産経ニュースにちょっとした話題が掲載されていました。週末のG20サミットを控え、大阪で米中首脳会談が開かれるに際し、中国側が「首脳会談の前提として米中貿易戦争で米国側の譲歩を求めた」というものです。また、あわせて中国政府関係者は「香港問題の議論を許さぬ」などと述べたそうですが、この問題に対しては「許す」も「許さぬ」も中国政府ごときに決められる問題ではありませんし、むしろ日米英などの自由主義国家は、意地でもこの問題に触れるべきでしょう。

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都合が悪くなると会談拒否?

習近平(しゅう・きんぺい)中国国家主席はG20サミットに出席するために、27~29日に大阪を訪問する予定であり、その際、米中首脳会談も実施されると見られます。このG20サミットを目前にしたタイミングで、なにやら意味が分からない報道を産経ニュースに発見してしまいました。

中国次官、米側の譲歩求める G20、香港問題は「議論許さぬ」(2019.6.24 19:29付 産経ニュースより)

産経ニュースによると、中国商務省の王受文(おう・じゅぶん)次官と中国外務省の張軍(ちょう・ぐん)次官補は24日の記者会見で、この米中首脳会談を巡り、

一方(中国)だけでなく双方が譲歩しなければならない/G20で香港問題を議論することは許さない

などと牽制したのだそうです。

都合が悪くなると「会談拒否」を匂わせるというのは、わが国も第二次安倍政権初期(とくに2014年頃まで)には頻繁に目にしましたが、これを米国相手にやろうとしているというのはまた驚きです。

産経ニュースが報じた王氏や張氏のほかの発言は、次のとおりです。

  • 米中の交渉団は現在、双方の相違を解決する方法に関し、交渉を続けている
  • (トランプ政権を念頭に)「一部の国が一国主義や保護主義を実行し、ほしいままに貿易相手国に関税をかけている

ただ、こうした「気に入らなければ要求を突き付けて会談を拒否する」という、2014年頃までの日本に対して頻繁に使っていたこの手法が、世界のどこの国(とくに米国)に対しても通用するとは思えません。

長引くほど、中国にとって一方的に不利に

現在、米国が中国に対して、おもに輸出品に対する超過関税を課しているという点については、今さら繰り返す必要はないでしょう。これに関して中国がどれだけ困っているのでしょうか?

総務省統計局が発表する『世界の統計2019』の図表9-6『主要相手国別輸出入額』によれば、米国に対する輸出高が中国の輸出総額全体の20%弱を占めている(図表1)のに対し、輸入高は全体のわずか8.4%を占める(図表2)に過ぎません。

図表1 中国の主要輸出相手と金額、構成比(2017年)
輸出相手先金額構成比
米国430,32819.01%
香港279,21112.34%
日本137,2596.06%
韓国102,7044.54%
ベトナム71,6173.16%
その他1,242,25254.89%
合計2,263,371100.00%

(【出所】『世界の統計2019』図表9-6『主要相手国別輸出入額』より著者作成)

図表2 中国の主要輸入相手と金額、構成比(2017年)
輸入相手先金額構成比
韓国177,5539.63%
日本165,7948.99%
米国154,4428.38%
ドイツ96,9405.26%
豪州95,0095.15%
その他1,154,05562.59%
合計1,843,793100.00%

(【出所】『世界の統計2019』図表9-6『主要相手国別輸出入額』より著者作成)

中国の輸出依存度(輸出額が占めるGDPに対する比率)は約20%であり、中国の対米輸出高は20%です。

もし中国の米国に対する輸出高がただちにゼロになれば、理屈の上では最大で4%(=20%×20%)、中国のGDPを4%押し下げることができます(もちろん、中国の対米輸出高がいきなりゼロになるとは考えられませんが…)。

4%といえば、中国の年間経済成長の大部分が吹き飛ぶ格好ですし、「鬼城バブル」で無理やり嵩上げしている中国のGDPの「化けの皮」がはがれてしまいかねません。こうした状態が長引けば長引くほど、事態は中国にとって不利に働きます。

また、中国にとっては、米国からの輸入品に対抗措置として報復関税を課すことはできますが、中国が米国に報復関税を課したとしても、米国が中国に制裁関税を課すことで得られるほどの打撃を米国に与えることはできません。

香港は中国にとっての「毒まんじゅう」?

また、産経ニュースにも触れられていますが、今月、香港で「逃亡犯条例」改正案にともなって発生した大規模なデモ(『香港の自由を守るために、私たち日本には何ができるのか』参照)も、G20で話題になる可能性はあると考えて良いでしょう。

香港の自由を守るために、私たち日本には何ができるのか

というよりも、とくに旧宗主国である英国や、自称「民主主義・法治主義」を大切にしているドイツなどが、本件についてヒトコトも触れないということは、民主主義国家陣営にとっては許されざることでもあります。

習近平氏としては、中国国内のデモと同じノリで弾圧すれば良いと思ったのかもしれませんが、残念ながら香港人は(参政権は制限されているものの)「言論の自由」という西側諸国の価値観の恩恵を受けており、中国共産党によるコントロールを受けることは困難です。

現時点で香港政庁はこの「逃亡犯条例」改正案の作業を停止すると発表しましたが、冒頭で紹介した産経ニュースによれば、張次官補は逃亡犯条例について、

どのような場面や形式であろうと、いかなる国も中国の内政に干渉することは許さない

と発言したそうです。謎の上から目線ですね(笑)。

しかし、この問題は下手に触ると、香港独立などの問題にも飛び火しかねず、さらにはどんなにインターネットを統制していたとしても、この情報化時代において、香港で起きていることが中国でまったく人々に知られないで済ませることができるとも思えません。

中国共産党としては、香港をうまく「一国家二制度」で統治することで、将来的な台湾併合をも視野に入れていることは間違いないと思いますが、その一方で、香港は中国共産党にとって、決して「御しやすい存在」でもないと思います。

その意味では、中国共産党も1997年に香港返還を受け入れたことで、香港が「アリの一穴」となって、中国共産党独裁体制の崩壊につながることを恐れなければならなくなった、という言い方もできるのかもしれません。

いずれにせよ、大阪G20サミットでは、私たち日本を含めた自由民主主義陣営国家は、意地でも香港問題に触れるべきだと思う次第です。

※本文は以上です。

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