日本政府が対ロシア「輸出規制」を適用したことの意義

日本政府は昨日、ロシア、ベラルーシ両国に対する輸出規制措置などの措置を発表しました。日露間の貿易高を考慮すると、今回の措置がロシア経済に対し深刻な打撃を与えるものかどうかは微妙ですが、主要国で歩調を合わせたという事実に加え、輸出規制が「実際に発動し得る手段である」ことを改めて示したという点では、大変に有意義な措置ではないかと思う次第です。

日本政府・経済産業省は昨日、ロシア、ベラルーシの両国に対する輸出規制などの措置を発表しました(3月18日から施行されます)。

ウクライナ情勢に関する外国為替及び外国貿易法に基づく措置を実施します(措置の対象となる貨物及び役務取引等について)

―――2022/03/15付 経済産業省HPより

外国為替及び外国貿易法に基づく輸出貿易管理令等の改正について(ロシア・ベラルーシ向け輸出禁止措置等)【※PDFファイル】

―――2022/03/15付 経済産業省HPより

―――2022/03/15付 経済産業省HPより

本稿でこれに注目する理由は、その発動根拠法、そしてその条文にあります。

経済制裁の一環としてのロシアに対する輸出管理厳格化』などを含め、当ウェブサイトではこれまで何度となく述べてきたとおり、日本が経済制裁を発動するための根拠法として、代表的なものは外為法(正式には『外国為替及び外国貿易法』)があります。

そして、外為法上の代表的な措置としては、「日本から相手国に対するモノ、カネ、情報の流れの制限」、「相手国から日本に対するモノ、カネの制限」などが挙げられ、具体的な条文としては次の7つがあります。

外為法による主な経済制裁
  • ①第16条第1項措置…日本から外国への支払の制限
  • ②第21条第1項措置…日本と外国との資本取引の制限
  • ③第23条第4項措置…日本から外国への対外直接投資の制限
  • ④第24条第1項措置…いわゆる「特定資本取引」の制限
  • ⑤第25条第6項措置…役務取引(技術移転など)の制限
  • ⑥第48条第3項措置…輸出規制
  • ⑦第52条措置…輸入規制

今回の経産省の発表内容は、このうち⑥の輸出規制と⑤の役務取引制限だそうです。

輸出規制については、ロシア・ベラルーシの「▼工作機械・炭素繊維・高性能の半導体などの輸出禁止措置、▼軍事関連団体への輸出禁止措置、▼軍事転用されかねない汎用品(半導体、コンピュータ、通信機器等)の輸出禁止、▼石油精製用装置等の輸出禁止」――、などの措置から構成されています。

また、上記に合わせて、ロシア、ベラルーシの軍事能力の強化につながるような汎用品の製造技術等の移転(役務取引)についても、基本的には禁止されます(※ただし、輸出規制、役務取引規制については、民生品や人道目的の場合などに例外も設けられているそうです)。

これが本当の輸出規制でしょう。

このあたり、日本が韓国に対して2019年7月、輸出管理の厳格化(ないし適正化)措置を発表したところ、韓国側がこれに対し、「輸出『規制』だ」と強く反発している、という事実があります(『輸出管理適正化をいまだに「輸出規制」と勘違い=韓国』等参照)。

しかし、この日本の対韓輸出管理適正化措置は、あくまでも通常の輸出管理にかかる運用の変更に過ぎず、輸出「規制」ではありません。そもそも輸出管理に関する条文は外為法第48条第3項ではなく、第48条第1項に設けられており、韓国がいう「輸出『規制』」とは根拠条文そのものが異なります。

いずれにせよ、もともと日露間の貿易高は金額が少ないため、日本からロシアに対する輸出規制がロシア経済にどこまで大きな打撃を与えるかについては微妙です。

しかし、今回の措置については、日本が欧米主要国と足並みを合わせたこともさることながら、「輸出規制」が単なる「伝家の宝刀」ではなく、実際に使える武器であるということを示したという点では、非常に有意義なものではないかと思う次第です。

読者コメント一覧

  1. バシラス・アンシラシスは土壌常在菌 より:

    日本単独での経済制裁の項目が無いのは、日本一か国だけが制裁しても無意味だからというのがあると思われる

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