イランと韓国の泥仕合は韓国の不誠実な対応に起因する

イランのダヤニ家が韓国投資公社の資産差押えを申立て

中東の大国・イランといえば、現在、核開発を巡って米国などから経済制裁を受けています。こうしたなか、その経済制裁を理由に、イランの所有物であるウォン資金を頑なに返そうとしない国が、韓国です。イラン・韓国間の石油決済代金を巡るトラブルは今年1月、韓国船舶の拿捕によって注目を浴びましたが、それだけではありません。ダヤニ家がISDSに基づき勝訴したにも関わらず、経済制裁を理由に、韓国政府が損害賠償の支払いをいまだに渋っているのです。

イラン核開発と制裁の振り返り

イランといえば、核開発を進めていたとして、国際社会からの経済制裁を受けている国です。

まずは、日本原子力研究開発機構(JAEA)のウェブサイトに掲載されている『イラン核問題』というPDFファイルをもとに、経済制裁に至るまでの経緯を簡単に振り返っておきましょう。

そもそもイランが核開発を開始したのは、1980年代に締結した、パキスタン、アルゼンチン、中国、ロシアとの原子力協力協定が、米国等の圧力により頓挫したためだそうです。

イランはその後、ウラン濃縮を試みましたが、2004年11月の「パリ合意」でいったんは濃縮活動の停止で合意したものの、2005年6月に強硬保守派のアフマディネジャドが大統領に就任し、ウラン濃縮活動を再開したことで、国際社会(とくに英仏独+米中露の、いわゆる「EU3+3」)が動きます。

当初、EU3+3はイランに対し、「軽水炉提供を含む包括的見返り案」を示してウラン濃縮停止を要求したもののイランからの反応がなく、2006年7月の国連安保理決議1696号、2007年3月の国連安保理決議1747号などに至ります。

イランに対する国連安保理決議
  • 第1696号(2006年7月)…イランにウラン濃縮・再処理活動停止を要求
  • 第1747号(2007年3月)…イランに対する経済制裁を決定
  • 第1803号(2008年3月)…イランに対する追加での経済制裁を決定
  • 第1835号(2008年9月)…イランに対する決議遵守を要請

ただ、こうした経済制裁などにもかかわらず、イランは核開発の停止せず、ことに2009年9月には新たなウラン濃縮施設を建設していることが判明。さらに2010年2月には、20%ウラン濃縮に着手するなどの動きを見せました。

こうしたイランの動きに対し、「EU3+3」や国際原子力機関(IAEA)側はイランとの対話を続け、ことに穏健保守派のロウハニが2013年にイランの大統領に就任したことなどを契機に、同年11月にはイラン、IAEAが核開発問題の解決に向けた共同声明に署名。

最終的には2015年4月に、EU3+3とイランの7ヵ国が「枠組み合意」に達し、「包括的共同作業計画」(JCPOA)が作成され、同年10月に発効しました。

これにより、イラン核開発問題は、いったんは解決したかにも見えました。

ただ、2017年1月にイランがミサイル発射実験を実施したことを契機に、米・イラン間の関係が悪化。当時のドナルド・J・トランプ米大統領は2018年5月、JCPOAからの離脱を発表し、8月には対イラン経済制裁を再開する大統領令にも署名しました。

この大統領令では、まずは各国企業に自動車や貴金属などの取引停止を要求。ついで11月上旬にはイラン産原油取引が制裁対象に加わります。米国は日本や韓国などに6ヵ月の猶予期間中の制裁の適用除外を認めましたが、2019年5月には制裁が完全適用されます。

イランと韓国の因縁

イランと韓国の不透明な取引①ウォン資金口座

こうしたなか、米国の同盟国でありながら、イランとの不透明な取引を継続していた国が、韓国です。

当ウェブサイトでは以前の『イラン外務省が韓国に対して「約束を守れ」と要求』でも紹介しましたが、その鍵を握るのが「ウォン資金口座での石油決済」と「物々交換」です。

【参考】『イラン外務省が韓国に対して「約束を守れ」と要求

イラン外務省が韓国に対して「約束を守れ」と要求

「ウォン資金口座での石油決済」は、イランの中央銀行が韓国の2つの銀行にウォン資金口座を開設し、イランが韓国に石油を輸出した代金は、韓国の輸入業者がその口座にウォン資金で振り込み、振込を確認次第、イラン中央銀行が石油を輸出した業者にイランリヤルを振り込む、という形です。

これらのウォン資金が現在、米ドルに換算して70~90億ドルほど溜まっているらしいのですが、イランがこれまで韓国に対し、その資金の引出を何度も要求したものの、韓国側はのらりくらりと理由をつけて引出に応じていません。

それどころか、一部の報道によれば、韓国側は「その凍結された預金にろくに金利も付与していない」、「口座維持手数料を要求している」、といった情報もあります。

なんだか、大変ですね。

もちろん、イランが韓国内に置いている資金の凍結という憂き目に遭っている理由は、自国のウラン濃縮がその直接の原因であり、本件についてはイランに全面的に同情することはできません。

しかし、イランが国際的に通用する通貨でもない韓国ウォンを使った取引に手を染めていた責任の一端は、韓国側にもあります。今から韓国メディア『中央日報』(日本語版)に約5年前に掲載された次の記事を再掲しましょう。

政府「韓国ウォン口座維持協議を」…イランは返答せず(1)

―――2016.01.28 09:08付 中央日報日本語版より

ここには、凄い記述があります。

イランと金融取引が厳格に制限された状況でもそれなりに貿易が維持されたのは、ウリィ銀行と企業銀行に開設された韓国ウォン口座のおかげだった。韓・イラン当局が苦心の末に開いた『う回路』であり『抜け道』だった」。

何が驚きかといえば、大手メディアに堂々と「迂回路」だ、「抜け道」だ、などと記載されている点です。

しかも、このスキームは、時期的に判断して、「保守派」であるはずの李明博(り・めいはく)、朴槿恵(ぼく・きんけい)両政権下で機能していたということですから、これもまだビックリです。

ちなみに『イランによる韓国船拿捕の裏にある両国の浅からぬ因縁』や『イランに救急車提案で火に油を注ぐ韓国政府の不誠実さ』を含め、しばしば触れてきたとおり、今年1月に発生した韓国船の拿捕事件も、このイランと韓国の浅からぬ因縁によるものと深い関係があると考えて良いでしょう。

イランと韓国の不透明な取引②物々交換

両国の不透明な取引は、それだけではありません。

いくつかの報道によれば、イラン・韓国の両国は、ウォン資金口座だけでなく、物々交換スキームでの貿易も行っていたのだそうです。

イランと韓国、原油の「物々交換」取引で合意 制裁の回避図る

―――2018年12月2日 17:27付 AFPBBニュースより

AFPBBニュースによると、これはイランが輸出した石油の価値に相当する物資を韓国がイランに輸出するというスキームであり、少なくともドル決済を使用しないため、米国の経済制裁を「回避する」ことができる、というわけです。

ただ、この記事の日付は2018年12月2日ですが、個人的には、それよりもかなり以前から、何らかの物々交換がなされていた、しかも時として違法なものも行われていた、と疑っています。

たとえば、日本の貿易統計上、フッ化水素とフッ化水素酸は『普通貿易統計』のHS2811.11-000を検索すると、相手先の別の輸出金額と輸出数量を調べることができます(※ただし、再輸出品に含まれるものもあります)。

ちなみにフッ化水素等は、2019年7月に日本政府が発表した対韓輸出管理適正化措置において、個別許可に切り替えられた対象品目のひとつですが、HS2811.11-000の対韓輸出高が、金額、数量ともに激減していることが確認できます(図表1図表2)。

図表1 HS2811.11-000の輸出(金額)

(【出所】財務省普通貿易統計より著者作成)

図表2 HS2811.11-000の輸出(数量)

(【出所】財務省普通貿易統計より著者作成)

ちなみにフッ化水素は半導体製造工程だけでなく、ウラン濃縮工程にも使用されていることは有名です。

そして、日本から韓国へのフッ化水素の対韓輸出が激減したにも関わらず、韓国において半導体製造に支障を来したという報道はいっさいありません。自然に考えて、韓国がフッ化水素の目的外利用や横流し等をしていたのではないかとの疑いが生じるゆえんでもあります。

もちろん、「フッ化水素のイランへの横流し」については、当ウェブサイトとしては確たる証拠を掴んでいるわけではありません。しかし、日本の対韓輸出管理適正化措置発表から約2ヵ月後、イランがなぜか唐突に、ウラン20%精製の先送りを発表しています(『イランがウラン20%精製を見送り、なぜ?』等参照)。

いずれにせよ、「イラン」「韓国」といえば、怪しさの塊ではないかと思う次第です。

ダヤニ家との因縁

こうしたなか、イランと韓国に関してはもうひとつ、ダヤニ家とのトラブルについても触れておく必要があります。

昨年9月、イランのダヤニ家が韓国企業の在英資産の差押を申請した、という話題を当ウェブサイトで紹介したことがあります。

【参考】『イランのダヤニ家が韓国企業の英国内資産を差し押さえ

イランのダヤニ家が韓国企業の英国内資産を差し押さえ

これは、もともとはイランの投資家一族であるダヤニ家が「投資家・国家間の紛争解決手続(ISDS)」に基づいて韓国政府を英国の裁判所に提訴し、2018年6月に勝訴。韓国側は約7000万ドルという損害賠償の支払いを求められている、というものです。

ただ、この判決自体からもう3年近くが経過するにも関わらず、依然として韓国側はこの支払いに応じていないようです。

ことに、昨年1月には、中央日報にこんな記事も出ていました。

韓国政府、イランに支払う750億ウォン「ISD敗訴金」…米国の制裁のため方法なし

―――2020.01.06 10:17付 中央日報日本語版より

中央日報によると、ISDSで敗訴した韓国政府は、「米国からの制裁を回避すると同時にイランとの関係を考慮し、海外送金の代わりに賠償金を国内投資に回す案を模索している」、というものですが、これもまことにふざけた提案でしょう。

韓国国内のウォン資金口座に賠償金を振り込んだところで、韓国金融当局が海外送金を認めないでしょうから、結局、ダヤニ家としては資金を受け取ることができない、というわけです。

ダヤニ家が今度は韓国投資公社の海外資産差押えに

ただ、ダヤニ家による在英資産の差押については、結果としてあまりうまくいかなかったようであり、その後は続報がありませんでした。

こうしたなか、韓国メディア『朝鮮日報』(日本語版)に本日、こんな記事が掲載されていました。

イラン・ダヤニ家系ファンド、韓国KIC資産差し押さえの動き

―――2021/04/20 07:16付 朝鮮日報日本語版より

(※朝鮮日報の場合、記事自体は公表されて数日経過すると読めなくなるようですので、もし読みたいという方がいらっしゃれば、早めにどうぞ。)

朝鮮日報によると、ダヤニ家は韓国の政府系ファンドである「韓国投資公社(KIC)」の海外資産の差押を申し立てたのだそうです。

このKICは韓国政府が100%出資する、約20兆円規模の資産を運用する公社です。KICといえば、『韓国が外貨準備高のうち1573億ドルを「積極投資」』でも出て来たので、覚えているという方も多いでしょう。

韓国政府・金融委員会とKICによれば、ダヤニ家は2月24日、フランス高裁に対し、KICが投資したフランスの製薬会社エディファームの株式差押えを申し立てたのだそうであり、韓国側は通知を受けた日から3ヵ月以内の5月24日までに異議申し立てが可能としています。

また、朝鮮日報によれば、韓国政府は「韓国石油公社のケースのように、ダヤニ家の問題点を指摘し、差し押さえを失敗させる防衛策を検討している」、などと述べています。

イラン・韓国の泥仕合は続く?

さて、イラン中央銀行の件にしても、ダヤニ家の件にしても、いずれも韓国政府がのらりくらりと対応を先送りにしてきたがために、深刻化したトラブルであると言わざるを得ません。

ちなみにイランと韓国の件については、当ウェブサイトにしばしば読者投稿を寄せてくださる「イーシャ」様という方の『【読者投稿】韓国はダヤニ一族への賠償問題を解決せよ』などの議論にもあるとおり、調べれば調べるほど、韓国という国の不誠実さが際立ってきます。

なお、直近の『【読者投稿】「ゲーム理論」で読み解く「韓国の奇行」』や『【読者投稿】ゲーム理論と「韓国が協調できない理由」』などを読むにつれ、イランと韓国の泥仕合はまだしばらく続くように思えてなりません。

今後の展開にも注意が必要でしょう。

読者コメント一覧

  1. だんな より:

    ちゃんとした話は、イーシャさんにお任せするニダ。
    払わないといけない金は、出来るだけ引き延ばして支払わない。もし支払わないで済めば最高さ。

    日本は、判決に従わないで賠償金を払わない、悪い国。

    矛盾無く両立するのが、韓国ニダ。

    1. 引きこもり中年 より:

      だんな様へ
      >矛盾無く両立するのが、韓国ニダ。
      韓国の裁判所が認めたんですね。

  2. Naga より:

    世界に冠たる大インチキ民国ですね。
    今時こんな国にエッチングガス製造工場を作る企業があるのですから何を考えているのでしょう。
    政府は余計な指導をせず、こんなケースこそ指導したらと思います。

    1. 人工知能の中の人 より:

      Naga様
      ダイキン工業の合弁のことならエッチングガスといってもフッ化水素は含んでいないみたいですよ。色々種類があってフッ素を含まない有機ハロゲンガスとかもあるそうです。
      見たいモノしか見えなくなったYONHAPニュースが飛ばし記事でホルホルしただけみたいで
      元の記事からフッ化水素の記述等を訂正してニュースを後日再送しています。
      >韓国で生産するエッチングガスに日本政府の輸出許可申請などの手続きが必要なフッ化水素は含まれていない。
      逆に書類を提出さえすれば輸入できるフッ素系エッチングガスなのに種類を変える選択肢しかないとかどんな生産工程だったんだとあきれるばかり。

      調べてたら何気にダイキン工業って世界のエアコン市場から韓国製を駆逐してたんですね・・・

  3. めがねのおやじ より:

    韓国のやる事ですから、金となるとビタ一文払いたくない。イランの弱みを見つけて、出来る限り支払いを引き伸ばす。救急車買えッてのもありましたね。

    イランも核開発を続ける闇の国ですが、韓国はとにかく小狡い。ま、泥試合は続くでしょうし、まともなエンディングは無いでしょう。しかしイスラムの国を甘く見てると、ソウル、仁川、釜山の都市部繁華街、青瓦台でテロが起きるぞ。ちょっと見たい気もするが(笑)。いや、嘘ですヨ。

  4. PONPON より:

    とにかく、とにかく、イラン頑張れ!、としか思いつきません。
    いかなる国が韓国と争おうが、常に韓国以外の国を応援したい気持ちです。

    ヤフーコメントを見ても日本人のほとんどは同じ気持ちのようであり、
    自分としてもなぜここまで韓国が嫌いになったのか、昔は好きな時期もあったにも関わらず。。KARAも大好きだったのに。。
    少し自己分析も必要かも、です。

    1. より:

      おそらくはですが、ここに集う方の多くは「知れば知るほど嫌いになる国」というフレーズを噛み締めた経験があると思います。

      1. PONPON より:

        龍様

        私もそれを考えていました。
        二度と好きになることはないのでしょうね。。
        「青春(中年)という名の勘違い」でした。

  5. nanoshi より:

    新宿会計士様
    「イランがウラン20%精製の先送り」という話は去年のことですが、事態は最近急速に進展しています。

    報道によればイランは1月にウラン20%濃縮の作業を開始し、4月16日には濃縮度60%のウランの製造を始めています。https://www3.nhk.or.jp/news/html/20210417/k10012980061000.html
    https://www.nhk.or.jp/kaisetsu-blog/100/447915.html

    イランがどこからフッ化水素を入手しているかは不明ですが、この間もちろん日本の対韓輸出管理措置には変化はありませんので、こうなると韓国からの横流し説は信憑性がなくなるのではないかと? いや、そこのミッシングリンクに韓国タンカー解放や北朝鮮といった因子を加えるともっと壮大なスキームが見えてくるか‥?

    1. イーシャ より:

      ウラン濃縮には、韓国製 5N のフッ化水素で十分ですよ。

      1. りょうちん より:

        フッ酸の形では輸入しないでも、純度を求めなければ、自国生産可能でしょう。
        蛍石はかなりの広範囲で産出されます。

    2. カズ より:

      イランが拿捕したケミカルタンカーの積荷はフッ酸だったのでしょうか?

      猿芝居??

  6. めたぼーん より:

    韓国の道徳性の高さが際立ってますね。こんなのに忖度してきた日本って何なのかと思います。まあ、これからは現野党が政権取らない限りは一切忖度無いでしょうけど。

    1. ちかの より:

      めたぼーん様
      >韓国の道徳性の高さ
      それって「ウリナラが1番エラくて正しい」っていう「K道徳」ですかー?(棒 。

      1. めたぼーん より:

        ちかの様

        彼らの中では、

        中国と北>>超えられない壁>>韓国>>超えられては困る壁>>日本を含む他国

        のような感じみたいですが。

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