韓国メディア「来月に韓日首脳会談が行われる可能性」

韓国側で、またもや日韓首脳会談への(勝手な)期待が出て来たようです。来月、岸田首相が英国で行われる「国連気候変動枠組条約締約国会議」(COP26)に参加する意向を示していることに関連し、韓国メディア『中央日報』が「今回の会議を契機に韓日首脳が対話する可能性もある」と報じたのです。はて、そうでしょうか。むしろ、韓国とは安易な「1対1」の首脳会談に応じてはならないというのは、安倍晋三内閣、あるいは菅義偉内閣あたりからの日本政府の方針に見えてならないのですが…。

日韓諸懸案、ほとんどの原因は韓国にあり

日韓関係を巡る諸懸案といえば、自称元慰安婦問題、自称元徴用工問題などの歴史問題、大きなものでは韓国による島根県竹島の不法占拠問題、細かいものでは窃盗した仏像を変換しない問題など、ほんとうに多岐にわたります。

ただ、これらの問題にひとつの共通点があるとしたら、それは、「韓国が国際法、条約、約束を守らないこと」に尽きるでしょう。

たとえば、竹島不法占拠問題を巡っては、日本政府はしばしば韓国に対し、国際司法裁判所(ICJ)という、国際的な場での解決を提案して来ましたが、韓国はこれに応じず、逃げ回っています。

また、自称元徴用工問題を巡っては、日本政府は2019年1月に日韓請求権協定に定める外交的協議を、同5月には同じく日韓請求権協定に定める国際仲裁手続への付託を通告しましたが、韓国政府はこれらのどちらの手続も無視しました。

さらには、自称元慰安婦問題に関して、今年1月8日に韓国の裁判所は国際法にいうところの「主権免除原則」を踏みにじり、日本政府に対して損害賠償を命じる違法な判決を出しました。

つまり、どの問題も、韓国が国際法や条約、約束、あるいは国際社会の常識に従った問題解決プロセスに応じないことがその最大の焦点なのです。

韓国との間で、「1対1」の解決を図ってはならない

ではなぜ、韓国は国際法を破るのでしょうか。

その理由は、2つ考えられます。

1つ目は、おそらくは韓国自身、自国の主張に国際法上の根拠がないことを、暗黙の裡に理解しているからです。もしも国際社会の公正な目での裁きを受けることになれば、勝ち目などありません。

だからこそ、韓国は国際法の世界から逃げ回り、日本との「1対1」の交渉に持ち込もうとするのでしょう。

そして2つ目は、日本がこれまで韓国との「1対1」の交渉に、安易に応じてしまっていた、という事情があります。

国際社会の法や常識に反することであっても、日韓関係が壊れることを嫌がる外務省の小役人、あるいは利権に塗れた政治家らの暗躍もあってか、日本自身が国際法の原則を捻じ曲げて譲歩することで、問題の表面化を防いでいたという側面は否定できません。

その典型例が、自称元慰安婦問題における「アジア女性基金」なる解決であったり、ときの官房長官だった河野洋平がなかば独断で出した『河野談話』だったりするのでしょう。古くは「サハリン在住朝鮮人」に対する補償なども、日韓請求権協定の原則を日本がみずから破った事例といえるかもしれません。

いずれにせよ、本来ならば、法的には日韓請求権協定により、日韓間の請求権の問題は、すべて完全かつ最終的に片付いているため、韓国が主張する「歴史問題」とやらが事実だったと仮定しても、韓国の国家、企業、国民は、日本に対してただの1円たりとも金銭を請求することはできません。

また、日本がやってもいない不法行為を韓国が捏造し、それによって日本が韓国に謝罪することなど、本来ならばあってはなりません(むしろ韓国の度重なる歴史捏造に対しては、日本は「鉄拳制裁」を加えても良いくらいでしょう)。

しかし、韓国にとっては「日本が自国に謝罪し、金銭を支払う」ということが、一種の麻薬のようなものになっている可能性はかなりあります。だからこそ、韓国は日本に対し、自国が国際法に違反しているという事実には頑なに触れず、ひたすら「歴史問題における道徳的優位性」を日本に認めさせようとするのでしょう。

日韓首脳会談にすら応じなくなった日本

こうしたなか、安倍晋三総理大臣以降は、日本も韓国への「1対1」交渉に基づく安易な謝罪や賠償には、簡単には応じなくなりました。2015年12月の日韓慰安婦合意を最後に、むしろ日本の対韓姿勢は非常に強硬でもあります。日韓首脳会談自体も2019年12月に行われて以来、長らく中断しています。

【参考】2019年12月24日の日韓首脳会談

(【出所】外務省・2019年12月24日付『日韓首脳会談』)

ただ、それと同時に、韓国の日本に対する不法行為は、むしろ2017年5月に文在寅(ぶん・ざいいん)政権が発足して以降、加速したかの感があります。

こうしたなか、昨日の『「久しぶりに見た」文在寅氏、輸出規制克服を呼びかけ』でも触れたとおり、文在寅大統領はあと半年ほどで任期を終え、青瓦台を去ります(※その文在寅氏の来年5月以降のお住まいがどこになるのか、監獄なのか地上の楽園なのか、楽園なのかについては、存じ上げません)。

こうしたなか、昨年秋口ごろからでしょうか、文在寅氏側からの日韓首脳会談の要請が激しくなり出しました。

2020年11月には、文在寅氏に近いともされる朴智元(ぼく・ちげん)韓国国家情報院長、あるいは韓日議連の金振杓(きん・しんひょう)会長を含めた韓日議連関係者らが相次いで日本を訪れ、それぞれ菅義偉総理大臣を表敬訪問しました。

彼らに対し菅総理は、「日韓関係を健全なものにするきっかけを韓国が作るべき」との姿勢で一貫していたのは記憶に新しい点でもあります(このうち朴智元氏との会談については、たとえば『菅総理「日韓関係健全化のきっかけ要求」の本当の意味』などもご参照ください)。

こうした菅総理の姿勢は、いわば、「日韓関係のギクシャクという現状を作り出したのは韓国であり、日韓関係を健全化する責任があるのは、ギクシャクの原因を作った韓国の側だ」という意味であり、これこそまさに韓国が最も嫌う「責任を負うこと」そのものでもあります。

無駄に高まる「韓日首脳会談」への期待

ただ、菅総理が在任384日で辞任し、外相として2015年12月の慰安婦合意の日本側の当事者だった岸田文雄氏が新たな首相に就任したことで、韓国側では「韓日対話」に対する期待感が、無駄に高まっているようです。

これについては『岸田首相が日韓電話会談後に良い意味で余計なヒトコト』でも述べたとおり、日本側は非常に冷めた姿勢を貫いています。

しかし、これに対して『日韓首脳電話会談の韓国側の報道発表は「ウソだらけ」』でも指摘したとおり、韓国側は日本側の発表にない内容を(おそらくは捏造して)勝手にたくさん発表しています。端的にいえば、勝手に話を捏造して発表するような相手国とは、首脳会談には下手に応じるべきではありません。

こうしたなか、韓国メディア『中央日報』(日本語版)には本日、こんな記事が出ていました。

岸田首相、COP26出席に意欲…文大統領と対話の可能性

―――2021.10.27 10:33付 中央日報日本語版より

400文字以下という大変短い記事ですが、岸田首相が来月、英国で開催される「気候変動枠組条約締結国会議」(COP26)に出席すると述べたことに関連し、「今回の会議を契機に韓日首脳が対話する可能性もある」とするものです。

なんだか、同じ英国で今年6月に開催されたG7に先立って、「韓日首脳会談が実現する(かも)」などとする観測報道が、韓国メディアなどで一方的に盛り上がっていたことを思い出してしまいます(『文在寅韓国大統領、日韓首脳会談が開催できず「残念」』等参照)。

しかも、『韓国メディアの詭弁:首脳会談「韓日双方が責任転嫁」』などでも述べたとおり、当時は日韓首脳会談が開催されなかった理由を巡って、「日本が一方的にキャンセルしたからだ」とする(おそらくは虚偽の)報道が韓国メディアで盛んに流されたのも、印象的でした。

関わると厄介な国

今回のCOP26でも、岸田首相は文在寅氏に話しかけられればあいさつくらいは返すでしょうが、サイドライン形式の日韓首脳会談が実現するかどうかは微妙です。

任期満了が半年先に迫るなか、日韓諸懸案を作るだけ作って後片付けをしない文在寅氏と話をしたところで、何か日本のためになる成果が出て来るとも思えませんし、会談を実施したら実施したで、あることないこと捏造されて勝手に発表されるというオチすら容易に予想できる点です。

もっとも、会談を実施しなければ実施しないで、「本当は韓日首脳会談が予定されていたのに、日本側が一方的にキャンセルした」とか言い出す可能性もあるため、韓国が「油断ならない相手国」である、という点については、変わりません。

関わるとそれだけで厄介な国、というわけです。

その意味では、『鈴置論考、「日韓の」ではなく「韓国の」特殊性に言及』でも紹介した、韓国観察者の鈴置高史氏が7月16日付『デイリー新潮』の『文在寅が菅首相をストーカーするのはなぜか 「北京五輪説」「米国圧力説」……やはり「監獄回避説」が有力』で述べた次の内容は、本当に至言です。

平気で約束を破り、堂々と他人を裏切る韓国と首脳会談を開こうとする国はまず出てこない。何を取りきめようが、すぐに反故にされるからです。日本と韓国がうまくいかない原因は『日韓関係の特殊性』ではなく『韓国の特殊性』にあるのです」。

逆にこれで首脳会談に応じるとしたら、よっぽど何らかの理由があるか、それともよっぽど岸田首相の脇が甘いかのどちらかに過ぎないと思われるのですが、いかがでしょうか。

 

本文は以上です。

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読者コメント一覧

  1. 引きこもり中年 より:

     素朴な感想ですけど、可能性だけなら、日韓首脳会談も、南北首脳会談も、米朝首脳会談でも、可能性はゼロでないのではないでしょうか。

  2. だんな より:

    文大統領は会談したいと言い、岸田首相は予定は無いと言っています。外交上会談する意思が有れば「早期の会談を希望する」と言います。「予定が無い」というのは、会う気が無いという事でしょう。
    多分韓国外交部の無能な役人が、「首脳会談して輸出規制を元に戻すニダ」と交渉して来るんだと思います。

  3. sqsq より:

    こういうのも観測気球と呼ぶのだろうか。

    1. 引きこもり中年 より:

      sqsq様
      観測気球より願望気球では。

  4. サムライアベンジャー より:

     監獄回避説・・・。いつも思うんですが肝心の会談の「中身」は何にすると考えているんでしょうかね。菅さんの時から会談会談とストーカー行為の果てに・・・で「なに」を話したいのでしょうか。

     輸出「規制」のことでしょうか、まさか「日韓スワップ」再開のことでしょうか。日本はすでに、韓国側から何も変わらないと気が付いているので、話すことはないでしょうね。

  5. だんな より:

    似たような話ニダ。
    文大統領 欧州歴訪中にバイデン氏と会談の可能性=韓国大統領府
    https://m-jp.yna.co.kr/view/AJP20211025004000882?section=politics/index
    >韓国青瓦台(大統領府)高官はこの日、記者団に対し、歴訪中に韓米首脳会談が開催される可能性について、「G20やCOP26などで、どのような形であれ会う可能性があると予想する」と述べた。

    「可能性があると予想する」ってなんだ。

    1. マスオ より:

      > 「可能性があると予想する」ってなんだ。
      ウケるw
      つまり「何も決まっていない」って事ですね。

      1. 頓珍韓 より:

        身動きの取れない赤(文)ちゃんって「可能性の塊」ですよね。

        ベロベロバー

  6. 百十の王 より:

    G7, オリンピックの日韓首脳会談の憶測記事に次いで第三弾ですか。懲りない方々ですね。

    岸田首相は所信表明演説で「わが国の一貫した立場に基づき韓国側に適切な対応を強く求めていく」と述べています。

    つまり日本が受け入れることのできる解決法は韓国が持ってきなさいと述べているのに1ミリも応じないで、日本にとって何らメリットの無い日韓首脳会談を行いたいとは虫がよすぎます。

    二代続いた韓国徹底無視を岸田さんも踏襲で決まりです。

  7. がみ より:

    2019年から本年にかけて石油等の製造原価が上がっているのに対韓輸出している輸出3品目の単価は下がっているようで不思議です。
    日本企業が台湾等で製造しているフッ化水素始めとした半導体製造に必須の品目は世界の半導体不足も重なり価格高騰していてもおかしくないのですが?

    価格面でも日本が製造原価の損を補てんして安価で売るようなばかな真似はやめましょう!

    「可能性」って最後につければ、どんなヨタ話でも記事に書いちゃう国民性はクズです。

    文大統領が2回目のバチカン訪問で北へのローマ法王訪問を企てている真っ最中ですが北にカトリック信者いるのかよ…と。
    また、習近平はバチカン市国が中国と国交持ち大使館置かせてやる代わりに台湾と国交断絶しろとかぼんくら言ってます。

    キリスト教徒もぜひ中朝韓なんてこんな奴らだと正確に知っていただきたいものです。

  8. 匿名 より:

    なんと言われようが徹底的に無視。

    NoJapanでしょう? お嫌いなんでしょう、くらい言ってやりましょう

  9. 元一般市民 より:

    K国のことですから、首脳会談をやってもいないのに、「首脳会談したニダ、輸出規制を撤廃させたニダ」と発表してしまうことに、そろそろ注意した方が良いと思います。

  10. 匿名29号 より:

    韓国文大統領は岸田氏の脇の甘さに賭けているように思えます。誰に対してもいい顔をしたがる岸田氏が人に対して拒絶や無視をすることが難しい性格を攻めているような。総裁就任後の電話会談にしても、全く緊急性がなかったにもかかわらず会談し、韓国内でいいように報道された例もあるし、案外乗ってしまうように思います。2度だまされる者は3度でも、何度でもだませます。

  11. カズ より:

    彼らにとっては、”首脳会談をすること”自体が目的で、会談の内容なんてどうでもいいんですよね。

    「日本は問題の存在を認めたからこそ、協議に応じたのだ」と言いたいだけなのですから・・。

    1. バシラス・アンシラシスは土壌常在菌 より:

      会談するだけが目的でやっているなら、韓国がそこまで警戒されない

      1. おとと より:

        だって会っちゃうと、『〇〇と期待される』『〇〇の可能性が』のK報道が→『〇〇で合意した』に勝手に変えられる可能性ありだから、日本には直接会うデメリットしかないと思います。

  12. 七味 より:

    日韓両国首脳が、同じ日に同じ場所で同じ議題(温暖化)について、それぞれの考えを述べたので、これは広義の「会談」と言える。

    ってことで、いいんじゃないかな?

  13. 路傍の小石 より:

    岸田首相周辺の取り巻きが完全に阻止出来るかどうかです。まさに取り巻きの阻止能力が問われる前代未聞の会議になる様な嫌な予感が。例として、トランプ訪韓時の取り巻きが必死にとった韓国ドア大統領阻止行動、これ位身を挺して接近阻止しなければバリアーの役目は果たせません。相手は化け物同然で薄気味悪さすら感じます。岸田首相周辺諸氏は非韓三原則を大幅にバージョンアップし、韓国に絶対に隙を与えぬ様万全阻止の体制で臨めるかどうかが全て。丁寧な無視から乱雑な無視に格上げする事に期待します。

  14. クロワッサン より:

    >逆にこれで首脳会談に応じるとしたら、よっぽど何らかの理由があるか、それともよっぽど岸田首相の脇が甘いかのどちらかに過ぎないと思われるのですが、いかがでしょうか。

    事務方が事前の折衝で決めた大枠を、文在寅氏が『トップ会談でひっくり返す!』と会談時にちゃぶ台返しして持ち出す可能性がありますね。

    この場合は騙された岸田首相の脇が甘いとなるのでしょうが。

  15. taku より:

    もはや個別の首脳会談を行うこと自体が、日本政府にとって、政治的リスクとなっております。首脳会談を行って、互いの見解を述べあって、未来志向で解決したいということで合意したなんて話になったら、岸田政権から少なからずの支持層が離れるでしょう。韓国民が日本に対する意識を変えていかない限り、韓国政府は宥和的な対応を取ることは出来ず、それに時間がかかるようであれば、その間の日韓関係は段階的先細り(テーパリング)とならざるを得ません。韓国マスコミは、これまでは日本に否定的な記事をのせる→韓国民の反日が高まる→国民が納得しないと日本に言う→日本が折れるという順番を経て、国益に貢献してきたのですが、今後は韓国民の反日が高まる→双方の国民の互いの意識が離れる→日本は日韓段階的先細り・韓国抜きでの国際枠組み構築に傾注するという順番で、国益に反することになります。どうするんですかね。日本抜きでの国際枠組み構築を図ると腹を決めることもできないんでしょうね。韓国政府による言葉だけの”和解”ポーズにはうんざりです。

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