対ロシア制裁の本命は「ロシアのドル取引からの排除」
岸田文雄首相が昨日打ち出した対ロシア制裁のパッケージは、ロシア政府の国債等を日本で発行することを禁止する、などの措置です。どれも金額的にはほとんど影響がないなど、一見すると、実効性に乏しいものばかりですが、それでも米国の対ロシア制裁と照らし合わせるならば、「米ドルから締め出されたロシアが制裁逃れとして日本円を使う」という措置を予防することにはつながるはずです。
目次
中途半端な経済制裁法制
経済制裁とは?
いわゆる経済制裁とは、生産活動の4要素である「ヒト、モノ、カネ、情報」の流れを制限することを通じ、相手国の経済に打撃を生じさせる行為である、と定義することができます。
(狭い意味の)経済制裁の概要
経済制裁とは、経済的な手段を使って相手国に打撃を与えることである。「ヒト、モノ、カネ、情報」の流れの制限という視点から、次の7つの形態があり得る。
- ①自国から相手国へのヒトの流れの制限
- ②自国から相手国へのモノの流れの制限
- ③自国から相手国へのカネの流れの制限
- ④相手国から自国へのヒトの流れの制限
- ⑤相手国から自国へのモノの流れの制限
- ⑥相手国から自国へのカネの流れの制限
- ⑦情報の流れの制限
(【出所】著者作成)
これについては2年前の『【総論】経済制裁「7つの類型」と「5つの発動名目」』などでも解説したとおり、現在の日本に講じることができる措置は、基本的には②~⑥が中心であり、①や⑦については措置を発動することが難しいのが現状でしょう。
これに加え、②~⑥の措置についても、発動するのはなかなか大変です。
だからこそ、『経済制裁の発動要件を緩和すべし』を含め、当ウェブサイトではかねてより、「日本では相手国に経済制裁を発動するための法制度が不十分である」、「経済制裁を発動するための要件を緩和すべきではないか」、と申し上げてきました。
なぜ経済制裁の発動要件を緩和しなければならないのか
このように申し上げているのには、大きな理由があります。
一般に、相手国に対して制裁を下す場合、その手段としては、軍事的制裁と経済的制裁がありますが、このうち、日本は例の憲法などの影響もあってか、軍事的な手段を使った制裁が難しいという実情があります。したがって、日本が外国に制裁を加える手段は、基本的には経済制裁に限定されるのです。
ところが、現行の経済制裁に関する外為法上の規定では、わが国独自の経済制裁を繰り出す場合には「わが国の平和と安全の維持のためにとくに必要がある場合」(同第10条第1項)に限定されており、そうでない場合には国連安保理決議の制裁か、有志国による協調制裁くらいしか手段がありません。
外為法第10条第1項
我が国の平和及び安全の維持のため特に必要があるときは、閣議において、対応措置(この項の規定による閣議決定に基づき主務大臣により行われる第16条第1項、第21条第1項、第23条第4項、第24条第1項、第25条第6項、第48条第3項及び第52条の規定による措置をいう。)を講ずべきことを決定することができる。
このため、『中国に経済制裁をするための大きな課題は「法の不備」』などでも報告したとおり、たとえば「中国がウイグルや香港などで人権侵害を行っている」という理由では、この外為法第10条第1項の規定を使った経済制裁を発動することは難しいと考えられるのです。
余談ですが、当時は欧米などの主要国が対中制裁を発表したにもかかわらず、日本がこれに同調することができなかったとして、一部の(自称)「保守派」の論客が菅義偉総理を舌鋒鋭く批判していたのですが、そのわりに「外為法などにそもそもの不備がある」という点を指摘した主張を見た記憶はありません。
くどいようですが、日本はそもそも法治国家であるため、法に規定が設けられていない場合には、制裁を発動することができないのです。
このあたり、「時の政権が現行法の規定でできる最善の努力を尽くしているか」という論点と、「時の政権が法の不備を是正しようと努力しているか」という論点があり得ますが、両者を混同するのはいかがなものかと思います。当然、前者と比べ後者にはかなりの時間が必要だからです。
ウクライナ情勢でのロシア制裁には限界がある
さて、余談はこのくらいにして、改めて取り上げておきたいのが、ウクライナ情勢を巡る対ロシア制裁です。
昨日の『ウクライナ巡る対ロシア経済制裁で見える外為法の限界』でも取り上げたとおり、ロシアとウクライナの国境の緊張状態が高まっていることを踏まえ、日本政府がロシアに対し、半導体輸出規制などを含めた経済制裁を検討している、などと報じられています。
ただし、これについては「日露両国の経済的関係はさほど密接ではないため、日本にできる対露経済制裁にも限界があるのではないか」、と付記したところです。
なぜなら、2021年における日本のロシアに対する輸出高は8623億8983万円で、輸出相手国としては19位であり、日本の輸出総額(83兆0927億円)に対し1%強を占めるに過ぎないからです(ちなみに「半導体等電子部品」の対露輸出高は、2021年において6億円弱です)。
日米の対露制裁
現時点では実効性に乏しい、岸田首相の対ロシア制裁
こうしたなか、さっそく、当ウェブサイトの「予想」が当たりました。
岸田文雄首相が23日、対露制裁などを打ち出したのですが、その内容が正直、実効性がほとんどないものだったからです。
ウクライナ情勢を踏まえた制裁措置等についての会見
―――2022/02/23付 首相官邸HPより
岸田首相の発言はダラダラ長いのですが、要点を抜粋すると、ロシアが講じたドネツク、ルガンスクの「いわゆる2つの共和国」の独立を承認するなどの一連の措置を「ウクライナの主権侵害」として「強く非難する」としたうえで、次の3点の制裁措置を取ることにした、というものです。
岸田首相が打ち出した3つの制裁措置
- いわゆる2つの共和国の関係者の査証発給停止及び資産凍結
- いわゆる2つの共和国との輸出入の禁止措置の導入
- ロシア政府による新たなソブリン債の我が国における発行・流通の禁止
「いわゆる2つの共和国」、という表現もなんだか奇妙ですが、正直、実効性はほとんどありません。
今回の措置は、経済制裁の基本形である「ヒト、モノ、カネ、情報」の流れの制限(上記①~⑦)のうち、基本的には②~⑤の措置が、(中途半端ながらも)含まれています。
- ②自国から相手国へのモノの流れの制限
- ③自国から相手国へのカネの流れの制限
- ④相手国から自国へのヒトの流れの制限
- ⑤相手国から自国へのモノの流れの制限
たとえば、「1.いわゆる2つの共和国の関係者の査証発給停止及び資産凍結」については③と④の措置、「2.いわゆる2つの共和国との輸出入の禁止措置の導入」は②と⑤の措置、「3.ロシア政府による新たなソブリン債の我が国における発行・流通の禁止」は③の措置です。
しかし、そもそも論として、日本とウクライナの貿易高は、日本からウクライナへの輸出が640億円、ウクライナから日本への輸入が798億円であり、どちらも日本の貿易高に対し0.1%弱と極めて少額です。しかも、今回の「貿易禁止措置」自体、ウクライナではなく、さらに「いわゆる2つの共和国」に限定されています。
また、少し古いデータですが、日本証券業協会『公社債便覧第166号 2019年3月末現在』によると、2019年3月末時点において、ロシアの政府、企業などが日本の債券市場で債券を発行している事例はありません。
つまり、今回の措置自体、現時点においては、対露制裁としての実効性はあまりありません。
そもそも日露の経済的なつながりが乏しい
ただし、本件に関しては、「岸田首相にやる気がなかったから、こんな中途半端な制裁に終わった」、と決めつけるべきではありません。とくに、後述するとおり、3点目の措置については、ロシアが日本で起債する可能性を封殺しておくという意味もあります。
この点、どうせやるならば、「いわゆる2つの共和国」ではなく、「ロシア連邦共和国」全体に対し、ビザの発給停止、資産凍結、貿易禁止にまで拡張すれば良いではないか、などと考える人もいるかもしれませんが、本件についてはやや慎重に見るべきでもあります。
そもそも論として、経済制裁は相手国との経済的な関係が強ければ強いほど効果を発揮します。
たとえば、日本と某国は貿易関係が非常に深く、とくに某国は日本に対し、「素材・部品・装備」の供給を深く依存しているため、仮に日本政府が某国に対して半導体製造装置などの輸出をストップすれば、その某国の経済は壊滅的な打撃を被ります。
しかし、ロシアは某国と異なり、「国家の基幹産業」の命綱を日本に握られている、という状況にはありません。仮に日本がロシアに対し経済制裁を科し、その結果、日露貿易が完全にストップしたとしても、それによって「ロシア経済に大きな打撃を与えることができる」、というものでもないのです。
これに加えて、「相手国から日本へのヒトの流れの制限」に関しても、もともとロシアは日本にとって「ビザ免除措置」の対象国ではありませんので、「ロシアから日本を訪れようとする人にビザを要求する」、という措置を導入したとしても、それ自体は経済制裁になり得ません。
さらにいえば、経済制裁は「相手国に対し経済的打撃を加える」ことが目的ではありますが、ときとして、制裁を発動した側にも打撃が生じることがあります。
たとえば、日本の方こそロシアから天然ガス、石油、石炭などの「鉱物性燃料」を輸入している立場にありますので、日ロ貿易が全面停止すれば、どちらかといえば「困る」のは日本の方でしょう(※といっても、「鉱物性燃料」の対露依存度はそれほど高くないため、「やや困る」、というレベルだとは思いますが)。
こうした状況を踏まえるならば、さすがに今回の措置で岸田首相を「無能だ」、「しょせん対露制裁はポーズに過ぎない」、などと批判するのは筋違いでしょう。
米国の対露制裁:「ドル圏からの締め出し」
こうしたなか、あくまでも「金融評論家」としての関心事は、この点だけにあるのではありません。
岸田首相が昨日発表した制裁措置以外にも、日本政府が何らかの追加措置を発動するかどうか、そしてそれらの措置がどのような法的根拠で発動されるか、という点については、注目に値すると考えています。諸外国の制裁措置と比べ、日本の措置がどうなのか、という点を、じっくりと観察するチャンスでもあるからです。
こうしたなか、米ホワイトハウスが現地時間22日時点で、対露制裁の内容を公表しています。
Fact Sheet: United States Imposes First Tranche of Swift and Severe Costs on Russia
―――2022/02/22付 ホワイトハウスHPより
これによると、ジョー・バイデン米大統領が指示した内容は、次の4点です。
- Full blocking sanctions on two significant Russian financial institutions.
- Expanded sovereign debt prohibitions restricting U.S. individuals and firms from participation in secondary markets for new debt issued by the Central Bank of the Russian Federation, the National Wealth Fund of the Russian Federation, and the Ministry of Finance of the Russian Federation.
- Full blocking sanctions on five Russian elites and their family members: Aleksandr Bortnikov (and his son, Denis), Sergei Kiriyenko (and his son, Vladimir), and Promsvyazbank CEO Petr Fradkov.
- The Secretary of the Treasury will determine that any institution in the financial services sector of the Russian Federation economy is a target for further sanctions.
1点目は、ロシアの重要な2つの金融機関に対し、米国内の資産の凍結、米国の個人や法人との取引の禁止、米ドルへのアクセスの禁止、グローバルな金融システムからの締め出し、という措置です。
以降、2点目は、ロシアのソブリン債の米国における発行・流通の停止であり、3点目は5人のロシア人とその家族に対する金融制裁、4点目は財務省によるロシアの金融機関全体に対する追加制裁です。
とくに4点目については、ホワイトハウスは次のように述べています。
Over 80% of Russia’s daily foreign exchange transactions globally are in U.S. dollars and roughly half of Russia’s international trade is conducted in dollars. With this action,no Russian financial institution is safe from our measures, including the largest banks.
「ロシアの外為取引の80%は米ドル建てであり、また、ロシアの外国貿易の半数は米ドル建てで行われている」、という警告です。
人民元はどう出る?
ホワイトハウスの「警告」どおりであるならば、仮にロシアの金融機関が全面的に米ドル決済から排除されるようなことが生じれば、とりあえずロシアの金融は大混乱に陥るはずです。裏を返せば、米ドルが世界でどれだけ強い通貨であるかを再確認するチャンス、ということでもあります。
そして、金融評論家的にもうひとつ、ひそかに注目しているのが、人民元の動向です。
先月発売された『月刊Hanada2022年3月号』に寄稿した『デジタル人民元脅威論者たちの罠』と題する拙稿でも述べましたが、中国は現在、「人民元ブロック経済圏」を作ろうとしているフシがあります。
もちろん、「デジタル人民元」だ、「人民元決済システム」だ、といった「便利なツール」をいくら作ったところで、人民元が米ドルに代わって世界の基軸通貨となることはあり得ない話ですが、それと同時に、トルコなど経済的に弱った国々を人民元経済圏に取り込んでいこうとしている動きも見られます。
さすがにロシアが今すぐ貿易決済を人民元に切り替える、という可能性は高くないとは思うのですが、それでも、中国が本件でロシアに対しどのようなアプローチを取るのかについては、興味深い点でもあります。
日本は制裁にしっかり参加を!
いずれにせよ、そもそも日露関係が薄いという事情もあり、今回のウクライナの件では、基本的に、経済制裁の「主戦場」は欧米とならざるを得ませんし、日本は「ガス不足の欧州に対するバックアップ」など、間接的な役割を果たさざるを得ません。
ただ、日本としてしっかりと国際的な結束に参加しておくことは、将来、東アジア情勢が激変したときに、欧米諸国からのコミットを引き出すうえでも重要でしょう。
とくに、岸田首相が述べた3点目の制裁措置である「ロシア政府による新たなソブリン債の我が国における発行・流通の禁止」は、ホワイトハウスが発表したファクトシートの2番目の措置「ロシア政府による米ドル建てのソブリン債の発行・流通の禁止」に対応するものでもあります。
つまり、日本政府がこの措置を講じておくことで、米ドル建てで起債できなくなったロシア政府が代わりに日本市場で円建てで起債する、という可能性を、あらかじめ封殺しておくことができる、というわけです。
その意味では、たしかに「現時点で日本の措置には実効性はない」のですが、「まったく無意味である」、というわけではありません。たとえ現時点において実効性はなかったとしても、少なくとも将来的な制裁逃れを封殺することはできるからです。
その意味では、今回のウクライナ危機も、日本にとっては今後の危機管理の良い事例にしていくチャンスといえるかもしれません。
本文は以上です。
日韓関係が特殊なのではなく、韓国が特殊なのだ―――。
— 新宿会計士 (@shinjukuacc) September 22, 2024
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【おしらせ】人生で9冊目の出版をしました
日本経済の姿について、客観的な数字で読んでみました。結論からいえば、日本は財政危機の状況にはありません。むしろ日本が必要としているのは大幅な減税と財政出動、そして国債の大幅な増発です。日本経済復活を考えるうえでの議論のたたき台として、ぜひとも本書をご活用賜りますと幸いです。 |
その通りだと思います。
未然の防止がKY(危険予知)活動の根幹なんですよね。
*今回は、空気が読めてるみたいで”ホっ”としました。
ロシアだけでなく、中国も睨んでいるのでしょう。
返り血を多く浴びることになっても、SWIFT からの排除まで匂わせることは、中国が連動して暴発するのを防ぐ重しになるはずです。
サプライチェーンの再構築は、自由主義陣営と共産主義陣営の経済切り放しまで想定する必要があるかもしれません。
まあプロレスなんでしょうが、中共とりあえずロシアを非難しとりまんな
案外、「中共をウクライナ、台湾をクリミアに見立てて」びびってるんかもしれませんが
(読み取れてないところがあるかもしれませんが)EUの制裁も似た感じに見えます。
足並みは揃えているのでしょう。
https://www.consilium.europa.eu/en/press/press-releases/2022/02/23/russian-recognition-of-the-non-government-controlled-areas-of-the-donetsk-and-luhansk-oblasts-of-ukraine-as-independent-entities-eu-adopts-package-of-sanctions/
昨夜の出来事として、「プーチンがゼレンスキーの電話に出なかった」「ロシア軍の無線封止が始まった」等々が流れています。真偽不明。
為替相場も昨日から完全に手控えモードのようです。
いよいよか、とも感じます。
依然として、今回ロシアがリスクを犯して侵攻して得られるものが何なのか、今ひとつピンときてません。
政治経済軍事あらゆる面で、色々と観察したいと思います。
中国は、興梠氏が言ってましたが「巻き込まれたくない」の一択で、扱いはとても小さく、ロシアの支持表明もとても低いレベルにとどめているそうです。
台湾に対しての影響に不確定要素が多いから避けているのだろうか、とも思います。少なくともこのタイミングで台湾にどうこう、という胆力は無いみたいです。基本、中共はビビリなんだと思います。
ついでに悪乗りしてこんなことも言ってます。
中国が独立を主張する台湾統一に乗り出す際、G7に揺るぎない支持を要請
https://grandfleet.info/china-related/demanding-unwavering-support-from-the-g7-as-china-embarks-on-unification-of-taiwan-which-claims-independence/
ドネツク、ルガンスクの独立を否定して、台湾の独立を支持するのならご都合主義のダブルスタンダードという事になります。
独立の決定は住民に任されるのが原則だと思います。
意思決定が、外国の介入無しに合法的に行われる事が前提ですが。
落とし所は、一国二制度を認めるしか無いと思いますが。
香港と同じになる可能性もありますのでこの辺りが問題ですかね。
ただ本質的な問題は、欧州からアメリカを排除したいロシアとアメリカが、どのような形なら折り合えるかどうかというところかと感じています。
“will determine”という言い回しを使っているあたり、アメリカとしては「まだ引き返せるぞ」という脅しをかけているつもりなのだろうと思われますが、はたしてロシアがその脅しで引いてくれるでしょうか。そんな脅しで引くくらいなら、とっくに引いているだろうと思われます。
ロシアの意図は明白で、「ウクライナのNATO加盟は絶対に容認しない」ということであり、なんだったら力づくでもNATO加盟を図ろうとする政権を排除しようということでしょう。なので、ロシアがウクライナを丸ごと併呑する意思があるとは思えません。そんなことをしたら、ロシア自身がNATOとの最前線と直面する羽目になるからです(バルト3国はあまり気にしていない)。それでは本末転倒です。ゆえに、ロシアがウクライナ侵攻を実施に移した場合、その目的はゼレンスキー政権の放逐と親ロ派政権の樹立にあると考えます。その場合、ウクライナが東西に分裂する(させられる)可能性もあるでしょう。いずれにしても、ウクライナ市民に甚大な被害が及ぶことは避けられなくなります。
ロシアとしても、経済制裁を受けることや軍事衝突に至ることを決して望んでいるとは思えません。しかし、ロシア帝国時代から綿々と受け継がれた防衛思想(「敵」との間になるべく多くの緩衝地帯を置く)の枠組みを放棄することはおそらくないでしょう。つまり、ロシアにとっては、ウクライナのNATO非加盟と中立化は譲歩できる最低ラインということです。
そのように考えると、ウクライナがNATO加盟に動こうとしたのは、あまり上策とは言えず、まずはEU加盟を考えるべきだったのではないかと思います。設立経緯から考えても、NATOが対ロ軍事同盟という性格を今なお保持している以上、NATO加盟はあからさまにロシアを敵国扱いすることに等しいからです。ロシアが断固として加盟阻止に動くことを全く想定していなかったとしたら、ウクライナ指導部はよほどおめでたいと言わざるを得ません。まだしもEUであれば、EUは基本的に経済的連携ですので、ロシアも(いい顔はしないでしょうが)ここまでの動きに出なかった可能性もあります。事ここに至っては、もはや手遅れですが。
さて、アメリカはどうするつもりなのでしょうか。圧迫を続ければ、ロシアが引くと本当に期待しているのでしょうか。ロシアの言い分がとても身勝手であることは間違いないのですが、さりとて、歴史的経験に基づいた防衛思想を頭から否定したところで、解決に至るとは思えません。表向き「ウクライナの未来はウクライナが決めるべき」という”正論”を掲げるのは構いませんが、それで突っ張り続けても、ロシアを変えることはできそうもありません。水面下で何らかの落としどころを探っているのであればまだ救いもありますが、表も裏もなく、ただ突っ張り続けているのであれば、軍事侵攻&経済制裁という誰も望まない事態に至る可能性が高まるだけでしょう。
ふと思うことがあります。もしかしたら、アメリカはロシアを戦争に引きずり込もうとしているのではないかと。そしてロシアを経済的にも軍事的にも無力化した上で、ゆっくりと対中国に専念しようなどと考えているのかもしれないということです。そのように考えれば、アメリカがロシアの要求に対してこれほど頑なである理由もわかるのですが。
プーチンは1枚も2枚も役者が上のようですね。バイデンとの電話会談でヘタレと見抜き、望外の行動に出たようです。バイデンはどうするんでしょうねwこのままだと今年の中間選挙は民主党、惨敗どころか壊滅するかもです。
ロシア軍がウクライナ空軍を制圧したみたいです。プーチンはどう後始末するのか
バイデン、まさかの遺憾砲発射w
民主党にも反売電派は存在するし
選挙前に反売電派を表明しておけば、とりあえずの当選は可能だから
民主党崩壊まではいかない
アフガニスタンで大失敗したバイデン政権としては、ここで弱腰と見られたら中間選挙での惨敗は必至と見て、原則論だけで押し切ろうとしたんでしょうが、”正論”を叫び続けるだけで問題が解決するなら「外交」なんぞ不要です。とりあえず正論を掲げるにしても、そこから大きく逸脱しない範囲で落としどころを探るために外交交渉があるのです。
とりあえず、バイデン政権には「オレの言うことを聞け」と呪文のように唱える以外の方策がないことが明らかになりました。かつてのように絶対的覇権国であればそれでも何とかなったのかもしれませんが、現在のアメリカにそこまでの力はありません。となれば、「脅し」のつもりでも、ロシアには「ささやかなお願い」程度にしか映らないでしょう。
さて、いよいよ「バイデンリスク」が誰の目にも明らかになってしまいました。我が国としては、いろいろと難しい対処を迫られる局面が増えそうです。
>さて、いよいよ「バイデンリスク」が誰の目にも明らかになってしまいました。我>が国としては、いろいろと難しい対処を迫られる局面が増えそうです。
そこですね。基本的に鈴置氏の論考には賛成なんですが、「バイデンリスク」どうなんでしょう?
アメリカというかバイデン大統領は虚勢を張って見事に失敗しましたね。
プーチン大統領は、きれいごとが大好きなリベラル系政治家達を完全に見切っていると思います。
これにはEUの政治家達も含まれます。
今回のロシアのウクライナ侵攻の目的は、ウクライナに親露政権を作る事と、あわよくばNATOの解体まで持っていく事でしょうね。
早晩EU諸国にも、アメリカと歩調を合わせる事に対する異議が大きくなると予想されます。
アメリカさえいなければ丸く収まるのでは無いかと。
アメリカ国内にも、核戦争の危険を冒してもウクライナに肩入れするメリットがあるのかという意見が大きくなると予想されます。
さてフランス、ドイツはどうするのでしょうか?
EUの主体性が問われています。
今回の事態はバイデンアメリカが、本当に世界の警察官で無くなるという瀬戸際でもあります。
台湾支配を目論む共産中国は、この事態を注視していると思います。
さて、日本はどうするのでしょうか?
首相の資質が問われる事態です。
首相が国難の原因とならない事を願っています。
どうやら始まったようです。
各地で爆発音の報告があり、全面的な同時侵攻のようです。
相場もリスクオフです。
先週だったと思いますが,ロシア軍によるウクライナ侵攻が行われた場合の欧米諸国による対ロ制裁の一環として,SWIFTからのロシアの諸銀行の排除が提案されたが行わないと決まったという話がWBSで報じられていた覚えがあります.
SWIFTからの排除をすると宣言していても侵攻は防げなかったとは思いますが,非軍事的な制裁手段の中ではロシアに与えるダメージは相当に大きく,しかもボディブローのようにロシア国内のダメージを増大し続けられる手段だと思うのですが.
それに何よりも,ほぼあらゆる天然資源を国内で賄えるロシアとは違って様々な資源を輸入に頼っている(からその輸入路である南シナ海を自らの内海として独占したがっている)共産チャイナにとっては,台湾侵攻=SWIFT排除という等式は相当に厳しい足枷として台湾侵攻を思い止まらせ得る警告となったと思うのですが.
今回のような完全なルール破りならばSWIFT排除どころか国連からのロシアを除名するに値する(無論,ロシアの拒否権によって除名決議は否決されるのも明らかですが)と思いますが,国連からの排除どころかSWIFTからの排除すら行おうとしない西側諸国は全くダメですね.
ゴシップ系の私と違い、いつも大局観を持った書込み感心させてもらってます。
はるちゃんさんへでした
プーチンにとって米銀の制裁は織り込み済み。きついのは英領バージン諸島やケイマン諸島のようなタックスヘイブン。イギリスが今回、制裁に加わっているのでそちらが封鎖されると厳しいね。ロシアは当然に戦費を蓄えてきているだろうけど、戦闘が長期化すると財政的に厳しくなる。旧日本軍と同様に短期決戦で片付けないとどんどん苦しくなる。
金が無くても、資源さえあれば、戦争できるんだよなぁ。
それを実感する今日この頃。