本日は「予言の書」です。韓国はもうすぐ、インドネシアとの通貨スワップ(BSA)の契約満了を迎えます。仮に、インドネシアとのスワップ更改に成功すれば、韓国メディアは「これで安泰だ」と大騒ぎし、失敗すれば、「インドネシアとのスワップなどなくても韓国の金融は盤石だ」と豪語すると見ています。はたしてこの「予言」が正しいかどうかは、ふたを開けてみてのお楽しみです。

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    ここからが本文です。

    通貨スワップはどうなった?

    韓国では昨年末、釜山の日本総領事館前の公道上に、日本を侮辱する慰安婦像を市民団体が設置しました。これを受けて日本政府は、年明け早々の1月6日に、韓国から駐韓大使らを一時帰国させるほか、通貨スワップ協定の再開協議を中断することを韓国側に通告しました。

    国際的な金融市場では、現時点では目立った混乱は生じていません。ただ、今年は米FRBが利上げに踏み切る可能性が高いとみられる中、その米国では積極的な公共投資を旗印に掲げるトランプ政権が発足し、韓国をはじめとする新興市場諸国から投資マネーが猛烈に引き揚げられるのではないかとの見方が、金融市場では根強く警戒されているようです。

    こうした中、韓国は今月に入り、オーストラリアとの通貨スワップ協定を倍増することに成功。韓国のメディアでは「通貨危機への備えは万全となった」といった報道がなされているようです。そして、3月初旬に満期を迎えるインドネシアとのスワップの動向について、そろそろ韓国メディアが騒ぎ出すころではないでしょうか?

    そこで、本日は少し視点を変えて、インドネシアとのスワップについて、概要を眺めておきたいと思います。

    インドネシアという国

    インドネシアの産業構造

    そろそろインドネシアと韓国との「通貨スワップ協定」が満期を迎えます。

    ところで、今から3年半前のロイターの報道によると、韓国とインドネシアとのスワップとは、韓国の通貨・ウォンを防衛するためのものというよりは、インドネシアの通貨・ルピアを防衛するためのものだそうです。

    インドネシア、韓国・中国と通貨スワップ協定締結へ=産業相(2013年 09月 24日 16:59 JST付 ロイターより)

    日本の製造業などが中国に代替する製造拠点にするために、インドネシアに進出している、という話も最近ではよく耳にします。意外な話ですが、インドネシアの輸出品目に占める「石油・ガス」の割合と並んで、最近では工業製品(電気機器、部品、ゴム・ゴム製品、ボイラー)なども増えて来ています。

    日本貿易振興機構(JETRO)のウェブサイトなどを参考に、2014年におけるインドネシアの貿易高や主要輸出品目の割合などをまとめると、図表1~3の通りです。

    図表1 インドネシアの貿易高(金額単位:百万ドル)
    区分 2013 2014
    輸出高 182,552 176,293
    輸入高 186,629 178,179
    図表2 インドネシアの2014年における輸出品目

    図表3 インドネシアの2014年における輸入品目

    また、インドネシアにとっての輸出高と輸入高を合計した「貿易高」を相手国別にみると、東南アジア諸国連合(ASEAN)向けが約4分の1を占め、最も多く、それに中国、日本、韓国が続きます(図表4)。

    図表4 インドネシアの2014年における貿易相手国

    インドネシアが締結する通貨スワップ協定

    ところで、統計から見る限り、インドネシアからみると、アジア3大国(中国、日本、韓国)は、いずれも重要な貿易相手国です。そして、インドネシアはこの3ヵ国との間で、それぞれ通貨スワップ協定を締結しています(図表5)。

    図表5 インドネシアが締結する主な通貨スワップ
    相手国と米ドル換算額 金額 備考
    中国(約190億米ドル) 当初は1000億元と175兆ルピアで開始し、2016年に1,300億元に増額 2013年10月1日に締結し、当初期間は3年。また、2016年5月9日に3年間の延長で合意
    日本(227.6億米ドル) 日本からインドネシアに対する227.6億米ドルの片務的スワップ 2013年12月12日に締結(失効日不明)。全額を引き出すにはIMFプログラムの存在が必要
    韓国(約86億米ドル) 10兆7000億ウォンと115兆ルピア 2014年3月6日に締結し、期間は3年とされている

    これらの契約のうち、もうすぐ期日が到来するものは、韓国との間で締結したスワップであり、金額は韓国から見て10兆7000億ウォン(約93億ドル)、インドネシアから見て115兆ルピア(約86億ドル)です。

    さて、インドネシアとの間で通貨スワップ協定を締結している国を並べてみると、破格の条件は日本とのスワップでしょう。なぜなら、金額が一番多い点もさることながら、提供される通貨が米ドルという地球上最強の通貨だからです。

    これに対し、中国、韓国とのスワップは、提供される通貨が中国・韓国の通貨(つまりソフト・カレンシー)です。インドネシアは1998年に通貨危機に巻き込まれた国でもありますが、人民元や韓国ウォンのようなソフト・カレンシーで通貨を受け取ったところで、何の役にも立ちません。

    余談ですが、日本の場合は、自国通貨である日本円自体が、国際的な金融市場でドル、ユーロに次ぐ3番目の通用力を持つ、まぎれもないハード・カレンシーです。その意味で、日本は外国に対し、米ドルだけでなく日本円でも通貨スワップを提供することが国際的な交渉力となるのです(この点の詳細については『日本の通貨ポジションは世界最強』もご参照ください)。

    インドネシアとのスワップの目的

    インドネシアとのスワップの目的は、端的にいえば、インドネシアを救済するためにあります。

    インドネシアは1997年から98年にかけて、アジア太平洋地域に発生した「アジア通貨危機」に巻き込まれた国であり、国際通貨基金(IMF)による救済と、それに続く厳格な緊縮財政を経験しています。過去に通貨危機を起こし、IMFとともに地域大国である日本から救済を受けてきた、という点に関しては、韓国とインドネシアの状況は同じです。違う点といえば、「日本からの地理的な距離」くらいなものでしょうか?

    また、インドネシアといえば、首都・ジャカルタとジャワ島内の大都市・バンドンを結ぶ「ジャワ高速鉄道」案件で、日本側が実地調査の結果、提案した資料を、そのまま中国側に漏洩。結果的に受注を巡って日中が争う形となり、最終的には中国政府が「インドネシア政府の政府予算や債務保証なし」という、国際常識から著しく逸脱する条件で落札したという「事件」がありました(詳しくは『インドネシア高速鉄道案件とAIIBの現状』をご参照ください)。

    国際的な信義則も満足に守れないインドネシア政府に対し、日本の菅義偉(すが・よしひで)官房長官は、2015年9月にインドネシアから派遣されてきた特使に対し、「理解しがたく、極めて遺憾だ」と、異例の強い不快感を示したほどです。

    余談ですが、今年の年初に安倍晋三総理大臣がインドネシアを訪問した際、安倍総理はジョコ大統領から、改めて「ジャカルタ・スラバヤ間の鉄道高速化事業」の提案要請を受けました。ただ、この期に及んでジョコ大統領は「ジャカルタ・バンドン間については従来通り中国に工事を施工させ、残りのバンドン・スラバヤ間のみ日本に受注させる」という甘い発想を抱いている節があります。いったん中国に靡(なび)いたジョコ大統領を失脚させ、改めて親日的な政権が発足した際に、中国勢を追い出して全区間を日本勢が建設するくらいのことはやってもよいでしょう。

    日本のスワップ協定の現状

    さて、日本は諸外国と、どのようなスワップを締結しているのか、改めて振り返っておきましょう。

    アジアとの二カ国間通貨スワップ協定

    財務省のウェブサイトによると、日本が提供している「米ドルを提供する二カ国間のスワップ協定」は、インドネシア、フィリピン、シンガポールの3ヵ国です(図表6)。

    図表6 日本とアジア諸国との二カ国間スワップ協定
    相手国 関係 使用通貨と金額
    インドネシア 日本→インドネシア 227.6億米ドルとルピア
    フィリピン 日本→フィリピン 120億米ドルとフィリピン・ペソ
    フィリピン→日本 5億米ドルと日本円
    シンガポール 日本→シンガポール 30億米ドルとシンガポール・ドル
    シンガポール→日本 10億米ドルと日本円

    (【出所】財務省ウェブサイト

    フィリピンとシンガポールについては、いちおう、「双方向」(つまり日本がピンチの時には日本円と引き換えに米ドルを提供してもらえる協定)となっていますが、金額を見て頂ければ、スワップ協定は日本がフィリピンやシンガポールを支援することを想定していることが明らかです。

    また、インドネシアに至っては、「片方向」、つまり日本から一方的にインドネシアを救済する協定となっており、金額も227.6億ドルと、他の2か国と比べて破格の条件です。

    主要中銀との円供給スワップ

    これらのスワップとは別に、日本銀行は、主要国の中央銀行との間で、期間も金額も無制限の「為替スワップ・オペレーション」協定を締結しています(図表7)。

    図表7 世界主要中銀の為替スワップ協定の常設化
    項目 概要 通貨
    参加している銀行 カナダ銀行(BOC) カナダドル(CAD)
    イングランド銀行(BOE) 英ポンド(GBP)
    日本銀行(BOJ) 日本円(JPY)
    欧州中央銀行(ECB) ユーロ(EUR)
    米連邦準備制度(FRB) 米ドル(USD)
    スイス国立銀行(SNB) スイス・フラン(CHF)
    期間・金額 無制限

    (【出所】日本銀行ウェブサイト

    また、日本銀行は、日本円を直接供給するスワップを、オーストラリア、シンガポールとの間でも締結しています(図表8)。

    図表8 円スワップ
    相手国・主体 金額 期限
    オーストラリア(豪州準備銀行=RBA) 200億豪ドル/1.6兆円 2019年3月17日
    シンガポール(通貨庁=MAS) 150億シンガポール・ドル/1.1兆円 2019年11月29日

    (【出所】日本銀行ウェブサイト「RBA」、「MAS」)

    つまり、日本は流動性供給という形で、米国、カナダ、ユーロ圏、英国、スイス、オーストラリア、シンガポールの各国から支援を受けることができる、という意味ですが、同時に、日本がこれらの国を支援しなければならない、という意味でもあります。

    日銀と財務省の関係

    日本は巨額の外貨準備を保有しており、為替相場にもよりますが、2017年1月時点における保有残高は、1.3兆ドル近くに達しています(図表9)。

    図表9 日本の外貨準備

    (【出所】日本銀行、IMF)

    外貨準備の動きから判断する限り、日本が保有する外貨準備の大部分は米ドル建てではないかと考えられますが、いずれにせよ、巨額の外貨準備と主要国中銀との無制限のスワップを保有している日本の「通貨ポジション」は、まさに世界最強といえるでしょう。

    ただ、これらの外貨準備を管轄しているのは、あくまでも財務省の「外為特会」です。財務省が宣伝する「国の借金」とやらは、この外貨準備を維持するための短期割引国債(TDB)も含まれているのですが、外貨準備を日本銀行に移管すれば、それだけで「国の借金」とやらが130兆円減少します。

    財務省が「財政再建」をやりたいのであれば、真っ先に減らすべきは外貨準備であり、これを日本銀行に移管させるべきでしょう。

    脆弱な韓国のスワップライン

    以上、インドネシアと日本のスワップ・ポジションについて確認をしてみましたが、最後に、韓国の通貨ポジションについても確認しておきましょう。

    韓国の外貨ポジション

    では、韓国の外貨ポジションは、次の通りです(図表11図表12)。

    図表11 韓国の「外貨ポジション」(2016年9月末時点)
    項目 金額  備考
    ①外貨準備高 3,729億ドル 出所:国際通貨基金(IMF)
    ②韓国政府が保有する米国債の最大値 726億ドル 出所:米財務省統計(TIC)
    ③外貨準備高のうち、内訳不明部分 3,003億ドル ①-②
    ④外国との通貨スワップ 735億ドル 出所:スワップ協定全般アップデート図表6
    ⑤CMIM 384億ドル 出所:スワップ協定全般アップデート図表3

    図表12 韓国と韓国以外の国との通貨スワップ協定(2017年2月9日時点)
    締結日 失効日 相手国 韓国ウォン 相手国通貨 米ドル換算
    2014/2/8 2020/2/22 オーストラリア 9兆ウォン 100億豪ドル 約76億ドル
    2017/1/25 2020/1/24 マレーシア 5兆ウォン 150億リンギット 約34億ドル
    2014/3/6 2017/3/5 インドネシア 10.7兆ウォン 115兆ルピア 約86億ドル
    2011/10/10 2017/10/10 中国 64兆ウォン 3600億元 約524億ドル
    (合計) 88.7兆ウォン 約721億ドル

    (【出所】韓国銀行ウェブサイト、各国中央銀行ウェブサイト等より著者作成。ただし、「失効日」について明文記載がないものについては応当日の前日を「失効日」とみなしている。また、「相手国通貨」の米ドル換算額については、各通貨を2017年2月8日付為替相場終値で試算。)

    まず、韓国が発表する外貨準備高は、2016年9月末基準で、3729億ドル(約44兆円、上記①)です。しかし、一般的に「外貨準備の大部分を占める」と考えられる米国債の保有残高は、最大でも726億ドル(9兆円弱、上記②)に過ぎず、「通貨の売り浴びせ」には非常に脆弱です(※ただし、TICの統計は常に変動します)。

    一方、韓国は「チェンマイ・イニシアティブのマルチ化協定(CMIM)」にも加盟しており、緊急時には384億ドルのドル資金を引き出すことができるとされています。ただ、以前『CMIMスワップは「使えない」』でも指摘したとおり、CMIMは日本、中国だけでなく、ASEAN諸国も加盟する協定です。このため、韓国がCMIMからお金を引き出すことは、事実上、困難です。

    さらに、韓国が「イザというときに頼みにする」はずの諸外国との通貨スワップ協定については、米ドルに換算すれば721億ドル程度ですが、豪州との100億豪ドルのスワップを除けば、いずれも「ソフト・カレンシー」(国際的に通用しない通貨)とのスワップばかりであり、役に立ちません。

    インドネシア・スワップで「大騒ぎ」するのか?

    というわけで、最後に「予言」しておきたいと思います。

    仮に、韓国がインドネシアとのスワップの更改で合意した場合には、韓国のメディアは、

    「インドネシアとの100億ドル近いスワップを更新した!これで韓国のスワップ・ポジションは盤石だ!」

    と大騒ぎするでしょう。そして、インドネシアとのスワップの更新に失敗した場合、韓国のメディアは、

    「インドネシアとのスワップはインドネシアを支援するものであり、韓国にとって実害はない」

    と主張するはずです。何なら、100ウォンを賭けても良いです(笑)

    ただ、事実として、韓国の外貨ポジションは極めて脆弱であり、「韓国は再び通貨危機に巻き込まれるのかどうか」ではなく、「韓国はいつ、通貨危機に巻き込まれるのか」という問題だと思います。

    早ければ今年にも、韓国発の金融市場の混乱が発生するかもしれません。その時に、慰安婦問題等で散々日本を侮辱した韓国が、今度こそ金融破綻する姿を、じっくりと目に焼き付けたいと思っています。

     

    ※本文は以上です。

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