「日本の金融機関は世界最大の資金の出し手」という事実

先日の『カリブ海の小国に63兆円を貸し付ける最強の日本の金融機関』で紹介し忘れた論点がいくつかありましたので、補足がてら、これらについて紹介したいと思います。マスコミ各社はあまり報道していませんが、実は国際金融の世界では、日本の金融機関は「世界最大の資金の出し手」なのです。もちろん、このことを手放しで喜んでよい、という話ではありません。なぜなら、日本国内に有望な投資先がないからこそ、日本の金融機関は外国におカネを貸すしかないからです。いずれにせよ、現実の日本の姿を正確にとらえるという努力は必要でしょう。

日本の金融機関は世界最強

先日、『カリブ海の小国に63兆円を貸し付ける最強の日本の金融機関』という議論のなかで、国際決済銀行の統計について、紹介しました。

カリブ海の小国に63兆円を貸し付ける最強の日本の金融機関

「国際決済銀行」というよりも、金融業界の人であれば、「BIS」という略称の方が一般的でしょう。これは、英語の “the Bank for International Settlements” の頭文字を取ったもので、英語圏では「ビー・アイ・エス」と発音されることが一般的ですが、日本では「ビス」と呼ばれています。

昨今、銀行等の金融機関は、国境をまたいで活動することが増えています。

日本の場合も例外ではなく、「G-SIBs」にも指定されている3メガバンクを筆頭に、銀行・証券会社・系統上部団体など、合計19のグループが日本国外に支店を持ち、銀行業務やこれに関連する業務を営んでいます。

国際的な銀行自己資本比率規制の適用を受ける会社
  • 3メガ(三菱UFJフィナンシャル・グループ、みずほフィナンシャルグループ、三井住友フィナンシャルグループ)
  • 大手金融機関5社(野村ホールディングス、大和証券グループ本社、三井住友信託銀行、農林中央金庫、株式会社商工組合中央金庫)
  • 地銀10行(群馬、千葉、横浜、静岡、八十二、滋賀、北國、中国、伊予、山口の各銀行)
  • 第二地銀1行(名古屋銀行)

(【出所】金融庁、各社ホームページ等)

仕組商品への投資とケイマン諸島

ただ、この19社・グループ以外であっても、日本の金融機関は外国への投資や融資を活発化させています。

たとえば、アジア開発銀行などの国際開発銀行は円建ての債券(サムライ債)などを旺盛に発行していて、日本国内に投資先がない日本の金融機関にとって、これらの円建て債券は格好の投資対象でもあります。

また、先日の記事でも報告したとおり、日本の金融機関はなぜかケイマン諸島の会社に対して巨額のカネを貸しています。その金額は、日銀側の統計によると、トータルで実に5700億ドル(※2018年12月末時点、最終リスクベース)であり、1ドル=110円で換算すればざっと63兆円(!)です。

また、BIS側の統計では、外国から受け入れている投資の額のうち、日本円が5103億ドル(※2018年9月末時点、所在地ベース)であり、このことからも、ケイマン諸島にとって日本は「良いお客さん」であることが示唆されます。

ただ、日本の金融機関がこぞって法律事務所と観光ビーチ以外に目立った産業のないケイマン諸島に63兆円ものカネを貸すというのもおかしな話ですが、これはちゃんとからくりがあって、ケイマン諸島の会社は日本の金融機関から借りたカネで日本国債とデリバティブ契約を締結しているだけなのです。

何のことはなく、要するに、日本の金融機関が仕組債などの金融商品にケイマン経由で投資しているだけの話であり、別に日本の金融機関がケイマン諸島の産業振興のために63兆円を貸し込んでいる、という意味ではありません。

資金の出し手ランキング

さて、先日の記事を執筆した際、もう1つの図表を作っていたのですが、これについてうっかり記事本文に入れるのを忘れてしまいました。

それが、「資金の出し手ランキング」です。

具体的には、「外国に対しておカネを貸している国」を上位順に並べてみたものですが、次の図表のとおり、国際的な金融センターであるはずの英国や米国を押しのけ、日本が堂々の1位にランクインしているのです。

図表 資金の出し手ランキング
金額シェア
1位:日本4兆0427億ドル15.36%
2位:英国3兆4366億ドル13.06%
3位:米国3兆4324億ドル13.04%
4位:フランス3兆0574億ドル11.62%
5位:ドイツ1兆9048億ドル7.24%
6位:カナダ1兆7207億ドル6.54%
7位:スペイン1兆7005億ドル6.46%
8位:オランダ1兆3690億ドル5.20%
9位:スイス1兆0625億ドル4.04%
10位:イタリア8561億ドル3.25%
その他3兆7328億ドル
合計26兆6315億ドル

(【出所】BIS『最終リスクベース銀行統計(CBS)』より著者作成)

また、「金融強国」というイメージのないフランスが4位と意外に検討しているという印象の一方で、「欧州最強の国」とういイメージのドイツの対外投資が2兆ドルを割り込んでいるというのも、また意外な気がします(某銀行の経営危機のためでしょうか?)。

なお、11位以下はスウェーデン、オーストラリア、シンガポールなどが続きますが、このランキング自体、「レポート報告国」がそもそも24ヵ国しか存在していないため、香港やケイマンなどの国際オフショア金融センターがランキングに含まれていないという不完全なものでもあります。

しかし、いずれにせよ日本が全世界の中で「資金供給主体」としてはダントツのトップであるという点については、ほぼ間違いないと考えて良いでしょう。

G-SIBsとは?

さて、国際的な金融について議論するときに必要な知識は、「G-SIBs」という用語です。

これは、 “Global Systemically Important Banks” の略で、日本語では「グローバルなシステム上重要な銀行」という訳語が日銀などによって充てられています。

このG-SIBsは、国際的な金融監督組織である金融安定理事会(FSB)が毎年11月、全世界で30程度を目安として指定しているもので、日本からは3つのメガバンクがG-SIBsに指定されています。

ちなみに最新版のG-SIBs一覧表は、昨年11月、FSBのウェブサイトに公表されていますが(※PDF版)、G-SIBsの本店所在国は次のとおりです。

  • 米国…8社
  • 中国…4社
  • フランス…4社
  • 日本…3社
  • 英国…3社
  • スイス…2社
  • オランダ…1社
  • カナダ…1社
  • スペイン…1社
  • イタリア…1社
  • ドイツ…1社

中国から4社も「G-SIBs」に指定されているというのもおかしな話ですが、やはり米国が8社、フランスが4社というのも、先ほどのランキングでフランスが上位4位に入っていたことと整合しているように思えます。

その一方で、日本や英国はG-SIBsが3社、「金融立国」のイメージが強いスイスからは2社しかないというのもまた意外な気がします。何よりドイツの場合はG-SIBsがたった1社しかないというのも、意外とドイツが「金融」という面でアキレス腱を抱えている証拠に見えてなりません。

※ ※ ※ ※ ※ ※ ※

ところで、このBIS統計には、さまざまな種類の似たような統計が乱立していて、それぞれの統計の整合性も取れておらず、また、中国などについては一部の重要なデータが欠落しているなど、決して十分な統計であるとはいえません。

ただ、国際的な金融動向について議論する際には、やはり、「数字に基づいた議論」は欠かせません。

その意味で、当ウェブサイトでは日銀・資金循環統計の解説を含め、「基礎的な数字」を大切にしていきたいと考えているのです。

読者コメント一覧

  1. 匿名 より:

    ランキングの大好きな例の国が入ってなかったので少し付け足してみました。
    間違っていましたら削除や訂正お願いいたします。

    資金の出し手ランキング
    1位:日本 4兆0427億ドル 15.36%
    2位:英国 3兆4366億ドル 13.06%
    3位:米国 3兆4324億ドル 13.04%
    4位:フランス 3兆0574億ドル 11.62%
    5位:ドイツ 1兆9048億ドル 7.24%
    6位:カナダ 1兆7207億ドル 6.54%
    7位:スペイン 1兆7005億ドル 6.46%
    8位:オランダ 1兆3690億ドル 5.20%
    9位:スイス 1兆0625億ドル 4.04%
    10位:イタリア 8561億ドル 3.25%

    スウェーデン8062億ドル
    オーストラリア6851億ドル
    デンマーク6109億ドル
    オーストリア3862億ドル
    ベルギー2234億ドル

    その他 3兆7328億ドル

    (いわゆる中進国)
    *シンガポール 5384億ドル
    *台湾3103億ドル
    *韓国  1955億ドル
    *チリ 1874億ドル
    *ギリシャ585億ドル

    彼らのライバルはチリやギリシャですね。

    1. 匿名 より:

      この記事を見ても、韓国に対する対抗措置は、金融のストップ/引上げを、まず第一に考えるべきと思います。貿易保険も止めるべきですし。

  2. めがねのおやじ より:

    更新ありがとうございます。

    資金の出し手ランキング、『おーい!ランキング大好きなサウス コリア!ベスト10ランク外やぞッ』(大笑)。都合悪い時は無視。匿名さんによると、ナニ?台湾が3,100億ドル、サウスコリアは1,955億ドル?チリ、ギリシャ並み フッ。日本はあ、4兆ドル超え、大きな事言いなさんな。身の丈に合わせろよ!

  3. 韓国在住日本人 より:

     スレタイとは関係なのですが、面白い(くだらない?)記事を見つけたのでちょっと書かせていただきます。

     http://news.chosun.com/site/data/html_dir/2019/03/20/2019032002130.html

     この記事は朝鮮日報日本語版にはなく韓国語版でしか扱ってないと思います。

     タイトルが ” 30개 모텔에 ‘1㎜ 초소형 몰카’ 투숙객 1600명 사생활 생중계 ” で日本語に訳すると「30のモーテルに ’ 1mm超小型盗撮カメラ ’ 宿泊客1600人私生活が生中継 ” です。内容を見ると犯罪グループ(検挙済み)が存在し、生中継で無料配信してヤバいシーンになると有料化するというものです。韓国のモーテルは男女だけが宿泊するのではなく一般の人も宿泊します。小生も出張先でモーテルに何回も宿泊しています。ビジネスホテルより安く(5万~8万₩)で冷蔵庫の中は飲み放題、食事はありませんがロビーにはコーヒーやスナック菓子が常にあったりします(全てモーテルがそうではありません)。また、朝の指定した時間に、希望の場所(会社や地下鉄駅等)まで送ってくれます。

     と言う訳で一般の客も宿泊することが多いため、少数のカメラを仕掛けても空振りが多くなります。そこで彼らは42個ものカメラを30件のモーテルに仕掛けて生中継していたそうです。これを24時間すべて監視し、事が起こると有料に切り替える作業をするため、パソコンの前にずっと人を配置しないといけません。今のところ記事には4人しか名前が挙がってませんが、もしかすると今後増える可能性があります。

     韓国では最近盗撮被害が増えており、女子トイレ等は格好の盗撮場所になっています。女性は用をたす前に壁に開いている穴に全てトイレットペーパーを詰め込む作業をしないといけないそうです。

     当然この中には有名人が居たり名士が居たりする可能性があります。これは強請りネタになる可能性が高いので、韓国での遊びは気を付ける必要があります。

     駄文にて失礼します

    1. 未開土人大王艦長 より:

      日本には自分達の性行為や排泄行為を自撮りして投稿するという変態マニアの方々のボランティアに支えられたサイトがあります。結合部そのものの動画だけでなく、不倫もの、SMもの、スカトロ系、同性愛系まで大衆の多岐にわたる欲求に耐えうるものになっており、サイトは広告料で運営されています。もちろんモザイクはかかりますが、視聴者が投稿者に連絡がとれるので、オリジナルの直接の配布も可能になっています。この会計士さんのサイトに屯している常連さんの中には、このような下ネタを眉をひそめながらも楽しんでおられる方が少なくないと思いますが、ここでこのような下衆な話を出したのは、エロ動画の扱いに韓国人と日本人の文化的成熟の差がはっきりと現れているからです。エロであることに関しては国境はありません。ポルノが死刑の中国でも大人のオモチャ屋さんは普通に営業しています。韓国では犯罪によって大衆のエロへの欲求や好奇心が満たされているのに対し、日本では変態マニアさんの承認欲求ど大衆のエロへの欲求と好奇心が合法的に満たされるシステムが構築されているのです。韓国は過激なサービスを安売りする以外ないことがエロ一つとっても分かるのです。

  4. 心配性のおばさん より:

    >日本国内に有望な投資先がないからこそ、日本の金融機関は外国におカネを貸すしかないからです。

    このことは、過日、プライムニュースでも取り上げていた覚えがあります。
    日本の景気回復が本物ではない、一つの指標として、日本国内に借り手がいない。ということらしいです。

    これについては、日本の金融機関は企業(借り手)を批判する権利を持ちません。なぜなら、急激な景気の冷え込みに、借り手である企業を支えるといった金融努力をせず、貸しはがしなどの暴挙に走ったことを日本社会は覚えているからです。

    さて、日本の金融機関が、外国におカネを貸すということですが、そのリスクをどこまで、マネージメントできるのですかね。
    なんの覚悟もノウハウもなく、やられては、預金者が迷惑します。

    1. 門外漢 より:

      小母さんへ

      バブルが弾けた頃、これからは外需ではなく内需による経済を考えねばと言われました。
      本当にそんな転換が出来るのか疑問に思ったものですが、現在では内需で保つ国に脱皮出来たように思います。独なんかはいまだに輸出主導でやっていますが。
      同様に国自体が成熟(老成?)してくれば国内に投資機会が減って来るので、金融立国を目指す=投資で喰う国になっていくのもやむを得ないのかもしれません。
      日本の銀行もパンダ債なんかで下手を打っているところもありますが、徐々に上手くなっていくのではありませんかね。

      米国みたいに移民を受け入れて活力を保つ、というのはどうもしっくりしないんです。

      1. 鞍馬天狗 より:

        門外漢さんへ

        >米国みたいに移民を受け入れて活力を保つ….
        同意です

        当の米国が方向転換を始めてると思いますし

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