日韓スワップ、あえて「日本のメリット」を考えてみる

ここ数日、韓国側で日韓通貨スワップ待望論が高まっています。昨日は韓国ウォンの為替相場はやや落ち着きを取り戻しているようですが、小康状態がいつまで続くかはわかりません。こうしたなか、昨日、『【資料】2014年4月16日の日韓スワップの議事録』という記事を当ウェブサイトに掲載した目的は、本稿を執筆するためです。というのも、当ウェブサイトの『韓国メディア「五輪延期なら日本も韓日スワップ必要」』などでも触れたとおり、韓国側で最近、やたらと「日韓通貨スワップ待望論」が高まっているからです。

今から6年前の議事録

昨日の『【資料】2014年4月16日の日韓スワップの議事録』では、当ウェブサイトにしては珍しく、国会の元資料をほぼそのまま転載しただけ(+それらのコメントを要約した箇条書きを列挙しただけ)の記事でした。

【資料】2014年4月16日の日韓スワップの議事録

これは、今から約6年前、2014年4月16日に、当時の衆議院議員だった三木圭恵(みき・けえ)氏(「日本維新の会」所属)が日韓通貨スワップについて質問を行い、麻生太郎総理(副総理兼財相)や山崎達雄・財務省国際局長(当時)が答弁した発言録を収録したものです。

具体的なやりとりについては衆議院のウェブサイトで現在でも確認することができるのですが、リンク先が少々長いため、昨日の『【資料】2014年4月16日の日韓スワップの議事録』で該当する箇所をノーカットで転載したうえで、箇条書きで要約をまとめた次第です。

これについては当初、原文が少々長すぎることから、「原文をすべて掲載するのではなく、勝手に原文を箇条書きで要約して紹介するだけで良いかな?」とも思ったのですが、結局、ノーカットで原文をそのまま掲載することにしました。やはり、議論の「トレーサビリティ」を確保するうえで必要だと思ったからです。

(なお、当ウェブサイトが大切にしたいと考えている、議論の「トレーサビリティ(traceability)」については、『ウェブ評論の流儀は「議論のトレーサビリティの確保」』で説明していますので、よろしければご参照ください。)

ウェブ評論の流儀は「議論のトレーサビリティの確保」

正確な事実認識

日韓通貨スワップは韓国への支援である

さて、議事録に掲載されている、三木議員(当時)、麻生太郎総理(※安倍政権下での正式な役職は財相ですが、本稿では「麻生総理」と呼びます)、山崎局長(当時)の3者の発言について、表現を整え、言葉を補ったうえで、再構成しておくと、かなり興味深いことが判明します。

まず重要なのは、三木議員の次の指摘です。

日韓通貨スワップは、豊富な外貨準備を持つ日本が、外貨準備が少なく満期1年未満の短期対外債務が多い韓国通貨の暴落リスクを低減させ、欧米の資金が韓国経済へ流入することの後押しになっている(と指摘する経済人もいる)

この「日韓通貨スワップは韓国への支援である」という指摘は、正鵠を射ています。というのも、日韓通貨スワップは、世界でもなかなか例がない、「米ドルでの引出が可能な二国間通貨スワップ」だからです。

現在、韓国が保有している米ドル建てのスワップといえば、引き出すためのハードルが高い「多国間通貨スワップ」であるCMIMと、資金使途が民間金融機関への流動性供給に限られている「為替スワップ」しかなく、いわゆる「米ドル建て二国間通貨スワップ」は1本もありません(図表1)。

図表1 現時点で韓国が外国と締結しているスワップ協定(※「自称」も含む)
相手国と失効日金額とドル換算額韓国ウォンとドル換算額
中国(2020/10/13?)3600億元 ≒ 509億ドル64兆ウォン≒526.3億ドル
スイス(2021/2/20)100億フラン ≒ 103.3億ドル11.2兆ウォン≒92.1億ドル
UAE(2022/4/13)200億ディルハム ≒ 54.4億ドル6.1兆ウォン≒50.2億ドル
マレーシア(2023/2/2)150億リンギット ≒ 34.6億ドル5兆ウォン≒41.1億ドル
オーストラリア(2023/2/22)120億豪ドル ≒ 72.5億ドル9.6兆ウォン≒78.9億ドル
インドネシア(2023/3/5)115兆ルピア ≒ 70.5億ドル10.7兆ウォン≒88.0億ドル
二国間通貨スワップ  小計844.3億ドル106.6兆ウォン≒876.6億ドル
多国間通貨スワップ(CMIM)384.0億ドル
通貨スワップ 合計1,228.3億ドル
カナダ(期間無期限)※金額無制限
米国(2020/09/19)※600億ドル

(【出所】各国中央銀行等の報道発表などをもとに著者作成。なお、米ドル換算額は昨日夜時点でWSJマーケット欄に表示されていた為替相場を参考に試算。なお、中国との通貨スワップについては実在性は不明。また、※印で示したカナダ、米国とのスワップは、通貨スワップではなく為替スワップ)

韓国の資金調達構造の特徴

では、なぜ韓国は米ドル建てのスワップを必要としているのでしょうか。

これについては、さっそく、麻生総理の次の発言が参考になります。

日本側から見ると、韓国は長期的・安定的な調達手段ではなく、短期的な調達手段で外貨を調達しており、かつ、国際的な大規模銀行も存在しないことから、国際的な金融危機の影響で資金繰りが不安定化しやすいという特徴を有している

これについては、普段から当ウェブサイトでも言及している内容とも整合しています。

というのも、韓国は外国の金融機関から3300億ドル前後のカネを調達しており(図表2)、そのうち「1年以内に満期が到来する外貨建ての債務」の額は1000億ドル前後に達している(図表3)からです。

図表2 韓国がカネを借りている外国金融機関の所在地(2019年9月末、最終リスクベース)
相手国金額比率
米国883.3億ドル26.78%
英国811.0億ドル24.59%
日本539.9億ドル16.37%
フランス270.9億ドル8.22%
ドイツ152.7億ドル4.63%
台湾103.6億ドル3.14%
その他536.3億ドル16.26%
合計3297.6億ドル100.00%

(【出所】BISのCBSデータ『B4-S』より著者作成)

図表3 韓国の外国金融機関からの1年内外貨建債務(2019年9月末、所在地ベース)
相手国金額比率
米国392.3億ドル34.25%
英国167.1億ドル14.59%
日本103.1億ドル9.01%
フランス69.3億ドル6.05%
その他413.6億ドル36.11%
合計1145.4億ドル100.00%

(【出所】BISのCBSデータ『B4-S』より著者作成)

そして、純然たる外貨建ての債務が1000億ドルを超えているという事実は、なかなか大変です。なぜなら、韓国経済を「突然死」に至らしめるのは、株価の暴落ではなく、金利市場からの資金流出だからです(『「株安」と「資本逃避」は必ずしもイコールと限らない』参照)。

「株安」と「資本逃避」は必ずしもイコールと限らない

だからこそ、外部者(たとえば日本)から見れば、「いざというときのための備えとして、通貨スワップなどの流動性確保手段が必要じゃないのか」、と心配になってしまうのでしょう。

日本が外国とスワップを締結する意義

ただ、その一方で、日本が外国の通貨当局と通貨スワップを結ぶのは、日本にとっては一方的な信用の供与になりかねませんし、スワップに基づき外貨を引き出されたあとで相手国が破綻すれば、丸ごと日本の損失となりかねません。

これについて、麻生総理が話した内容は、次のとおりです。

  • 日本と貿易や投資の関係が深い地域の経済に貢献するという観点からは、為替市場を含めた金融市場の安定の意義は非常に大きい
  • 日本としては2013年以降、インド、インドネシア、フィリピンなどのアジアの諸国とスワップの拡大に勤めているが、これには経済関係の深い国との金融協力というものを通じ、日本の成長戦略の重要な柱であるアジアの成長を取り込んでいくという狙いもある
  • 通貨スワップには片務的な慈善支援として行っているものであるというだけでなく、新興市場諸国が確実に成長していくことで日本の国益につながるという側面があることは間違いない

…。

以上より、政府としては、通貨スワップについては相手国に対する慈善支援的な事業と位置付けているわけではありません。あくまでも「経済関係が深い国に金融協力をすることで、相手国の市場が安定すれば、その国の経済が確実に成長し、やがては日本の国益にもつながる」、という流れですね。

すなわち、日本のように強い通貨と巨額の外貨準備を持つ国との通貨スワップは、最悪の事態に備えたバックストップとして、相手国の市場の無用な混乱を事前に避けることができる(かもしれない)、という効果が期待できます。

そのうえで、相手国が経済発展すれば、その恩恵はわが国に及ぶだけでなく、相手国の対日感情が良くなるなどの効果が得られるなど、日本の国益にも資するはずです(※もっとも、某インドネシアのように、日本や中国を手玉に取り、双方から有利な支援を引き出そうとする国が存在することも事実ですが…)。

本末転倒になっては仕方がない

ただし、以上の議論は、あくまでも「日本が相手国の金融市場の安定に貢献することで、相手国の経済発展が促進され、対日感情も好転し、それらのことが日本にも恩恵となって帰ってくる」という前提条件がなければ成り立ちません。

ここで参考になるのが、三木議員の次の指摘です。

  • しかし、通貨スワップはわが国の産業界と厳しい競合関係にある韓国のファイナンスに対し、日本政府が信用を供与しているという側面があり、結果的に日本の電機産業などの足を引っ張っているという側面があるのではないかと指摘する経済人もいる
  • 日本の経済、市場において、韓国に対する輸出は、韓国の輸出よりも非常に小さい割合であり、たとえウォンが暴落したとしても、日本の経済に与える影響というのはそんなに大きくないという分析結果も出ている

この点については、非常に考えさせられます。というのも、『数字で見た、「日韓は切っても切れない関係」論のウソ』でも報告しましたが、ヒト、モノ、カネの往来という観点からは、日本にとって韓国は「重要な国である」とは言い難いですから。

数字で見た、「日韓は切っても切れない関係」論のウソ

具体的には、日本の金融機関の対外与信総額は4兆5494億ドルに達していますが(2019年9月末時点、最終リスクベース)、このうち韓国に対する与信総額は540億ドルと、全体の1.23%に過ぎません。

また、日本の対外直接投資は1兆6459億ドルに達していますが(2018年12月末時点)、韓国に対する対外直接投資は391億ドルと、対外直接投資全体の2.38%に過ぎないのです。

野田スワップの轍

スワップ増額措置(2008年と2011年)

問題は、それだけではありません。

日本が韓国に対するスワップの増額措置に応じた際の、韓国側からの反応も、とうてい看過できるものではありません。

日本が過去に韓国との間で締結していたスワップとしては、大きく①米ドル建ての通貨スワップ(図表4)と、②日本円建ての通貨スワップ(図表5)があります。

図表4 過去に存在していたドル建ての日韓通貨スワップ
締結日概要日→韓の上限額
2001年7月4日CMIに基づく日韓通貨スワップ開始20億ドル
2006年2月24日CMIスワップの増額100億ドル
2011年10月19日「野田佳彦スワップ」開始400億ドル
2012年10月19日「野田佳彦スワップ」終了100億ドル
2015年2月16日CMIスワップが失効

(【出所】日銀、財務省、国立国会図書館アーカイブ等より著者作成。なお、日銀、財務省が一部過去データを抹消しており、国立国会図書館アーカイブも不完全であるため、誤っている可能性もある)

図表5 過去に存在していた円建ての日韓通貨スワップ
時点概要日→韓の上限額
2005年5月27日円建て通貨スワップ開始30億ドル
2008年12月12日リーマン・ショック後のスワップ増額200億ドル
2010年4月30日リーマン増額措置終了30億ドル
2011年10月19日「野田佳彦スワップ」開始300億ドル
2012年10月31日「野田佳彦スワップ」終了30億ドル
2013年7月3日円建て通貨スワップ終了

(【出所】日銀、財務省、国立国会図書館アーカイブ等より著者作成。なお、日銀、財務省が一部過去データを抹消しており、国立国会図書館アーカイブも不完全であるため、誤っている可能性もある)

このうち、たとえば2008年のリーマン・ブラザーズの経営破綻に端を発する金融危機の際、同年12月に日本が韓国に対するスワップライン(※円建て)を30億ドルから200億ドルに引き上げてあげたときに、韓国の政府当局者から出てきた発言が、これです。

「韓国が厳しい時、日本が最も遅く外貨融通」

「韓国が最も厳しい時に外貨を融通してくれたのは、米中日の中で日本が最後だ」。尹増鉉(ユン・ジュンヒョン)企画財政部長官は6日、日本有力経済紙である日本経済新聞とのインタビューでこのように指摘し、「世界第2位の経済大国なのに、日本は出し惜しみをしている気がする」と語った<<…続きを読む>>
―――2009年07月07日08時07分付 中央日報日本語版より

何だか悲しくなりますね。

また、2011年10月には、いずれも当時の野田佳彦首相と李明博(り・めいはく)大統領の合意により、日韓通貨スワップを130億ドルから700億ドルに増額する措置が講じられました(いわゆる野田スワップ、うち円建て30億ドルから300億ドル、ドル建てを100億ドルから400億ドルに増額)。

これにより、当時の欧州債務危機の混乱にもかかわらず、韓国ウォンは暴落しないで済んだ格好です。では、この「700億ドル野田スワップ」が締結されて以降、韓国は日本に対し、ヒトコトでも感謝を述べたのでしょうか?

全然違います。というのも、韓国側は、次のような不法行為を日本に仕掛けて来たからです(※文中敬称略)。

  • 12月14日…ソウルにある日本大使館前の公道上に、いわゆる「慰安婦像」が設置される(※以降、日本政府が撤去を求めるも韓国政府はこの要請を一切無視している)
  • 12月18日…京都で行われた日韓首脳会談で李明博が野田佳彦に対し、いきなり慰安婦問題を蒸し返す
  • 8月10日…李明博がわが国固有の領土である島根県竹島に不法上陸する
  • 8月14日…李明博が天皇陛下(現・上皇陛下)を侮辱する発言を行う

スワップを締結してあげても感謝してもらえないというのは、本当に悲しい話ですね。

ちなみに、韓国政府はその後、野田前首相が送った親書を書留郵便で送り返すという、とんでもない無礼を働いているのも付記しておきましょう。

韓国、野田首相親書を書留で郵送 返却拒否受け(2012/8/23 20:27付 日本経済新聞電子版より)

財務省のメチャクチャなロジック

以上を踏まえたうえで、日韓通貨スワップの700億ドルへの大幅増額措置について、当時の山崎達雄・財務省国際局長の説明を確認しておきましょう。

山崎参考人の発言(※便宜上、番号を付している)
  • ①日韓通貨スワップを初めとする地域の金融協力は、為替市場を含む金融市場の安定を通じ、相手国(韓国)だけでなく、日本にとってもメリットはある
  • ②日本と韓国との間の貿易・投資関係、とりわけ日本企業も多数韓国に進出して活動しているという事情を踏まえると、その国の経済の安定というのは双方にメリットがあり、通貨という面では、むしろ通貨ウォンを安定させるという面もある
  • ③財務省が当時、日韓通貨スワップの規模を拡大した理由としては、韓国のためだけというよりも、むしろ日本のため、ひいてはアジア地域の経済安定のためという側面があった

このうち①と③については麻生総理の発言とあまり変わるところはありません。

日本が通貨スワップを提供することで、韓国の金融市場・為替市場が安定すれば、アジア地域全体の経済が安定する、という効果を、当時の財務省は期待していた、ということです。今ほど日韓関係が悪化していなかった当時であれば、こうした「屁理屈」も、それなりに説得力はあったかもしれません。

しかし、②については、明らかに数字を見ていない、「机上の空論」と言わざるを得ません(上記図表2、図表3等参照)。さらに、私たちにとってはまことに残念なことに、韓国は支援をして感謝してくれる国でもなければ、反日感情がなくなる国でもありません。

麻生総理「話が通じない国」

さて、こうした財務省のメチャクチャなロジックはともかくとして、もうひとつ紹介しておきたいのが、副総理兼財相である麻生太郎総理の、次のような発言です。

2011年10月に日韓通貨スワップを総額130億ドルから700億ドルに拡充したのは、欧州債務危機による金融市場の混乱を受け、韓国政府の要請に基づいた行われた措置だが、増額措置が2012年に終了した理由は、日韓両国でスワップ増額部分の延長は必要ないとの結論に至ったためである

まず、先ほどの「700億ドルの野田スワップ」については、韓国側の要請に基づいて行われた措置である、という趣旨のことを明言しています(※このあたり、山崎局長の「日韓通貨スワップには日韓双方にメリットがある」、とする見解と微妙に整合していないように思えます)。

そのうえで、野田スワップが終了した理由を、(欧州債務危機が一巡するなど)「スワップ増額措置の必要性がなくなったためだ」、などとしているのですが、自然に考えて野田スワップ終了措置の判断に竹島上陸、陛下侮辱、親書返送などの無礼行為の数々がまったく影響しなかったと見るのは無理があります。

ただ、麻生発言のなかで興味深いのは、次のような「内情の暴露」でしょう。

  • 日韓両国が通貨スワップ増額措置の延長は必要ないとの結論に至った時点では、マクロ経済の状況は健全だったが、1997年のアジア通貨危機に際しては韓国の外貨準備は極端に払底し、また、2008年にも似たような状況が生じつつあった
  • 「短期の外貨借入で経済を運営している」という韓国経済の構造を踏まえ、日本側から「韓国経済のためには安全弁としての日韓通貨スワップのような協定が必要ではないか」と話すにしても、中央銀行や企画財政部などの事務レベルと政治レベルでは話の複雑さが異なる
  • わが国では、そもそも国際金融においては、1997年や2008年のような状況に備え、ある程度は手を打っておかねばならないものだと考えているが、IMFやG20などの場で韓国側と話をしても、中央銀行や企画財政部など、話が通じる相手と通じない相手の違いが極端であり、交渉は難航する

つまり、日本の立場からすれば、国を挙げて、安定的な長期借入金ではなく、不安定な短期借入金に頼っているという韓国の資金調達構造は危なっかしくてならないのですが、それは事務方レベルでは理解できても、政治家レベルでは感情的になって話が通じない、ということです。

そのうえで、決定的なのは、次の趣旨の発言でしょう。

2013年7月3日に30億ドル相当の通貨スワップが失効した理由のひとつは、日本側から「本当に大丈夫か」と問い合わせたところ、韓国側から「借りてくれと言われたら借りてやらないことはない」、といった言い方をされ、日本側で「そんな義理はない」という雰囲気になったこともある

そりゃそうですね(笑)

教訓

さて、日本がアジア諸国などとの間で通貨スワップや為替スワップを推進する意味としては、思いつくまま列挙しても、次のようなものがあります。

  • アジア諸国の金融を安定させることで、アジア諸国の経済成長を支援し、ゆくゆくは日本にとっても多大な恩恵をもたらすこと
  • アジア諸国に対して通貨の安全弁を提供することで、日本に対し感謝の念を持ってもらうことなどを通じ、親日国がアジア全体に広がること
  • 日本円の国際化がさらに進展すること

実際、日本は自国通貨自体が国際的に通用度の高い「ハード・カレンシー」でもありますし、また、米ドルなどを中心に巨額の外貨準備を保有しています。こうした事情に照らせば、アジア諸国と通貨スワップなり、為替スワップなりを推進する価値はあります。

(※もっとも、財務省が「国の借金を減らす」と騙り、増税に邁進しているほどですから、外貨準備高が実際に必要な金額と比べて多すぎるという問題点はありますが…。)

ただし、日本がこれらのスワップを推進する価値があるとしたら、少なくとも①日本経済と日本企業にとっても恩恵があること、②日本の貢献が相手国から正当に評価されること、などが必要です。

韓国に対して日韓通貨スワップを提供したら、韓国の当局は日韓通貨スワップを「バックストップ」として、安心して為替介入を常態化させ、結果的に日本企業の国際的な競争力が削がれるという意味で、まず日本経済と日本企業にとってメリットがあるのかどうかは疑問です。

また、日本が過去に韓国を助けても、「支援が遅かった」と逆恨みされたり、大使館前に変な銅像を設置されたり、私たち日本人が尊敬している天皇陛下が侮辱されたり、親書を郵便で送り返されたり、といった侮辱を全力で受けるのが関の山だ、というのが、これまでの歴史が教える教訓です。

日本政府が韓国との間で通貨スワップを再開するかどうかを決断するに当たっては、以上を踏まえて判断していただきたいと思う次第です。

※ ※ ※ ※ ※ ※ ※

さて、日韓通貨スワップを再開すべきかどうかを巡っては、先日も紹介したとおり、日本を代表する優れた韓国観察者である鈴置高史氏が『デイリー新潮』に数日前に寄稿した、次の記事が参考になります。

新型肺炎発の韓国の通貨危機 米国の助けも不発で日本にスワップ要求…23年前のデジャブ(2020年3月24日付 デイリー新潮より)

同記事では当ウェブサイトへのリンクが張られているため、当ウェブサイトが同記事を紹介してしまうと「循環参照」のようになってしまうという悩みがありますが(笑)、ただ、正直申し上げれば、日本国民であれば必ず読んでおくべきというレベルの優れた記事でもあります。

まだの方は、是非、ご一読下さい。

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