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「CMIMローカル通貨化で人民元が基軸通貨化」報道の怪

日本が主導する形で、アジア通貨危機の再発を予防しようとする国際金融協力の枠組みを、「チェンマイ・イニシアティブ」(CMI)と呼びます。このCMIは2014年に多国間協定化(マルチ化)し、「CMIマルチ化協定」(CMIM)として発展的に解消しましたが、木曜日にフィジーで行われたASEAN+3会合で、「ローカル通貨化」で合意されたようです。これについて韓国メディアは「アジア基軸通貨国の地位を確保しようとする中国はさらに歩幅を広げることになった」などと報じているのですが、これは本当でしょうか?

国家破綻と通貨危機

国債のデフォルト条件は3つある

当ウェブサイト『新宿会計士の政治経済評論』では以前から、「国債であってもデフォルトすることがあり得る」と申し上げて来ました。

この「国債がデフォルトする場合」とは、おおきく次の3つの条件が満たされたときです。

  • ①国内投資家が国債を買ってくれなくなったとき
  • ②海外投資家が国債を買ってくれなくなったとき
  • ③中央銀行が国債を買ってくれなくなったとき

逆に言えば、①~③のどれか1つの条件が満たされていれば、国債のデフォルトは発生しません。

日本の場合でいえば、マスコミが盛んに「国の借金は1000兆円を超えている」などと喧伝していますが、そもそも家計金融資産が1800兆円を超えている状況のなか、国内で資金の行き先がなくなり、機関投資家(銀行等金融機関や保険・年金基金等)は日々の運用先にも事欠く状況です。

つまり、日本国債の場合はそもそも①の条件が満たされることがないため、この現状が続く限り、国債のデフォルトは99.999999%あり得ないと間違いありません。

ただ、万が一、①の条件が満たされたとしても(つまり国内投資家に投資余力がなくなったとしても)、それなりの金利が付けば、海外投資家が日本国債を買ってくれるはずです。

さらに、海外投資家が日本国債を買ってくれなくなったとしても、日本国債の場合は日本円という通貨で発行されているため、財政法第5条の制約さえクリアすれば、中央銀行である日本銀行が直接、国債を買ってくれれば、日本国債の「デフォルト」は発生しないのです。

(※といっても、中央銀行が国債を直接引受すれば、ケースによっては通貨に対する信認がなくなり、ハイパー・インフレ状態となることもありますが、すくなくとも「デフォルト」はしない、という点については間違いありません。)

つまり、私が「現状が続けば日本国債はデフォルトしない」と申し上げている理由は、

  • 国内で家計金融資産などがあり余っていて、日本国債の発行残高の2倍近くに達していること
  • 家計金融商品の8割が現金・預金、保険・年金基金で占められていて、巨額の資金が金融機関や保険・年金基金に流入していること
  • 日本国債自体が日本円という通貨で発行されていて、日本円が国際的な金融市場で米ドル、ユーロと並んで信頼されていること

といった事情があるのです。

外国から外貨を借りている国はNG

ただ、「日本国債がデフォルトしない」という議論は、あくまでも「自国通貨が国際的に通用する通貨であること」、「国内に金融資産があり余っていること」、「国債などの債券が自国通貨で発行されていること」、という3つの条件が満たされているときにしか成り立ちません。

ことに、外国から多額のカネを外貨で借りている国の場合だと、外国がカネを貸してくれなくなった瞬間、国債はデフォルトし、国家は破綻の危機に瀕します。

その典型例が、アルゼンチンでしょう。

アルゼンチンは2001年に米ドルなど外貨建ての国債の債務不履行(デフォルト)を宣言しましたが、これは、アルゼンチンが自国通貨ではなく外国通貨で国債を発行し、かつ、国内投資家も、海外の投資家も同国の国債を買ってくれなくなったことで発生した現象です。

また、2010年以降はギリシャが発行するユーロ建ての過大な国債がたびたび欧州の危機・波乱の要因となってきましたし、ギリシャがドイツなどを相手に「瀬戸際外交」を繰り広げていることは、『ギリシャが対独40兆円賠償要求?ユーロ問題はドイツ問題だ!』などでも紹介したとおりです。

つまり、国家であっても、「①外貨で」、「②外国から」、おカネを借りている場合には、ギリシャやアルゼンチンのようなデフォルトの危機があるのです。

それだけではありません。

国債が外貨建てでなかったとしても、金融機関や国内主要企業が外国から外貨でおカネを借りているような場合には、外国の金融機関が「おカネを引き上げる」と宣言した瞬間、その国には国家破綻の危機が到来します。

卑近な例でいえば、私たちの隣の国・韓国は、少なく見積もっても外国金融機関から3000億ドル(1ドル=110円と仮定して33兆円)のおカネを借りています(図表1)。

図表1 韓国企業・銀行が外国金融機関から借り入れている金額(2018年12月末、金額単位:百万ドル)
相手国 最終リスクベース 所在地ベース うち1年以内
米国 83,275 79,049 32,589
英国 80,772 76,516 13,238
日本 56,269 45,286 11,439
フランス 23,124 19,372 7,201
ドイツ 15,743 12,297 (不明)
スイス (不明) 9,069 4,628
台湾 8,051 7,936 1,681
豪州 5,327 4,903 2,299
その他 37,653 55,382 34,054
合計 310,214 309,810 107,129

(【出所】「最終リスクベース国際資金取引統計」(Consolidated Banking Statistics, CBS)の “Consolidated positions on counterparties resident in Korea” より著者作成)

うち、1年以内の借入金は1000億ドルを超えていますが、仮に外国の金融機関(とくに米国の金融機関)が韓国に対する短期融資のロール(借り換え)を拒絶すれば、韓国に少なくない混乱が生じることは想像に難くありません。

どうやって危機を防ぐのか?

資金調達が国際化・複雑化すれば、「外国からたくさんのカネを借りて生産活動をする国」というものが出てくるのも当然のことではありますが、得てして発展著しい国の場合、外貨資金繰り管理ができずに通貨危機を発生させてしまう、ということもままあるのです。

こうした通貨危機を防ぐためには、いったいどうすれば良いのでしょうか?

そのためには、「通貨危機の仕組み」を知ることが必要です。

先ほどの議論で、「①外国から」、「②外貨で」おカネを借りているときには、その外国の金融機関がカネを貸してくれなくなったときには、たとえ国家であっても破綻する、ということは自明のことでしょう。そして、その典型例こそ、アルゼンチンやギリシャです。

(※もっとも、ギリシャの場合はユーロ圏に加盟しているため、厳密に言えば、ユーロは「共通通貨」であって、ギリシャにとっての「外貨」ではありませんが、「自国の中央銀行がその通貨を発行することができない」という意味では「外貨」に準じたものだと考えて差し支えありません。)

ただし、市場がパニックになっているときに、その国が短期債務を借り換えられないような事態を防げれば、通貨危機をある程度は防ぐことができます(※完全に防ぐことはできませんが…)。

そこで、「外貨不足に困った国の政府や通貨当局に対し、短期的に外貨を貸してあげる」という仕組みが考案されました。これが「通貨スワップ」です。また、「相手国の中央銀行を経由して相手国の民間金融機関に外貨を貸してあげる」という仕組みは「為替スワップ」と呼ばれます。

日本の場合は現在、アジア諸国を中心に5つの国と通貨スワップを締結しているほか、8つの国とのあいだで為替スワップを締結しています(図表2図表3)。

図表2 日本が締結している通貨スワップ(相手国の引出部分)
相手国 上限 引出条件
インドネシア 227.6億ドル 米ドルか日本円
フィリピン 120億ドル 米ドルか日本円
シンガポール 30億ドル 米ドルか日本円
タイ 30億ドル 米ドルか日本円
インド 750億ドル 米ドル

(【出所】財務省『アジア諸国との二国間通貨スワップ取極』および日本銀行HPより著者作成)

図表3 日本が締結している為替スワップ
相手国・銀行 日本円(上限) 相手国通貨(上限)
米国(米ドル) 上限なし 上限なし
ユーロ圏(ユーロ) 上限なし 上限なし
英国(英ポンド) 上限なし 上限なし
スイス(スイス・フラン) 上限なし 上限なし
カナダ(カナダ・ドル) 上限なし 上限なし
オーストラリア(豪ドル) 1.6兆円 200億豪ドル
シンガポール(Sドル) 1.1兆円 150億Sドル
中国(人民元) 3.4兆円 2000億元

(【出所】日銀『海外中銀との金融協力』より著者作成)

ただし、ここに示したスワップは、いずれも限られた国とのスワップであり、これら以外の国が通貨危機を発生させた場合には、日本としては助ける手段がない、ということでもあります。

CMIMの改定をどう見るか

もっと多国間で協力を!

こうしたなか、ASEAN諸国を中心に、日中韓などが参加する多国間の通貨スワップ協定のことを、「チェンマイ・イニシアティブ・マルチ化協定」(CMIM)と呼びます。

CMIMの前身は「チェンマイ・イニシアティブ」(CMI)と呼ばれる国際金融協力の枠組みで、もともとは1997年に発生したアジア通貨危機の再来を防ぐために、日本が主導する形で2000年5月、タイ・チェンマイの「ASEAN+3」会合で成立した仕組みのことです。

CMIとは、簡単にいえば、日本とタイ、日本とマレーシア、日本とインドネシア、といった具合に、この仕組みに参加している国同士で網の目のように二国間通貨スワップ(BSA)を締結するという考え方ですが、これには大きな問題がありました。

それは、参加する国が増えれば増えるほど、契約の本数が増えてしまう、という欠点です。

たとえば、参加国が日本とタイとインドネシアの3ヵ国だけであれば、契約本数は

  • 日本とタイ
  • 日本とインドネシア
  • タイとインドネシア

の3本で済みます。ところが、これにマレーシアが加わり、4ヵ国の枠組みとなれば、

  • 日本とタイ
  • 日本とインドネシア
  • 日本とマレーシア
  • タイとインドネシア
  • タイとマレーシア
  • マレーシアとインドネシア

という具合に、契約本数は6本に増えますし、同じく参加国が5ヵ国なら契約本数は10本、6ヵ国なら15本、7ヵ国なら21本、と加速度的に増えて行きます(詳しい計算方法は「組合せ」で検索してください)。

そこで、CMIMは、どんなに契約締結国が増えたとしても、同じ1本の契約書で多国間が参加するという、いわゆる「多国間通貨スワップ」の仕組みなのです(図表4)。

図表4 CMIM
拠出額 引出可能額
日本 768億ドル 384億ドル
中国 768億ドル 405億ドル
うち、香港 84億ドル 63ドル
韓国 384億ドル 384億ドル
インドネシア、タイ、マレーシア、シンガポール、フィリピン 各 91.04億ドル 各 227.6億ドル
ベトナム 20億ドル 100億ドル
カンボジア 2.4億ドル 12億ドル
ミャンマー 1.2億ドル 6億ドル
ブルネイ、ラオス 各0.6億ドル 各3億ドル
合計 2400億ドル 2400億ドル

(【出所】財務省『CMIM 貢献額、買入乗数、引出可能総額、投票権率』より著者作成。ただし、中国については香港との合算値。また、香港はIMFに加盟していないため、中国の引出可能額に占める「IMFデリンク」の額は他の国と異なる)

上記図表4では、参加している国は14ヵ国(香港を中国と別にカウントした場合)ですので、マルチ化していなかった場合、契約本数は91本(=14×13÷2)にも膨らんでしまいます。やはり、CMIMのかたちで一元的に管理する方がやりやすいのでしょう。

CMIMの悩み

ただし、CMIMの総額は2400億ドルで、たしかに巨額ではあるものの、アジア各国の経済的結び付きが強まる中で、国境を伝播した金融危機には、金額として必ずしも十分とはいえません。

実際、図表4のCMIMは、図表2に示した日本とアジア諸国との通貨スワップ協定と併存していますが、東南アジア諸国が個別に中国、韓国と締結しているスワップはほかにも存在します(図表5)。

図表5 東南アジア諸国が日中韓と締結する二国間通貨スワップ
契約当事国 日中韓の提供通貨 ASEANの提供通貨
日本/インドネシア 227.6億ドルの米ドルか円 ルピア(金額不明)
日本/フィリピン 120億ドルの米ドルか円 ペソ(金額不明)
日本/タイ 30億ドルの米ドルか円 バーツ(金額不明)
日本/シンガポール(※1) 30億ドルの米ドルか円 Sドル(金額不明)
日本/シンガポール(※2) 1.1兆円 150億Sドル
中国/マレーシア 1800億元(267億ドル) 1100億リンギット(266億ドル)
中国/インドネシア 1000億元(148億ドル) ルピア(金額不明)
中国/タイ 700億元(104億ドル) 3700億バーツ(116億ドル)
中国/シンガポール(※3) 3000億元(445億ドル) Sドル(金額不明)
韓国/インドネシア 11兆ウォン(94億ドル) 115兆ルピア(81億ドル)
韓国/マレーシア 5兆ウォン(43億ドル) 150億リンギット(36億ドル)

(【出所】日銀および各国中央銀行ウェブサイト等を参考に著者作成。なお、※1は通貨スワップ、※2は為替スワップ。※3については『じつは中星為替スワップが失効?事実なら、「大ニュース」だ』で触れたとおり、失効済みの可能性あり)

これで見ると、日本がASEAN諸国に提供しているスワップがいかに破格の条件であるかがよくわかります。というのも、中国や韓国が提供しているスワップは、金額自体は大きいものの、人民元や韓国ウォンなどを引き出しても、通貨危機の際に役に立たないからです。

いや、それどころか、中国や韓国が通貨危機になった場合には、これらの国が通貨スワップ・為替スワップを通じて中韓両国に通貨を取られたうえで、これらを国際的な市場で売り浴びせられる、という可能性すらあります。

つまり、CMIMを補完するはずの二国間通貨スワップが、むしろASEANを中韓発の通貨危機に巻き込むおそれすらあるのです。

ローカル化は歓迎すべき

こうしたなか、CMIMにローカル通貨建てスワップを並置しようとする試みがあります。

これは、以前、『ASEAN「ローカル通貨」スワップ構想の続報と検討課題』で紹介したとおり、現在は14ヵ国が参加するCMIMの引出可能通貨に、米ドルだけでなく各国の現地通貨を加えようとする構想です。

この「ローカル通貨建てCMIM構想」に「続報」が出て来ました。

第22回ASEAN+3(日中韓)財務大臣・中央銀行総裁会議共同声明(2019年5月2日 於:フィジー・ナンディ)(令和元年5月2日付 財務省HPより)

フィジーで開かれた「第22回ASEAN+3」で声明文が公表され、これの第10項~第12項において、CMIMの改定について言及されているのです。

ただし、日本語版のホームページでは「ローカル通貨建てCMIM構想」の詳細について言及がなされていません。困ったことに、英語版のPDFファイルでしか開示されていないのです。

これは、簡単にいえば、「ローカル通貨の使用頻度を高めるために、CMIMの仕組みを使って各国の通貨を引き出せるようにしましょう」という構想のことです。

先ほどの図表4でいえば、たとえば日本が768億ドルを拠出し、384億ドルの引出可能額を持っていますが、この「引出可能額」を米ドルではなく、タイバーツやインドネシアルピアといった相手国の通貨(ローカル通貨)でも受け取れるようにしましょう、というものです。

その狙いについて、先ほどのPDFファイルの6ページにある “Annex General Guidance on Local Currency Contribution to the CMIM” から該当する下りを引っ張ると、次のとおりです。

In the context of growing uncertainty and a challenging external environment, particularly the growing demand for local currency usage in cross-border transactions in the region, increased mutual agreements on initiatives relating to the promotion of local currency usage and a greater role for local currencies as reserve currency, local currency contributions to the CMIM may be one enhancement option. (意訳)外部環境の不確実性などが増すなかで、とくにこの地域のクロスボーダー取引におけるローカル通貨建て取引の需要が増えていることを踏まえ、CMIMの多国間合意においてローカル通貨の使用を促進するとともに、ローカル通貨に決済通貨、準備通貨としての機能を持たせ、もってローカル通貨をCMIMに役立てることが重要である。

きわめて分かり辛い悪文ですが、わかりやすくいえば、これは新しいスワップを創設するという意味ではなく、あくまでも既存のCMIMの機能を強化するという意味であり、具体的には総額2400億ドルのCMIMにローカル通貨引き出し機能を付与する、ということでしょう。

具体的には、タイとマレーシアの企業の取引において、米ドルではなくタイバーツやマレーシアリンギットなどでCMIMから資金を引き出せるようにすることで、ローカル通貨を決済通貨とする動機が広まる、という考え方でしょう。

CMIMとABMIはセット

こうしたなか、あまり注目されていない論点が、債券市場です。

「債券(さいけん)」とは、「債権(さいけん)」と発音は同じですが、似て非なるもので、簡単にいえば、「借金を証券化したもの」のことです。国債も債券の一種ですが、企業が発行すれば「社債」、地方公共団体が発行すれば「地方債」です。

実は、財務省はかなり以前からアジア債券市場育成イニシアティブ(ABMI)を振興していて、アジア諸国にローカル通貨建ての債券市場を発展させようとしているのです。

冒頭で「発展途上国が外国から外貨でカネを借りる」という話題を紹介しましたが、その理由は、発展途上国(中国と韓国も含む)の場合、自国通貨が国際的に通用せず、自国通貨で外国からモノを買うことができないからです。

そして、自国通貨が国際的に通用しない最大の理由は、その国の資本市場が未発達で、その国の通貨を持っていても運用に困るからであり、逆に言えば、機関投資家が運用に使えるような債券市場があれば、その国の通貨が国際化する条件の1つが整うのです。

といっても、その国の通貨が国際化するためには、債券市場を育成しただけではダメで、資本規制を撤廃したり、法制度を整えたりすることも必要です。

余談ですが、国際法に反する判決を平気で下してくるような国の通貨が国際的なハード・カレンシーとなることはあり得ないといえるでしょう。

人民元と中国

人民元の促進?まさか!

ただし、このCMIMのローカル通貨化を巡り、かなり誤解のある記事を発見しました。

韓経:「アジア金融危機なら人民元・日本円支援」(2019年05月03日10時19分付 中央日報日本語版より)

これは、韓国メディア『中央日報』(日本語版)に昨日掲載された『韓国経済新聞』(韓経)のもので、このCMIMのローカル通貨化を「アジア地域で通貨危機が発生すれば中国人民元や日本円を通じた支援も可能にする合意」と述べています。そのうえで韓経は

アジア基軸通貨国の地位を確保しようとする中国はさらに歩幅を広げることになった/事実上、人民元を念頭に置いたものと解釈される

としているのですが、はたしてこれは本当なのでしょうか?

先ほどの “Annex” を読む限り、「ローカル通貨建て取引を促進する」という狙いがあると記載されているものの、「人民元の基軸通貨化」などとはヒトコトも書かれていません。いきなり「人民元の基軸通貨化」とは、少々議論が飛躍し過ぎです。

ちなみに、韓国は中国との間で保有していた通貨スワップ協定(3600億元/64兆ウォン)が2017年10月10日に失効していますが、これについては「失効していない」「口頭で契約延長に合意した」と言い張っている状況にあります。

そんな韓国にとっては人民元の国際化(と日本円の凋落)は都合が良いとでも言うのでしょうか?

なんだかよくわからない記事です。

いずれにせよ、CMIMのローカル通貨化という話題については、財務省の情報開示が乏しいものの、周辺情報を調べていくと、単に「米ドルだけではなくローカル通貨での引出を可能にする」というだけのことであり、新しく「円建ての日韓通貨スワップを創設する」、といったものではないことは確かでしょう。

オマケ:AIIBは鳴かず飛ばず、人民元も中途半端に

ちなみに、中国が主導する国際開発銀行である「アジアインフラ投資銀行」(AIIB)を巡っては、日本国内では、あまり国際金融に詳しくない界隈から、「バスに乗り遅れるな!」「日本も参加すべきだ!」といった感情的な意見が出ていたことも事実です。

ところが、日本は現在に至るまで、この「バス」に乗り込んでいません。

その結果、いったい何が生じたのでしょうか?

これについては、『「バスに乗り遅れた日本」と鳴かず飛ばずのAIIBの現状』でも触れたとおり、AIIB自体が惨憺たる有様であり、結果として「バスに乗り遅れたこと」の弊害は、何1つとして発生していないと考えて良いでしょう。

ただし、中国の「金融覇権」という野望が潰えたと考えるのは尚早です。『中国の国際金融戦略の現状は鳴かず飛ばずだが、警戒は必要だ』でも報告したとおり、現状、人民元の国際的な通貨としての地位上昇は進んでいませんが、中国は簡単に野望を諦める国でもないからです。

このように考えると、中国は引き続き、あらゆる機会を使って「覇権国」の地位を狙いに来るでしょうし、金融面でも利用できるものは利用しようとするのではないかと思います。

引き続き、警戒は必要でしょう。

新宿会計士:

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  • 人民元はドルとかにして中国外に持ち出すのを規制しているみたい。自由な取引ができない通貨が機軸通貨になることはないと思う。これは中国政府も了解しているのではないかな。

  • >ただ、合意書は「域内通貨の活用は需要を基盤とし、支援要請国と支援国の双方の自発性に基づいて行われる」と明示した。通貨危機当事国の意思と関係なく一方的に人民元などを通じた支援が行われるのを防ぐという趣旨だ。

    引用されてる韓経の記事の結びにもあるように、スワップの発動要件が「利用国と支援国の双方の合意のもと」であるならば、ローカル通貨建ての仕組み導入は「アリ」だと思います。

    ローカル通貨建ての取引決済にドルを使って両替手数料を発生させる必要もないですし、「双方の合意のもと」が要件であれば、利用国が意に反して中国人民元で救済されたり(日本円で韓国を救済も)することもありませんからね。

    *従来のドル建ての仕組みを「置き換える」のではなく、ローカル通貨建ての機能を「追加する」との内容であるならば、日本が実質的な「(ひとり)原資負担者」となる訳ではないので、それはそれで検討の価値はあるのではないでしょうか?

  • いつも鋭い考察で感心させられております。
    ところで、図表4 CMIMの
    うち、香港  63ドルは転記ミスでしょうか?

  • 経済面は分からないので文化考察的視点から。
    以下は、以前に私が自分用に書いたメモです。

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    隣接概念の混同
    Confusuion of Adjacent Concepts

    韓国人は、隣接する概念を明瞭に区分することができない。例えば、言語と文字を明確に区別しないため「ハングルは世界一論理的な言語」などと言う。国民、民族、人種の区別もあいまいである。願望と予測の違いも意識できないため、単なる願望が予測として新聞記事になったりする。この現象を「隣接概念の混同 (Confusuion of Adjacent Concepts)」と名付けたい。

    隣接概念の混同は、何年にもわたり韓国人の言動を観察して得た経験則だ。領土、領海、経済的排他水域(EEZ)を明瞭に区別しない。日本の領土と言いながらEEZを示した地図を持ち出す。「東海(日本海のこと)は我が領土」などと言う。日本海という呼称が気に入らないのも、日本の所有物だという思い込み、あるいは名称と所有の概念の混同があるのではないかと疑っている。
    ----

    「人民元の基軸通貨化」は、この隣接概念の混同の現れではないかと思います。簡単に言えば、彼らはkey currency(基軸通貨)とhard currency(交換可能通貨)の区別がついておらず、それぞの要件も理解しておらず、人民元の地位が向上して国際的に通用すれば基軸通貨だと思い込み「人民元の基軸通貨化」と書いてしまうのだと思われます。

    日米とのドル建てスワップがない状況の韓国にとっては、人民元の地位が向上すれば中国と締結している(と韓国が思い込んでいる)3600億元のスワップ協定が頼もしいものになるわけで、是非ともそうなって欲しい願望が、「人民元の基軸通貨化」という予測となるとも言えます。

      • 阿野煮鱒様

        思考に障害があるのは間違いないでしょうね。 あまりにも負の感情が強すぎてそれに流され(押され)てしまうのかもしれません。

        何年か前、H.キッシンジャー氏(元米国務長官)が北朝鮮の事を「情緒的で感情的 かつ衝動的に動く」
        と評していました。 中国人への発言でしたが、、、。 北も南も基本同じ民族だからそう動くのでしょう。 私個人的には北のエリートの方が南より優秀な気がします。(歴史的にも) 

    • 福岡在住者様へ

      コメントありがとうございます。

      私は朝鮮人(過去から現在にいたるまで朝鮮半島に住み暮らした人々)が隣接概念の混同などを起こすのは、近代合理性の獲得を経ていないからではないかと考えています。

      最近はrationalismを合理主義ではなく理性主義というらしいですが、古い人間なものでつい合理主義と呼んでしまいます。これの定義や歴史的意義を語る力量はないので割愛しますが、17世紀以来の科学革命を背景として、人間の理性を基盤とする一連の思想くらいの意味で言います。

      人はスーツを着てネクタイをしめれば現代人になれるわけではありません。それら近代グッズの背景を理解し、自分の社会的立ち位置をわきまえ、しかるべき行動と発言ができて現代人です。我々が何気なく暮らす日々を支えるインフラは、前述の科学革命、産業革命、市民革命の成果として築かれてきたものです。

      これを成し遂げたのは欧米諸国での白人達でしたから、彼らが白人優位主義に陥ったのは宜なるかな、でした。日本は遅れて近代化に参入しましたので、追いつくのに多大な努力を要しました。明治期の青年が味わった苦難は、現在の我々には想像が困難な程深刻だったそうです。例えば夏目漱石が倫敦留学中に精神が鬱屈したのも、近代化を受け入れるために生じる内部葛藤の影響と見ることができます。そうした懊悩を多かれ少なかれ明治の日本人は抱えつつ、富国強兵に邁進したのです。

      日本以外のアジア諸国で、こういった精神的苦痛を乗り越えて自力近代化できた国はありません。朝鮮と台湾は日本による近代注入でした。台湾の方が統治期間が長かったせいか、人間性の違いか、上手く行ったようです。朝鮮は失敗です。与えられた近代化で、形だけスーツを着てネクタイをしめてもダメなのです。

      朝鮮人の思想が薄っぺらで、文学や哲学に見るべきものがなく、DRAMは製造できてもノーベル賞が取れないのは、懊悩や葛藤を乗り越えて近代合理性を獲得したことがないからだと思います。物事を時系列に沿って整理し、因果関係を把握し、秩序立てて考えるという、当たり前の作業が彼らにはできないのです。

      差別的との非難を覚悟で書いてしまいますが、個人的に知り合った東南アジアの人々も、この合理主義が怪しい人が多くて、中には「この人、質量保存の法則を理解してないんじゃないか」と思うくらい変なことを堂々と言う人もいて、これは先が長いなと感じたものです。白人が威張って歩く理由が分かったような気がしました。

      • 毎日新聞英語版の記事はファクトに自分の意図・願望を混在させるいつもの手口の記事だと断じることができますが、毎日新聞が元を基軸通貨にしたい意図はなんなんでしょうね。

        ところで「AIIBバスに乗り遅れるな」というフレーズは誰が言い出したんでしょう。
        原典の「バスに乗り遅れるな」の結果が結果ですので、なんとも絶妙な表現だと感心する次第です。

        • > 「AIIBバスに乗り遅れるな」というフレーズは誰が言い出した

          私もかねがね不思議に思っていました。枢軸国への参加のススメですからね。
          それをAIIBで再現するってことは反語にしかなっていないわけで。
          もしかしたら官邸筋がマスコミの扇動を予測して、意図的にこのフレーズを流行らせたのではないかと思ったりしました。

        • りょうちん様

          >原典の「バスに乗り遅れるな」の結果が結果ですので、なんとも絶妙な表現だと感心する次第です。
          確かに「AIIBバスに乗り遅れるな」を聞いた時、三国同盟そしてその結果を知っている自分としては息を飲んだ事と、バカなフレーズだと呆れかえった記憶があります。
          一応原点の「バスに乗り遅れるな」は軍務局長・武藤章かまたは外務大臣・松岡洋右のリークで朝日新聞が展開したのが最初と言われています。松岡は極東軍事裁判調査段階で死亡しており新体制運動関連著作の中で現れる程度の内容なので確度は聞取り程度のものです。
          つまり、陸軍に有ったドイツ電撃戦のインパクトと松岡の対ソ戦略の一環としてのブロック経済論が陸軍の論客によりまるめ込まれる形で三国同盟に至る流れを生んだということです。
           
          そして「AIIBバスに乗り遅れるな」で思ったのは政権の指向性を変容できない朝日新聞がどこぞの学者にAIIB参加を促す、いわば2匹目のドジョウを狙ったのではないかと考える次第です。
          事実、安倍政権にAIIB参加させたい勢力がこの忌まわしきフレーズを掲げて動き回ったのをとの認識です。

      • 阿野煮鱒様

        近代合理精神の獲得というほど高尚な話じゃありませんが、東南アジアからの留学生(大学院レベルですが)を相手にしていると、科学的な話題にしろ、生活に密着したような話題にしろ、そうわけが分からなくなるような具合になった経験はないんですよ。それに、おしなべて彼らは英語が達者。それもそのはずで、彼らは高等教育を受ける段階から英語で書かれた教科書を使っているですね。母語では抽象概念なんぞの必要な事項を記述することができないという、ある意味悲劇です。ところでカノ国の言語状況たるや、コリャもう喜劇というしかないですね。元々は日本の統治によって学校制度がつくられ、日本語で教育を受け、物事の理解は日本語の概念語を使ってという、まさに自尊心のズタズタの民族的悲劇だったんだが、なんとかこの事実を糊塗したい国粋主義的教育者とか言語学者とかが、母国語から日本語由来の単語を排除するニダと折あるごとに唱える。当たり前だが、やってみるとなかなかうまくいかないから、和製漢語を朝鮮式の読みでハングル表記に替え、跡が残らないように漢字そのものの追放にまで踏み切っちゃった。この間どなたかが紹介してた「貴社の記者が汽車で帰社した」式の(たしか釣り船が入ってたような)文のハングル読み。笑っちゃうしかありませんでした。あと一世代もこれが続けば、「隣接概念の混同」どころの話じゃない。世界中の誰が聞いても意味不明の理屈で、しかも言ってる本人さえちゃんと理解していない話を、「オレの言うことを聞くニダ」と、しゃべり散らすようになるんでしょう。

        • 私が出会った東南アジアの諸氏は、研修名目の出稼ぎ労働者ばかりです。日本語も英語も碌に話せません。片言の日本語と身振り手振りから何とか意思表示は理解できましたが「その認識おかしくないか」と思うことが多々あります。英語で高等教育が受けられるエリートなら何の問題もないのでしょうね。それはつまり、国の中に超えられない格差ができるということでもあるでしょう。

          ここまで書いて気づいたのですが、韓国/朝鮮の場合、エリートでも前近代なのですよね。ソウル大学の教授とかいう地位の人でも時系列や因果関係の整理が怪しいとか、大法院判事でも法の不遡及の原則や国際法の国内法の対する優越が身についていないとか。そうなると、近代合理性以外に、朝鮮に固有の前近代停滞ファクターが必要になります。また考え直しです。

          > 世界中の誰が聞いても意味不明の理屈

          既にその兆候は現れていますね。今の文在寅外交は典型例になっていると思います。ただ、プロパガンダには熱心な国民性ゆえ、韓国シンパは世界中で増殖している気もします。人間は論理より感情に動かされますので、性奴隷やら強制徴用やらのデタラメを一掃するのは相当に困難だと思っています。

      • 阿野煮鱒様へ

        >物事を時系列に沿って整理し、因果関係を把握し、秩序立てて考えるという

        私が技術畑出身だから言う訳ではありませんが、この資質は技術者にとって必須の素養のようです。
        よく言われるように日本は「職人国家」で「ものづくり」を貴ぶ気風がありますが、「ものづくり」にはこのような合理的な思考が無ければなりません。
        合理的な思考が出来なければ、形だけ真似てもまともな製品は出来ません。
        一々例示するのは控えますが、職人だけでなく商人も、お百姓も、漁師も、もちろん為政者たる武士も、この資質を身に着けている者だけが生き残って来たのです。
        中世以前から、この国の人間は合理的な思考(思考方法というべきか?)というものを身に着けていたように思えるのです。
        明治期に苦労しながらも西洋文明の消化に成功したのは、この資質のお陰かもしれません。

        朝鮮人がせっかく日本の設計図を手に入れながらも「雨が降れば決壊する」ダムを造ってしまうのは、合理的思考が出来ないと言う欠陥の表れでしょう。

  • youtubeに韓国が日本への借金を返さないという主旨の投稿を見つけました。
    https://www.youtube.com/watch?v=TZHbbw25H_M

    かなり?な内容(たとえば朝鮮併合をした歳の大韓帝国のロシア帝国への債務を日本が支払った分など)もありますが、こんなに日本への債務不履行があるのでしょうか。
    日韓条約における有償部分の返済は履行されているのでしょうか。

  • 記事本文と直接関係なく恐縮ですが・・・

    ---
    韓国議員団が訪日へ=関係改善を模索(時事通信)
    https://www.jiji.com/jc/article?k=2019050300651

    【ソウル時事】韓国国会の文喜相議長は、対日議員外交を強化するための組織「韓日フォーラム」を立ち上げ、会長に韓日議員連盟会長を務めた無所属の徐清源議員を任命した。国会報道官室が3日、発表した。徐氏や韓日議連の現会長、姜昌一議員らは今月中旬、日本を訪問、「自民党幹部らと会い、悪化している韓日関係の改善策を模索する」という。
    ---
    というわけで、冬瓜議長が日韓関係改善のために、議員団を引き連れてわざわざ日本にお越しになるそうです。

    自民党の二階幹事長あたりが、待ってましたとばかりに大歓待するんでしょうか。

    文大統領から両陛下への「呪電」といい、彼らの平常運転を続ける彼らに対して、ここで日本から発するメッセージを誤ってはいかんと、思う今日この頃。

    「祝」ってやる!(笑)

    • 失礼!
      文議長自身は来日するとは書いてませんでした。
      訂正します。

  • 会計士さま

     丁寧な解説どうもありがとうございます。勉強になりました。
     私も、これでCHYが基軸通貨はおろかハードカレンシーになるとも思えませんが、中国とアセアン諸国との取引でCHY建ての取引の増加にはなると思います。中国のすることには何につけても用心が必要と存じます。
    でも、日本との取引でJPY建が増えるであろうメリットもありそうなので・・・。

    ただ、私は通貨スワップに多国間の取り決めは不要との思いは、変わりません。

  • 更新ありがとうございます。

    韓国紙の報じるところ、スワップ結んでくれない日本へのやっかみと、『元は基軸通貨だ』と持ち上げて中国への擦り寄りで媚を売っているんでしょう。本来、世界の認識は日本が基軸通貨なのに認めたくない。幼稚な振る舞い。日本下げシナ上げ、何時もの事です。

    で、これだけやっても中韓スワップは無言(笑)回答無しッ。豪とかの僅かな、はした金では何ともならん。外国からの借り入れが33兆円!そのうち短期返済が1,000億ドル11兆円!借り換えに応じてくれるのかな?日本は〜どうする?(笑)

    ウォンがジリジリ下がってますし、半導体、車、造船、、輸出ドツボですな。おめでとう!文は暫くこのまま緩降下で維持せよ。パワーは全開にせずゆっくり使い果たせ!

  • 此、アメリカ側から見ればドルの影響力がアジア圏で弱まったと見えるのでは無いですかね、此をアメリカの金融資本は黙って見ているのでしょうか?
    アメリカが今まで儲けて来た中国を叩き始めたと言う事と併せて考えてみれば、日本の動きはアジアにそれなりの危機が来ると読むのが正解なのでしょうかね?

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