苦しい立場に置かれた韓国銀行の「焼け石に水」利上げ

韓国銀行が本日、政策金利を0.25%ポイント引き上げる決定を行い、韓国ウォン(USDKRW)も小幅で買い戻されているようです。ただ、正直、通貨安を食い止めるという視点からは、0.25%の利上げだと「焼け石に水」かもしれません。しかも、韓国はこれ以上利上げをすれば家計債務の破綻が相次ぐという懸念もあります。こうしたなかでふと思い出すのが、(韓国のなかでは)「米国が約束した」ことになっている「外為市場の安定」、その後、トンと話を聞きません。いったいどうなっているのでしょうか?

韓国銀行、0.25ポイントの利上げ

韓国の中央銀行である韓国銀行は25日、政策金利を2.25%から0.25%ポイント引き上げ、2.5%に設定すると発表しました。韓国銀行が利上げに踏み切るのは、4月以降、4会合連続のことです。

通貨政策の方向(2022.08.25)【※韓国語】

―――2022/08/25付 韓国銀行HPより

韓国銀行はこれについて、「国内外の景気下振れリスクは増大している」としつつも、「高水準の物価上昇や期待インフレ」が継続していることから、景気対策より物価対策を重視するとの視点から利上げに踏み切った、などとしています。

また、韓国の外為市場(USDKRW)は25日の寄り付きが1ドル=1341.5ウォンでしたが、WSJのマーケット欄などの情報に基づけば、韓国銀行の政策発表直後、1ドル=1335.5ウォン程度までウォン高が進んでいます。市場参加者はとりあえず韓国銀行の利上げを好感した格好でしょうか。

米韓金利差逆転は間近?韓国家計債務の問題

ただ、非常に正直な感想を申し上げるなら、「たったの0.25%か」、です。

7月のFOMCの結果、米国の金利(FF金利)は現在、2.25~2.50%のレンジに設定されており、これは6月時点と比べて0.75%の利上げに相当します。また、9月に予定されているFOMCでも0.5%の「ビッグステップ」、あるいは0.75%の「ジャイアントステップ」を予想する市場参加者は多数います。

現時点で韓国の政策金利はFF金利のレンジ上限と等しくなりましたが、もしも米国がさらに利上げに踏み切れば、米韓金利差は完全に逆転します。当然のことながら、金利差の逆転はそれだけで韓国ウォンの下落要因になり得ます。正直、0.25%では「通貨安」という観点からは「焼け石に水」でしょう。

このあたり、現在の韓国経済を巡っては、「利上げをすればしたで困る」、「利上げをしなかったらしなかったで困る」というジレンマに置かれていることも間違いありません。

利上げし辛い要因のひとつが、家計債務の増大です。

韓国の家計信用が過去最大:利上げ後も住宅ローン増大』でも触れたとおり、韓国では2022年6月末時点の家計信用(家計部門の借金など)が過去最大の水準を更新しているため、利上げをすれば家計の金利負担が上昇し、破綻に追い込まれる家庭も増えかねません。

あるいは『韓国社会で問題化「多重債務者」割合が人口の1割弱に』でも取り上げたとおり、韓国社会ではカネを借りてリスク資産投資をする人が多く、「多重債務者」、つまり「3社以上の金融会社からおカネを借りている人」が全人口の1割弱に達するなど、債務問題が社会問題化しつつあります。

こうした状況のなかで、米国のような「ビッグステップ」、「ジャイアントステップ」を踏めば、債務破綻が一気に発生しかねない、というわけでしょう。

対外債務水準も過去最大:利上げしなければ資金流出リスクも

ただ、その一方、『韓国の対外債務は過去最大:外貨準備高との関係は…?』などでも取り上げたとおり、韓国銀行が公表したデータによれば、韓国の対外債務水準も膨張している状況にあり、直近ではリーマン時と比べて約1.8倍の水準に達しています。

何らかの外的ショック(たとえば外国の金融機関・投資家などのリスク許容度が下がるなど)によって韓国から外国人投資資金が引き揚げられるような事態が生じれば、金利上昇とウォン安が同時に生じるようなことも発生しかねません。

結局のところ、現在の韓国については、家計・企業などの債務が破綻することを通じた金融危機が生じる可能性と、韓国からの資金流出(通貨危機)が生じる可能性が、同時に高まっているように見えてならないのです。

大幅な利上げに踏み切れば通貨危機は防げるかもしれませんが、ハンドリングを間違えれば金融危機が発生します。また、利上げを抑制すれば金融危機の発生を先送りにできるかもしれませんが、ハンドリングを間違えれば通貨危機が発生します。

さらには、最悪の場合、通貨危機と金融危機が同時に襲ってくる、といった事態もあるのかもしれません。

米国は「韓国の為替の安定」にコミット?

こうしたなか、最近少しだけ不思議に思うのは、「米国と合意したはずの外為市場の変動を抑える措置」は、いったいどうなったのか、という点でしょう。

今年5月にジョー・バイデン米大統領が韓国と日本を相次いで訪問し、韓国では尹錫悦(いん・しゃくえつ)大統領との間で共同声明を発したのですが、そこにこんな記述が含まれています。

“To promote sustainable growth and financial stability, including orderly and well-functioning foreign exchange markets, the two Presidents recognize the need to consult closely on foreign exchange market developments. The two Presidents share common values and an essential interest in fair, market-based competition and commit to work together to address market distorting practices”.

この記述を巡って、韓国メディアは「韓米双方が外為市場の安定のために協力すると合意したものだ」とする不思議な解釈を示していたのですが、この共同声明の内容を読めばわかるとおり、その実態は「韓国が常時為替介入をしていること」に対する米国からの牽制です。

あるいは、先月はジャネット・イエレン米財務長官が韓国を訪問しました。この訪問を巡って韓国では「韓米通貨スワップに合意する」との観測もありましたが、現実には『韓国待望の米韓通貨スワップはほぼゼロ回答=財相会談』でも取り上げたとおり、米韓双方は通貨スワップの締結には合意しませんでした。

しかも、韓国政府側としては、イエレン氏が「必要流動性供給装置など多様な協力方案を実行する余力がある」と述べたと発表しているのですが、これに相当する報道発表は、米国側からはいっさいなされていません(『イエレン氏は本当にスワップに「含み」持たせたのか?』等参照)。

韓国側では「米国が金融協力に応じてくれるはずだ」といった期待感が蔓延していたように思えるのですが、そのわりに韓国ウォンの市場は最近、13年4ヵ月ぶりの安値水準を試す展開が続くなど、とうてい「安定している」ようには見えません。

「米国が韓国の為替市場の安定にコミットした」とする一部の韓国メディアの報道自体、やはり改めて、「極めて疑わしい」と言わざるを得ないでしょう。

読者コメント一覧

  1. カズ より:

    さて、既存の家計負債は国策として固定金利へと強制転換。そして金融機関には助成金。そのうえで政策金利を上げようか・・。

    1. 伊江太 より:

      カズ様

      株に、土地・マンションなど不動産に、はたまた仮想通貨にと、借金を重ねて投資した挙げ句に、バブル崩壊で期待価値が蒸発しちゃうのは、もはや目と鼻の先。現物価値の裏付けを失ったマネーが、不良債権という形で大量に表に出ることになったら、これをどう始末するのか。かつてのバブル崩壊の後、日本でもこれの始末に何年も苦しんだんだけど、韓国経済に果たしてその余力はあるんですかね?

      当面の運転資金は融通してやった上で、「助成金」名目で不良債権=余剰マネーを市中銀行にとりあえず塩漬けさせておいて、「政策金利上げ」を通じて民間から市中銀行経由で韓銀が少しずつ吸い上げ、償却するというのが正攻法でしょうが、そんな時間的余裕があるものなのかどうなのか?

      あの国のことだから、奇想天外な展開を見せてくれるかも知れませんね。むしろそこに期待(笑)。

      1. カズ より:

        伊江太 様

        >奇想天外な展開

        無理筋をこじつけた”ウルトラC”を見てみたい気持ちでいっぱいです。
        要は、”どうばらまくか?”ってことに尽きるのではないでしょうか?

        例えば、不動産を担保割れ程度の相場で政府が買上(国有化)。金融機関に”永久債”を押付けて清算すれば、ウォンのだぶつきによるインフレはある程度 抑制できなくもないのかな・・と。

        若年者の救済に重きを置くのであれば、現政権の続く限り少子化対策も兼ねて”新生児給付”を一人目は1億ウォン二人目以降は2億ウォン?とかもありなのかもですね。

        *日本なんかでもそうなのですが、子供が一人よりも二人の方が経済的に楽な暮らしができる世の中であって欲しいと思っています。

        1. JJ朝日 より:

          > 現政権の続く限り少子化対策も兼ねて”新生児給付”を一人目は1億ウォン二人目以降は2億ウォン?とかもありなのかもですね。

          それならいっそのこと、現状の国民の全成人女性には「日米慰安婦従事慰労金1億韓国円」を、全成人男性には「戦時中日本での勤務慰労金1億韓国円」を支給すればよろしいのではないでしょうか?子孫かどうかを司法は問わないお国柄のようですし。

          国民同士の「ホントはあいつの祖先は従事してなかった」とか「それなら私もお金だけは欲しい」というそしりも無くなり、日本政府への懐柔策にもなり・・・。

    2. 福沢諭吉 より:

      カズ様
      韓国の金融が細い原因は、究極的には日本に比べ圧倒的に低い国民の貯蓄意識かと思います。
      大国の米国や旧植民地の遺産を有効活用している英国などを除き、その国の通貨がハードカレンシーになるためには、外国からの資金的信用(つまりお金の備蓄)が必須です。日本やスイスを見れば一目瞭然かと。
      韓国のマスコミ報道を見る限り、朝鮮人がこの要件を満たすことは未来永劫無理かと思います。

  2. sqsq より:

    ニューズウィークにタイの家計負債がGDPの90%で危険水域という記事があったが、韓国はGDP比97%になっている。

    利上げー>住宅ローンの借入可能金額は減る。ー>売出不動産価格は下がるー>既存物件の価格も下がるー>担保割れになる貸出案件が出てくる

    このあとどうなるかな

  3. コジna より:

    米連邦議会で民主党によりインフレ抑制法案(約59兆円)が成立しました。
    共和党が厳しく反対する中、インフレ対応に巨額財政出動と言う奇策、中間選挙に向けて必死です。
    (米国でもこの法案はインフレを加速させると考える人の方が、効果を信じる馬○より多いようです)
    FRBに対しても中間選挙前には金利を可能な限りあげるように要請してる模様です。
    8月と10月はFOMCはないので、9月は0.75の利上げが確定と思います。
    FRBは次の0.75で恐らく債務超過になるでしょう、それだけの危険負担をしてる状況です。
    米国人のバイデン政権に対するインフレ対応批判は日々厳しさを増しています。
    米国にはバイデン政権にもFRBにも、南朝鮮含めて他国の状況を考慮する余裕は全くありません。
    イエレン財務長官が南の報道のような発言をする可能性は皆無でしょう。

    >最悪の場合、通貨危機と金融危機が同時に襲ってくる、といった事態もあるのかもしれません。
    ゆん・そんにょる氏は南朝鮮の報道を信じてるのでしょうか?
    やはり最悪の時に最悪の選択で有名な南朝鮮を待ち受ける運命は、これだと確信します。

  4. 世相マンボウ_ より:

    私は嫌韓派ではなく、
    韓国世論の倒日派に対応する倒韓派でもない
    慈悲深い「憐韓派」ですので、
    韓国国民のことを心配して差し上げます。
    ・・・とはいっても、
    「日本騙してもいちど韓日スワップニダ」主張の
    朝日新聞や鳩ポッポや田原の爺さんたちに期待する
    汚れた韓流などは当たり前に論外です。

    韓国メディアが繰り返し実現する訳ない
    スワップの話題に国民を誘導しているのは、
    韓国財閥と結託して財閥資産売却から
    国民の目を逸らすための画策だということに
    いいかげん韓国民は気づくべきだと心配します。

    韓国が今なすべきことは
    サムスン、現代などの海外投資、工場などの資産を
    見栄を張ってないで売り払ってドルに代え
    韓国政府は『愛国外貨資金積立法』を施行して
    その供出された自国の資金で
    ウォン紙くず化阻止の為替防衛体制を
    急いで準備することです。
    サラ金借りて見えを張ってても返済無理になったら
    外車やロレックス売り払って返すのは当然です。

    現代の悪徳両班である財閥を守って
    利上げで韓国民を奈落の底に突き落とす韓国政府には
    『サムスン・現代等の財閥の海外資産は守って
     通貨崩壊で国民生活が被害を受けるのを
     国民は許さないニダ!!』との
    声を上げ今こそ正しい防衛策を準備するべき
    ときでありそれしか道はありません。

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