「基本的価値」で読むと、日台関係はさらに深まるはず

台湾との関係は強まる一方、基本的価値を共有しない国との関係はますます弱くなる――。「基本的価値の共有」という視点からは、当然の結論でしょう。こうしたなか、11月の貿易統計を見ると、台湾が日本にとっての輸出相手国としては僅差で4位に下がってしまいましたが、当ウェブサイトの仮説が正しければ、長い目で見たらいずれ3位の地位を不動のものにするのかもしれません。

世界には多い「約束破りのウソツキ」

日本が近隣諸国とのあいだで、「ともに手を取り合い、未来に向けて発展していけるような関係」を構築することができるならば、私たち日本国民にとっても、それは本当に幸運なことに違いありません。

ただ、私たち日本国民の側がそれを望んだとしても、相手がそれを望んでいなければ、それは実現し得ない話です。なぜなら、「主権国家同士、お互いを対等な関係として認め合い、尊重し合うような関係」は、お互いの国が実践しなければならないからです。

これについて考察するうえでの重要な前提条件は、日本人は「ウソをつかない」「約束を守る」といった、国際社会から見れば、じつに愚直な価値を信奉し、実践している、という点が挙げられるでしょう。

このあたり、世界各国を見回してみれば、「ウソをつかない」「約束を守る」という国の方が、もしかすると少数派かもしれません。実際、相手が「約束を守らない」「ウソをつく」などの行動の結果、あるときには相手国に騙され、あるときには相手国に裏切られたりしています。

インドネシアを筆頭に、信義則違反の国は多いのだが…

ビジネス上の信義則違反という事例としては、インドネシアへの高速鉄道輸出案件を挙げておきましょう。

これは、インドネシアで高速鉄道を建設するというプロジェクトに際し、日本企業のコンソーシアムがコストをかけてルートを調べ上げたうえで製作した提案書を、インドネシアが中国にそのまま横流しし、結果的に中国が破格の条件で案件を落札(というか横取り)した、という「事件」です。

日本企業のコンソーシアムとしては、相手国を信頼して提案書まで作っておきながら、それを第三国に横流しされ、ダンピングされたというのは苦い記憶であることは間違いありません。

ただ、こんな事例を例に挙げると、必ず、こんなことを言い出す人が出て来ます。

世界では『ウソをつかない』『約束を守る』というカルチャーを持つ国は少数派であり、日本のようにバカ正直に約束を守る国は世界でビジネスをする資格がない」。

一見すると、「もっともだ」、などと思ってしまう人もいるかもしれませんが、これは典型的な詭弁ですので、ご注意ください。

じつは、「『ウソをつかない』『約束を守る』国は世界の少数派であるかどうか」という論点と、「『ウソをつかない』『約束を守る』を実践すべきであるかどうか」という論点は、まったくの別物です。

約束守る正直国家には「信頼」という宝物が生じる

正直申し上げるならば、「約束を破るウソツキ国家」は、日本人が知らないだけで、世界的にはたくさん存在します。とある宗教の国だと、「私があなたと取り交わした約束は、神の思し召し次第では事情が変わり、守れないかもしれない」などと平然と言い放ったりします。

しかし、愚直に「ウソをつかない」「約束を守る」という行動を繰り返せば、その結果、あるものが生まれます。

それが、「国際社会からの評価」です。

そして、ビジネス上の信義を破る国には破る国なりに、約束を守る「正直国」には「正直国」なりに、ちゃんとその効果は返っていきます。前者には「あの国はどうせ約束を破るよね」という評価であり、後者には「あの国なら大丈夫だ」という「信頼」です。

たとえば、インドネシアの高速鉄道案件については、『インドネシア高速鉄道建設コストが「順調に膨張中」?』でも触れたとおり、中国企業などが参加する合弁会社である「KCIC」に対し、インドネシア政府が資本注入を決めた、などとする話題も出てきています。

俗に、インドネシアは「ASEAN最大の人口を抱える親日国だ」、などといわれますし、また、一部の論者は、「インドネシアも中国に騙された『被害者』のようなものだから、本件で日本はインドネシアに手を差し伸べてはどうか」、などと主張しているようです。

ただ、本件に関しては、正直、あまりインドネシアには同情できません。

最終的には中国側が「インドネシア政府の予算や債務保証なし」という破格の(というか国際常識から大きく逸脱する)条件で落札した理由は、日本側が同国側に提案した「高速鉄道バンドンルート」のルート選定図、縦断線形図などを同国政府が中国側に漏洩したことにあるからです。

今回の高速鉄道の建設予定地はそもそもが人口密集地帯であることに加え、地形的にも難工事が予想される箇所も多く、山岳地帯の工事ノウハウなどを豊富に持つ日本側と、そうでない中国側で、工事の進捗が大きく異なるのも当然といえるでしょう。

さらには、中国が短期間で国土を張り巡らす高速鉄道網を作り上げたことは事実ではありますが、これには中国なりの「かなりの特殊事情」があることを無視してはなりません。

そもそも、中国の高速鉄道は日本や欧州などの技術を移入して短期間で建造されたものであり、中国共産党一党独裁国家という特性上、用地買収にもさほどの難はないからです。

ついでに申し上げるならば、2011年には温州で高速鉄道の衝突・脱線・落下事故が発生するなど、運行面での安全性には、かねてから疑問符が付いています。

いずれにせよ、インドネシア高速鉄道案件の建設遅延については、正直、インドネシアの自業自得です。日本は静観を決め込むという対応で、まったく問題ないでしょう。

世界から信頼されている国・日本

さて、世界的には「ウソをつく」「約束を破る」「信義則を軽んじる」という国が多々あるということを忘れてはなりませんが、それと同時に、そのような国にはそのような国なりの、日本のような「ウソをつかない」「約束を守る」「信義則を重んじる」という正直国には正直国なりの、国際社会からの評価というものが確立していきます。

英メディアBBCはひと昔前まで、世界各国の人を対象に、ある国が世界に良い影響を与えているか、悪い影響を与えているかというアンケート調査を実施していましたが(『BBC世界影響度調査を読む』等参照)、だいたい世界中で最も評判が良い国の「常連」が、日本でした。

これは、日本にとっては大変に大きな財産です。

よく自称経済評論家が、「これからの日本は少子高齢化に国の借金問題もあり、衰退していく」などとドヤ顔で宣言しているのですが(笑)、そのようなひとは、たいていの場合、資金循環などの基本統計を読んでいないだけでなく、日本という国の国際的な評価について無視を決め込んでいます。

ちなみに「国の借金問題」が数字的に見て大ウソであるという点については、『家計金融資産が2千兆円!巨額資金は国財増発で吸収を』を含め、これまでに何度となく当ウェブサイトで指摘してきていますので、本稿ではとりあえず繰り返しません(※年末年始のどこかでもう1度議論したいとは思っています)。

じつは、この「日本はウソをつかない」「日本は約束を守る」という評判は、国際社会においてはかなりの価値を持っているのではないか、というのが、長年、金融の世界を眺めてきた著者自身の主観的な感想です。

(※もちろん、現在の日本が財政政策の失敗により「失敗国家」に向かっているのではないか、という懸念は、著者自身が誰よりも強く持っているものではありますが、この点についてはまた別稿にて議論したいと思う次第です。)

台湾は輸出先として僅差で4位に転落したが…

そして、似たような「国」――東アジアにある、義理堅くて礼儀正しい島国――が、日本の隣にあります。

それが、台湾です。

いや、日本政府は台湾のことを公式には「国」とは認めていませんが、それと同時に『外交青書』では、台湾のことを次のように位置付けています。

台湾は、日本にとって、自由、民主主義、基本的人権、法の支配といった基本的価値を共有し、緊密な経済関係と人的往来を有する極めて重要なパートナーであり、大切な友人である」(『令和3年版外交青書』P55)。

「基本的価値を共有する」、「緊密な関係を有する」というのは、日本政府が外国について記述する際、最も強い「褒め言葉」のひとつです。

実際、日本は現在、台湾との経済的な結びつきを急速に強めています。

詳しくは近日中に取り上げたいと思っていますが、財務省税関が毎月公表している『普通貿易統計』を読んでも、最近だと台湾が輸出、輸入ともに日本にとって3番目の相手国に浮上することが増えてきました。

残念ながら(?)、2021年11月に関しては、久しぶりに台湾が輸出相手国としては僅差で4位に沈んでしまいましたが(図表)、それでも月によっては中国、米国に次いで日本にとって3番目の貿易相手国となることも多いのが実情です。

図表 相手国別輸出額・輸入額(2021年11月)
輸出相手国と順序輸出額輸入額
1位:中国1兆5773億円1兆9796億円
2位:米国1兆2994億円8561億円
3位:韓国5343億円3322億円
4位:台湾5334億円3565億円
5位:香港3229億円93億円

(【出所】『財務省貿易統計』をもとに著者作成。順序は輸出額準)

台湾は近隣国のなかで、最も日本と価値観が近い国でもあります。

もちろん、台湾も一枚岩ではありませんので、日本との関係よりも中国との関係を重視しようとする勢力も存在することは否定しませんが、ただ、少なくとも蔡英文(さい・えいぶん)政権については、信頼に値すると考えて良いでしょう。

しかも、台湾は日本が東日本大震災で苦しんでいたときに、温かい支援を申し出てくれた恩人でもありますし、今年、日本はワクチン不足に悩む台湾に400万回分を超えるアストラゼネカ製ワクチンを提供するなど、「支援の応酬」が続いています。

そんな台湾との関係は、今後、深まることはあっても薄まることはない、というのが、著者自身が保持する「大いなる仮説」のひとつです。こうした当ウェブサイトの仮説が正しければ、長い目で見たら、いずれ日本にとっての貿易相手国としては「3位」という地位を、不動のものにしていくのかもしれません。

日本の近隣国でありながら、「ウソをつかない」、「約束を守る」という稀有な存在である台湾との関係がどうなっていくかという観点からは、この貿易統計は基礎データのひとつとして、大変に興味深いものであることは間違いないと思う次第です。

読者コメント一覧

  1. 禹 範坤 より:

    ソ連とか現行ロシアとか韓国とかと、同列にはなりたくない

  2. うちにテレビねーよ より:

    インドネシアの高速鉄道輸出が中国に取られたころ、とある中国人の識者(反日ではない)が「良いものが売れるのではない、売れるものが良いものだ」とテレビで言っていたのを思い出す。
    あの当時はそりゃそうだよなと思ったものだが、まさにこれって中国商人の考え方そのものだったんだなあ。
    インドネシアにとっちゃ、まさに日本の諺にある通り「安物買いの銭失い」「安かろう悪かろう」だね。

    1. ちょろんぼ より:

      うちにテレビねーよ様

      「売れるものが良いものだ」は商売の基本原則です。
      自画自賛の良いものを作っても、極一部のマニアにだけ売れればよいと
      いう考え方もあります。(例:フェラーリ等)
      問題は大量生産品に極一部のマニアにしか伝わらないものを作っても
      大部分の人達に刺さらないので買われない事です。
      売れるから良いというのは、大部分の人達を相手に販売する時に有効な手段です。
      マニア向けならマニア向けに少品種少量生産すべきです。 値段は上がるけど
      マニアなら十分気を引き付ける事ができます。
      要は販売対象が大多数か少数(マニア向け)を見極める事が重要です。

      インドネシアの高速鉄道を中共が請負した問題は、インドネシアが技術力を
      評価できない事と費用が原因です。
      これは、発展途上国に付き纏う問題であり、これを解決するにはインドネシアが
      技術力を持ち費用をかけなくてはいけないと思える位まで発展しないと無理でしょう。
      日本も過去に同じような問題を抱えていましたが、第二次大戦後の経済成長と
      軍隊の廃止により、高度教育人材が民間に振り分けられた事で達成しました。
      (軍隊はお金が無いが頭の良い人材確保する為、士官学校を設立した面も忘れては
      いけません。 現在も防衛大があり、授業を受けながら、給料を貰えます。)

      パナソニックが今回?次回の改革で品質を落とす宣言をしているようですが
      パナソニックを愛用している人達を見捨てて、パナソニック製品未購入者に対し
      プレゼンしても意味が無いような? 蜘蛛の糸を自分から切るような事だと
      認識しております。

  3. なんちゃってギター弾き より:

    おはようございます。
    少し早いですが、来年も知的好奇心を刺激される記事を楽しみにしておりますので、ご健勝ご活躍を祈念しております。

    さて、自分は仕事で海外に出ることはほとんどないのですが、10年少々前に偶然にも2週間ほどの間隔で中国と台湾に行ったことがありまして、その時の印象は「台湾は普通の先進国。中国は経済発展してるかもしれないけど、何だかよくわからない」でした。(台湾を先進「国」と書いたら問題なんですかね?)
    その理由は「民主主義、自由、平等」という価値観でした。欧米諸国に行った時と同じ感覚なのですよね。中国はそこが全然違うんですよ。
    文化や言語の共通性は過去の遺産、今を生きる私たちは現在から未来をどうするかの方が遥かに大切で、それなら仲良くするなら今の価値観が同じ相手と、と考えるのは自然な流れだと思います。

    もっとも「経済に主義主張は関係ない」って意見とか「そもそも日本が民主主義、自由、平等なのか」って言う特定方面からの苦情が来そうではありますが(汗)

  4. クロワッサン より:

    >さて、世界的には「ウソをつく」「約束を破る」「信義則を軽んじる」という国が多々あるということを忘れてはなりませんが、それと同時に、そのような国にはそのような国なりの、日本のような「ウソをつかない」「約束を守る」「信義則を重んじる」という正直国には正直国なりの、国際社会からの評価というものが確立していきます。

    国という単位だけでなく、民族という単位でも一緒なんですよね。
    で、低評価は差別と、高評価は逆差別となり。
    評価って過去の積み重ねであって、「差別は駄目だ」の一言で済ませられる程簡単ではないし、単純でもないし。
    個人的は、屠畜業や売春業に対する「蔑視」は蔑視する側が変わるべき事だと考えますが、嘘を吐いたり約束を破ったりする国家・民族に対する「蔑視」は蔑視される側が変わるべきだと考えます。

    1. バシラス・アンシラシスは土壌常在菌 より:

      噂話だが
      日本人が1人もいない店から品物を購入したくない中国人はたくさんいるとか

      1. 裏縦貫線 より:

        これも噂レベルですが、日本人駐在員が新型コロナに感染して行動履歴が公表されたら「日本人行きつけの店が分かったから行こう!」なんて話もありますし….

        日本人が「安物買いの銭失い」「安かろう悪かろう」「三方良し」を忘れたら、中国人から見向きもされなくなるかもしれません。

  5. 引きこもり中年 より:

    素朴な疑問ですけど、日本の基本的価値観は、厳密には日本人一人一人で違うのではないでしょうか。また、日本国民と(知的日本人の代表を自称する)朝日新聞の基本的価値観は一致するのでしょうか。(もっとも、台湾人の一人一人で、厳密には基本的価値観が違うとも言えます)

  6. 簿記3級 より:

    基本的価値観が大切な理由は社会の秩序の安定にある思います。又、どのように生きたいか生き方の問題でもあります。
    日「文明人として服を着ろ!」
    韓「嫌じゃー!」
    日「偽ブランド品ばかり身につけるな」
    韓「日本も昔はパクっていたではないか💢」

    まあ。裸で歩き回る方が楽なのは否定しません。韓国も寒くなったら勝手に服を着ることでしょう。教育出来るようなものではない。生き方そのものなので日本が韓国を導くことはまず不可能ですね。

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