「安倍叩きネタ」が切れた途端に上昇する内閣支持率の不思議

昨日、『朝日の調査ですら、8割の人が野党には期待しないという事実』という記事で、朝日新聞の最新の世論調査を紹介しました。本日は、朝日新聞以外のマス・メディア各社による最新の内閣支持率調査についても簡単に取りまとめ、あわせて「もりかけ」報道が内閣支持率を瞬間的に押し下げた事件についても振り返っておきたいと思います。

最新の内閣支持率

各社世論調査、支持率と不支持率が並ぶ

昨日、『朝日の調査ですら、8割の人が野党には期待しないという事実』のなかで、朝日新聞による最新の世論調査を紹介しました。

朝日の調査ですら、8割の人が野党には期待しないという事実

昨日取り上げた話題は「朝日新聞があれほどまでに必死になって『もりかけ』問題で内閣支持率を下げようとしたのに、その朝日新聞の調査でさえ、野党に期待しない人が8割に達している」という現状を皮肉ったものです。

ただ、昨日の記事をきっかけに改めて調べてみたのですが、主要メディアの内閣支持率を並べてみると、ネット世論調査が主体の『ニコニコアンケート』を除けば、いずれの社の調査でも、支持率と不支持率がほぼ拮抗しています(図表1)。

図表1 2018年7月の内閣支持率

(【出所】各社報道より著者調べ。なお、朝日新聞のみ、8月4~5日のものを利用)

こうやってグラフ化してみるとよくわかると思いますが、メディアによっては支持率が不支持率を上回っている場合もあり、また、メディアによってはその逆の場合もありますが、内閣支持率(青)と不支持率(赤)が、ニコニコ動画を除く調査でほぼ等しいのです。

このなかで、支持率が大きく低下しているのは『日経・テレ東』の調査ですが、これは前月比で支持率が7%ポイントも減少しています。しかし、それでも支持率と不支持率はほぼ拮抗しており、他の社の調査と大きな違いはありません。

世論調査は信じられるのか?

ところで、ニコニコ動画を除く各社の世論調査では電話が用いられており、どうしても回答者が高齢者に偏るという性質があることは間違いありません。この点、『インターネットに完敗する新聞、視聴者が高齢者に偏るテレビ』では、新聞・テレビの利用率が著しく高齢者に偏っていることを指摘しました。

インターネットに完敗する新聞、視聴者が高齢者に偏るテレビ

また、『朝日新聞、「ネット層ほど内閣支持率が高い」とついに認める』でも紹介したとおり、朝日新聞の7月の世論調査では、SNSを参考にする層ほど内閣支持率が高く、新聞・テレビを参考にする層ほど内閣支持率が低く出るという傾向があることも事実でしょう。

朝日新聞、「ネット層ほど内閣支持率が高い」とついに認める

これらを含めた客観的な調査・分析などから判断すれば、だいたい次の3つの傾向がある点は間違いないでしょう(ちなみに、この(A)~(C)はそれぞれ相互に整合しています)。

  • (A)政治的な判断をするにあたって、高齢者になればなるほど新聞やテレビを重視するのに対し、若年層になればなるほどインターネットの情報を重視する
  • (B)SNSなどのインターネットの情報を重視する人ほど内閣支持率は高く、新聞やテレビを重視する人ほど内閣支持率は低く出る
  • (C)若年層ほど内閣支持率は高く、高齢層ほど内閣支持率は低く出る

ここから導き出される仮説は、

新聞やテレビが流す情報はインターネットで流れている情報と比べ、明らかに安倍政権の支持率を低下させる方向に偏っており、その結果、新聞やテレビを重視する傾向が強い高齢者層における内閣支持率が低く出る

ということです。

そして、「放送法遵守を求める視聴者の会」の事務局長で経済評論家の上念司さんの推測によれば、電話世論調査は「高齢者発見器」であり、かつ、新聞やテレビが実施する世論調査では年齢補正などが実施されていない(らしい)、という話もあります。

これについては確認したわけではないため、推測の域を出ませんが、過去の世論調査を見れば、その推測は正しいのではないかと思わざるを得ません。

過去の世論調査を見てみよう

実際に、「加計学園『問題』」を巡る報道が過熱していた2017年7月と、「森友学園問題」を巡り財務省の公文書偽造事件が発覚した直後の2018年4月の2つの時点において、内閣支持率がどうなったのかを振り返ると、次のとおりです(図表2図表3)。

図表2 2017年7月の内閣支持率

(【出所】各社報道より著者調べ)

図表3 2018年4月の内閣支持率

(【出所】各社報道より著者調べ)

ごらんのとおり、2017年7月、2018年4月のいずれの時点においても、ニコニコ動画の調査を除けば、軒並み不支持率が不支持率を上回っています。とくにニコニコ動画の調査と支持率・不支持率と比べて、2017年7月時点では毎日新聞が、2018年4月時点ではNNNが、ちょうど逆転しています。

ただし、2017年7月の時点と2018年4月の時点の共通点は、いずれも「内閣支持率の急落が一時的だった」という点です。これは、新聞やテレビの世論調査に応じる人というのは、「新聞やテレビが切り取った瞬間の情報」だけで物事を判断している可能性を示唆しています。

この調査結果を見るだけでも、以前から私が提示している、

新聞やテレビが流す情報はインターネットで流れている情報と比べ、明らかに安倍政権の支持率を低下させる方向に偏っており、その結果、新聞やテレビを重視する傾向が強い高齢者層における内閣支持率が低く出る

という仮説の正しさを裏付けているように思えてなりません。すなわち、マス・メディアによる「安倍政権を叩くネタ」が切れた瞬間、内閣支持率は上昇してしまう、というのが近年の傾向ではないでしょうか?

情報の多様性がないマス・メディア

ネット=善、マスコミ=悪、という単純な二元論ではないが…

ところで、私は以前から申し上げているとおり、シンプルに「マス・メディアの報道は間違っている」、「インターネット上の情報は正しい」などと断定するつもりはありません。

インターネット側にだって、多くのアクセスを集めているウェブサイトのなかに、

  • 【ラオスダム決壊】 韓国「責任取るべきは施工した鹿島建設であり、SK建設に責任は一切無い」ついに無関係な日本企業に責任を押し付け始めるwwwwww

といった悪質なフェイク・ニューズを流すサイトがあることは事実ですし、

  • 【速報】 河野太郎閣下、韓国との断交を決意!!!!
  • 【韓国発狂】「スワップ!お願いニダ!!」「二階先生助けて!」二階「韓国は面倒な国だ」

など、明らかに事実ではない内容をタイトルに付したウェブサイトはたくさん見受けられます。

これについては『なぜか新宿会計士の政治経済評論が政治部門でPV数1位に』のなかでも申し上げましたが、私はあくまでも、インターネット上の情報は、情報を受け取る人間が、自分できちんと「その情報は正しいのか?」と判断する必要があると考えています。

なぜか新宿会計士の政治経済評論が政治部門でPV数1位に

ただし、インターネットには、マス・メディアにない大きな特徴があります。それは、情報の多様性です。

たった8つの資本が支配:相互批判できないマス・メディア

マス・メディアの代表格といえば新聞とテレビですが、マス・メディアはそもそも、少数の資本が支配しています。主要全国紙、在京キー局、在阪・在名準キー局、通信社などをリストアップすると、わが国には事実上、8社しかマス・メディアが存在しません(図表4)。

図表4 8社による情報の独占
グループテレビ局新聞・通信社
読売グループ日本テレビ(東)、よみうりテレビ(阪)、中京テレビ(名)読売新聞社
朝日グループテレビ朝日(東)、朝日放送(阪)、名古屋テレビ(名)朝日新聞社
フジサンケイグループフジテレビ(東)、関西テレビ(阪)、東海テレビ(名)産経新聞社
毎日グループTBS(東)、毎日放送(阪)、CBC(名)毎日新聞社
日経グループテレビ東京(東)、テレビ大阪(阪)、テレビ愛知(名)日本経済新聞社
NHKグループNHK
共同通信共同通信社
時事通信時事通信社

(【出所】著者作成。グループ名は著者が便宜上名付けたもの)

このうち、テレビのみを保有しているのがNHKグループですが、NHKは全国で2チャンネル分の地上波に加え、衛星放送などのチャンネルを持っており、その情報の独占力たるや絶大なものがあります。

また、共同通信と時事通信は、独自に新聞を発行しているわけではありませんが、全国の地方紙などに記事を提供しているメディアでもあり、やはり地方を中心とする影響力は極めて大きいといえるでしょう。

それ以外の5つのグループは、クロスオーナーシップで新聞社とテレビ局(あるいはラジオ局)などの経営を支配しています。産経新聞は比較的、保守的な論調で知られていますが、フジテレビは韓流が大好きなテレビ局として、今から7年前の2011年8月には本社前でデモを起こされている局です。

それなのに、私が知る限り、フジテレビに対する6000人のデモ行進や朝日新聞の慰安婦捏造報道などを厳しく批判的に報じたメディアは、あまり多くありません。やはり、少数の会社が支配するマス・メディア業界は、身内であるマス・メディアの不祥事に対して極端に甘いと批判されても仕方ありません。

「世論工作」と言わずして何といえば良いのか?

つまり、究極的にはたった8社が日本全体に流れる情報を統制しているという状況の中で、この8社グループが結託すれば、極端な話、「あった話」を「無かったこと」にできますし、「無かった話」を「あったこと」にできます。要するに、これは事実の捏造ですね。

このうち、朝日新聞社が捏造した「(従軍)慰安婦問題」は、「無かった話」を「あったこと」にした典型例です。朝日新聞社は2014年8月に、慰安婦報道を巡る一連の記事を「取り消した」とされていますが、その割に、各社ともにこの「(従軍)慰安婦問題」を巡る朝日新聞社に対する追及は力不足です。

また、最近の事例だと、野田聖子総務大臣が関わる暗号通貨を巡る不祥事について、主要メディアは「無かったこと」にしている節がありますし、財務省が垂れ流す増税プロパガンダについても、大きな問題でしょう。

なにより、身内に甘すぎるマス・メディア業界に対し、インターネットにおける独立系のブログの多くはマス・メディアと資本関係そのものがありませんし、芸能事務所などとの癒着関係もありません。インターネット上では、マス・メディアの報道だけでなく、マス・メディア自体が盛大に批判されているのです。

マス・メディアも時代の流れには勝てない

いずれにせよ、マス・メディアには長らく偏向報道の習慣が付いてしまいましたし、勉強しないマス・メディア産業関係者が報道姿勢を変えることなどできません。

では、私たち日本国民は、マス・メディアの報道をそのまま鵜呑みにすれば良いというのでしょうか?

私は、いずれ物事は落ち着くところに落ち着くと考えています。たとえば、「電話世論調査に回答している人は高齢者に偏っているのではないか?」という仮説がありますが、仮にこの仮説が正しかったとしても、こうした状況はいずれ補正されます。

何故でしょうか?

その一番の理由は、当ウェブサイト自体にアクセスして下さる方々に、他ならぬ高齢者の方が含まれているからです。高齢者の方であっても、インターネットへのアクセス方法を勉強し、さまざまなウェブメディアに接すれば、マス・メディアによる情報トリミングの悪質さに気付くのです。

一方で、確かに新聞やテレビが切り取った情報を鵜呑みにしている人たちは高齢者に多いことは間違いありませんが、別にそのような人は、高齢者だけでなく、若年層にも確かに存在しています。したがって、「新聞・テレビの情報を鵜呑みにする人」は「情報弱者」と呼んだ方が正確かもしれません。

いずれにせよ、マス・メディア(というよりも、新聞とテレビ)は、もはや「先がない業界」です。総務省の調査によれば、テレビとインターネットの利用率は利用率は40代以下で逆転しており、今後、インターネットの普及が進むことはあっても、退行することは考え辛いでしょう。

「平成29年情報通信メディアの利用時間と情報行動に関する調査報告書」の公表(2018/07/27付 総務省HPより)

ただ、今までできていた世論操作が徐々にできなくなることで、朝日新聞を含めたマス・メディアの報道は先鋭化し、インターネットや保守論客を敵視する論調がますます増えて来ることは十分に警戒すべきでしょう。そこで、いつものお願いをしておきたいと思います。

  • 変な報道を続ける新聞を読んでいる人は、その新聞を解約しましょう。
  • 変な報道を続けるテレビを見ている人は、そのテレビを見ないようにしましょう。
  • 選挙にはきちんといきましょう。

これが意味するところについては、読者の皆様にも是非、お考えいただきたいと思います。

本文は以上です。

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読者コメント一覧

  1. りんご より:

    いつも楽しく拝読させて頂いております。

    本文とは関係ないのですが…
    TOPページの新着記事が随分と見やすくなりました。ありがとうございます。
    可能であれば、各記事の画像と文字の間に、もう幾ばくかのマージンを取って頂くと、大変見やすくなりますので、ご検討いただければと思います。

  2. めがねのおやじ より:

    < 更新ありがとうございます。

    < 安倍首相叩きのネタが切れたら、支持率が上がる(笑)。正にその通りですね。だから、こういう時こそ気をつけねば。野党=マスゴミが結託して、火のないところに無理矢理火をつけるかも(笑)。官僚もね!

    < もう新聞の購読者など、さらに更に減る一方。上がり目全くありません。パチ・スロと同じ、且つ落ち方は比べ物になりません。

    < 私は、固定電話、携帯電話の新聞調査、信じてません。自分らの都合に良くしかでっち上げないから(確証はないです)。 以上。

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