【速報】国連安保理報告書 北朝鮮の制裁逃れ巧妙化・常態化

国連安保理による報告書を巡り、インターネット上を閲覧していたところ、偶然ですが、「国連安保理議長による書簡」なるものを発見しました。この書簡は、もしかしたら私のような一般人が「読んではならないレポート」だったのかもしれませんが、いくつかの英字メディアですでに内容が報じられているようであり、かつ、ウェブ上でパスワードなしに入手できたため、おそらくは「公表物」なのだろうと判断して、その内容を掲載することにしました。簡単にいえば、北朝鮮は瀬取りやサイバーアタックなどを利用して国連安保理制裁逃れをしている、という指摘です。本稿では、とりあえずざっと流し読みをしてみた結果について、速報的にお伝えしたいと思います。

国連安保理議長書簡

国連北朝鮮制裁パネルに関する報告書を巡って、ウェブ上を検索していたところ、 “Note by the President of the Security Council” 、という文書を発見しました。「国連安保理議長による書簡」、とでも訳せばよいでしょうか。

書簡の日付を見ると、2019年3月5日、つまり約10日前のものです。

アクセスするには、国連オフィシャル・ドキュメント・システム(Official Document System)のウェブサイトにアクセスし、「シンボル」欄に “S/2019/171” と入力して “Search” ボタンを押していただくのが一番早いと思います(図表1)。

図表1 国連オフィシャル・ドキュメント・システムのダウンロード方法

(【出所】国連HPより著者加工)

ただし、ダウンロードの手続は面倒なので、私が入手したファイルのうち、PDF版を、当ウェブサイトにおいても公表したいと思います。

Note by the President of the Security Council(PDF)(※大容量注意)

それはさておき、ダウンロードしたファイルは、PDFで378ページと膨大なものですが(※ワード版も入手可能)、簡単にいうと、「北朝鮮が国連安保理決議に基づく経済制裁をさまざまな手段で逃れており、国連制裁があまり機能していない」とするものです。

章立ては次の7章プラス「アネックス(付属文書)」という構成で、むしろこの文書が膨大な理由はこの「アネックス」の存在にあります。

  1. Introduction(導入)
  2. Sectoral and maritime sanctions(部門別・海上制裁)
  3. Embargoes, designated entities and individuals(禁輸措置、指定団体・個人)
  4. Finance(金融)
  5. Recent activities related to nuclear and ballistic missile programmes(核・弾道ミサイルプログラムに関する最近の活動)
  6. Unintended impact of sanctions(制裁の意図せざる影響)
  7. National implementation reports(各国の制裁導入状況)

Annex(付録)

逆に言えば、本文部分は「イントロダクション」を除く6つの章について眺めていけば、それほど難なく読める、ということでしょう。

衝撃的なレポート

北朝鮮の制裁逃れについて

レポートの冒頭には要約が掲載されているのですが、ここに次のような記述があります。

The nuclear and ballistic missile programmes of the Democratic People’s Republic of Korea remain intact and the country continues to defy Security Council resolutions through a massive increase in illegal ship-to-ship transfers of petroleum products and coal.(※下線部は引用者による加工)

簡単に言えば、北朝鮮の核・弾道ミサイル開発プログラムに対して国連安保理が科した制裁に対して、北朝鮮は「石油関連製品や石炭の違法な瀬取り」を大幅に増大させている、という指摘です。そのうえで、レポートは「これらの活動が国連安保理決議を無効にしている」と述べます。

また、これらの活動により、2018年に北朝鮮が輸入した石油精製品はすでに50万バレルを超えたと指摘。これに加えて、世界の銀行や保険会社が「気付かないうちに」(unwittingly)北朝鮮向けの違法な瀬取り活動の決済に利用されてしまっているとしています。

さらに、北朝鮮は武器の輸出入規制にも違反して、イエメンのフーシ派やリビア、スーダンなどに対し、小型の武器を輸出したと指摘。フーシ派への武器供与に際しては、シリアの「フセイン・アル・アリ」なる武器輸送業者を利用した、などと述べています。

違法な瀬取り

レポートでは、国連安保理は現在、北朝鮮の瀬取りに関与したとして、合計50以上の船舶と160以上の団体を捜査しているとしていますが、こうした瀬取り活動は2018年に入ってから急増したそうです。

また、2018年10月には “Yuk Tung” 号と「オーシャン・エクスプローラー号」が接近している写真が掲載されています(第5項、図表2)。

図表2 2018年10月28日、Yuk Tung号とOcean Explorer号

(【出所】国連安保理レポート)

また、こうした瀬取りには「なりすまし」も利用されているらしく、アフリカ・ギニア湾に面したトーゴ共和国のロメ港に係留されているはずの、コモロ船籍のHikaという船舶を偽装したMaikaという船舶との間でも瀬取りが行われていたとか(第6項、図表3)。

図表3 瀬取り地点と7000マイル離れたアフリカ

(【出所】国連安保理レポート)

北朝鮮は船舶の登録証明を偽造するなどの手口をフル活用して、「どこの国のどの船舶が関与しているか」についてわかりにくくするなどの手法により、瀬取りを複雑化させているのです。

違法な金融

ところで、瀬取りでは実際に100ドル札などの札束・現金(いわゆる「バルク・キャッシュ」)も摘発されているそうですが(同第27項、図表4)、それだけでなく、北朝鮮は金融面でも違法行為を強めています。

図表4 摘発されたバルク・キャッシュ

(【出所】国連安保理レポート)

国連安保理決議以降、多くの民間金融機関は北朝鮮関連口座の封鎖などの手続を取っているものの、レポートでは依然として北朝鮮関連の資産凍結措置が不十分なケースが散見されると指摘しています(第107項、第108項等)。

また、北朝鮮はサイバー・アタック(第109項)などの手法も活用しているとしており、レポートでは国連安保理に対し、こうしたサイバー・アタックについても考慮に入れた新たな対策を講じることを要求しています(第116項)。

これをどう見るか

今回のレポート、膨大なページ数のわりには、北朝鮮が違法な瀬取りを行っているだの、サイバーアタックなどで不正なバンキング行為を行っているだのといった点については、すでに当ウェブサイトでも過去1年以上にわたって紹介して来た論点であり、正直、新味はありません。

ちなみに、当ウェブサイトでも紹介したとおり、「国連安保理専門家パネル報告書」について、わが国のメディアによる事前リーク報道が相次いでいました。

私が閲覧したこのレポートが、これらの報道に出ていたものと同一であるかどうかについては、現時点ではよくわかりません。しかし、重要なことは、レポートそのものではなく、北朝鮮に対する制裁逃れが巧妙化・常態化する中で、事実上、北朝鮮制裁が骨抜きにされているという点でしょう。

また、私が密かに注目しているのは、韓国です。

レポートの中では、確かに韓国が開城(かいじょう)工業団地に、昨年8月に石油精製品を持ち込んだとする報道についても言及がありますし(Annex21第13項)、また、韓国企業が北朝鮮産の鉄鉱石などを購入していた事件にも言及しています(第37項)。

いずれにせよ、これを受けて国連安保理が再び北朝鮮に対する何らかの制裁決議を行うのかどうか、そして、北朝鮮の核開発を事実上幇助する各国に対する「セカンダリー・サンクション」に踏み切るのかどうかについては、引き続き注目に値する点です。

読者コメント一覧

  1. りょうちん より:

    うーん。北朝鮮は真面目に違法行為をやっているなあと感心しますw

    それだけに、レーダー照射事件のアレはやっぱり要人確保くらいの理由がないとあり得ないよなあとの思いを強くします。

    でもってこれだけ把握しておきながら、何もしない国連はやっぱり金のムダだよなと再確認。

    1. 新宿会計士 より:

      りょうちん 様

      いつもコメントありがとうございます。

      >うーん。北朝鮮は真面目に違法行為をやっているなあと感心しますw

      「真面目に違法行為」!(笑)まったくそのとおりですね。
      また、国連って、本当にカネの無駄遣いだと思います。まさに「役所of役所」といったところでしょうか。

      引き続き当ウェブサイトのご愛読並びにお気軽なコメントを賜りますよう、何卒よろしくお願い申し上げます。

  2. a4 より:

    更新ありがとうございます。
    制裁破りは想定内ですが、時間が経つに連れ何もしなければ規模は拡大していくのでしょうね、今後の対応に期待したいところですが全てアメリカ様頼りですもんね情けない。
    チョットブラックな記事ですが北はある投資家には魅力的なそうな
    >>元経済ヤクザが地下情報から読み解く「米朝会談決裂の深層」 核と暴力とアンダーグラウンドと
    猫組長 https://gendai.ismedia.jp/articles/-/63119

  3. めがねのおやじ より:

    更新ありがとうございます。

    国連安保理は調べ上げて、何か初動を起こすのでしょうか?こんだけ判明しながら、北朝鮮だけでなく、宥和政策の中国、そして韓国!

    北朝鮮と同じ制裁喰らうか?10日ぐらい前のレポートなら、動かないとますます図に乗って来るよ、北朝鮮は。ホントに国連も日本も甘いんだから。P1哨戒機レーダー照射は、こうなるとよほど都合が悪かったんでしょう。

    今日、日韓高官協議でしたね。さて、何もなく物別れか、日本が強硬姿勢で何かするか、とても楽しみです。そろそろ一ノ矢を放てよ!

  4. とゆら より:

    南北首脳リムジン同乗写真、安保理は韓国政府の削除要請を拒否 ノ・ソクチョ記者
    朝鮮日報/朝鮮日報日本語版

    誇らしい韓国だなあ。

  5. R より:

    貴重な情報をありがとうございます。本日、国連の正式な報告書が出るということでしたので、
    そちらを楽しみにしています。

    末尾に加盟国に対する「勧告」(案)が記載されており、こちらは、加盟国が事実上守らないといけなくなるものかと思いますので、その部分が特に興味深かったです。

    北朝鮮の大使や家族に対する銀行預金の開設に留意すべき点や、密貿易・瀬取、仮想通貨や、サイバーアタック関係に焦点があたっている印象です。

    韓国については、韓国が起訴した密貿易の件(ロシアかの輸入という風に見せかけて、実は、北緒戦の石炭を輸入)等のニュースが引用されているようですね。ロシアの港で荷下ろししていないのに、ロシアからの輸出と扱われたというようなことが書かれています。それだけですか。

    この報告書だけですと、あまり、韓国に対する強い証拠にはならなさそうですね。

    韓国が北朝鮮への石油の輸出の割り当て分を超過して、北朝鮮に何度も輸出を行い、
    しかも、報告義務にも違反していたことについては、言及を見つけられませんでした。
    (ざっとみただけなので、もしかしたら、どこかに記載があるかもしれません。)

    下記のニュースでも、韓国の弁解を国連は却下(dismissed)といっていますので、
    強く批判して欲しかったところです。
    https://www.nknews.org/2019/03/un-poe-dismisses-s-korean-explanation-for-unreported-petrol-transfers-to-north/

    一方、北朝鮮とのJV等による迂回の疑念が指摘されている国に、中国や日本が入っており、韓国が入っていないのも、(以前の報告書からそうですが、)いかにも違和感があります。日本は疑念が晴れたようですが、韓国への言及がないのは、やはり、国連事務総長を韓国人がやっていたことが大きいのでしょうね。(国連は、本当に腐敗していますね。)

    報告書でも書かれているような密貿易の手口には、金融機関も、輸出入業者も、要注意ということになるでしょうし、北朝鮮に寄港した船だけでなく、ロシアや、中国、韓国等に寄稿している船も、要注意となるのでしょう。セドリの頻発地域が、中国/朝鮮半島の近辺などと書いてあるからです。

    この報告書を見ると、安倍政権からの国連への押しが、まだまだ弱いように思います。
    韓国の北朝鮮支援について批判できるような事例がもっと必要でしょう。

    さて、国連の報告書は、一定の信頼性のある媒体の、英語の記事でないと引用しないようですので、日本の新聞社も、記事をどんどん英語でネットに出すべきですし、日本政府も、メディア戦略を頑張った方がいいと思います。

    朝日新聞も、汚名挽回のために、北朝鮮を、韓国が違法に手助けしている証拠等を集めて、
    記事にしたら、国民からの支持を挽回できる可能性もあるのではないでしょうか。

    韓国による違法な輸出を含めた制裁批判により、制裁はきいておらず、金総書記は、
    ロールスロイスにのっている有様なのであり、北朝鮮=韓国連合を追い詰めなければ、拉致被害者も、かえってこないでしょう。

    1. R より:

      報告書は、下記のサイトで公表済みでしたね。
      https://www.un.org/securitycouncil/sanctions/1718/panel_experts/reports

      3月5日付となっているのに、公表が、今週などといっていたので、
      3月5日のものが非公式なのかと勘違いしてしまいました。

  6. spaceman より:

    更新ありがとうございます。

    朝鮮日報のこの記事、面白いと思って眺めていたら、楽韓Webさんも取り上げていました。
    (一応朝鮮日報該当記事への直リンク張っておきますが、下の楽韓Webエントリを読むだけで十分かと思います。)

    http://www.chosunonline.com/site/data/html_dir/2019/03/14/2019031480029.html

    http://blog.livedoor.jp/rakukan/archives/5462540.html

    また、話は変わって、昨日の記事ですが、矢野義昭氏の論考はちょっとユニークで面白い内容でした。

    http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/55715

    トランプは、現在の米国内での逆風を踏まえ、北朝鮮との核合意を次の大統領選に近い時期まで先延ばしした上で劇的な成果としてアピールする目論見があって、今回は敢えて合意しなかった(むしろ合意潰しのためにハードルを上げた)のではないかという説です。
    文在寅についても、北朝鮮を油断させるために融和的な態度をとるよう指示したか、もしくは敢えて自由に泳がせておいたのではないかと。(個人的に、文在寅がトランプと裏で通じているというのはありえないと思いますが。)

    まあ、ある種の陰謀論ですが、この長い長い論考には他にも面白い部分があり、捨てるのには惜しい面白さがありました。

  7. りちゃ より:

    北朝鮮がいまだに息をしているってことは
    年間1兆円規模でモノが北朝鮮に入っているのだろうか??
    ってことはそれの代価として年間1兆円規模の富を産み出しているの??

    トータルの規模が気になる

    1. りちゃ より:

      結局、送金ルートを断つしかないと思う。
      パチンコ禁止法作るとか

      wikipediaより引用
      朝銀事件・日本のパチンコ業者からの送金・朝韓合弁事業収益・ミサイル輸出収益・麻薬偽札収益で国家税収を上回る収益を主として日韓から合法・不法に吸い上げており

      1. りちゃ より:

        『パチンコ 北朝鮮送金ルートを断て』
        https://www.nicovideo.jp/watch/sm12839050

        いや、まいった。日本やれること一杯あるんじゃないのか

        1. R より:

          >りちゃ様

          FATF勧告にしたがって、パチンコを賭博の一種として、登録制にし、
          マネロン対策/テロ対策(バックグラウンドチェックを含む。)を犯収法等に基づき、
          IRのように義務付ければ、北朝鮮関係者を、パチンコ業界から排除し、
          北朝鮮への送金を少しは減らせるでしょうね。

          パチンコは、海外では、賭博として扱われているのに、日本だけ、風営法の
          届出だけでできるのは、警察と、警察官僚OB等の議員と、業界の癒着ではないかと
          前から思っています。

          政府は、風営法に基づく届出に基づき営業しているパチンコは、三点方式であろうが、
          賭博罪に違反しないと答弁していますが、違法性阻却というだけで、賭博にあたらない
          ということではないように思います。

          反社の収入減にもなるし、早く登録制にして、反社の方々や、北朝鮮関係の方々が、
          関与できないような法制にしてくださいませ。

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