ(swap)」、「流動性(liquidity)」、「外為市場(foreign exchange market)」などに関する言及は皆無だからです(『イエレン氏は本当にスワップに「含み」持たせたのか?』参照)。
- Remarks by Secretary of the Treasury Janet L. Yellen at LG Sciencepark
- Remarks by Secretary of the Treasury Janet L. Yellen at Bilateral Meeting with Deputy Prime Minister and Minister of Economy and Finance of the Republic of Korea Choo Kyung-ho
- READOUT: Secretary of the Treasury Janet L. Yellen’s Meeting with Republic of Korea President Yoon Suk Yeol
- READOUT: Secretary of the Treasury Janet L. Yellen’s Meeting with Women Entrepreneurs in Seoul
いずれにせよ、いつもの「言った」、「言わない」という、韓国にありがちな「様式美」の一種とみるのが正解かもしれません。
中央日報「韓米通貨スワップ締結に糸口」
もっとも、これに関する韓国メディアの解釈は、そうではないようです。韓国メディア『中央日報』(日本語版)に本日、こんな記事が掲載されていました。
韓国、韓米通貨スワップの再締結に糸口…米国、韓国の対露石油制裁の参加を誘導
―――2022.07.21 10:58付 中央日報日本語版より
中央日報はイエレン氏の訪韓で、米国が「韓国の対ロシア石油制裁への参加」という成果を得た一方で、韓国の側も「韓米通貨スワップの再締結の糸口を作る」という成果を得た、などと述べています。
「韓米通貨スワップ議論の主体が韓国銀行と米国連邦準備制度理事会(FRS)のであるため、韓米財務長官会談で『通貨スワップ』という言葉が明示されたわけではないが、両国は外国為替市場関連で協力に合意し、多様な協力策を実行する余力があるという認識を共有した」。
はて、そうでしょうか?
米韓双方のやり取りを見て、これを米韓通貨スワップの「糸口」とみるには、かなりの無理があります。
べつに米韓双方が「通貨スワップ」「為替スワップ」などと述べたわけではなく、しかも「流動性供給装置」云々は、あくまでも韓国政府側の一方的な発表に含まれているものにすぎないからです。
スワップがなければFIMAレポがあるじゃない!
ただ、中央日報自身もさすがに「今すぐの『通貨』(?)スワップ締結は不可能だ」と気づいたのか、同じく中央日報にはこんな記事も掲載されています。
韓国、通貨スワップできなければ次の手、「FIMAレポ」がある
―――2022.07.21 11:14付 中央日報日本語版より
「為替スワップがなければFIMAレポがある」。
どこかで聞いたセリフです。もしかして中央日報の編集者様も、当ウェブサイトの7月6日付の『NY連銀「困ったらスワップよりFIMAレポ使って」』あたりをお読みになられたのでしょうか?
中央日報は「韓米通貨スワップの次の手段としてFIMAレポファシリティが注目されている」として、これについては外国中央銀行・通貨当局が保有する米国債などを、FRBが「売り戻す条件付きで買い取る制度」だと解説。
「韓国銀行が持つ米国債をFRBに担保として預ける代わりに取引限度内で米国の政策金利上段(現行1.75%)水準の低金利でドルを調達できるという長所がある」、などと述べています。
じつは、著者(新宿会計士)自身、レポ取引(とくに米国におけるレポ市場)について、かつて執筆した専門書のなかで触れた程度には詳しいつもりですが、これは債券の保有者が、自身が保有する債券を担保におカネを借りる取引(あるいは逆に、資金を担保に債券を借りる取引)のことです。
外国中央銀行・通貨当局が通貨防衛のために米国債を売却・換金すれば、債券価格が下落(=金利が上昇する)おそれがありますが、FIMAレポはこうした金利上昇を抑制しながら、外国中央銀行に資金をもたらす、というメリットがあります。
FIMAレポと為替スワップの大きな違い
ただ、為替スワップとFIMAレポ・ファシリティには、非常に大きな違いがあります。
それは、「担保」です。
為替スワップの場合だと、外国中銀(たとえば韓国銀行)は自国の通貨をFRB(実務的にはニューヨーク連銀)に差し入れ、それと引き換えに米ドル資金を貸してもらう、という契約です。
これに対し、FIMAレポの場合は自国が外貨準備のなかで保有する米国債をニューヨーク連銀に差し入れる必要があります。このため、外国中央銀行としては、自身が保有する米国債などの担保適格銘柄の範囲内でしか、米ドルを借りることができないのです。
この点、米国財務省が公表する米国証券投資データ(Treasury International Capital Data, TIC)によると、2022年2月末時点における韓国全体の米国内の証券投資は5688億ドルで、内訳は債券が2113億ドル、株式が3575億ドルであり、米国債は1046億ドルに過ぎません。
また、『「韓国は外貨準備高を倍増し危機に備えよ」=亜洲経済』でも取り上げたとおり、韓国メディア『亜洲経済』(日本語版)の『[キム・デジョンのコラム] 尹錫悦政府、初の課題は「国際金融競争力」向上』という記事には、こんなことが記載されています。
「韓国銀行の外貨資産構成を見ると、国債36%、政府機関債21%、社債14%、資産流動化債券(MBS)13%、株式7.7%、現金5%だ」。
この「国債36%」という記述から逆算すれば、韓国が保有する外国の国債の金額は1500億ドル少々という計算ですが、TICレポートの1046億ドルとは依然として400~500億ドル程度の差が存在しています。
想像するに、韓国銀行はリスクが高い国債(南欧諸国の国債など)や流動性の低い国債(中国国債など)にも、かなりの程度、投資しているのではないでしょうか(※このあたりは開示資料がないので想像によるしかありませんが…)。
したがって、韓国銀行がFIMAレポファシリティのうち、米国債を使って調達できる米ドルの金額も、その上限はせいぜい1000~1500億ドル前後、といったところでしょうか(しかも自身の外貨準備を使っているのと経済効果としてはまったく同じです)。
いずれにせよ、韓国メディアのこれまでのパターンに照らすなら、「米国との通貨スワップもない」、「FIMAレポも使い勝手が悪い」、といった連想から、やはり1.3兆ドルという巨額の外貨準備を保有している「とある国」とのスワップの待望論が出てくるのは時間の問題でしょう。
個人的には、「そんなにスワップが欲しいのなら、中国との4000億元(約591億ドル)のスワップを使えばよいのではないか」、などと思わないではありませんが…。
【参考】中国はIPEF参加の韓国を「スワップ中断」で脅せる
本文は以上です。
日韓関係が特殊なのではなく、韓国が特殊なのだ―――。
— 新宿会計士 (@shinjukuacc) September 22, 2024
そんな日韓関係論を巡って、素晴らしい書籍が出てきた。鈴置高史氏著『韓国消滅』(https://t.co/PKOiMb9a7T)。
日韓関係問題に関心がある人だけでなく、日本人全てに読んでほしい良著。
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かのくに、すでにプリマスレで踊ってる最中
みたいな
米ジョージア州に2体目の醜像が設置されるそうですね。
日本とのスワップは永劫ないと思え。
さすがわれら韓国、われわれの期待の斜めいって思考が分裂してますね。
中央日報のトップページに、今年2月ごろに出した「韓国ウォンは基軸通貨になれる資格充分」を再掲載していました。
https://japanese.joins.com/JArticle/287712
もうなんというか、ウォン安が進んでいる中でよくこんな記事を再掲載できるものかと。やっぱり頭がどうかしてるとしか思えません。
>「そんなにスワップが欲しいのなら、中国との4000億元(約591億ドル)のスワップを使えばよいのではないか」
カナダとの「無制限」の為替スワップが最強の武器だと思います。「通貨」スワップと「為替」スワップの違いが認識出来ていないのに、何故、「無制限」に反応しないのか、が本当に疑問です。
答え合わせですけど、為替スワップってあくまで韓国の金融機関が外貨を借り入れる仕組みなんですよね。金融機関は適格担保をたんまり積まないと借り入れできない。
通貨スワップがすごいのは、通貨発行権のある中央銀行が、刷って差し出しさえすれば外貨をてに入れられる。魔法のような話。為替スワップにそんな魔法は一切ありません。魔法の使えない一般金融機関が絡まなくてはいけないから。
韓国、中国との延長に続きカナダと通貨スワップ締結…日本とはいつ頃?
2017.11中央日報
https://japanese.joins.com/JArticle/235497
>協定は満期が設定されていない常設契約で、限度も決まっていない。規模と満期は両機関が協議して改めて決めることにした。
予定は未定にて確定に非ず。カナダ側の意向で即時満期にもできるってことなのかと。
韓国側が上限未定を ”無制限” だと勝手に解釈してるだけのことなんですものね・・。
> カナダとの「無制限」の為替スワップ
ただし、案件ごとに協議(&合意)が必要です。さて、現下の情勢において、仮に話を持ち掛けられても、カナダ中銀はうんと言いますかね?
FIMAレポに為替安定の効果があるなら、既にいつでも使える状態にあるんだから効果出てるはずですよね。いまのようなウォン安にはなってないはず。
基本的には現有する外貨準備を迅速に外貨キャッシュに変換出来るってだけのスキームですよ。韓国が期待しているような「外貨準備のマイナス通帳」なんて効果はありません。
韓国がしきりにアメリカの為替スワップを熱望する姿は、ちょうどお医者さんに「あなたの病状ではこの薬は効かないよ」と言われてるのに、しきりにお医者さんに薬を要求している感じですね。
私は試しにアメリカは為替スワップやってあげたら良いと思うんです。アメリカが適切なタイミングで「処方」すればそれなりに効果の出る為替スワップも、今では全く効果が出ないことを身をもって感じ取れると思うんです。
為替スワップに為替安定の効果があるなら、無制限にアメリカと為替スワップ出来る日本が円安になるわけがないんですよ
いやー。「馬鹿に付ける薬はない」と 言われておしまいでしょう。
みなさんにお尋ねします。
(日本マスゴミ村もそうかもしれませんが)韓国メディアは、愛読者のために根拠なき楽観論を書くところでしょうか。そのうち、「文大統領が復活すれば、全ての問題は解決する」という他国には理解できないことを書く韓国メディアも、現れるかもしれません。(もっとも「鳩山由紀夫(民主党)政権になれば、すべて上手くいく」と言っていた日本も、韓国のことを笑えないかもしれませんが)
引きこもり中年さまご指摘の
>>(もっとも「鳩山由紀夫(民主党)政権になれば、
>>すべて上手くいく」と言っていた日本も、
>>韓国のことを笑えないかもしれませんが)
については、たしかにあたりまえに潰えた過去です。
ところが、
党名ロンダリングを繰り返しての今の
韓流正統立憲民主党の支持者さんにとっては
画策に失敗しもはや二度と実現しない未来ではなく
今もなお、その実現を現実化すべき
呆れた野望画策なのです。
韓流政党である立憲民主党の
マニュフェストや政策なるものが
あまりに粗雑でしょもないというのは
国民から指摘されるとおりです。
それもそのはず、本当に実現したいものは
国民騙して政権取った民主党政権で
官僚恫喝してまで急がせた
反日外国人参政権法案なのに
あっというまに叩き出されて間に合わなかった
そのリベンジを、それを隠して実現しよう
との往生際の悪い思いです。
引きこもり中年さまご指摘の点は
韓流政党立憲民主党と
ならず者国家とは友愛結ぶミスター民主党御大将
鳩ぽっぽさんにはしっかりあてはまるものだと
感じました
> 「文大統領が復活すれば、全ての問題は解決する」
ネット上では、「たったの2か月で経済を混乱させ、国格を失墜させた」尹大統領への非難が溢れかえってますよ。実際、文大統領就任時もそうでしたが、大統領が変わりさえすれば、翌日からすべての問題はうまく行くと韓国人は信じて疑わないようです。
現在の韓国の苦境は、要するにあまりにも出鱈目だった文在寅政権5年間の後遺症というか、ツケが回ってきただけなのですが、そのようには考えず、尹大統領のせいだと喚くドたわけのなんと多いことか。韓国メディアはそのような連中の思いを反映しているに過ぎません。以前からコメントしてますように、尹大統領が「まとも」であればあるほど苦しむことになるでしょう。